(過去レコ)安房山→十石山 【十石尾根縦走】


- GPS
- --:--
- 距離
- 10.7km
- 登り
- 1,100m
- 下り
- 1,568m
コースタイム
- 山行
- 11:25
- 休憩
- 0:55
- 合計
- 12:20
乗鞍山大権現=2380m 水場=2126m 平湯温泉スキー場=1300m
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
写真
感想
【山行記録投稿=2017年8月1日】
沢渡から平湯温泉へは安房峠道路(旧道)が通じている。
安房トンネルが開通まで、この国道は信州側がヘアピンカーブの連続で、大型車は通行困難を極めた。
安房峠から北は焼岳へ連なるが、稜線上に登山道はない。
南は『山と高原地図』では乗鞍権現社まで黒の薄い破線が引かれている。
安房山は昨年5月上旬にも行った。雪が解けた所では道形が出ていた。頂上に電波中継設備があり、そのための作業道と思われた。
安房山から乗鞍権現社までは、薄い黒破線が辿れるのかどうか行ってみなければ分からない。
安房峠では4時15分頃に明るくなる。
スタートしてすぐ、ぼうぼうと茂る雑草に朝露が降りていて、ズボンがびしょ濡れになりそうなので車に戻り、登山靴にレジ袋をかぶせて、ヤッケのズボンを履く。レインウェアのズボンを履くほどではない。
雪が解けた山道には雑草や笹が生い茂るが、分かりにくい所や危険な所もない。
地面がえぐれて歩きにくくなった所には何本ものロープが張られていた。
峠から1時間10分で安房山の表示がある地点に着く。
頂上からの眺望は、残雪期は目の位置が高い分だけ良かったが、無雪期は林の中で、あまり良くない。特に西側は濃い針葉樹林帯で全く見えない。
5分間いて写真を撮っただけで先へ進む。
2390mピークまでに稜線上の鞍部は、地形図の等高線で2070mが2ヶ所、2090m、2080m、計4か所ある。
ひとつ目の鞍部までは背丈ほどの猛烈なスズタケのやぶ、それから先は針葉樹とスズタケの混成林で、ふたつ目の鞍部から先が“ハイマツの海”で大変だった。
スズタケを掻き分けたり踏み倒したりして進むのだが、登り坂で小さな竹は足元がよく滑る。そのままでは歩けないので、両手で前方の笹に掴まり、身体を引き上げる。
高度が上がるにつれてハイマツ帯となり、これは笹以上に厄介だった。背丈を越え、幹が手首ほどのハイマツの密やぶは掻き分けるのが大変で、、持ち上げて下をくぐったり、大股でまたいで越えるのだが、登り坂なので遅々として進まない。
稜線のハイマツを避け、東側の一段下がったダケカンバ帯に入ってみると巨岩がごろごろしていて、スムーズに進める所は皆無だった。
場所によっては数十m進むのに10分以上掛かり、2390mピークから十石山まで距離にして1000m程度だが3時間を要した。
2100mを過ぎた急斜面の登り途中で森林限界を抜け、ハイマツの切れている所では眺望がすこぶる良い。 折れそうになる心を、絶景の山岳展望が慰めてくれた。
この強烈なやぶが乗鞍権現社で一般登山道と合流するまで続くのかと思うと、明るいうちには下山できそうになかった。
山へ入った以上は出なければならぬ。入ったきり、出て来なければ遭難ということになる。暗くなるまで歩き通す自信はあったが、明るいうちに下山できるかどうか不安で、道のない猛烈なやぶはライトを点けて歩けるものではない。
ほうほうの体(てい)で十石峠避難小屋に着く。ここからは白骨温泉へ下る破線ルートがあり、残雪期に歩いたことがある。最悪の場合、白骨温泉へ下ることも考えたが、幸いにも避難小屋から乗鞍権現社までは踏跡があった。
山地図では薄い黒破線だが、踏み跡が有るのと無いのでは雲泥の差である。
十石山の頂上は避難小屋のすぐ先で、笹原の中に三角点がある。ハイマツが主体の幅広の尾根から岩がゴツゴツしたやせ尾根に変わったが、踏跡がある所を歩けるので不安はない。
この尾根で、コイワカガミは多かったが、他の花はほとんど見なかった。
尾根上には通過できないような絶壁がなくて幸いだったが、猛烈なハイマツ帯では手袋はボロボロ、膝から下は木にぶつけてキズだらけとなった。
また、ブヨがとても多く、両耳は赤く腫れ上がるほどに刺された。虫対策用にハッカ油を買っていたが、今年はまだ一度もブヨの襲来に遭っていなかったので、家に置いたままだった。
金山岩の手前で、屈強そうな男性4人と行き会う。今日は避難小屋に泊まり、明日、白骨温泉へ下るとのこと。
腕章を付けており、普通の登山者ではなさそうだった。
金山岩から標高差100mあまり下り、一般登山道へ出る。そこには小さな神社(乗鞍山大権現と表示)がある。ここから下山口までの標高差も−1000m以上あるが、登山道沿いの笹は綺麗に刈り払いされていた。
途中の水場で500ミリの水を飲む。今日は500ミリのPB3本を持っていたが、好天で大変暑く、3本ではとても足りなかった。
平湯温泉スキー場から安房峠までタクシーで戻る。
先月23日午後、上高地へ通じる県道で土砂崩れがあり、観光客ら860人が帰れなくなったが、このタクシー運転手も上高地の車中で一夜を明かしたとのこと。
860人分の宿泊費は松本市が出したと言う。翌日には復旧したのに、『復旧の見通しは立たない』と報じたマスコミを批判していた。
安房山から十石山までは、道形も踏み跡も目印も、人が歩いたと思われる形跡は全くなかった。
山地図に『笹ヤブで通行不能』と書かれているのは十石尾根全体のことだと思うが、
笹薮はまだ良い方で、ハイマツ薮やシャクナゲ薮は困難を極める。
無雪期にどうしても安房山⇔十石山間を歩くなら、藪漕ぎが下りとなる逆方向が良い。
ある時期、私は親不知海岸から乗鞍岳まで、北アルプス全区間を切れ目なく繋いで歩くことを自分に課した。それは不可能ではない目標だった。
もし山地図に薄い黒破線がなければ残雪期に歩いたかもしれない。遠い昔は道形があったのだろうが、踏み跡は完璧に消失していた。
十石尾根踏破は自分の登山史上最難関の記録として忘れられないだろう。
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