北岳〜間ノ岳 標高日本第2位と4位の白峰二山を繋ぐ天国に一番近い稜線歩き
- GPS
- 31:00
- 距離
- 17.5km
- 登り
- 2,390m
- 下り
- 2,367m
コースタイム
-北岳山荘15:50
10/9 北岳山荘6:00-中根白山6:40-間ノ岳7:40-北岳山荘9:10-出発10:00
-八本歯のコル11:20-白根御池小屋13:30-15:00広河原
天候 | 8日)晴れ〜ガス、風有り 9日)絶好の快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2011年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス タクシー 自家用車
バスor乗り合いタクシー。タクシーは一応定刻ありますが、定員に達し次第出発してくれるようです。広河原〜芦安のバス最終は16:10です。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
台風の影響で大樺沢コースは通行止めです(通過してきた方のお話では、橋が2〜3本流され登山道も崩壊、余程コースを熟知している人で無いと道迷いは必至、奨められない、との事でした)。 右俣コース〜草滑りコース特に危険はありませんが、最初から最後まで急登で体力勝負です。森林限界を超え稜線に出てからは、風があるとかなり寒いです。肩の小屋手前で1箇所、北岳山頂手前で1,2箇所程、岩場の中でもチョッピリ急なトコが出ます。 北岳〜山荘までの下りは、転落注意の案内出ていますが、落ち着いて進めば問題ありません。 山荘〜間ノ岳は、片道1時間半の岩場通過(尾根の少し下を巻きつつの岩場トラバース、が主)です。その間北岳山荘で荷物預かってもらえました。 山荘〜八本歯のコルでは、高度感の高い場所で木橋上を渡るトラバースで緊張感あります。山頂からの分岐を過ぎると岩場の下りです。結構大変です。 八本歯のコル〜二俣はまずは梯子の連続から、その後浮き石に注意です。 |
写真
感想
前日朝までは、大菩薩峠で知り合った山友さんと、三本槍&会津駒の予定でしたが、彼が仕事で都合がつかなくなったとの事で、急遽時間が空きました。
絶好の晴天なので、プロフィールにも書いてますが「鳳凰山と南アルプスの山々」が今年のメインというのもあり、予定が合わず行きそこなっていた北岳に行く事にしました。
前日夜、仕事終わって帰宅後、まとめておいた荷物を持って芦安駐車場へと向かいました。今回はいつもより短時間長距離山行になるので、
非常用のツェルトとシュラフカバー&マットにして、パックウェイト9kgまで絞りました。
靴も革のアルパインブーツだと両足で約1.6kg、ガチガチソールのマウンテンブーツで1.3kgに対し、ウルトラライトなトレッキングシューズだと
0.8kg(SuperFeetインソール込み)。
ソールは前者に比べると柔らか薄めですが、SuperFeetが結構ガッチリしてるので、多少の補強のシャンク代わり?ぐらいにはなるかなーぐらいのつもりで、軽くする代わりに自分で足置きは気をつけると決め、こっちを選択しました。
夜中の3時前、芦安第一駐車場に着くと既に満車に近くビックリ。
やっぱ連休前だと多いです。でも数台は空きがすぐに見つかったので、車を停め車中泊セットを広げ、仮眠を取りました。
朝5時は流石に眠いので、朝7時の乗り合いタクシーに乗るつもりで6時半頃起き、ガッツリ弁当を食べ本日の山行に備えます。
もう第一陣が行っちゃったみたいで7時にはタクシーが居らず、結局7時20分頃のに乗りました。南アルプス林道を走るタクシーの窓から向こうを見ると、明るい朝の光の中に、白根三山が大きくそびえていました。
あの稜線上の小屋まで行くんだな…と気合入ります。
広河原に着き、出発は8時過ぎ。インフォーメーションセンターで小屋の情報や道の情報を聞いてから出ました。まずは、例の吊橋を渡る所からスタート。
