【第二次凌雲作戦】奈良田〜農鳥岳〜間ノ岳〜北岳〜広河原【甲75.3】
- GPS
- 13:10
- 距離
- 26.5km
- 登り
- 3,450m
- 下り
- 2,765m
コースタイム
- 山行
- 11:42
- 休憩
- 1:28
- 合計
- 13:10
天候 | 曇り→雲の多い晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
奈良田〜大門沢小屋:沢の渡渉が数箇所。夜間は道が分かりにくい所も。 大門沢小屋〜大門沢下降点:タダでさえガレている道が段々と急登に。ここがクライマックス。 大門沢下降点〜西農鳥岳:ガレ場が続くが基本巻き。 西農鳥岳〜間ノ岳:岩のガレ場を200mほど急降下した後、間ノ岳へ300mの上り返し。 間ノ岳〜北岳山荘:ガレ道は続くが、間ノ岳を過ぎれば比較的楽。 北岳山荘〜北岳:最後の山場はまたしても急登。 北岳〜二俣:北岳〜肩の小屋、小太郎尾根分岐〜二俣と急降下を織り交ぜつつ主に岩の道を下る。 二俣〜広河原:沢水が道に流れ込んで水浸し。渡渉箇所もあり。 |
その他周辺情報 | 奈良田の里温泉 |
写真
感想
※本山行は、元より日帰り縦走を企図し、満を持して臨んだ30歳代男が、天候に恵まれ完踏できたものであり、参考にあたってはタイトル右側のルート定数に留意されたい。
【経緯・計画】
前々週に北アルプス、前週に中央アルプスと連週の高山山行に、この週末は体力と資金温存のため、関東圏内で静養する予定だった。しかし、金曜夜の天気予報が全てを変えた。天気予報によると、この週末はカラッと晴れ渡るものの、以降は9月いっぱい曇りや雨の日が多いとのこと。ということは、この週末静養したところで休養明けに山行日和は待っていない可能性が高いということだ。となれば、来月度分の予算を前借してでも山行を決行し、その後に休養に入るのが賢明だ。
しかも、大本命である白峰三山方面の予報が頗る良く、この期を逃せば、好機再来は当分の間望めないと思われたことが、方針転換を即決させた。
天佑を確信し、白峰三山縦走へ。
【前歴】
平成24(2012)年8月 第一次凌雲作戦
睡眠不足と暑さで稜線に達したところでバテバテ。農鳥岳までとする。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-213211.html
平成26(2014)年9月
またしても睡眠不足と暑さにより体調不良。農鳥岳までとする。
https://www.yamareco.com/modules/diary/7449-detail-80594
平成27(2015)年9月
共同山行。またまたしても睡眠不足により、広河原〜北岳に変更する。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-720609.html
【山行概要】
0:山行前夜
今回こそは睡眠時間を十分に取るため18時前には現地到着。車はうるさい犬達や沢の流れから離れた所に駐車し、温めの温泉にゆったり浸かって熟睡できる下準備。結果として6時間程度の深い眠りを取れた。これが過去山行(浅い睡眠2,30分)との大きな差であり、今回山行無事完歩の大前提であることは言うまでも無い。
1:奈良田〜大門沢小屋(距離7.2km 標高差884m 平均勾配12.28%)
(山行開始)
いつもは日没までに下山すれば良い行程も今回は違う。なんとなれば、広河原発の最終バスは16時40分。日没よりも1時間30分早く下山しなければならない。一方で、広河原発であれば、終バスを気にすることなく歩け、また、巷間そちらの方が楽とも言われる。しかし、3000mの稜線を目指すのに6時30分山行開始は遅過ぎる。奈良田発にこだわる理由はここにある(泊山行にすれば良い話だが、日帰りしたかったので…)。
終バスの時間から逆算して2時過ぎに山行開始。丸山林道入口には獣対策らしく犬が飼われていて、それが夜遅くになっても吠えまくるのだが、吠えかけられることなく静かな山行開始となった。
(変わった道)
