南アルプス深南部 リンチョウ沢
- GPS
- 80:00
- 距離
- 32.8km
- 登り
- 3,407m
- 下り
- 3,422m
コースタイム
9/10 幕営地(5:46)−千頭山(6:26)−柴沢吊橋(8:19)ーリンチョウ沢出合(8:30~9:00)−リンチョウ滝(11:22)−ダルマ沢二俣(13:33)ー1370m幕営地(13:55)
9/11 幕営地(5:00)−第1ゴルジュ(5:42~7:20)−第2ゴルジュ(8:16~8:40)−リンチョウ沢源頭(11:30)−光岳〜加加森山間の稜線2460m地点(12:20~12:40)−加加森山(14:27)−鹿の平(15:24)
9/12 鹿の平(6:16)−池口岳登山口(9:41)
過去天気図(気象庁) | 2017年09月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・ダルマ崩の通過 ・リンチョウ滝の巻き ・第1ゴルジュの巻き |
写真
感想
9月9日 くもり時々晴れ
池口岳登山口にはすでに4台ほど先客がいた。池口登山口から車で少し登り、池口小屋の脇に駐車した。車は小屋の周りと登山口付近にそれぞれ3台くらい駐車できそう。身支度をし、8:50に出発。約6時間で池口岳南峰に到着。
ここから南東方向へ千頭山に続く尾根を下降する。踏み跡は極端に薄くなる。コンパスを合わせ、たまに現れるピンクテープに導かれながら下降していく。
南峰から約160m下りたところで一転、2212mピークから南西へ延びる尾根に進路を変える。この先はダルマ崩という岩壁があるため、尾根通しに下るのは難しいようだ。そこで、多くの人は2212mピークから南西に延びる尾根を一旦下降し、トラバースして元の尾根に戻るルートを取ることで、ダルマ崩れを迂回するらしい。自分たちもこのルートに従った。下りていくとこの南西側の尾根にもピンクテープが付けられている。約110m下ったところでピンクテープに導かれ、トラバースを開始する。かなりの急斜面で、悪い。途中、8mほどの懸垂下降を交えて元の尾根に戻った。見上げるとダルマ沢の白い岩壁が大きい。
ここで、ミスをしたことに気付く。この日の幕営予定地の猟師の泊場を通過してしまったのだ。どうやら2212mから南西に延びる尾根をさらに下ったところが猟師の泊場だったようだが、もう遅い。時刻は16:00を回っている。水は補給しなくてもギリギリ足りるだろうと判断し、次の幕営適地まで進むこととする。
その先の2060mは西側をトラバースして通過した。メンバーの情報によると、ここは尾根通しに行くと地形図には無い岩壁に阻まれるらしい。トラバースを終了して尾根に戻ると、ちょうどテントが張れるスペースが見つかった。2040mの尾根の突端部で、地形図でも等高線の間隔が広くなっていることが分かる。文句ない幕営地で、この日はここで幕営した。夕食は白米とカレー。
9月10日 晴れ
朝4:30起床、5:46出発。樹木に覆われた尾根を40分程度で千頭山に到着した。この区間は比較的平坦で歩きやすかった。かつて左岸林道から登山道が整備されていたためか、山頂のプレートは真新しい。
千頭山からさらに南西へ下るが、倒木が多くなりさらに踏み跡が分かりにくくなった。標高で大体1700m・1450m・1300mと3回尾根の分岐があり、下降の場合は注意が必要だ。
1300mから下は尾根をたどれば良いというわけではない。そのため読図が難しいと考えていたが、ここから木道とスロープが現れた。かつての登山道の名残だ。崩壊は進んでいるが、何も無いよりははるかに歩きやすい。ありがたく利用させていただき、柴沢吊橋に出た。