これから登るんだな、という気になってきました。出足30分はゆっくり登ります。
大樺沢ルートは台風で道が壊れ通行止め、との事で、右俣ルートを上がりました。
樹林帯を歩いていると、段々結構な急傾斜になってきました。丹沢の大倉尾根かそれ以上の傾斜はありそうですが、これが後に頂上までずっと延々続きます。
樹林を登り続けていると、木の梯子というか階段というかその間ぐらいのものも
出てきました。まー標高差を考えれば、このぐらい急な登りなのも致し方なし、です。
第1ベンチ、第2ベンチ、と高度を上げていき、歩き始めて2時間半程、暫くすると山腹を巻いていく平坦な道に出ました。ちょっと癒されます。
白根御池小屋まで来ると、急に賑わっていました。色とりどりのテントが張られていて、あちこちで人が休憩を取っています。
振り返ると、7月に登った鳳凰山〜高嶺、白鳳峠の下りゴーロが見えています。丁度ゴーロの辺りが目の高さ、結構登ったな、という感じでした。
先はまだまだ長いので、休憩もそこそこに、草滑りルートに取り付きました。
先ほどまでの癒しの平坦路のペースで行くとバテバテになるのが目に見えている500m直登の急坂なので、ペースを再度落とす事にしました。
しかしまあ単調な感じで延々道が続いています。紅葉にはまだほんの少し早そうで、ほんのり色付く程度の草が繁る中をゆっくり上がっていきました。
この地帯を抜けると、眼前に森林限界と、ハイ松の林とが現われました。
そこをひと登りしていくと、段々天空の道の感じが出てきます。
稜線まで辿り着くとちょっと広場になっていて、先週登った甲斐駒が見えました。
「雪を被った様な」と形容される花崗岩が白く、相変わらずニクイぐらいの
イケメンぶりです。広場の端っこまで行くと松の間から仙丈ケ岳も見えました。
前回とは違い、カールが正面に見えます。稜線に立つと、やっぱり風も吹いてきました。そんなに強くはないものの、季節と高度がそれなりな
だけに、大変冷たい風です。小太郎山の草紅葉にも見入りつつ、写真撮るのに夢中になって、つい寒くなってしまいました。
ウィンドストッパーの防風ジャケットを着て、見えてきた山頂へ向けて稜線の登りに取り付きました。
最初の岩場はなんて事ありませんでしたが、2度程、鎖付きの岩場に出くわしました。鎖と言っても、鉄の柵棒が1,2m置きに立っててそれについてる鎖です。
段差も大きめなので、流石にストックはなおした方が無難な感じでした。
前回甲斐駒ではストックを車に置き忘れて結構しんどかったので、今回は忘れず持って来ました。特に下りで重宝しますが、
やっぱ登りでもあると足がだいぶ楽には楽です。
肩の小屋手前で、若い男性と話をしながら行きました。普段は北アルプスで槍穂やジャンに行かれていて、南アルプスは初めてとの方でした。
今日は肩の小屋泊まりで明日間ノ岳まで…との事でした。互いに写真を撮ったりして小屋で別れました。
目指す頂上はうっすらガスがかってきて、風もますます冷たく強くなってきました。昼1時ぐらいですが、小屋では気温3℃との事でした。
最後の岩場を登っていると、他の登山者の方に声をかけられました。
横浜から来てるナイスミドルな明るく気さくなおじさんで、行き先が同じなのでご一緒しながら行く事に。
途中ブロッケンなんかも出て、曇りならではの楽しさもありました。
山頂に着くと、何故か向こうの仙丈ケ岳の方が高く見えたりで、天気によっても浮き上がり方が違って見えるのかなーと思いました。
今日は行動食におにぎりを計8個も持って来ていたので、おにぎり食べ放題状態です。とりあえずかしわおにぎりを2つ頬張りつつ、写真撮ってのんびりしました。
下りの向こうが見えないけど周囲を見ると高度感ある岩場ってのは何だかコワいもんです。山頂からの下りでは、前回の甲斐駒以来ちょっと
臆病風に吹かれ気味になってて、必要以上に緊張してしまいました。が、実際下りのルートまで行ってみると、一応鉄柵も立ってるしそう危ない岩場でもありません。
