夏合宿 槍ヶ岳 北鎌尾根 Berg heil!
- GPS
- 104:00
- 距離
- 43.2km
- 登り
- 2,588m
- 下り
- 2,588m
コースタイム
- 山行
- 2:17
- 休憩
- 0:11
- 合計
- 2:28
- 山行
- 8:06
- 休憩
- 1:09
- 合計
- 9:15
- 山行
- 0:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:00
- 山行
- 10:49
- 休憩
- 1:16
- 合計
- 12:05
- 山行
- 2:07
- 休憩
- 0:25
- 合計
- 2:32
天候 | 14日 曇り時々晴れ 15日 曇り後雨 16日 曇り時々雨 17日 晴れ後曇り 18日 雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
上高地へは一般車両乗り入れ禁止 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・北鎌沢は上部は迷いやすく、浮石が多い ・北鎌のコルから15分ほど下ると水場がある ・北鎌尾根核心部は岩が脆く、落石多発 ・北鎌尾根の残置支点は古いものが多く、使用は要注意 ・基本的に踏み跡が錯綜している |
その他周辺情報 | ・上高地アルペンホテル→外来入浴AM7:00から 600円 ・小梨平キャンプ場温泉→外来入浴PM0:00から 600円 ・北鎌のコル→4人用テント2張ほど設営可能 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
Tシャツ
長袖インナー
ソフトシェル
ハードシェル
ズボン
靴下
グローブ
予備手袋
防寒着
雨具
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
サブザック
行動食
非常食
飲料
水筒(保温性)
食器
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
筆記用具
シェラフ
ハーネス
ヘルメット
確保機
ロックカラビナ
カラビナ
スリング
|
---|---|
共同装備 |
調理用食材
調味料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
調理器具
ライター
地図(地形図)
ファーストエイドキット
針金
ガムテープ
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
ツェルト
ナイフ
カメラ
ポール
テント
テントマット
シェラフ
ロープ
ロックカラビナ
カラビナ
クイックドロー
スリング
ロープスリング
セルフビレイランヤード
キャメロット
ストッパー
カム
ナッツキー
ギアスリング
ナイフブレード
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感想
部の夏合宿としてアルプスのバリエーションルート(クライミングやロープワークなどの登攀技術が必要なルート)を登ることは私の目標だった。個人では何回か行ったことはあるものの、部としてアルプスの登攀系の山行を組んだことがなかった。我が大学の山岳部は2009年以来、アルプスのバリエーションルートを登った記録がなく、近年の夏合宿は登山道縦走がほとんどであった。最近では近郊の岩場である座頭石でクライミングをする部員も増え、沢登りも難易度の高い場所に行くことが多くなり、部としての登攀技術が着実に身についてきた。クライミングジムに通う部員も増えてきている。登攀に興味を持つ部員も増えてきた。そういう訳で、夏合宿として槍ヶ岳北鎌尾根を計画した。このルートは北アルプスを代表するバリエーションルートであり、加藤文太郎や松濤明などの日本の近代登山黎明期の著名な登山家が散っていった悲劇の舞台でもある。
8月14日
この日は松本駅で集合した。北アルプスに何度も行くようになって、お馴染みの場所である。上高地に12:40に到着し、山行を開始した。雲は多いものの、晴れ間も時折見えて、アプローチにしてはいい天気だ。何度も通り、平坦な道が続く横尾までの道のりはもはや作業である。黙々と歩いた。アルプスが初めてのYはアルプスの山の規模の大きさに感動していたようだった。時々、前穂高岳東壁が見えた。いつか登ってみたい壁の一つである。程々の時刻に横尾山荘のテント場に到着し、幕営した。
8月15日
