31年ぶりの春の奥穂高岳、涸沢岳
- GPS
- 55:28
- 距離
- 37.1km
- 登り
- 2,113m
- 下り
- 2,099m
コースタイム
- 山行
- 6:59
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 7:04
- 山行
- 7:10
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 8:29
- 山行
- 5:03
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 5:37
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
バス
|
写真
感想
上高地バスターミナル05:47...小梨平06:00...明神館06:34...徳沢07:16...08:38横尾08:43...横尾岩小屋跡09:01...本谷橋09:48...Sガレ11:12...涸沢12:14
涸沢ヒュッテ06:16...ザイテングラート07:46...穂高岳山荘09:04...10:15穂高岳10:32...11:11穂高岳山荘11:51...12:26涸沢岳12:41...穂高岳山荘13:00...ザイテングラート13:38...涸沢ヒュッテ14:45
涸沢ヒュッテ07:28...Sガレ07:56...本谷橋08:46...横尾岩小屋跡09:27...横尾9:55...11:20徳澤園11:44...明神館12:32...小梨平13:07
昨年秋に上高地から涸沢まで行き、登山復活ののろしを上げていたので、GWにはどこか普段行けないところに遠征したいと思っていた。
ただ、ギックリ腰に、めまい、手術跡の痛みなど、最近の調子は良くなかったが、山の誘惑には勝てなかった(変な表現)。
GW前半が好天と予想されており、何としても、この機会に登りたい。体のことを考えると直通バスのあるところが良い。
そう考えると自然に、また今回も、上高地、となった。幸い、キャンセルが出たので、夜行バスも予約できた。
同時に、息子に家事の休業届を出して許可された(会社は先にOK)。久しぶりの春山に備えて、荷物を準備したが、どう見ても重い。腰痛が再発しそうだ。少しでも減らしたいのだが、30年前のピッケルが、ひどく重い。そこで、新しいのを新調して臨むことにした。目標は奥穂高、昨年秋に登り損ねた山だ。登れば31年ぶり。隣の涸沢岳も(失礼)登るつもり。
夜行バスで早朝に上高地到着。みんな、登山届を出して次々出発する。私も気合を入れて息を止めておなかに力を入れて(息を止めないと腰を痛めそう!)、重い荷物を担いで出発。何がこんなに重いのだろう。多分、一度も出番のないアイテムがきっと出るに違いない。行きなれた道を進む。春の新緑がまぶしい。新村橋ではお猿がお迎え。横尾手前で河原に新しくできた道路を進む。山の縁の道が好きなのだが、まだ、雪が多く歩けそうにない。河原を上がって、横尾到着。ここで、スパッツを着けて、ストックも準備して出発。横尾橋で写真を撮ってもらった方に、できれば穂高岳山荘まで行きたいと話すと、首を捻られた。涸沢まで3時間、そこからさらに3時間かかるといわれた。確かにそうだ。雪がしまっていればよいが、午後の春山は雪が緩んで厳しい。状況次第で判断するとして、歩を進める。屏風岩が凄い迫力で迫る。登っている人は確認できなかった。雪が現れ少し行くと本谷橋。事前にもう橋をかけたとの情報があった。橋をユーラユーラしながら渡ったところで、みんなアイゼン装着。雪山準備OK。最初は快調に雪の上を登る。Sガレを越え、屏風の頭、耳、さらに前穂が見え俄然、意気が上がる。しかし、涸沢が見えだしたころから、息が上がってきた。雪が緩く、みんなも厳しそう。いつものことながら、涸沢は見えてからが遠い。でも、一歩あるけば間違いなく、目標に近づけるのが登山のよいところ。普通は努力しても報われないことが多いので。もっとも、雪山は一歩あるいても半歩くらい下がることもあるが、ご愛敬。
無事に予定時間を少しオーバーして涸沢ヒュッテに到着して、ラーメンを食べながら穂高岳山荘までのあずき沢のルートを見る。反り上がった雪面に黒い点になった登山者が見えるが、これから登る人はいなさそう。直前の自分のペースから考えて、あの角度の雪面を緩んだ雪と格闘しながら登るのはちょっと無理と判断。涸沢ヒュッテに泊まらせてもらうことにした。幸い、一人1枚の布団があてがわれた。
翌朝4:55、モルゲンロートとはならなかったが太陽があたった奥穂の岩壁が言葉に尽くせない素晴らしい姿を見せてくれる。これは涸沢ならではの光景。以前と少しも変わらない。感動!
