1泊2日・初のテント泊ソロ縦走!富良野岳〜十勝岳〜美瑛岳
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コースタイム
day2 0710上ホロ小屋-0800十勝岳-1020美瑛岳-1330ポンピ沢-1500雲の平分岐-1620吹上温泉白銀荘
天候 | day1 曇りのち晴れ day2 快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
【復路】吹上温泉〜白金温泉(ヒッチハイク) 1022白金温泉〜1145旭川(バス)\1000 |
コース状況/ 危険箇所等 |
今年は残雪が多く、美瑛岳から吹上温泉までの傾斜が急な登山道にたくさん雪渓が残っています。自分は傾斜が40°以上あるような雪渓で滑落しましたし、美瑛富士分岐の道標は完全に雪に埋もれていたのであやうく道に迷うところでした。北アのようにロープが張ってあったりステップが切ってあったり線が引いてあったりということはないので、装備もルートファインディングも完全に自己責任の世界です。 上ホロのテン場は雪渓がタップリ残っていたのでせいぜい3-4張りしかスペースがありませんでした。また雪渓からは水が流れていないので水場とは言えないと思います。雪を溶かして煮沸したとしても何か黒いものが浮いていたりして濾過しないと気持ち悪くて飲めません。 吹上温泉の白銀荘は1泊素泊まり2600円で温泉付き、泉質は特筆することはないですが施設が綺麗でサービスもゆきとどき快適で眺めも素晴らしいよいところです。テント場も芝生で気持ち良さそうでした。食堂がないのが残念なところ。 |
写真
感想
【day1】十勝岳温泉凌雲閣〜富良野岳〜上ホロカメットク〜上ホロ避難小屋キャンプ場
初めての北海道の山。しかも初のテント泊ソロ縦走。避難小屋泊まり&自炊の縦走は去年経験済みだけど、北アや東北の整備がゆきとどいた山域での経験が役に立つのか、未知の世界。それでも予備日を十分にとって10日間の滞在中、最初は大雪山から十勝岳まで5泊6日で一気に縦走しようと企んでいたのだけど、ケニア時代の後輩kei君の同期で大雪山でガイドをしているミッチーに「トムラウシから先はあまり人が通らないのでルートが不明瞭だし今年は残雪も多いので危ないからやめといたほうがいい」と釘をさされてしまう。おまけに、中盤以降の天気予報が傘のマークばかり。。。本命の大雪山〜トムラウシも実行して大丈夫なのか、2年前のトムラウシ大量遭難事件と同じく気象遭難しないか、先行きが危ぶまれる。。。
そんな訳で旭川に到着後、作戦変更。まずは比較的天気の良さそうな最初の2日間で当初想定したコースの最後の2日間にあたるルートを偵察することに決定。富良野岳〜美瑛岳の稜線であればどんなに天気が急変しても3-4時間もあればどこかしらの登山口に下山できるとふんで。一番標高が高くてバスの便がある十勝岳温泉登山口から入って稜線で1泊して吹上温泉に下りてくるルートなら簡単そう。そのかわり水場がないので担がないといけないのが難点だけど、幸い曇り空ならそんなに喉は渇かないだろうし、1泊2日なら荷物も軽いから2-3Lくらいなんとかなる。それにkei君情報では吹上温泉の露天はなかなかいいらしいし遅くなって最悪バスの便がなくても宿泊費が安いから安心。てなわけで、秀岳荘でガス缶とクマ鈴と虫除けスプレーを仕入れ、イオンで肉野菜を調達、kei君ちに余計な荷物を置かせてもらい、翌朝旭川駅まで送ってもらって帯広行きJRにて上富良野駅へ。約1時間の待ち合わせで十勝岳温泉行きのバスに接続。10時すぎに終点の富良野岳登山口の凌雲閣前についた。
さすがは北海道と思ったのは、登山口の標高が1300mもないのに樹林帯が終わってて、かなり涼しいこと。バスからは登山者は私の他に3人しか降りなかったけど、駐車場にはすでに車がいっぱい。平日とはいえシーズンまっさかり。登山届に私の前にサインアップしたのは同じ神奈川からの人で私と同じ行程だ、さすが花の百名山だけあって人気は全国区ですな〜。
