甲斐駒(黒戸尾根)ーアサヨ峰ー北岳ー小太郎山縦走
- GPS
- 55:40
- 距離
- 36.2km
- 登り
- 5,372m
- 下り
- 4,630m
コースタイム
2日目:北沢駒仙小屋(4:30)-栗沢山(6:00-6:10)-アサヨ峰(6:55-7:05)-早川尾根小屋(8:20)-広河原峠(8:45)-広河原(10:05-10:40)-白根御池小屋(12:35)
3日目:白根御池小屋(3:45)-小太郎分岐(4:55)-肩ノ小屋(5:15)-北岳(5:45-6:05)-小太郎分岐(6:40)-小太郎山(7:40-7:50)-小太郎分岐(8:45)-白根御池小屋(9:25-10:15)-広河原(11:25)
天候 | 1日目:曇り後雨 2日目:曇り後雨 3日目:晴れ後曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:広河原〜JR甲府駅(山梨交通バス)2,000円 |
予約できる山小屋 |
七丈小屋
|
感想
相変わらず天気予報が悪い。私の夏休みの残りの5日間は、ほとんどが雨マークだ。
しかし、テントを担いで、3000m級の山に行きたい。
そこで思いついたのが、前から一度行きたいと思っていた黒戸尾根経由の甲斐駒ケ岳だ。甲斐駒は、登山を始めた3年前に北沢峠から登ったことがあるが、そのときに、黒戸尾根から登ってくる人を見て、いつかは自分もと思っていた。
黒戸尾根は、急登で有名な尾根で、標高差2200mを登りきらないといけない。
どうせなら、七丈小屋に泊まらずに一気に登って、北沢峠まで行ってみたい。
路線バスで行こうとすると、白州到着が9時過ぎになるので、とても無理だが、シーズン中は、とても便利なバスがある。夜行で黒戸尾根登山口に向かう「毎日アルペン号」を使うと、3:30に登山口に着くことができる。これなら、時間的にも余裕がある。
すでに出発前日なので、インターネット予約はできず、電話で確認を取ると、5席空きがあるという。早速、予約を取った。
甲斐駒だけでは、1日で終わってしまうので、2泊3日で、北岳まで縦走する計画を立てた。
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0日目:
秋葉原駅に21時すぎに到着。秋葉原に似合わない登山姿の人がちらほらと見える。
シャトルバスに乗り込み、一度、毎日新聞社に移動した。そこには、大きなザックを担いだ登山者が、100人以上はいただろうか。
ここからは、上高地などに向かうバスも出るため、それらの人が皆集まっているようだ。
私が乗るのは、黒戸尾根の登山口と八ヶ岳の登山口に向かうバスだ。2台に分乗して向かう内の片方は全員八ヶ岳行きで、もう一台の乗客もほとんどが八ヶ岳行きのようだ。
私の隣は運良く空席で、横になって眠ることができた。
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1日目:
3:30、黒戸尾根登山口の駐車場に到着。バスから降りたのは、私を含め4人だけ。いずれも単独行の男性で、年齢も私とあまり変わらなそうだ。
雨はまだ降っていない。ヘッドライトを着けて、駒ヶ岳神社に向かう。神社の左側に入った所に登山口がある。
今回は、2泊3日の予定で、ザックの重さは19kgくらいになっている。
しばらく登ると、巻き道になり、その後、高度差600mほどの急登が始まる。早速の急坂は辛い。肩に荷物が食い込む。うっすらと明るくなってきて、ヘッドライトを外した。
この坂の途中、先行していた男性2人に追いつく。この方たちは車で来たようで、日帰りで黒戸尾根を往復するらしい。
横手からの道の分岐付近で一度緩やかになるが、その後、間髪を入れずに急登が待っている。
刃渡り手前までで、かなり疲れたが、バスで眠れたのと涼しいためか、調子は悪くない。
刃渡りは、特に危険ではない。鎖も付いているし、まず落ちることはなさそう。
黒戸山の北側を巻きながら進むと五合目小屋に向かって下りになる。折角稼いだ高度を、70mほど下げてしまうのでもったいない。
五合目小屋跡地でしばらく休憩。目の前に、登る気を失わせる岩峰が聳えている。これが屏風岩か。
屏風岩は、梯子と鎖の連続だ。特に危ない所はないものの、連続する梯子は、荷を一気に持ち上げるため、疲れる。
