僧ヶ岳〜毛勝山
- GPS
- 56:00
- 距離
- 19.3km
- 登り
- 2,325m
- 下り
- 2,326m
コースタイム
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 9:20
- 山行
- 8:00
- 休憩
- 1:40
- 合計
- 9:40
- 山行
- 12:20
- 休憩
- 1:20
- 合計
- 13:40
- 山行
- 0:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:30
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
昨年の記録的豪雪による豊富な残雪を期待しましたが、雪解けが例年より早く進んでいて尾根筋の雪割れが多数あり、雪庇の処理や藪こぎに苦労しました |
写真
感想
1日目【片貝山荘〜駒ヶ岳】
僧ヶ岳東又コースは、阿部木谷出合の遭難碑横に道標がある。コースは尾根の角をからみながらジグザグの急登が続く。登山道はよく整備されている。尾根の中ほどまで来ると阿部木谷の全容が観察できる。やがて杉の木が縦に連続する箇所を通過中、カモシカに遭遇する。鹿は北又側斜面におり、毛色はやや茶色っぽかった。双方とも無言無動の対峙。無動を装って写真をとり、何もなかったように静かにその場から離れた。登ってきた尾根は、テーブル状の伊折山に入り組む形で合流する。登りは問題ないが残雪期は下降時に降り口を見失なわないように注意する。降り口に標識赤布をつけた。ここは杉の木のモンスターが目印になる。
登攀具含め20kgのザックでの急登はきつい。花の写真を撮ったり、鹿と遭遇したりではあるが伊折山まで2.5ピッチもかかっている。伊折山から成谷山へは、残雪が豊富で丘のような小ピークをこなしながら順調に高度を稼ぐ。開放的で気持ちがいい。登ってきたルートは成谷山で合流する形となる。この箇所も下降時や視界不良時に降り口を見失わないように注意したい。これより駒ヶ岳が真正面に見えるが東又側には雪がついておらず、黒っぽい岩肌が目立つ。行く先の稜線にはポコポコと2つか3つ小ピークが僧ヶ岳まで連なっている。この小ピーク手前には平坦地があり、幕営適地で時間切れやアクシデント発生の場合利用できそうだ。ここで張って昼寝する楽しい計画もいいだろなと今の苦しい現実を回避する空想もひろがる。続く小ピークはブッシュの生え際を東又側で巻くが問題となる箇所はない。残雪期にもっと登られてもよい素晴らしいコースだ。僧ヶ岳手前の偽ピークより本峰直下が最後の頑張りどころだ。
片貝山荘より重荷で6ピッチにしてようやく僧ヶ岳に到達。ここで進むかどうか真剣に考えた。
・駒ヶ岳方面の雪は想定外に少ない。
・雪が少ない場合、激やぶを突破できるのか
・僧ヶ岳付近でブロック崩壊した雪庇が多々ある
・末期状態の雪庇で80kg(ザック+体重)で歩いて大丈夫か
・ウドの頭も見た目、黒っぽいがトラバース時に雪が切れたらどうするのか
・懸垂をするにしても20kgのザックを背負っての懸垂下降の練習をしたか
・綿密周到に計画してもダメなものは絶対ダメな場合もある。
1時間近く葛藤し、まずは駒ヶ岳まで前進することにした。僧ヶ岳の下りは、最低鞍部めざして直下降する。問題となる箇所はなく所々夏道もでている。駒ヶ岳直下のロープがある箇所、トラバース→ルンゼの直登箇所はザックが重く、最後の一歩がきつかった。駒ヶ岳ピークで幕営。ピークは雪が飛んで標石もでている。滝倉山やウドの頭も近づいて見えるが、毛勝はまだ遥か彼方だ。果たして本当に行けるのか心配になる。
2日目【駒ヶ岳〜滝倉山】
駒ヶ岳の下りでアイゼンを履く。アイゼンが必要な雪ではないが、適度に締まってくれているので快調に飛ばせる。時間短縮になるだろう。駒ヶ岳からは、まずは最初の鞍部を目指し、黒部側の雪庇を拾いながら下降する。