途中までは活火山の十勝岳の荒涼としたトレイル歩き。涼しいので途中休憩も取らず順調に高度を稼ぎ、稜線に出た。富良野岳の分岐を過ぎると歩きにくいガレ場だけど、アルペンムードたっぷりで嫌いじゃないな。しっとり濡れた緑のなかに散らばるハクサンイチゲの白やツガザクラのピンクが目を喜ばせてくれる。うん確かに急にお花が増えてきたぞ。だけどガイドブックでいうほど珍しい花は見なかった。雪解けが遅れてるのかな。途中すれ違った若いオシャレなお兄さんに、「テン泊ですか?羨ましいことしてますね」と言われた。てへへ。そういえば重装備の人あまり見かけないな。ガスで何も見えない富良野岳山頂でおにぎり弁当を食べて降りてくると、神奈川からのソロのおじさんに「そんな荷物背負ってピストンかよ」と言われた。まあ表向き「ボッカトレーニングも兼ねてるんで」って答えたけど、正直新しいザックに新しいテントを背負って歩くのが嬉しくてしょうがないので重さなんか感じないのだ(←小学生か)。
なんて余裕かましてられたのも三峰山の最初のピークまで。上ホロカメットク山のコルにある避難小屋まではお花畑を愛でつつ気楽な尾根歩きだと予想していた私はまだまだ地図が読めない女だな。三峰っていうぐらいだからアップダウンを繰り返し、やせ尾根で足元に気を使うわ、さしものロールスロイスも肩に食いこむわ、気温も上がるわで、少々バテ気味。ラマダンの友・デーツ(なつめやし)を口に放り込んで耐える。かみふらの岳のどうでもいいピークを踏んで、上ホロピークに辿り着いた時には歩き始めて6時間経っており、眼下に小屋が見えて心からホッとした。だけど上ホロからの下りは急なガレ場で急ぐと荷物に振られるからご用心。
小屋の前にはだだっ広い雪渓がひろがり、テントが張れそうなスペースは猫の額。この日は私以外に誰もいなかったけど、3張りもしたら終わりだよ?一応小屋をのぞいて見たけど、話し声が2階からして1階はカラ。そっか、基本日帰りの山だから心配無用なんだな。ってことで一等地にマイホーム完成。ちなみにお水って取れるのかな〜?と雪渓尻に行ってみたけど、融雪水がチョロチョロ。これじゃいつまでたってもプラティパスに汲めないし、なんだか黒い浮遊物が。。。これは煮沸してもフィルターがないとちとキツい。そこへ野良犬のような気楽さでキタキツネくん登場。水飲みに来たの?先が長い私はチャレンジしてお腹を壊してもいけないと、ここは慎重にキツネとのシェアはやめて旭川から背負い上げた水ですますことにした。夜ご飯にトンコツ醤油ラーメンと餃子を焼いて、美瑛の町にかかる夕焼け空をしばし眺めて、フリースとダウンを着てあったかくして寝た。
【day2】上ホロ避難小屋キャンプ場〜十勝岳〜美瑛岳〜吹上温泉白銀荘
翌朝、4時頃から隣の小屋からゴソゴソ物音が始まって目が覚める。お天気は良さそう。朝方冷え込んだけど、ガイドのミッチーに脅されたほど寒くは感じない。10月末の下の廊下のほうがずっと寒かった記憶。今回かさばるけどエアマットからウレタンマットに替えたのが良かったのかも。スタバのORIGAMIエスプレッソを入れてクロワッサンでハムとツナのサンドイッチをたくさん作って半分朝食、半分コンテナに詰めて行動食に。今日のコースタイムは7時間半、ほとんど下りだから、とのんびり支度をしてテントの朝露もすっかり乾かしてから7時過ぎに出発。
百名山・十勝岳の稜線歩きはダイナミックの一言ですな。そこかしこからモクモクと噴煙があがって現役火山を感じさせるし、振り返れば上ホロの尾根は岩がそそり立ってカッコいいし、怪獣の背中のような鋸岳のギザギザは惚れ惚れするナイフエッジだし、砂礫の合間にお花が咲く緑の山だった十勝岳はピークを越えると急に月面に降り立ったかのような雪と砂のモノトーンの世界へと変貌してめまぐるしい環境変化に飽きることがない。平坦な道のりなので天気が悪いと一転して道迷いしそうだけど。2時間ほど歩いて美瑛岳の腹の見晴の良い適当なところで残りのサンドイッチを平らげ、美瑛岳の分岐で突然視界に入って来たホワイトキャップの山並みに息を飲む。もしかしてあれが大雪?ドキドキしながら美瑛岳山頂へ。目の前に綺麗なコーン型の美瑛富士、その向こうにオプタテシケ、シャイなトムラウシは山頂が雲に隠れて見えないけど、ゼブラ模様に雪を抱いた大雪山系はよく見える!次はあそこに行くんだ、絶対行きたい!と気持ちが高まる。モチベーションを上げて成功を導く。コレ何気に大事よね。
