73.幌尻岳「約束の場所」新冠ルート
- GPS
- 34:35
- 距離
- 44.1km
- 登り
- 3,690m
- 下り
- 3,682m
コースタイム
- 山行
- 5:35
- 休憩
- 0:03
- 合計
- 5:38
- 山行
- 6:48
- 休憩
- 0:39
- 合計
- 7:27
天候 | 一日目:晴れ 二日目:曇り 三日目:曇り時々小雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
新冠湖のあたりで、道を間違えました。取りあえず道の真ん中に雑草が生えている道は違うので引き返して下さい。 駐車スペースはイドンナップ山荘周辺は10台前後が駐車出来ます。それ以外は手前の沿道に駐車します。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
イドンナップ山荘〜新冠ポロシリ山荘までは約19キロの山道歩きとなります。クルマ一台通れるほどの広さですが、側道が脆くて崩落したり、落石の危険性もあるので特に休憩時は注意。平日歩く時は、電力会社の車両が通ることがあるので注意。 新冠ポロシリ山荘〜山頂までは新冠ポロシリ山岳会の皆様のお陰で随所に赤テープの目印があって、迷うことなく歩くことが出来ました。ただ、新冠ポロシリ山荘からしばらく歩いたところで、側面にロープが張られたトラバース地点があり、最初&最後の難所となりますが注意&集中して通過したいものです。 幌尻沢徒渉点を通過すると、急登の登山道となりますが、時々手で岩を掴んで登る場面もあります。「ポロシリ・コード」の第7条にポール、ストックを使用しないで下さい(徒渉時は除く)と書かれていますが、これだけ長く急登が続くなら、ポール、ストックはいらないかなと思いました。 |
その他周辺情報 | 新冠ポロシリ山荘 宿泊した二日間は登山者が多かったので、ネズミの害はほぼ心配はなかったです。 ダニやアブが考えていたよりはいなかったです。新冠ポロシリ山岳会の皆様が補修して頂いたお陰で、僕は不自由なく過ごせたかと思います。 宿泊料は一泊1000円。一階に設置されているポストに入れます。 登山後の〆の温泉は「レ・コードの湯」(入浴料:500円)でした。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ 2
Tシャツ 1
ソフトシェル 1
タイツ 1
ズボン 1
靴下 1
グローブ 1
防寒着 1 ダウンジャケット
雨具 1
ゲイター 1
日よけ帽子 1
靴 1
サンダル 1
ザック 1 60リットル
ザックカバー 2 大、小各1
サブザック 1 30リットル
行動食 1
調理用食材 3 三日分
飲料 1 水道水
ハイドレーション 1 3リットル
ガスカートリッジ 1
コンロ 1
コッヘル 1
ライター 2 コンロ点火用・非常用
地図(地形図) 1
コンパス 1
笛 1
計画書 1
ヘッドランプ 2
予備電池 2
筆記用具 1
ファーストエイドキット 1
ロールペーパー 1
保険証 1
携帯 1 スマホ
時計 2
タオル 3
ツェルト 1
カメラ 2 デジカメ・使い捨てカメラ
シェラフ 1
小型浄水器 1
レジャーシート 1
プラティパス 1 2リットル
エアマット 1
充電器 2
|
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備考 | 小型浄水器は持って行って良かったと思います。 |
感想
第73座 「約束の場所」
いよいよ、この時を迎えた。幌尻岳に挑む時が! 時が熟したのか、早過ぎるのか、早朝便の飛行機上の人となった僕は今でも分からない。いつ登るの? 今でしょ? そういう思いで梅が咲いて桜はまだかいなという時期に往復の航空券をゲットし、宿の予約も入れた。
精力的に登山をしながらも本業が休みの時はバイトを入れたり、衣類や長年収集した切手やカード等を売却して旅費も貯めた。今年に入って春山登山も順調にこなして、出発の日まで一ヶ月を切ろうかとしたある日、4年も使い続けていたスマホが思うように使えなくなった。電池の消費が激しい上に、タッチパネルの誤作動、とにかく不具合が多かった。