奈良田からのアプローチは3年ぶりだが、前回の登山口が通行止めになっていることにまず面食らう。「あれれ〜?」と思いながら先に進むと、以前渡った長い吊橋の下に出て、さらにその先まで工事が進んでいるのが見て取れた。その先にも通行止めがあり、いよいよ戸惑うが、何とか道を見出だして前進。夜間山行の場合、このように進むべき道に迷うことがある。特に、今回のように道が大きく変わってしまった場合や初めて来た所では尚更だ。分岐や目印の有無を確認し、そこから冷静に頭を働かせる必要がある。
(夜間山行)
発電所取水口と吊橋を経ていよいよ道は山の中へ。前の週に南駒ヶ岳へ未明山行したこともあり、夜陰に乗じての山行への恐怖感は薄らいでいたが、本来夜間山行は怖いもの。道中、幅のある尾根や沢の渡渉があるので、強力なライトを携行する等しないと道に迷うだろう。さらに最悪なのは、ただでさえ暗闇の中を無闇にあちこち動き回ること。夜間山行は冷静かつ慎重に歩を進める必要がある。また、おかしいと思ったら立ち止まって辺りを見渡すこと。そんなふうに歩いていたら、若者2人組が追い付いてきた。後ろに迫るライトが気になって前方の注意が散漫になるので、先に行かせる。また一人になったが、心は楽になる。
2:大門沢小屋〜下降点(距離2.6km 標高差1098m 平均勾配42.23%)
過去の山行においては大門沢小屋で休憩することなく、稜線への後半戦に突入していたが、それを反省して今回は小屋の隅で腰を下ろし栄養と水分を補給。
改めて見てみれば、ここから稜線までは平均勾配が40%以上。100m進むごとに40m上昇する急登だ。ここが今回山行のクライマックス。ここを乗り切ってなお余力があれば縦走も可能と言える。
睡眠を十分取ったはずの身でも結構歩くのが辛く、足を一つ運ぶのも非常にしんどい。睡眠不足で熱射を浴びながら歩いた以前の山行でへばるのは当然だったが、今回もついつい「これはまたしても農鳥でおしまいか?」と弱気が出る。それを打ち消すべく一歩一歩ゆっくり焦らず歩くことに集中する。ゴーロ沢上段の広場から稜線までもう少しと見えて、まだまだ先は長いので、最後まで気を抜くべからず。耐え抜けば、富士山が姿を見せて努力に報いてくれるだろう。
3:下降点〜農鳥岳(距離1.1km 標高差201m 平均勾配18.27%)
稜線に上がると真っ白な世界。風もやや強く寒い。この寒さは体のオーバーヒートを抑えてくれたが、この状態が続いた場合、山行の成功は覚束ない。早川町の天気予報には雲マークもあったので、南方は雲多く、北上すれば雲が晴れるという算段ではあったが、とりあえず、空模様を見ながら西農鳥まで歩を進めることとした。
4:農鳥岳〜農鳥小屋
山頂部ではやや強い風を岩陰に身を潜めて防ぎつつ、雲の中を歩く。身体が灼熱の陽光に焼かれてフラフラになりつつ歩いた以前の山行とはうって変わって、身体は快調、足もよく前に進む。
天気だけが心配だったが、対向者との会話の中で天気が晴れるという確信を得る。西農鳥直後からは日の当たる農鳥小屋が見え、この先の展望明るしといよいよ士気も上がって勇躍農鳥小屋へ。
5:農鳥小屋〜間ノ岳(距離1.7km 標高差387m 平均勾配22.76%)
農鳥小屋と言えば親父が有名らしい。西農鳥から下りながら、親父に捉まった場合のことを考えて受け答えの練習をする。また、下っている所を観察されている可能性もあることから、危なげない歩き方に努める。
そうして緊張しながら到着した農鳥小屋だったが、幸か不幸か、彼と出会うことなく通過。間ノ岳への300m近い上り返しに入る。稜線に乗ってから休みを小まめにとったことと、雲が晴れたことでガレ場の急勾配も精神的には楽。しかし、まだまだ道半ばであるので、ゆっくりと山頂との間合いを詰めていく。
6:間ノ岳〜北岳山荘
この間はきつい上りも無く、雲も控えめで今回山行内で最高の時間。仙丈ケ岳、北岳、鳳凰三山にかかる雲も薄れ、心も晴れ渡る。今回山行は十分に報われた。真にありがたし。
7:北岳山荘〜北岳(距離1.3km 標高差313m 平均勾配24.08%)