これまでにも怪しい吊橋はいくつか渡ってきたが、自分にはこの柴沢吊橋が一番恐ろしかった。途中、足元でバキッと木材が割れたときは生きた心地がしなかった。
他の2人は難なく渡っていたが…。ちなみに増水などが無ければ、一度柴沢に降りて渡渉をすることも出来る。その方が無難かもしれない。
対岸の柴沢小屋は畳が敷かれ、かなり快適そうだった。小屋の近くから簡単に河原に降り立つことができ、そこから柴沢沿いに少し河原を歩けばリンチョウ沢出合だ。
時刻は8:30。池口岳登山口から合計10時間以上かかったことになる。柴沢とリンチョウ沢二俣の河原で入渓準備をした。休憩も含めてゆっくり支度をし、9:00に遡行開始。
簡単な渡渉を繰り返しながら遡っていく。ちょっとした淵やCS滝を越えていくと、ゴルジュっぽくなった。美しいところだった。やがて大きなCS滝に行く手を阻まれた。両岸は急で巻きは面倒と判断し、CS滝の右壁を空荷でリードした。欲しいところにホールドがある感じで、卦蘢度に感じた。抜けてからはカムでロープを固定し、もう1人アッセンダーで登ってもらった。2人で3人分の荷上げをし、最後の1人をATCでビレイ。無事通過した。
さらに行くとリンチョウ滝。滝の左右を広く岩壁に守られた要塞のような滝である。滝右側にはフレークがあり、そこが唯一の弱点に見えた。だが、滝の抜け口では左足を水流に突っ込む必要がありそう。水の流れが強く、難しいと判断しここはパス。少し戻って左岸に弱点を見つけた。左側のルンゼと右側の泥の斜面と2通りルートが見える。ルンゼは見るからに脆いので、右側の斜面を選択した。上がどうなっているか分からないので念のためロープを出す。ビレイ中にゲンコツ大の石が落ちてきて驚いた。ここを登ると、右側から回り込んで自分たちの真上をクライマーが通過するので注意が必要である。自分はフォローで登ったが、沢登り特有の泥壁の登攀で、リードは怖そうだと思った。幸い木で支点は取れる。傾斜が緩んだところをトラバースし、簡単なクライムダウンで落ち口に出た。
ここから上は沢の雰囲気が変わる。傾斜が増し、巨岩が目立つようになった。弱点を探して巨岩の間を進んでいくが、ルートファインディング力が試されるところである。ロープを出すほどの難所は無かった。
これを越えると一転、しばらく平坦な河原が続く。特にダルマ沢との二俣付近は、深山にこんなに広い場所があるのかと感心するほどだった。青空の下、快適に幕営地を目指した。
河原が終了するところで、天気もいいので荷物を乾かした。さらに少し進んだところに段丘状になり木が生えている平坦地を発見。日当たりは悪いが増水の際に河原より安心だろうということで、こちらにテントを張った。対岸から小さな沢が流れ込んでおり、水の確保もできる。リンチョウ沢の水をそのまま飲むには、まだ流れが大きすぎる印象だった。このあと、自分は食事の支度をした。メニューは白米と鍋。メンバーの1人は釣りに行ったが、坊主で帰ってきた。魚影も皆無で上流に来すぎたのでは、とのこと。ちなみに自分は釣りに関しては全くの未経験者。
食事を済ませ、ラジオで天気予報を聞き、19:30ころ就寝。明日の天気はくもりで、夜遅くから雨が予想されていた。
9月11日 くもり
この日も先は長い。沢にしては早いが、3時半起床5時出発。ヘッドランプで遡っていくと、第1ゴルジュの入口に到着。ヘッドランプは必要ないがまだ薄暗く、ゴルジュ中は真っ暗に見えた。
とりあえず空荷で偵察に行くことにした。釜に入りゴルジュ入り口の2m滝を越え、奥の様子を伺った。朝一で釜につかるのはやはり寒い。奥には釜を持った5mクラスの滝がさらに2つ続いており難しいと判断、巻きを選択した。
メンバーの1人が左岸巻きを主張したが、左岸は急なうえ、途中にルンゼも入っており不可能に見えた。話し合いの末、ここは少し戻って右岸を巻くことにする。