午後に天気が荒れることから、この日は午前2時前頃に横尾山荘を出発した。槍沢大曲から水俣乗越を目指して登る。この区間はかなりの急登で、なかなか苦しかった。以前、高校山岳部の夏合宿でこのルートを下った時にはこのルートは登りでは使いたくないと思ったが、現実のものとなってしまった。水俣乗越からは北鎌尾根が見えた。ギザギザした正に鎌のような尾根は他の鎌尾根とは一線を画する険しさである。水俣乗越から、いよいよ登山道の無いバリエーションルートに突入する。さすがバリエーションルート、道が一気に悪くなる。滑りやすく、ザレザレのルンゼを降りた。途中に雪渓もでてくる。間ノ沢出合から水流が出てくるが、なぜか途中で無くなった。水流がなくなったあたりから少し下ると北鎌沢出合である。濃霧に包まれれば分かりにくいだろう。出合から北鎌のコルを目指して登る。一見、北鎌のコルは近そうに見えるが、急峻なガレガレのルンゼのために、コルまで3時間もかかった。少し登ると左俣と右俣の分岐に着く。水量は左俣の方が多い。右俣は最初は水がないが、途中で水が出ているところがある。右俣上部は急峻な浮石だらけのルンゼで、落石には十分に注意しなければならない。まるでアリ地獄である。どこから迷ったのかはわからないが、コルのやや南側の方に行ってしまった。地形図上には現れない細かい谷や尾根があり、迷い込んでしまったのだ。北にトラバースし、なんとかコルに出る。北鎌のコルでC2とした。明日の天気が最悪であることから、その日のうちに明日を停滞日に決定した。
8月16日(停滞)
朝から雨が降ったり止んだりである。視界も悪い。停滞にして正解だった。近くに山小屋もないのでだいぶ暇だった。午後には水を汲みに北鎌沢右俣を少し下った。コルから15分ほどのところに湧き水を発見する。夕食後は明日の核心部登攀に備え、早めにシュラフの中に潜り込んだ。
8月17日
16日とはうって変わって雲がほとんどない晴天だった。北鎌尾根核心部へアタックする絶好のチャンスだ!北鎌尾根を槍ヶ岳へ向けて登り始めた。最初は顕著な踏み跡があるが、道はかなり悪い。浮石だらけの急なザレ場は落石と滑落の危険を十分に孕んでいる。かなり緊張した。天狗ノ腰掛はテント1張り張れるほどの広さがある。この先にそびえる独標は直登ルートもあるようだが、今回は千丈沢側を大きく巻いた。独標のトラバースもかなり悪く、数100m切れ落ちた谷の方に体を乗り出してトラバースするようなところもあり、かなり緊張させられた。稜線へ戻るチムニーはかなり悪かったのでロープで確保した。北鎌の稜線に戻ると、槍ヶ岳が初めての姿を見せる。ここから悪絶極まりない稜線が始まる。連続する岩のタワーを越えて行く。岩は脆いし、浮石は多いし、両側は切れ落ちているし、尾根は細いし… 緊張感がほぐれるところがない。胃に穴が開きそうだ。北鎌平は唯一、気が休まるところだった。北鎌平からは槍ヶ岳山頂を目指して最後の登りに取りかかる。ゴーロ状の尾根を登り、例の「Berg heil 穂先は近い、気を抜かず頑張れ 」のレリーフから山頂寄りをよじ登って行く。山頂直下のチムニーは見た目は簡単そうだが、取り付いてみるとかなり悪く、ロープを出してスタカットビレイで確保して乗り越えた。クラックにはカムがよく効く。終了点は残置ハーケンと自分のハーケンで構築するが、自分で打ち込んだハーケンが回収できずに、残置してしまった。今度、北鎌尾根を登るクライマーの方はどうぞお使いください。バチ効きは保証します(笑)フィナーレは祠の裏からヒョッコリと山頂に出る。とんでもない所から山頂に出てきた我々は、一般登山道から登ってきて山頂でくつろいでる登山者からの歓声を受けた。「スゲェ〜!北鎌からきたのか!」北鎌から登ってくれば山頂で尊敬の眼差しを受けるという噂は本当だった。ちょっとしたヒーロー気分で気分が良いのやら恥ずかしいのやら、多くの難所を乗り越え登頂した北鎌尾根からの槍ヶ岳の充実感は登山道から登ってきたのとは全く違う。ものすごい達成感だ。山頂で記念撮影をして、登山道を下る。小槍も登攀する予定だったが、視界不良のため断念した。小槍登攀がなくなったので、この日は横尾山荘まで下った。
8月18日
横尾から上高地まで向かう。朝から雨だった。濡れて蒸れて不快極まりない。河童橋には猿が群れていた。上高地アルペンホテルの温泉は朝からやっていたのでこちらに入浴する。入浴後にバスに乗り、山行を終了した。
部の夏合宿としてアルプスのバリエーションルートを登れたことは我が大学の山岳部にとって大きな大きな進歩であったと思うし、自分人身としても憧れの北鎌尾根を登攀できて良かった。一般登山道よりもはるかに困難で危険度の高いバリエーションルートは自分の潜在能力を存分に引き出さないと登ることはできない。だが、それは逆に一般登山道を登る山行よりも、より大きな充実感を得ることができる。これからも大きな登攀を目指して日々、努力と経験を積み重ねていきたい。また、来年もアルプスのバリエーションルートを部の山行で登攀しよう。槍ヶ岳ありがとう、北鎌尾根ありがとう。
Berg heil!!!
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