屏風岩を登りきって、少しなだらかになった所が、七丈小屋で、8:10に到着した。私が着いたのと同時に、後ろから3人のトレランの人達が上がってきた。
「何時スタートですか」と聞くと「6時」との返事が。ここまで2時間ほどで駆け上がってきたらしい。恐ろしい速さだ(と思ったが、後で調べてみると、トップ選手は、黒戸尾根往復で4時間かからないのだとか。全く想像できない)。皆さん、見た目からスポーツマンという感じで、体つきからして私とは違う。私にも、それだけ体力があれば、テント縦走も楽しいだろうにと思う。
七丈小屋の水場で、冷たい水を頂いて、最後の登りに入る。ここからは森林限界を越え、岩場が連続する。ここで、雨が降り出したので、雨具を着る。
ここからがキツかった。岩場は、段差が高い所が多く、足を掛けてから体を持ち上げるのが辛い。
鎖にしがみつかないといけない所もあって、腕も疲れる。
雨が激しくなってきて、岩が滑るのにも気を使う。何度も小休止しながら登っていくと、先ほどのトレランの人達が下りてきた。雨具を着ていないので、びしょぬれだ。
まだかまだかと登っていくと、ようやく北沢峠からの合流地点に到着した。ここからは、山頂まではすぐだ。
10:10に山頂に着いた。やはり、黒戸尾根は大変だった。私にとっては、「横手分岐までの急登」「屏風岩の連続梯子」「七丈小屋からの岩場の急登」の3つが辛かった。
雨が降るなか、岩の陰で昼食を摂っていると、北沢峠からの登山者が10名程登ってきた。
雲で展望は全くないが、黒戸尾根を登ったことで十分満足して、すぐに北沢峠に下ることにする。
下りの途中、駒津峰方向を見ると、カラフルな雨具を身につけた無数の登山者の姿が見えた。見えるだけでも50人くらいいたかもしれない。
駒津峰に向かう途中で、雨が小降りになり、アサヨ峰の後ろに聳える北岳の雄姿が確認できた。
今回は、あそこまで行きたい。
黒戸尾根を登りきったので、すっかり安心していたが、そこから北沢峠に下りるまでの、岩場の連続が辛かった。以前ここを通ったときは、空身だったので、楽しかった記憶しかなかったが、テントを背負っての岩場の下りで、足裏の痛みが激しい。雨に濡れた下りの岩場は、スリップに気を使う。
テント場に着いたときには、疲れがピークに到達していた。テントを張って、中に倒れ込むと、3時間程、目が覚めなかった。
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2日目:
2日目は仙丈ヶ岳を登って、仙塩尾根を縦走して、両俣小屋に下りる予定だった。しかし、天気予報では、今日も1日雨となっている。計画では、3日目に左俣沢を通って北岳に登る予定だったのだが、増水時には左俣沢コースが通れなくなるのが心配で、2日目の予定を変更する。
今日は、栗沢山、アサヨ峰と縦走して、一度広河原に下りて、そこで北岳に向かうか、そのまま帰るか決めることにした。
朝起きると、雨は降っていない。昨晩の雨でドロドロになったテントを撤収する。
栗沢山までは、樹林帯の中を700mほど登る。700mの登りは普通なら大変だが、前日の黒戸尾根と比べたら、全く苦にならない登りだ。
それよりも、靴の中に水が浸水してきているのが気になる。
私のゴアテックスの靴は、手入れが悪いせいか、どうも1日しか雨に耐えられないようで、1日雨に降られると、夜中のうちに浸透してきて、翌日には水が靴の中に入り込んでしまう。そして、一度、水が入り混むと、後は、どんどん浸水するようだ。
雨露に濡れたハイマツ帯を登っていく。雨具の下を着けないとズボンがびしょぬれになる。山頂の手前の岩場は、少し大変だ。
栗沢山に到着する。意外と天気は悪くない。仙丈ヶ岳には日が射していて美しい。昨日登った甲斐駒の岩峰の眺めもすばらしい。北岳や鳳凰三山方面は、雲で見えず。
ここからアサヨ峰に向かう。この道は、岩陵とハイマツ帯だが、かなり大変だ。歩くという感じではなく、岩を伝っていく感じで、油断ができない。
とたんにガスが出てきて、視界が20mくらいしか利かなくなった。悪銭苦闘の末、アサヨ峰に到着。ガスで何も見えず、方向感覚が掴めない。
コンパスと地形図で進む方向を確認して、早川尾根を下りるが、まだまだ岩場が続き、大変だ。
早川尾根小屋の手前で、ようやく樹林帯に入り、楽な道になった。
と、登山道の真ん中に、ずんぐり体型の、人を怖がらない鳥を発見した。私が50cmくらいまで近づくと、ようやく少し後退する。この見たことのある鳥は、...鳩だ。そこら辺の公園にいそうな鳩が、なぜか2500mの高所にいる。しばらく鳩を観察する。足に赤いリングが付けられている。