そこで、新しいスマホの購入を決断。普段やる操作はすんなりと馴染めたが、地図アプリの操作がなかなか馴染めなかった。ある地図アプリをダウンロードしてGPSログを取っていたのだが、ログが取れていなかったりしたので、別の地図アプリをダウンロードした。その地図アプリで小牧山をトレイルランをしたが、GPSログは取りあえず取れていた。もう一度、地図アプリを使いこなすために金華山あたりをトレイルランしたかったのだが、予定していた日が雨で走れず。地図アプリを使いこなせないまま、ぶっつけ本番で使わなくてはならなくなったのが、僕の不安材料のひとつであった。
14日の朝の飛行機で、4年振りに北海道の土を踏んだ。予約したレンタカーも手に入れ、宿泊先の「旅人の宿 ふかふか亭」へ向かった。直接、イドンナップ山荘にに泊まることも考えたのだが、前もって登山道具をザックごと送りたかったこと、登山の情報をいろいろ聞きたかったので、この宿に泊まることにした。宿のご主人に登山口までのアクセス方法やネズミ、ダニ対策など心配していることすべてを聞いたのだが、ひとつひとつ丁寧に答えて貰って、かえって僕が自信を持って挑んでもいいんだと思った。
思えば、4年前にチロロ林道から幌尻岳に登ろうと登山口まで来た時に、下山して来た若い夫婦からヒグマを見たので引き返して来たということを聞いた。臆病になって眠れなかったばかりでなく、思い余って遺書でも書こうかと考えた。結局のところ書かずに朝出発しようとしたら、腕時計の電池が切れて、1メートルも登らぬうちに撤退したのだが、あの頃よりは、前向きな気持ちで挑むことが出来るのを僕は感じていた。
15日早朝、宿を出発。出発して30分程でダート道に突入。凹凸の激しく、時折、クルマの底を打つ音がした。途中、新冠湖のあたりで道に迷いながらも2時間10分かかって登山口となるイドンナップ山荘に到着した。山荘周辺の駐車スペースは10台駐車すれば一杯で、もう停めるスペースがないため、そこから離れた沿道に駐車した。ここから、幌尻岳に向かって、出発だと気合を入れた。
発電所前のゲートを黄色いビニールテープが巻かれたところからザックをくぐらせてから、自分もくぐった。ウォーミングアップがてらに歩いたが、取りあえずは大丈夫そうだった。堅牢ないこいの橋のゲートはいつになったら出るのか? そもそも、道はこれで大丈夫なの? 不安は尽きなかったが、登山靴の踏み跡があるので、大丈夫だと言い聞かせながら歩いた。
登山を始めて一時間程でいこいの橋ゲートに到着した。一見、堅牢そうだが、鉄格子の回転扉からザックをくぐらせて、自分もくぐった。さぁ、ここからだ、これからだと気を引き締めた。ところが、歩いて二時間、三時間と経過すると、食料や酒類を満載した僕のザックの重さが耐えきれなくて辛く感じた。滝の様な汗を流して、立ち止まる場面も多くなった。もう引き返そうかと思った。
それでも、自然と足は前を歩いていた。それでも、車道とはいえ、本当に辛く感じて、風景を眺めようとか、苦しみを楽しみに変えてとか、そんなことは考えられなかった。もう必死だったのだ。辛抱に辛抱を重ねて、ようやく、 奥新冠ダムが見えた。ここまで来れば、新冠ポロシリ山荘まであと少しなのだが、アップダウンが激しい道で難儀した。12時40分、5時間40分かかって、新冠ポロシリ山荘に到着した。とにかく、ここまでたどり着けて良かった。僕が到着した時は、一階はほぼ登山者が埋まっており、二階へ行くと、人がほとんどいない程のガラガラ! 取りあえずは一番隅っこをキープした。
カロリーメイトの昼食を食べながら、担いで来たウイスキーや日本酒をチビチビやりながら、そのままの流れで夕食作りに入った。記憶はそこまでだった。再び起きたのが、18時頃で自分の目の前には食べかけの冷めたラーメンと出来上がって袋がパンパンになったフリーズドライの白飯が置かれていた。そうか、お湯を沸かしてラーメンを食べながら待ってるうちに寝てしまったのだなと思った。この頃になると二階も人で一杯になっていた。
16日、山頂アタックの日が来た。3時を過ぎると次々に起き出して、身支度を始めた。僕も朝食を食べて、ザックを持って外へ出た。登山靴を履いて、ストレッチを済ませて、5時に新冠ポロシリ山荘を出発した。そして、ヒグマ避けのため大声で叫んだ。
「パンツァー・フォー!」
最初は平坦で大きなフキの葉の間を歩いて行く。歩いてるといきなり、左側面にロープが張られたトラバース地点に来た。この下は川で落ちたらタダでは済まない。戸惑いながらも無難に通過。今回は、ポロシリ・コードに則って、ダブルストックは持って来なかった。川を渡る渡渉も無難に過ぎると、いよいよ幌尻岳へ直登の登山が始まった。