おじさんの足が速いので、何とかあまり遅れず着いていこうとする内に、段々と
開き直って来て、緊張もほぐれてきました。
八本歯のコル方面との分岐看板が出てきてそれを見ると、「転落注意」が書いてましたが、どうせなら山頂のトコから書いといてくれないと
意味が薄い様な…天空の稜線入口は、奇岩が立ち並ぶ岩場下りからでした。
山頂から標高差にして約300mの道を下っていき、1時間チョイ程で北岳山荘に着きました。
山荘に入ると、中は暖かく、人もかなり多くて賑やかでした。3000mの稜線上、外に一歩出た時の山の世界とは打って変わっていきなりここは宿の中の世界、
それがちょっと不思議な感じすらしました。
人が多いので、夕食は第2陣の夜7時からでした。する事も無いし昨日は寝不足、との事で、布団をしいておじさんは仮眠に入ってました。
本日は人多いながらも、1人で1つ布団があったのでシアワセです。自分も荷物を整理した後少し仮眠しましたが、折角なので階下で缶ビール買って飲んでました。
今日は酒のまわりがかなり早いです。
食堂横の書庫に目をやると、ヤマケイのバックナンバーがどっさり。
1980年代前半のから全て揃っているようで、背表紙のデザインに何か時代を感じました。手にとって見ると、子供の頃読んでた「子供の科学」的な
雰囲気の構成を思い出すというか、今と違うのは写真より文字主体で、しかもフォントも小さく情報ギッシリな感じでした。
読者からの投稿記事の様で、数人のスタイルがそれぞれ違う方の装備構成、山行の記録なんかが臨場感たっぷりな文で書かれていました。
昨今の、見出しを見れば分かり易く、写真が主体で活字が少ない構成もそれはそれで見易く時代の趨勢かなとも思いますが、昔は昔で情報量たっぷりで、
今では載らない様な、キャッチーでない、しかし現場の臨場感を感じる様な記事なんかも載っててそれもまた好きです。
暫くの間、読み逃したバックナンバーなんかと共に、むさぼり読んでました。
30年前の雑誌ですが、仙丈ケ岳の写真が載ってて、人の雰囲気は変わっても、
山は今と変わらない佇まいでした。
ねぐらに戻って仮眠を取ってると、程無く夕食の時間に。
横で寝てたおじさんも起きてきて、一緒に食堂へ向かいました。横に座ってた方が
気を利かせてくれて、お茶や醤油を取ってくれたり、
ご飯味噌汁をよそってくれたりしてくれました。ありがたいです。
夕食の煮魚はとても美味しく、3000mの山の上という事を考えると、有り得ないぐらいの贅沢でした。明日への活力がわいてきます。
朝は6時出発。少し早く外に出てみると、外は満点の星空でした。んでもって、寒い。氷点下は間違い無しですが、2分も居たら耳と指先が冷たくなって
痛んで来ました。小屋に退散して、ペラペラのサブザックに水筒とおにぎり2個を移し、メインのザックはデポらせてもらって朝焼けの中間ノ岳へ出発。
3時間で往復してくれば、6時間でギリ下山出来そう、という計算です。
3000mでのご来光は神々しく、北岳がモルゲンロートで深い赤に染まっています。
雲海からは富士が顔を出し、稜線には風が少し吹いていました。この気温だと、
うっかり手持ちの装備だけでツェルト泊してたら、うっかり
冷たくなってたりしかねないし…とか思うと、暖かな小屋が天国の様でした。
出発にあたり、アウターは同じ防風衣ですが、中間着をフリースに換えました。
フード付きのフリースが、こういう時は大変有り難く、耳と頭が冷えずに済みました。まずは目の前の中白根山を目指しひと登り。
それから、一度下ってまた登り、稜線下の岩場へと巻いて…全くの水平な楽々トラバース、と言う訳でもなくそれなりにアップダウンありました。
3000mの天空の道を行くと、北岳、仙丈、中央アルプス、とどんどん見える山が変わっていきました。遠くはうっすらガスってる様でしたが、
日が高くなるに連れ、遠くまでハッキリ見える澄み切った空気の絶景になってきました。穂高の岩の表情までもがハッキリ見えます。