朝食のあと、ヘルメット、ピッケル姿でいよいよ出発。日の出のころには、穂高岳山荘まで登ってしまっている人もいて、焦りながら登り始める。
雪はまだ、締まっているが、雪面に一杯踏み跡があり、その多くは下山時のもので、間隔が大きい。さらにシリセートしてステップがきれいに均されてしまっている。怒っても仕方ないので、登りやすそうなところを探しながら登る。よく似たペースの人たちと交代交代して登る。別に決めたわけではないが、違うところで休むので、自然に前後が入れ替わるのだ。傾斜がますますきつくなり、上方に山荘付近と思われる雪壁が見え、登路が右に集積していく。ここを登りきると、泊まり損ねた穂高岳山荘だ。ここは雪が多く、山荘は雪の下で、雪が掘られて入り口まで斜面を下りていく。
小屋に入るのは後にして、奥穂に登ることにする。ここは白出沢側からの強風が当たるので、ハードシェルを着て、防寒テムレス、さらに
シュリンゲを体にしっかり固定してカラビナを着けて自己確保の準備。目の前には、鎖場、ハシゴ1、ハシゴ2、鎖場、その右が問題の
雪壁。その下には滑落に備えてネットが設置されているが、運よく停まらなければ、ダメかもしれない。幸い、登る人は多くないので、十分に間隔をあけて登ることができる。
最初のあたりは雪がないので、アイゼンをギシギシ、ギイギイ言わせながら登る。2つのハシゴも慎重に越えて、鎖場を右にトラバースして雪壁に出る。雪壁にステップが切られており、ピッケルを雪面に差し込んで支点にして、一歩ずつステップを上がる。ダブルアックスで登りたいところだが、ダブルで登る人はほとんど見かけなかった。フリーの左手は雪面を持つようにして3点支持で登っていくと、雪壁上部は傾斜が緩んで幅広いステップになっており、ピッケルを差し込む必要はなかった。この後は稜線伝いであるが、イワヒバリが、つがいなのだろうか、前を飛び交っていく。凄いところなんだが、イワヒバリには何でもないところなんだろうなあ。雪の少ない支尾根を乗り越し、雪面を慎重にトラバースして、このようなことを繰り返すと、最後に小さめの雪壁をまた、ピッケルを差し込んで登った。ここは一部氷結していた。ここをクリアして、念願の奥穂高岳頂上に達した。春は実に31年ぶり。
頂上の雪は少ないが、前穂への吊り尾根には雪が付いており、BCスキーヤーが滑降していった。下山途中にもBCスキーヤーが何人も登ってきた。聞けば奥穂直登コースを滑降するという。「ビビッてます」と言っていたが、笑顔だった。そんなとこ、滑り降りようとすること自体、想像を超えている。凄いわ。
下山時には2つの雪壁の下降が最大の難所になる。1つ目は難なくクリア。2つ目も上部は問題なく過ぎて、残すは下半分。ピッケルを差し込んで、足元を見るために頭を下げたところ、頭がクラーッ!目の前の景色が左から右へ流れる。よりによって最大の難所で、三半規管の耳石が動き始めたようでめまいが起きた。雪に差し込んだピッケルをしっかり持って、しばらくじっとしていると、治まってきた。頭をできるだけ下に向けないようにして一歩ずつ下降した。雪は多少ザラメ状になっていたが、ピッケルは効いており、無事に下降できた。鎖場、ハシゴを無事に下降して穂高岳山荘に到着。何とも言えない安ど感に満ち溢れた。山荘でみそラーメンと缶チューハイをいただいてから、涸沢岳に登った。雪は山荘前しかないので、アイゼンなしで登った。
ここも31年ぶり。涸沢岳からさらに北に進み、北穂への縦走路の、真下に下降するポイントを見た。覗くと恐ろしや。ここを下降するのが一般縦走路なのだからたまらない。私がもう一度行くとすれば、やっぱり、ここが登りになる北穂から涸沢岳に向けて縦走するに限る。この下降点より北には×印がいっぱい書かれているが、構わず数m行くと西尾根への分岐で滝谷を間近に見ることができる。西尾根は新穂高方面から蒲田富士を経由して奥穂高に登る厳冬期のルート。ここから見る滝谷はエグい。恐怖を感じる。北穂からの縦走路では、真下に向けて絶壁にしか見えない(それはそれで緊張を強いられるが)が、西尾根から横向きに眺めると立体的に見ることで、もっと絶望的な岩壁に見える。かつて、上条嘉門次が滝谷を「鳥も通わぬ」と形容したそうだが、まさにそんな感じだ。
山荘まで戻って、涸沢に下降する。雪面の上部に立つと、ものすごい傾斜で、ここを降りるのかと躊躇するほど。氷結していたらそれも恐ろしいだろう。今は雪は緩んでいるので大丈夫と意を決して下り始める。あとから降り始めた初老の登山者がシリセードを始めるがあまり滑らないようだ。それを見て油断したつもりはなかったが、自分の足元の雪が崩れて尻もちをついたところ、予想に反して滑りだした。意図せずシリセードになってしまった。ピッケルを差し込んでも緩んだ雪では減速もできない。さらに悪いことに、ピッケルを差し込んだために滑る方向が変わり、隣の深く掘れたシリセードコースに入り込んだ。どんどん加速する。シリセードコースが自分にはボブスレーコースに思えた。幸い、時間帯が遅かったので周りには登山者がいなかった。コースの壁をアイゼンで少しずつ削って股に雪を集めてようやく減速、停止した。一安心したところ、ピッケルを差し込む前に再び滑り出した。わぁ!インディージョーンズみたいだ。同じように雪を集めて止めて、今度はすばやくピッケルを深く差し込んだ。今度は大丈夫。もう、シリセードはしたくないので、急がず慎重に少しずつ時間をかけて下降した。それにしてもなかなか斜度が緩くならず、相当気疲れした。
最終日もモルゲンロートにはならなかったが、素晴らしい天気だ。昨日登ったあづき沢、北穂沢を登る登山者が、すでに頂上直下まで迫っているのが見える。ほかに吊り尾根に向かって急斜面を直登しているペアの猛者も見える。みんなの健闘を称え、無事に戻ることを心から祈る。
名残惜しいが、涸沢に別れを告げ、下山を開始する。時々立ち止まって振り返るが、同じような登山者が何人もいる。「下るのは、アッという間ですね」と声を掛け合う。みんな、同じ気持ちなんだ。既に雪は緩んでおり、チェーンアイゼンの登山者は効かないため苦戦している。本谷橋まで、爪の大きなアイゼンが良さそうだ。そのあとは、時間をかけて周囲の岩壁や新緑や残雪を愛でながら上高地へと歩いた。小梨平で風呂に入ると、気分スッキリ。登った奥穂高がそびえているのを見てニンマリしつつ、帰途についた。
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