午前10時過ぎには下山開始。なんだ楽勝だったな〜、と思ったのもつかの間、急な岩場の険しい下りが続いたかと思ったら煙突状の狭い涸れ沢みたいなところを木の根につかまりながら消防団のように降りたり、ハイマツの灌木帯に入ったかと思えば途中の分岐の道標がすっかり雪に埋まって道が消えている。。。嵩張る荷物をあっちにひっかけこっちにひっかけようやく降りてきてさあどうしよう?と困ってだだっ広い雪渓で立ち止まっていたら、昨日から同じ行程の神奈川のおじさんが後ろから来て、「こっちを乗っ越すんだろ」とさっさと左手のハイマツのヤブの中に消えて行った。
しばし水分補給の小休止の後、私も続く。登ったり降りたり暑くて苦しいトラバースを続けていると、「ここはヤバいぞ」とさっきのおじさんが傾斜40°以上はありそうな雪渓を10mぐらい斜め下に渡りきった所で注意喚起。どうやら私が渡りきるのを見届けるつもりで待っていてくれるらしい。「さっき最後にちょっと滑ったんだ」ってまじすか。凄いな北海道、こんな危険箇所も野放しか。北アなら絶対ロープかかってるだろに。「後のベテランのおじさんに先行してもらえ」だって。でもそのおじさんはお連れのおばさんたちを待っている様子。まあ去年の立山〜剣でも結構な数の雪渓を歩いたし白馬大雪渓もアイゼンストックなしで上がったし、日が高いから雪も緩んでるし、怖がらず落ち着いて行けば何とかなるんじゃないかな?と踏み出した所、ソールが雪にかみつく感触がなくズズ、っと谷方向にずれるいやな感じ。少し上の方にあがってブッシュを掴みながら行こうか試したが、嵩張る荷物が邪魔になり左右に振られて動きづらい。ゆっくり1歩ずつ踏みしめて行くしかないな、と覚悟を決めて渡り始め、あと2-3歩、ってところで、ちょっとバランスを崩し一気に足もとを滑らせた。やばい、なんか掴まなきゃ、と思っても手袋すらはめてない素手で雪の斜面に爪を立てる訳にもいかずあっと言う間にザックの重量で加速し落ちて行く。。。。。。40-50m滑り落ちた所で雪が切れブッシュになり、目に入った灌木になんとかすがりつき、滑落停止。ラッキー。両腕の内側をかなりこすったみたいでヒリヒリするし左足の腿に打ち身を作ったらしくズキズキするけど、大怪我はない模様。気持ちが落ち着くと、この滑落を記録せねば、とカメラを探すが、両サイドポケットから飛び出してしまったのかペットボトルもカメラケースも見当たらない。帽子も吹っ飛んでる。半径2mほど見渡してもないから、上部に落ちてるのかな?と、見知らぬ手袋と汚れた帽子があたりに落ちていた。他にも滑落した人がいるんだ。。。助かったのかな。。。
頭上では他の登山者の心配そうな声がするので、「何とか止まりました、大丈夫です」と答える。さて誰もここまで来れないんだから、これは一仕事だぞ。アイゼンもピッケルも持ってないし、自力でこの垂直の壁をブッシュに掴まって上がるしかない。自分の体重だけでも重いのにさらにこのデカザックが恨めしい。疲れても手を離したら終わりだ。ボルダリングの要領で手足のホールドを吟味しつつ1歩1歩上がる。こんなか細い木の枝や笹に掴まって、抜けたらどうする?油汗がしたたる。「おい、アイゼン投げようか?」と神奈川のおじさんが声をかけてくれる。有り難いけど、この手を離したら終わりの状況でアイゼン履けないし。「いらないです、ロープ持ってませんか?」「持ってない・・・」ハイハイ人に頼ってはいけません、自己責任、自己責任。へとへとになりつつ何とか登山道近くの笹薮でおじさんにザック引き上げてもらって、復帰。「お水一杯いただけませんか」「この先にザック置いて来たからアイゼンしか持ってねえよ」ですよねー。帽子は回収できたけど、ついぞカメラは見つからず。大切な旅の写真が。(涙 よっぽどカメラ探しにもう一度空身で降りようかと思ったが、「命あってナンボのもんだろ。カメラなんか旭川で買えよ」とおじさんに諭され、断念。ごもっともです。