1867付近より藪こぎが始まる。これより先フタコブラクダのような細尾根にブッシュが立っている。雪がないため基本稜線忠実に進む。ブッシュはひどいが絶望的なほどでもない。大明神尾根上部にあるようなトゲトゲのものはないようだ。調子に乗って格闘していたらクリップ型サングラスを持ってかれてしまった。藪こぎ前提の場合、モノの紛失に最大限の注意を払うことは基本中の基本なのに。それにしても、ここでサングラス紛失は痛い。これからの活躍が期待されていたのに。最低鞍部付近も雪がなく稜線忠実に進む。
次の1769は双耳峰のように見える。最初のピークは西側手前より巻き稜線にもどる。ふたつめは、手前に雪壁があるので左にトラバースした後、1段上がって右にトラバースし、雪庇を切り崩し上へ這い上がる。上に出ればこっちのもので後は平坦で容易。コルへの下降途中にやや急な雪壁がある。
降りたコルは残雪が豊富だった。コルより稜線がガレている箇所があるが問題ない。1753の次の鞍部付近に新しく刈払いした跡や赤ひもが多数あり、人の臭いが濃厚だ。
1801手前の西に巻く地点は、西側の残雪を利用し再び主尾根に戻る。1801ピークは広くて気持ちがいい場所だ。しかし、サンナビキ、滝倉山はまだ遠く、吊尾根状のブッシュ帯と小ギャップを抜けなければならない。
滝倉山の雪壁は見た目は急だが、傾斜の緩いところを選んでキックステップで登る。もはや、ふくらはぎがパンパン状態、スカイラインを目指して最後まで頑張る。頂上は雪が切れており、お地蔵さんが迎えてくれた。
(計画メモ)
*藪こきとザックの大きさについて
雪が少ないと大きいザックは難儀する。ザックが大きいと雨蓋とヘルメットがあたり、 首の動きが制限されてしまう。藪こきは常ににやぶを見極め、足元の斜度確認、軌道修正で頻繁に首を動かす必要があるが邪魔すぎる。今回のザックは45L- 55L(ライペンのクロワール)だがそれでも大きすぎた。理想的には、35L(ライペンのクロワール35)クラスでないと雪がない場合の体力消耗が半端ない。ただし剱へ縦走する等長駆け計画の場合、軽量化・小型化は難しい課題だ。みんな一体どうしてるのだろう。
*ヘルメットについて
尾根コース藪こぎであればヘルメットは不要だ(異論は承知で)。実際ザックの横につけると引っ掛かるし、かぶっても首の動きを妨げてしまう。メリットはブッシュ枝の逆襲からの頭部保護か頭皮の日焼け防止程度だ。
*ウェアについて
晴れていればモンベルのラガーシャツ1枚でも暑い。この時期、厳冬期用パーカーやドロワットパンツなど不要だ。今回使用しなかったが、着用したら1ピッチで傷だらけになるだろう。あまりにももったいなすぎる。本チャンなので新調するのでなく、不用品を携行し下山時に捨てる位がちょうどいい。
*アイゼンでの藪こきについて
残雪期の藪雪mixの場合、アイゼンを履いて藪こきすることになるが、アイゼンなしのほうが藪での足がさばきやすい場合もある。一方で灌木の上に乗って降りる場合などアイゼンの爪でフリクションが利き、また尾根の藪を逃げて急斜面をトラバース場面では、ブッシュを掴んで腕力で這い上がる際にアイゼンが欲しく、悩ましいところだ。ツル系のブッシュは、この辺りには生えてなかった。
*藪こき時のピッケル
好みの問題だが、藪こき時でも背中に差さずピッケルを使用している。ショルダータイプのリージュで肩にかけ、木登りまたは木降り時に枝で三点支持にてバランスをとりながら藪をこぐが、フリーのピッケルが枝に絡まり回収できず二進も三進もいかない場面が多々あった。雪が多ければもっと楽だったかもしれないが。
*虫について
虫よけを持参したが、今回は藪こぎでも幕営でも虫の襲撃はなかった。雪解け時期は早いが未だ虫の時期でなくて助かった。
3日目【滝倉山〜阿部木谷】
テント出発前にオーバミトンを探し回り出発が遅れる。滝倉山からは頂上直下、真南の一段下がったところの雪渓に取付き、雪線伝いに下降する。稜線は「く」」の字に美しく曲がっていて、残雪が連続していれば急斜面を利用したショートカットも自由自在だ。「く」の字の尾根先端まで行かず、やや早め(つまり右手前)で南西方向への下降点をさがす。コルにつながる樹林の急な支尾根が正規のルートであるが、使用せず、その手前の急斜面を下降、ショートカットしてコルへ登り返す作戦とする。
