千丈沢から槍ヶ岳(ルートミスであわや遭難・・・)
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- GPS
- 30:25
- 距離
- 34.6km
- 登り
- 4,485m
- 下り
- 4,794m
コースタイム
- 山行
- 3:00
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 3:10
- 山行
- 12:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 12:40
- 山行
- 11:41
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 11:41
- 山行
- 5:11
- 休憩
- 0:18
- 合計
- 5:29
天候 | 晴れのち曇り雨の毎日 |
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過去天気図(気象庁) | 2018年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
8:39 JR名古屋(千種駅)発 しなの18号 11:39 JR信濃大町駅 着 12:10 高瀬ダム 着 タクシー乗車にて(信濃大町駅から¥8200也) 復路 13:47 新穂高温泉バスターミナル 発 15:35 JR高山駅 着 16:36 JR高山駅 発 ひだ18号 19:06 JR名古屋駅 着 |
コース状況/ 危険箇所等 |
GPSログは一部のところで不安定になっていますが、修正はしてありません。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
装備
備考 | 当然なのだがルートの確認をしっかりする。短くてもフローティングロープくらい持っていけばよかった。何にしても、思い込みの恐さを知りました。 |
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感想
これから記す山行記録は大変恥ずかしくて、アホな大バカ山行で投稿するのはやめようかなとも考えた。しかし、遭難しかけた反省から、この失敗談を少しでも参考にしてくれる人がいるかもしれないと思いあえて公開します。中で「岳人」の記事について言及していますが、何ら他意はありませんし、登山は一般道、バリエーションルートを問わず、結果自己責任です。よろしくお願いします。
2017年9月号「岳人」の槍ヶ岳特集で、「千丈沢から登る槍ヶ岳」という記事があり、いたく興味を惹かれた。岩小屋沢から北鎌平、槍に登り上げるというルートであったがノーロープで大丈夫ということもあり、長期縦走を兼ねてチャレンジしてみることにした。うまく進むことができれば西鎌尾根を経由して、黒部源流から赤木沢を遡行して折立に下山するという、今思えば身の程知らずの計画だった。
1日目 高瀬ダムから湯俣温泉まではハイキングの部類に入る登山道で、湯俣温泉では野趣溢れる河原の露天風呂とか墳湯丘とかを楽しむことができる。お盆休みでも人は少ないのでリラックスした雰囲気だった。時間も早いが今日はここでテントを張って、のんびりと過ごした。星空見上げると神秘的な天の川が見える、さらにびっくりしたのは火星の明るさだった。地球に最接近中とは聞いていたが、都会でみるものとはまるで別物の赤い星だった。
2日目 水俣川へ入渓して遡行開始。渡渉は多いが沢登りというより河原歩きだ。今日は誰も行かないようで、一人だけの遡行が始まる。晴嵐荘スタッフによると最近は雨が降っていなかったとのことで、水量は少なめらしく膝くらいの渡渉が続く。一箇所腰までのヘツリがあったがウェストベルトを外しながらクリア。ゴルジュのようなところもあるがそのまま通過できた。巻道も明確だ。2時間半位で千天出合に着く、右の沢が千丈沢だ。左へ行くと天上沢だ。ここからも問題なく遡行できるが、滝もないので基本ゴーロの河原歩きというところか。沢登りを期待するとがっかりするかもしれない。
北鎌尾根からの涸れ沢を何本か通過して(これを確実に把握しておく必要があった)、地形図の2020m(GPSウォッチで確認)の涸れ沢との分岐に着き、岳人の記事にある岩小屋沢はここだと判断した。今、冷静になって地形図を確認すると標高差で20m位下の沢の入り口だった訳でGPSウォッチで判断するのは無理があったと思う。持参したGPSウォッチはかなり正確な数値を出すとはいえ誤差はあるからだ。周りの地形、上部の様子などを見て総合的に判断する必要があった。この失敗が今回のドタバタの全てであった。大バカとしか言いようがない。