落ち着いたところでおじさんとにわかパーティを組んで歩き出す。聞けば後のベテランのおじさんとお連れのおばさん2人はなんとか雪渓を渡りきり下山して行った様子。なんだかんだ危険箇所といっても、60代以上の方々が難なくやり過ごしたところでこの失態。へこむわ。と、前方に双眼鏡を持って今降りて来た斜面を一生懸命何か探しているオバサマグループに遭遇。「クマでもいるんですか?」とのんきに聞くと、「違うのよ、あのさ、単独のちょっと若めの男性見なかった?あそこの雪渓に滑落跡が一筋ついてるでしょ?落ちたんじゃないかって心配してたのよ」振り返ると、確かに雪の上にまごうことなきクッキリ直線が・・・「ハイそれ私です、今滑落しました」「ええ〜?!」・・・向こう2、3日は通りがかりの登山者をビビらすことになるだろうな。。。
余計なエネルギーを消耗してすっかりお腹がすいたので、勢い良く流れるポンピ沢を思い切ってブーツを脱いで渡った所で、お湯を沸かしてちらし寿司を作っておじさんとランチ休憩することに。足を冷やして顔を洗ってトマトも冷やして水分補給して、すっかり生き返った。
しかしそこから吹上温泉までの長い長いトラバースは、うんざりするほど登り返しありの雪渓ありの渡渉ありのハイマツ漕ぎありのアリ地獄のような灼熱の砂礫歩きありで、今回の行程中いちばん苦しかったな。吹上温泉に着いた時はすっかり4時をまわっており、次の日は雨振りだとわかっていたので、旭川に戻るのはやめにして白銀荘にチェックイン。温泉で泥と汗をすっかり落とし、パジャマに着替えて、おじさんと缶ビールで反省会。お疲れさまでした。
山降りて肉食って層雲峡のユースに泊まるから最終のバスに乗るというおじさんを見送った後、キッチンで夕食に再び豚骨醤油ラーメンを作って、早々に部屋に引き上げた。相部屋のベッドでこの次の大雪山系をどう歩くか地図を広げて検討していると、「おひとりなの?」と話しかけてきた小柄で上品なおばさまあり。聞けば、白馬からマイカーで登山しに来たという!自分の両親も白馬のどんぐり村に住んでます、というと、なんとびっくり、同じどんぐり村のご近所さんでウチの母親を唐松岳に連れてってくれた人だということが判明!なんたる世間の狭さよ。会ったことはなかったが、そのおばさんのことは毎年ヒマラヤに行くようなベテランさんだと話には聞いていたが、こんな小さな可愛らしい人だとは想像できなかったなあ。楽しくおしゃべりさせてもらいました。
【day3】吹上温泉白銀荘〜白金温泉〜旭川
翌朝、予報通り天気が良くない中、他の人々は早朝から出かけて行く。私はバスの始発が10時なのでヒマを持て余し、隣のベッドで同じくヒマそうにしている女性に声をかけてみる。何と彼女は地元のガイドさんで、今日はこれから車をいったん白金温泉に置きに行ってバスで旭川まで出てお客さんをレシーブするのだという。6-7km先の白金温泉まで行けば旭川直通のバスがあることは知っていたので、恐る恐る一緒に白金温泉まで連れて行ってもらえないか聞くと、快諾してくださった。ありがたい!おかげで白金温泉のお湯にも入ることができた。しかし10時前で町営の銭湯みたいなとこしか開いてなかった。泉質はともかく、地下の窓がないお風呂で。。。。うーん。。。
バスの中でガイドさんに大雪の行程を色々アドバイスしてもらい、お互いの自己紹介のような話をしていると、なんとケニアつながりであることが発覚。彼女は父上の仕事の関係でイランで生まれパキスタンで育ち、父上がナイロビ赴任中は何度もケニアに遊びに行ってサファリもしたんだという。まるで山崎豊子の世界ですね、と言ったら、「実は私旧姓を小倉といいまして、父が『沈まぬ太陽』の主人公のモデルになったんです」だって!ひょえ〜!話のスジは知ってるけど小説も読んでないし映画も見てない自分が偉そうな口を聞いたもんだ。帰ったら速攻で読まなきゃ。
まあ、ひとりで山旅してると色々ありますねえ。
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