念のためロープを出して右岸を登った。30mロープで3ピッチ斜面を登ると傾斜が緩んだ。2,3ピッチはロープをしまうのが面倒で一応付けておいただけで、ノーロープでも問題ないだろう。尾根を乗越し、獣道を拾ってトラバースを開始した。繰り返し蹴り込んでステップを切り、木の根をつかみながら慎重に進んだ。足元は切れ落ちており、ミスは許されない。しばらくトラバースすると沢に近づいたので、木の根を支点に15mほど懸垂し、沢に戻った。やはりゴルジュの巻きは大変だ。第1ゴルジュの通過だけで1時間半以上を費やした。
第1ゴルジュを抜け、50分ほど進むと第2ゴルジュ入り口に着いた。出来れば第1ゴルジュのような大高巻きはもう避けたい。右岸をへつり、1mほどの幅の淵を越えると4mほどの釜を持った滝が現れた。これは無理かなと思ったが、とりあえず滝に近づいてみた。よく見てみると意外に登れそうだ。釜も深くないし、ホールドもつながっているように見えた。ここは直登を選択し、ロープを引いて空荷で滝に取り付いた。右壁に右手、右足と順にステミングをしながらそろそろと左足を水流の中に進めていく。そのうちに右壁に良いホールドが見つかったので、そのまま体を引き上げた。左手が抜け口のガバホールドに届いて一安心、滝の上に抜けた。
滝の上のクラックにカムを決め、セルフを取って後続を肩がらみでビレイ。まず1人登ってもらう。2人がかりで荷上げをするが、自分のザックがうまく上がらず一度断念。ロープにアッセンダーを装着して再チャレンジすると何とか上がった。最後の1人も肩がらみでビレイし、無事通過。通過に要した時間も20分程度。ただし、ゴルジュの規模から考えて、巻いても第1ゴルジュほど大変ではなかったと思う。
このあとは大きな難所も無く、ぐいぐい高度を上げた。第3ゴルジュも知らない間に通過してしまったようであった。左から大きな枝沢を迎えると、ガレ沢となり傾斜も増した。とにかくガレた沢をつめていくと、快適な小滝が連続するようになる。水は冷たく、長く触れると手が痛いほどだった。標高2130mあたりで源頭となった。
沢の水で乾杯し、大きな沢を登り切った達成感を味わった。長く留まると寒いので、10分ほどゆっくりして出発。奥地の沢だけに、再び来る機会があるか分からない。名残惜しく感じた。
簡単に右側の尾根に取り付くことができ、沢からの脱出には苦労しなかった。あとはひたすら急登と藪漕ぎ。途中からは、右手に大ガレに沿って登った。光岳西面のガレで、地形図でも確認できる。左側からもガレが迫ってきたときは内心焦ったが、樹林帯が途切れることは無く、難なく通過できた。源頭から約1時間の登りで、光岳近くの稜線上2460mの辺りに出た。稜線はガスの中であった。
沢装備から通常の登山装備に切り替え、加加森山に向かって下った。明瞭な登山道はまるで高速道路。ガスの森を楽しみながらのんびり歩いた。メンバーの1人が登ったことが無かったので、加加森山にもピストンをかけた。さらに下って、鹿の平にテントを張った。
この日の夕食はシチューと白米。翌日の予報は雨で、この日の夜から雨が降り出すとのことだった。
夜はテントをたたく雨音で何回か目が覚めた。
9月12日 雨
朝5時に起きると予報通りの雨。しかも結構強い。予報によれば雷も心配されるとのことで、自分はしばらく停滞した方が良いと主張した。しかし、あとの2人のメンバーは早く下りてしまいたい、という雰囲気がダダ漏れである。たしかに気持ちは分かる…。
結局2人に押し切られる形で、6:16に下山開始。ずぶ濡れになりなりながら3時間20分ほどで池口岳登山口に到着した。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する