この沢の登り自体はガレて不安定だが困難でもなく沢グツのまま(フリクションを期待して)詰めていけたが、だんだんと沢が狭くなってきてルートがよくわからなくなってきた。枝沢も左右にある。しかし、登り切れば北鎌尾根ルートに合流できるものだと思っていたし、不安定なガレ場を重荷で降りるのは嫌だった。頑張って北鎌尾根まで行こうと少しでも登りやすいルートを登ってしまう。2700m付近でどうにも行き詰まって、とりあえず空荷で北鎌尾根まで登り、荷物は小分けして運ぼうなどとバカなことを思いつく。チムニー状の岩場をフリーで登るもこれも直ぐに行き詰まり、一手間違えば転落という局面。周りを冷静に見回すととんがった岩峰だらけの岩壁だらけ!ひょっとするとこの上はトンガっているのかもしれない!!!登攀具は一切持ってきていないし、これはもう観念するしかない。日没も迫って暗くなってきたし、荷物をおいた岩壁の小さなテラスでビバークするしかなくなった。テントを設営するスペースはなかったし、風で飛ばされそうなので上下のダウンを着込んでフライシートを体に巻きつけて何とか横になれるスペースを作った。水もほとんど残ってなかったし緊張と不安で食欲もなかったが、体力温存のためカロリーメイトやオレンジをかじったりした。ひょっとするとこれは遭難てやつだろうかと思い始めて(思いっきり遭難してますね)、ああすればこうすればと後悔の嵐。日が落ちると気温も下がり、風と少し雨も降ってきた。それでも不思議なもので現実逃避現象なのか睡魔はやってくる。とても寒いがウトウト寝て覚めてを繰り返す。すると小さな石がフライシートに落ちてきた! マジか〜!!!こんなテラスで落石を避ける手立てはない。確かにテラスにはコブシ大の落石が落ちていた。直接当たれば致命的だが、この59年間いろいろあったが生き抜いてこれた悪運を信じて落石のことは考えないようにするしかない。またウトウトしていると今度は家の食卓にいる夢を見た。「あ〜遭難は夢だったんだ〜」と安心した瞬間に夢から覚めて目を開けると寒風吹き抜ける岩場のテラス。「あ〜クソっ〜〜何でこうなった」と思ってもあとの祭り。空を見上げると満点の星空で、ここも天の川が素敵だ、流れ星も時々流れる。明るくなるのを待ち続けた。
3日目 何とか無事に朝を迎え、気を取り直して下降だ。落ちて行動不能なり死んだら本当の遭難になってしまう。慎重に慎重に降りる。どうしてもザックを背負ったまま降りることが出来ないところは、ザックを先に落として空荷で飛び降りたりもした。途中、防災ヘリ(と思われる)が頭上を何回も通り過ぎる。ひょっとして気がついているのかなと思ったが、呼びかけもないし、他の救助かもしれない。気づいているのなら、まじロープ下ろしてほしかったわ。しばらくすると帰還していったようだった。何とか上部の悪いところを降りると残りは不安定なガレ場ではあるが死ぬようなところは無い。下降し始めて2時間半で千丈沢に合流した。ホッとした。沢の水に頭から突っ込んでクールダウン。助かった。本当の岩小屋沢はもう一つ上部の沢でそこまで行っていれば容易に判断できるものだったのが、わかったのはそこから少し登った沢との分岐だった。昨日は大槍小槍が雲の彼方に見えていたこともあり、沢を登り槍の根元付近に回り込むものだと思い込んでしまった。ここまでくると槍の根元に行くルートは明確だ。上部はちょっと複雑そうだが・・・何にしても再チャレンジする気力は残っていなかったので、そのまま千丈沢のガレた歩きにくい斜面を登って西鎌尾根登山道に合流した。計画通り黒部源流に向かおうと歩き出したが登り斜面でまったく足が出ない。自分でもびっくりするくらいだが、岩場でのビバークは思ったより体力を奪っていたようだ。これでは、双六小屋に着く前にまたしてもビバークすることになりそうだ。仕方がない、槍平なら下りのみだから何とか降りられるだろう、と千丈乗越から槍平に向かった。途中から、本降りの雨になって、雨の中でテントを張る気力もなかったので素泊まりを申し込んで、小屋の中で1日ぶりに暖かいラーメンを作って食べることが出来た。小屋の布団はもちろん岩場のテラスより千倍も快適だった。
4日目 このまま、下山するというのは達成感が無さすぎる。しかも、午後から明日は下り坂だという。せめて奥丸山を経由して、左俣谷を経由して新穂高温泉に下山しよう。体力はだいぶ回復したようで、5〜6時間くらいの歩きなら耐えられそうだ。奥丸山の頂上からは穂高連峰、槍ヶ岳、西鎌尾根、双六、弓折岳、笠ヶ岳までの眺望が素晴らしい。天気も最高で、涼しい風も吹いて超快適だ。しばし、周りの稜線を眺めながらまったりする。思えば見えている稜線は全て歩いたことがある。一つ一つを思い出しながら楽しんだ。奥丸山から左俣谷への下降路は木の根が滑る結構な急坂であったが、まあ死ぬようなことはないので安心だ。わさび平小屋で冷水に浮かんだトマトを頂いて、最後の1時間ほどの林道歩きで新穂高温泉に無事下山した。
結果オーライということなのですが、岩場で落ちて死んでいたらこれを書くこともできなかった訳でどうやって死んだかのかも解らない。今回の行動についてバカな奴だなと思う方が大半だと思うし、自分でもそう思います。でも、遭難談を読んで実際の行動に反映できるのだろうか?できたのだろうか? だから、だから遭難て無くならないのだと思います。山は一つのミスが致命的になりうること身を以て知りました。それでも、楽しい山ライフは続けたいと思います。
失礼いたしました。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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赤兎山以来ご無沙汰しております。貴重な記録の掲載ありがとうございます。