コル対岸の正面にはすべり台のような急斜面が見えており、その基部を目指しZ字で下降する。雪崩には細心の注意を払う。今回は雪面を下降したが、樹林の支尾根を忠実にたどるのであれば懸垂が必要な箇所があるかもしれない。コルは狭いが静かで富山湾と街を正面に望む風情のある場所だ。
滝倉山とウドの頭の間のコル(ウド側)には雪壁のような急斜面がある。公園にあるすべり台を広くして急にした感じだ。雪壁は3段になっており、見た目ほど難しくないが、逆方向、つまりウドの頭方面から縦走する場合や引き返す場合は、急斜面の下りとなるのでダブルアックス、ザイルは必須だろう。雪壁の3段目まで到達したのち、右手肩の樹木の生え際へトラバースする。肩の部分よりさらに藪尾根は続く。尾根は広くなり、二重山稜のような複雑な場所があるが視界が悪いと迷いやすい。さらに進み、小さなコルへの下降点は、松の木のトンネル状ルンゼを木の枝にぶら下がりながら下降し、下降点より草付きまじりの岩壁をトラバースする。このトラバースはブッシュをつかめばノーザイルでも何とかなるが、雪の状態でfix工作が必要だろう。もっとも南向き斜面なので早い時期に雪がなくなるのかもしれない。
トラバース後に小さなガレのコルがあるが、先ほどの下降点を振り返れば、相当急な登りに見える。今回と逆方向、つまり、ウドの頭から滝倉山側へ抜ける場合は、この木登りもポイントとなる。荷物によっては荷上げが必要だろう。
ここまでくれば、ウドの頭も射程範囲だが、最後のコルに至る付近が非常に濃い藪尾根になっている。藪というより要塞のような木に阻まれ、大きな荷物の場合、枝と枝のくぐり抜けに時間を食う。
さらに藪尾根を進むと、懸垂下降点があり、20m位の古いロープが残置されている。懸垂下降したコルからは、ウド谷の全容と黒部側が望まれる。黒部側に下ればトロッコ電車の小屋平駅だ。コルからがウドの頭の核心部で、コルより北面の雪割れした上部雪壁を直登、右側の樹林帯を西側へ回り込み、割れた雪を慎重に読みながらトラバースを繰り返し(極端に緊張を強いられた)、最後は西面の雪壁を直登する。雪面をトラバースしピークを巻く考えもあったが、先の状態が読めず、本能的に直登しウドの頭にでた。ウドの頭は展望がよく気持ちがよい場所だ。
ウドの頭からは、樹林の尾根が南西「く」の字に湾曲し平杭乗越へ落ちている。ウドの頭からの降り口はわかりにくいが、古い刈払い跡を丁寧にさがす。一体どこまで降りるのか?という位の大下りで、なために従って降りればよいが、途中に急な岩壁も潜んでいるので注意。コルが近くなったら藪尾根を捨て西側の雪面を東又側に下降し再びコルに登り返す。
平杭乗越は別天地だ。体力的に、ここで張りたい気分だが、天気が崩れるとの予報通り曇ってきたので、視界がきく本日中に安全地帯まで前進することにした。核心部や雪割れでガスられると状況が読めず厄介なことになる。
まずは西谷の頭を目指す。雪面は急な箇所もあり何段かになっていて、ブッシュや露岩を目標に高度をかせぐ。重荷での登りはつらい。上部になると傾斜が若干緩やかになり、ウドの頭と同じくらいの高さになれば西谷の頭も近い。西谷の頭は展望がよい。頭から毛勝方面へは途中小ピークが2つあり、カール状斜面を快適に巻いて最後のコルに合流する。
コルから上部が核心部だ。上部は大きく分けて3段になっていて、まずは1段目を目指すが南東方向に巨大な雪庇が張り出しているので左に寄りすぎないように注意する。1段目に墓石のような露岩があり、その直上部が雪割れしていて、この通過に手間取る。ブロック壁はかぶり気味で大きさからして直登は無理、右側は切れていて、左側は雪割れに崩壊した小ブロックが堆積している。左端がわずかにバンド状になっているので、雪割れ内のブロックを慎重に伝ってバンド末端へ移動し、カンテよりブロック上に回り込み、素早く安定した場所へ逃げた。この乗っ越しは緊張した。時期が早ければ難なく通過できる箇所なのかもしれないが、雪解けが早いため余計な手間がかかり最後まで苦労する。