直登なのに加え、道幅が腰幅程の狭さで、バランスを崩そうものなら、奈落の底というところが一杯あったし、何よりもヒグマとの鉢合わせが何よりも怖い。僕は腰に付けた熊鈴を手で振って鳴らしたり、笛を吹いたりして進んだ。辛かったのは登山道が狭いので一本立てる広いスペースもない、ただ前進するしかなかった。やっと座るのに丁度いい白くなった倒木が横たわっていたので、ここで一本立てた。
やがて、真っ白な小さな看板があるのを見つけた。よく見ると、「見晴台」と薄っすらと書かれていた。ここから日高山脈の山々が見ることが出来た。あぁ、俺はここまで登ったのだなと思った。そこから登って程ないところで今度は「中間点」と書かれた白くて小さな看板を見つけた。登り始めてだいたい二時間であり自分の体調は上々だなと感じた。
しばらく歩くと「水場→」という看板を見つけた。続けて歩くと川が流れていた。僕はここの水を小型浄水器 に汲んだ水を通して数杯飲んだ。この上に雪渓があったらしいのだが、ふかふか亭のご主人の言う通り、登山道の雪渓が全て溶けていた。ここからは森林限界を越えて、お花畑に入っていた。色とりどりの花々を 眺めているうちに、僕が疲れていることすらも忘れて登っていた。
大岩の横を通って、幌尻山荘へ行く登山道との分岐に着いた。ここまで来れば直登地獄とはオサラバである。
そして、9時に念願の幌尻岳山頂に着いた!
まずは三角点をタッチして、木で出来た看板にハグをした。そして、大声で叫んだ。
「やったぞ〜!」
周辺は曇っていて、遠くまでは見渡せなかったが、時々霧が晴れて山頂の下の景色が見えたが、すぐに霧で隠れた。これでは、七つ沼カールを見るのは無理だなと思って、肩までの往復は止めた(一日目がヘロヘロに疲れていたので、勧めてくれたふかふか亭のご主人には申し訳ないが、晴天であっても行かないでおこうと思っていた)。
あとは来た道を降るだけだが、今度は急な下り坂になるので、適度に一本を立てながら降って行った。特に笹が茂ったところにヒグマが潜んでいるのではと気が気でなかったし、転んだら奈落の底のところは尚更であった。急な下り坂も終わって、木の橋を渡って、渡渉も無難にこなして、トラバース地点を集中して通過して、12時30分頃に新冠ポロシリ山荘に着いた。
小屋には昨日よりも多くの登山者で埋め尽くされて、これだけ登山者が多いと、さすがにネズミも逃げたくなるのではとも思った。外を見るとテントも5張程張られていた。僕としては、盆休みを避けていたつもりが、まさかこんなに登山者が多いとは。僕も含めて今日泊まった登山者の誰もがそう思ってるに違いない。
17日はイドンナップ山荘まで長い距離を歩くだけ。この時点で足に筋肉痛の兆候があったが歩けなくはなかった。あれだけ重かった食料を食べて減らした分、荷物が軽くなって、コースの大半が降りだったので、何とか歩き通せた。途中小雨も降ったが、雨具を着るまでもなく、本降りになる前に昼前には、イドンナップ山荘に着いた。続いて二時間にも及ぶダート道のドライブであったが、無難に走り切った。サラブレッド銀座の駐車場のトイレに行こうとしたら、足が筋肉痛で歩くこともままならなかった。このタイミングで雨が本降りで降って来た。
レ・コード館にある新冠観光協会に立寄り、登頂証明書とバッチ、特製手ぬぐいもゲットして、レ・コードの湯に入浴して、数日振りに汗を流すことが出来てスッキリした。
こうして、目標にしていた幌尻岳登頂を成功して、何とか歩き通せて良かったな、登れて良かったなと思った以上に、無事に帰って来られたという思いが強かった。実を言えば、今回の山旅においては、恥ずかしいことではあるが、母から餞別をもらっていたのだ。これで、何としても成功せねばという思いが強くなった。何とか無事に下山が出来て、母にいい報告が出来そうだと思った。
18日に東海地方の梅雨明けが発表されたと、ホテルで見たテレビのニュースで知った。これからが夏本番で日本アルプスの山々は多くの登山者が待ってましたとばかりに、山に出かけるところだろうけど、もう僕はあれだけ辛い山旅をしたから、もう当分山はイイや(笑)なんて今のところは思っている。
追伸:地図アプリのGPSログがちゃんと取れていて良かったです。登山用時計の高度計が使えなくなったが地図アプリに標高が表示されるので、何とかなった。
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