私もルートミスはちょくちょくありまして、何せチャオに滑るつもりがマイアに行ってしまうくらいで、あの時はGPSのリフト線の表示がマイアのなのにチャオと思い込み、GPSに自分の登ってきたトレースがないのは「トレース消えた」と決めつけてました。
今回も変に岩小屋があったのが痛かったですね。
人間の脳って、自分が思ったことが正しいという情報を集め、それ以外の情報は無視するって機能があるんです(笑)
ルートはもっとこまめにチェックしようと思いました。改めてお礼申し上げます。
コメントありがとうございます。レコはいつも楽しく拝見しているのでご無沙汰感はあまりないですが(笑)唯一無二のチャレンジにはいつもビックリしております。
今回は怪我もなく下山できて幸運でした。被害はザックを落とした時にサングラスケースが割れたくらいでした。それにしても、引き返すという行為の何と難しいことか。前進する理由付けは何故かいくつも出てくるし強力なんですよね。今回は崖を転がり落ちていく自分のイメージがやばいところになると浮かんできて不安になってしまったんです。登る方が気持ち的に楽だったんでしょうね。
これからも、お互いヤバイ(?)ところには行く機会も多いと思いますので(笑)慎重さを欠かさないように楽しんで行きましょうね。
高瀬ダムから北鎌尾根かと・・・思い読んでいたら、あらあら、全く予想もしなかったルート取りをされたのですね。ご無事で何よりでした。さらさら書いていらっしゃいますが、その時点ではかなり追い詰められたのだろうとお察しいたします。
僕も北鎌でルートちょんぼしてスリングつないで降りて残置してしまったり、雪崩で吹っ飛ばされたり・・・苦い思い出があります。GPSは最後の手段でやはり地形図読みが一番の方法なのでしょうね。また何処かでお会いできれば色々聞かせてください。
お恥ずかしい限りのチョンボでした。スキルのある方なら登下降に問題はなかったかもしれませんが、問題はルートミスですね。正解な地形の判断ができなかったということと、間違いに気付いた時点で引き返せなかったという基本が出来てないお粗末な行動でした。いろいろな遭難談を読んだり見たり(JUNDrさんの鹿島槍とか焼岳のビデオを拝見した時は心拍数が上がり過ぎてトラウマになったくらいです)して、頭ではわかっていたつもりだったのですが・・・思い込みというのは本当に厄介ですね。
でも、経験値は少し上がったかな、やっぱり山は素敵なところですものね、リベンジしたいです。
こちらこそ、いろいろ教えていただきたいです。ありがとうございました。
貴重な記録を有難うございます。
昨夏に湯俣からの北鎌をやりましたが、調査準備の折にhigaeriの達人さんの「千丈沢乗越から下ってのP2からの北鎌」の記録を見て驚いたのでしたが、北鎌平に直接上がるルートなんてものも有るのですね。
何よりご無事でお怪我が無くて良かったです。
ヘリは、、日時的に私が同日早朝にお世話になった機体なのかもしれません、すみません。
北鎌の要救と共に搬送されました。
私も自責自戒の念に駆られて事故レコを上げましたが、セルフリカバリー出来た「あわや遭難」と、多くの方々に迷惑を掛け生命を救って頂いた「遭難救助」とでは雲泥の差です。
療養で自分と向き合う時間を過ごす中で、何故あのような判断ミスを重ねてしまったのかを繰り返し考え反省しています。
アクセスランキングにあったhatsuさんのレコを拝見して、当日出動していたヘリの目的がわかりました。ご当人からコメントをいただくとは思いも寄らなかったのですが、何よりご無事に生還されて良かったです。療養中とのことですが、お怪我の早期回復をお祈りしております。
遭難から生還された方の記録は本当に貴重なもので、辛い思いもあったとは存じますが、記録を公開していただき本当にありがとうございます。自分のルートミスも含めて色々改めて感じるところがありました。その場面、その時点では最良の選択だと自分では思ってしまっているんですよね。もっと、客感的に判断できないと同じことを繰り返してしまうかもしれないとも思いました。ちょっと面倒だなという感覚も危ないとも思いました。自分自身と向き合うというのは本当に難しいですね。
自分もソロクライミングに憧れてはいたのですが、リスクのあまりの大きさに行動には移せないでいます。その点でhatsuさんの山行は自分が憧れているものですね。明神岳もいつかは行ってみたいとは思っていました。しかし、トレーニングもしてはいないので妄想の類になるのですが・・・でも、痺れるような魅力があるのも事実ですね。
今回、自分の場合、岩場で足がホールドから外れて、転がり落ちて行く自分が頭の中を駆け巡り、あと一歩一手が出ず進むことが出来なくなって下山を決めることが出来て結果オーライ、何とか無事下りることができました。登れるイメージを持って変に強気だったら落ちていたでしょう。
色々取り留めもなく書いてしまって申し訳ありませんでしたが、hatsuさんの山にかける気持ちもよく分かるような気がして・・・近々、北鎌尾根は通常ルートで歩いて自分なりに検証して見たいと思っています。これからもお互い、良い登山を目指して素晴らしい体験が出来るといいですね。
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