間ノ岳下部の谷肌が、物凄く巨大で、そして深い皺の表情を見せていました。
岩場では、これ登ったら到着かな?と思って登ってみたら、やっぱりあったよもう一登り、といった感じでやっぱり1.5時間はかかってしまいましたが、
その内間ノ岳へ着きました。
澄んだ朝の空気の中、360度の大絶景が広がっています。南アルプス南部の山、なんて雄大な景色なんでしょうか。どれがナニ山だろう?と言ってたら、
近くの方が、「あれが農鳥で、あれが塩見、こっちが悪沢…」と教えてくれました。あの天空の縦走路を、いつか歩きたい…そんな思いに駆られました。
360度の景色を楽しんだ後、名残惜しくはありますが、下山に取り掛かりました。
山荘に戻って、裏手のベンチで朝食にしました。富士山見ながらのシャケ弁当が
美味しいです。
北岳見てると300mも登り返す気になれないので、八本歯のコルへと巻き道を行きました。途中、下から見えてた木道の場所に出ましたが、
岩ガケにへばりつく様に木道が渡してあって、スリル満点のアスレチックでした。まあ木道の場所は手すりもあるし、慎重に行けばなんという事はありません。
山頂からの分岐を越えると、今度は岩場の下りです。結構急でした。八本歯のコルまではひたすら下ります。一個一個の岩が結構大きなガレ場で、
早池峰の河原坊コースを思い出しました。コル手前では、右側が切れ落ちた場所や、傾斜は緩めだけど距離が10m前後?と長めな梯子下りなんかもありました。
コルを過ぎると、遠くから見えてたバットレス横の急峻な谷を下ります。
最初はとにかく梯子のオンパレード。確か全部で20本ぐらいでしょうか…
見上げると左手側にはバットレスに挑んでいるクライマー達が。
こっち側からそれを見ていた女の子が「ヤッホー」と声をかけると、テラスに居たクライマーが「ヤッホー」と声をかけ返してくれてました。
梯子が終わっても、今度は二俣まで河原下り。これが長いのなんの…途中、いい加減ウンザリしてきました。足が棒になってきたので、
踏ん張りも甘く、おじさんは一回スリップダウンしてました。自分もちょっと足元が怪しいです。
休憩を取って、またもやおにぎりでエネルギーチャージ。ついでに塩飴舐めて塩分も補給。そこからちょっと降りると、二俣でした。
もう登り返すのもイヤなんですが、白根御池小屋まで頑張って歩きました。コースタイムより少し短縮出来ました。
早くも猛烈食欲に襲われだして、小屋のベンチではまたおにぎり食べました。
ネギトロワサビがツーンと効いて、気分をシャッキリさせてくれます。
ここで飲んだ天然水は、本当に美味しかった。
最後の下りでは、先行のおじさん早い早い…またもや足の速い人と一緒になって
しまい、心肺機能的にはようよう何とか付いていけるものの、汗が滝になって、
バンダナが雑巾の様に絞れるレベルでした。でも、お陰で速い。広河原までは
あっという間の下山でした。
3時をほんの少し回った所で着いたので、次は最終の4時10分かな、と思って
いましたが、人数が集まったので乗り合いタクシーが出発。南アルプス林道を
揺られながら、さっきまで登っていた白根三山を横目にウトウトしながら芦安
まで帰りました。
横浜のおじさんとは駐車場の場所も違うので、ここでお別れに。「ありがとう
ございました。またいつか、どこかの山で」と挨拶し、固い握手を交わしました。
見知らぬ人との一期一会の出会い、短いながらも山行を共にし、景色や登山の
苦楽を分かちつつ、そして名残を惜しみつつも爽やかな笑顔で別れ。
共通点は、「山が好き」という事ですが、それだけに、確率は本来相当に低い
ながらも、本当にまたいつかどこかの山で会えそうな気もしますし、またそういう
再会があればそれもまた良い思い出になると思います。
天空の稜線を歩く2日間、太腿が早くも筋肉痛ですが、充実した旅でした。
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