鳩と別れて進んでいくと、今度は犬の鳴き声がする。どうも、高山の中にいる感じがしない。
しばらく進むと、犬は、早川尾根小屋で飼われている犬と判明。
早川尾根小屋の水場で、冷たい水を頂いて、広河原へ下ることにする。
この道は、木の根が多く滑りやすい。途中、3回転倒して泥だらけになって下る。
車道に下りてから、広河原バス停の手前のベンチで、長い休憩を取る。幸い、今日はまだ雨に降られていない。日差しも出てきている。靴を脱ぎ、びしょびしょになった靴下を昨日履いた靴下と交換する。
ここでバスに乗ってしまえば、今日の夜は快適な家で過ごすことができる。どうするか、迷っていると、続々と登山者が吊橋を渡って、北岳に向けて登っていくのが見える。60歳を越えていそうな人もちらほらと見える。
それを見ていたら、登る気力が湧いてきた。今日は、白根御池小屋まで行こう。
吊橋を渡り、淡々と樹林帯を登っていくと、雨が降ってきた。
小屋に着いたときには、足裏の痛みがかなり酷く、しばらく動けなかった。
この小屋は、新しくとても清潔だ。トイレは水洗になっている。
雨の中、テントを張り、3時間ほど昼寝をして目覚めると、テントが浸水している。
どうも張り場所が悪く、水の通り道になっていたようで、少し離れた場所に張り直すことに。
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3日目:
今日は、テントを張ったまま、空身で小太郎山と北岳に向かうだけなので、気が楽だ。
3:45に出発。曇っていて星は見えないが、天気予報では、今日は雨に降られることは無さそうだ。
暗い中、草スベリの急登を登っていく。ザックには、水くらいしか入っていないので、とても快適に進む。
小太郎山の分岐まで来てみると、雲を突き抜けたようで、青空が広がっている。今回の山行で初めての晴天で嬉しくなる。
北岳の雄姿が間近に見え、小太郎山も見える。雲海が一面を覆っているので、下界は曇りだろう。
小太郎尾根が、雲に飲み込まれようとしている。稜線を東から西に向けて、ガスが乗り越えていく幻想的な光景を見ることができた。
ガスが、少しずつ登ってきているので、ここから小太郎山に向かうと途中でガスに飲み込まれるだろう。それよりは、快晴のうちに、北岳に登った方が良さそうだ。
北岳に向かう。空身のため、ぐんぐんと登ることができる。肩ノ小屋で泊まった人達の間をすり抜けて北岳に向かうと、既に山頂に行ってきた人とすれ違う。
5時45分、誰もいない山頂に到着。山頂からは、360°の眺めがほしいままだ。
辺り一面、雲海で覆われていて、そこから名峰が頭を出している。八ヶ岳、鳳凰三山、間ノ岳、農鳥岳、塩見岳、富士山が確認できた。遠くには、奥秩父の山々も見える。
昨日帰らなくてほんとによかった。とても気持ちがいい風が吹く山頂で、20分ほど過ごして、下ることにする。
小太郎山の分岐に戻ったときには、すでにガスに覆われていた。
ここから小太郎山に向かう。同じ方角に2つの尾根が延びる、珍しい二重山稜になっている西側の尾根を下っていく。
地図を見ると、ここから登っていくようにも見えるが、この分岐点よりも、小太郎山の山頂の方が標高が低い。ここから100mほど下って、そこからは、アップダウンを繰り返して行く。
この道は、岩とハイマツの道で、歩き辛い。所々、飛び出した岩峰は、西側を巻いていく。道は、所々の岩に赤ペンキで○印や矢印が付けられていて、大きく迷うことはない。
アップダウンを何度も繰り返して、ようやく小太郎山の山頂に到着。よく見る丸太杭と三角点がある以外は何もない。ここに来る人は、北岳に向かう人の1/100くらいかもしれない。小太郎尾根の往復では、誰にも遭遇しなかった。
ガスで何も見えないせいか、ちょっとした秘境に来た気分だ。
ここからは来た道を戻って、白根御池小屋に戻った。
テントを撤収して、広河原まで下山する。今日は、全く疲れていない。
バスの時間までの1時間20分ほどの時間、広河原の河原に下りて、巨岩の上でのんびりと過ごした。
今回の山行は雨に降られて大変だったが、終わってみれば、贅沢な夏休みだったと思う。
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