上部(すなわち2段目)はナイフエッジのような感じで核心部へとつながっている。ナイフエッジはバランスに注意しながら通過する。高度感もあり、とても快適だが、強風時はいやらしい。
核心部は三角形の小岩があり、これより3段目の広くて急な雪面となる。雪はざらめ状でくさっており、ステップにも力が入った。頂部は既に見えているが、なかなか着かずとても長く感じた。これが「天国への階段」なのか。「天国への坂道」と記す記録もあるが、どちらも的を得た表現だ。やがて頂上が近づくと西北尾根終了点みたいな感じで右手にハイマツ帯が近づくのでハイマツ帯に逃げて頂上に到達した。が、ここは偽ピーク(ピークというより棚田状)で、実際の毛勝山北峰は、さらに次の緩傾斜の「丸い丘」だ。
核心部を抜けた充実感でいっぱいになった。本峰は目と鼻の先なのでここまでくればもはや安全圏だ。風が強いがここで幕営しようとした。ところが、テントを組む際に突風にあおられてポールを飛ばしてしまった。回収のため探すも見当たらず、急斜面を落ちた可能性もあり、この時間、ここで不用意に動きまわるのは危険と判断、幕営を中止し風を避けられる場所までさらに前進することにした。
続く毛勝山ピークは多くのトレースがあったが、こんな時間には誰もいない。ピークでの記念写真も省略しピーク東側の吹き溜まりをそのまま通過、ボーサマのコルへと急ぐ。ここも風が強かったのでさらに毛勝谷を下降し、風のない安全な場所まで高度を下げることにした。
毛勝谷は一般ルートで大明神沢出会まで下降したが、ここで張るのもなんなので、さらに板菱付近か阿部木谷まで行くことにした。阿部木谷は残雪が多く、左岸の林道を拾いながら先を急いだが、途中で道がなくなり、堰堤に阻まれた箇所でビバークすることにした。
4日目【阿部木谷〜片貝山荘】
明るくなって驚いた。対岸に直線の林道が見えるではないか。実は宗次郎谷出合より2つ下の堰堤まで降りていた。真っ暗だったせいもあるが、雪で本流が隠れていて阿部木谷の横断地点を見落としていた。恥ずかしい話だ。いくら知っている道でも注意しなければいけない教訓だ。
当初計画では、さらに三山縦走し南又を下降する予定であったが、天候を考慮し後半を端折る結果となった。でも僧ヶ岳〜駒ヶ岳〜滝倉山〜ウドの頭〜西谷の頭〜毛勝山をつなげることができたので大満足だ。三山縦走はおまけだ。反省点としては、荷物が大きかったことだろう。あと、滝倉山から黒部に突き出している、旧サンナビキ山を踏んでいないことだ。
雪の状態については、想定外に雪解けが進んでおり、かろうじて抜けられた感じだ。ウド直下や天国の階段の雪割れによっては難しかっただろう。同行者によるが自分がリーダーだったら退却していたかもしれない。
今回、尾根ルートは誰ひとり会わなかったが、長駆け縦走組以外は、この時期、主として作之丞谷など東又谷コースが利用されている。小さい荷物で小気味よくラッシュで登るのがこの山域、地元の人のスタイルだ。今度は小さな荷物でスマートに登りたいな。必ずまた来よう。課題となった旧サンナビキ山単体を攻める計画も魅力的だ。作之丞谷もいいし、ウド谷から攻めても面白そうだな。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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僧ヶ岳〜毛勝山を繋げたく、参考になります。
熊とありますが、お写真を見る限りカモシカですね。
ツキノワグマは真っ黒です。
aonisaiさん、ご指摘とおりカモシカですね。訂正しておきますね。コメントありがとうございました。
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