これが本当に最後の山場。大樺沢や吊尾根からやってきた山行者も合流し、山道も賑やかになる。平均勾配も稜線上では最も急。岩場や階段をよじ登る箇所もあるが、全身で昇ることになるので、足で登るよりは楽。間ノ岳以降、比較的歩きやすい緩やかな稜線だったこともあり、身体も落ち着いて意外と無難に歩くことができる。しかし、広河原から延々歩いてきた人にとっては、引き続きの急登が心身に堪えることになるだろう。
8:北岳〜広河原
2年ぶりの北岳は雲を被ってしまったが、それでも満足。周囲の山々の展望は稜線上で十分に得られた。容易ならざる縦走を、実際に容易ではなかったが、何とか北岳までたどり着いた。その山行過程を振返りつつ静かな山頂で感慨に耽る。
下山は雲の薄らいだ仙丈ケ岳や鳳凰三山を眺めながら。甲斐駒は半分しか見えなかったがまた来れば良い。水分も十分に残っていたので、白根御池経由ではなく、未踏の二俣方面へ。14時を過ぎると対向者もいなくなるが、皆、バスの時間に合わせて下山する時間帯だ。
大樺沢に下ると山のあちこちから道に水が流入し、沢化する箇所が多数。渡渉やガレ場、えぐれた箇所もあり、最後まで気が抜けない。しかし、沢沿いの道や渡渉は大好きなので、清冽な水の流れに縦走の疲れもどこへやら。心身ともに余裕を持って広河原に下ることができた。
【総括&成功のポイント】
まずは過去の山行について深く反省する。5年前、3年前の山行は、「無知なる者、恐れを知らず」、「昔はものを思はざりけり」で、間違いなく蛮勇山行だった。30分にも満たないウトウト睡眠で3000m峰を目指すなど、若さでカバーできただけで、実際は非常に危険な行為だったと言える。その点、2年前の北岳山行では、ちょっとだけ賢く立ち回った。
そして今回である。今回成功の要因を探ってみよう。
◇天候◇
過去山行においても天気の良い日を見計らって山行を期した訳だが、今回は暑過ぎず、寒過ぎず、日射強からずというベストなコンディションだった。また、長丁場の山行となれば、終盤まで天気が持つということも重要なところ、湿気の多い真夏と違い、秋の風が吹く稜線においては、夕立の心配も少なく、当初稜線を雲が覆っていたことも疲弊を防ぐというポジティブな役割を果たした。
◇睡眠◇
今まで何回となく泣かされてきたのがこれである。今まで何故寝られなかったのか顧みると、もちろん心の緊張ということもあっただろう。その他、奈良田特有の事情として、湿度が高い、犬が吠える、沢音が大きい、下が砂利なので車が来るたびに音を立てる、といった睡眠阻害要因があった。普段からさほど寝ない人は別として、平常どおりの睡眠時間を確保することが山行の成功、安全な山行には必須である。
◇休憩◇
過去山行においては、勢いに任せて登りに登り、最終的にへばって休むという傾向があった。それを踏まえ、今回は意識的に休憩を適宜取得する。特に、大門沢小屋以降は非常な急傾斜。焦ったってしょうがない。休み休み進むのが成功の条件だ。
◇余裕◇
以前、速めに歩くのに慣れていると、進行が遅いことに精神的打撃を受けるという趣旨のことを書いた。それはある意味驕りの結果とも言えるわけだが、そもそも乗鞍岳でもなければ3000mの稜線に簡単に到達できるわけがない。そして、アルプスのコースタイムは大体泊山行前提なので、日帰り山行者は瀕死の状態でもなければコースタイムより速く進行するのである。従って、そもそも時間がかかるコースだということ、そして、どんなに歩みが遅く感じようともコースタイムよりは速く歩いているんだと認識することが、一種の気休めとなる。
また、夜間、道に迷う時があっても、心に余裕があれば、一旦立ち止まったり戻ったりすることもでき、最終的に道は開ける。余裕無く焦っていたりすると、強引に道無き道を突破しようとしがちであるが、それは遭難予備軍と言うべきであり、そもそも夜間に山中に立ち入るべきではない。
とまあ、こんなところ。それにしても三週連続で北・中・南とアルプス山行を修めることになろうとは夢にも思っていなかった。これも偏に天のおかげ、山の恩寵であろう。まことにありがたいことだ。ありがたいことだ。
〜 三連休は休養 〜
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