(過去レコ)折立から雲ノ平周回(高天原→水晶→鷲羽→黒部五郎)
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- GPS
- 80:00
- 距離
- 44.4km
- 登り
- 4,252m
- 下り
- 3,259m
コースタイム
- 山行
- 5:35
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 6:35
- 山行
- 9:15
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 10:45
- 山行
- 9:20
- 休憩
- 1:15
- 合計
- 10:35
- 山行
- 9:20
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 10:20
天候 | 26日〜27日=晴れ後曇り一時雨 28日=晴れ後曇り 29日=雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
7月26日から29日まで、山小屋3泊4日で北ア最奥の雲ノ平周辺を歩く。
26日=折立(1350m)〜太郎平小屋(2330m)〜薬師沢小屋(1920m)
27日=薬師沢小屋〜雲ノ平(2500m)〜祖父岳(2825m)〜雲ノ平〜高天原山荘(2100m)
28日=高天原山荘〜水晶岳(2986m)〜鷲羽岳(2924m)〜三俣山荘(2550m)〜黒部五郎小舎(2350m)
29日=黒部五郎小舎〜黒部五郎岳(2840)〜北ノ俣岳(2661m)〜太郎平小屋〜折立
今回とほぼ同じコースを4年前の9月末、単独で歩いていたが、今回は関西在住の山友Aさんと同行する。
Aさんは岩も沢もスキーもたしなまれるアウトドアのスーパーウーマンである。
天気は、26・27日とも雲の多い晴れで、26日は午後1時頃から、27日は午後5時頃から雷雨となる。
28日は、早朝は快晴だったものの、9時頃から雲が広がる。
29日は終日雨。
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7月26日(月) 折立登山口〜薬師沢小屋
薬師岳の登山口である折立へは、有料林道のゲートが開いた午前6時に入る。
広々とした駐車場には30台ほどの車。身支度して7時少し前にスタートする。
3泊4日の山旅の始まりに意気軒昂。
森林を吹き抜ける朝の冷気は清々しく、上空の青空が高揚した気分を盛り上げてくれる。
エアリア山地図の1934mピーク付近で森林限界を抜け、展望が良くなる。 登山道周辺は高原状の斜面で、右上には北ノ俣岳、左上には薬師岳が見える。
深い森の中にたたずむ有峰湖が、湖を取り囲む緑と調和していて美しい。
背後に加賀の白山も見えていたが、時間の経過とともに雲に隠される。
緩やかな勾配で、よく整備された歩き易い道が太郎平小屋まで続く。
登山口から小屋までの標高差は約1000mだが、北アルプスで同等の標高差では、最も歩き易い道だと思う。
小屋の横からは薬師、水晶、鷲羽、黒部五郎などの100名山がよく見える。
40分余り休憩後、薬師沢小屋へ向かって下る。
登山道は沢から離れた針葉樹の疎林帯で、沢の両側は大きく開けており開放感がある。
木道が整備された湿地には、花期を終えた水芭蕉が大きな葉っぱを広げている。
午後1時過ぎ頃から遠くで雷鳴が聞こえるようになり、遠くの山肌は真っ白。明らかに雨となっている。
それが時間とともに迫って来て、13時半、駆け込むように薬師沢小屋へ着き、辛うじて雨具を出さないで済む。
降り続くかに思われた雨がやんだので、小屋のすぐ下、薬師沢の河原へ降りて、火照った素足を水に浸す。
冷たさを通り越し、痛さを感じるほどの冷水だ。
黒部川本流に架かる橋の上から沢を見下ろすと、尺物の大イワナが悠然と泳いでいる。
渓流釣りの好きな人なら、竿を出さずにはいられない垂涎(すいぜん)の的である。
夜、山小屋のトタン屋根を雷雨が時折激しく打つ。
奥黒部の谷底に立つ小さな山小屋だが、沢音も気にならず、居心地の良い印象である。
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7月27日(火) 薬師沢小屋〜高天原山荘
薬師沢小屋から吊橋で黒部川を右岸に渡り、鉄梯子で一旦河原へ降りる。そこの標高が1912m、雲ノ平まで標高差約500mの急登に取りつく。
登りに弱いとおっしゃるAさんの負担を軽くするため、Aさんの雨具と水、2人分の行動食は私が担ぐ。
大きな石がゴロゴロした歩きにくい道だ。深い樹林帯で展望はないが、夏の強い日差しも遮られる。
急登を終え、所々に木道が敷かれたハイマツ林の歩き易い道を進み、二つ目のハイマツ林が開けた所がアラスカ庭園である。
右側に小高い丘の祖母岳(ばあだけ)を見て、その先には新築中の雲ノ平山荘がある。
右折する山荘への入口には『立入禁止』と書いてあるが、その先で、キャンプ場から山荘への入口には『ビール販売中です』の標識。ビールを買う人以外は入るなということ。
山荘は8月10日から営業予定とのこと。
新築後の激込みは如何ばかりか想像に難くない。
近くにプレハブの小さな建物があり、大工さん方の施設と思われる。
この辺りはギリシャ庭園と呼ばれるらしい。木道が整備されていて、花が多く、雲ノ平の中心である。
今夜の宿、高天原山荘への分岐で、サブザックに必要品を入れ替え、祖父岳へ向かう。山頂までの標高差は約300m。
右下にキャンプ場、左奥へはスイス庭園へのルートを見て、左から大きく回る形で祖父岳と三俣山荘への分岐へ。ここは祖父庭園。緩やかな草付きの斜面に巨岩が点在し、花も多いが残雪も多い。
9時40分、祖父岳へ着く。
平らな頂上で、360度の展望。周辺の100名山4座は勿論、更に笠ヶ岳(2897m)も見える。ここから見ると、笠の形ではなく、綺麗な三角形である。今日も雲の多い晴れで、槍ヶ岳は見えず。
眼下には広大な雲ノ平の全貌が一望のもと。
その中心に、完成間近の雲ノ平山荘が豆粒のよう。
ハイマツの濃い緑と真っ白な残雪、火山の噴火で出来たという広大な溶岩台地に、悠久の大自然を偲ぶ、至福のひと時・・・・・。
雲ノ平の素晴らしさは、高い所から見下ろすことに限る。
北アルプス最奥の秘境と言われる雲ノ平、今、その容易には辿り着けない奥地にいることは感極まる想いであった。
ザックをデポした地点へ戻り、高天原へ向かう。
丘を二つ越えて林の中の急降下となる。普通の土の斜面だが、あまりにも急なので、長いアルミの梯子が3ヶ所に架かる。
大東新道と出合い、更に下って水量の多い岩苔(いわごけ)小谷を渡る。
高天原山荘の直前は広い草原で、木製の小さな展望台が二つある。草原の向こうに針葉樹の林が広がり、その向こうに薬師岳の膨大な山並みがうねっている。
13時40分、高天原山荘着。宿泊手続き後、極め付きのお風呂へ。
露天風呂は三つ並んでおり、葦で囲った女性用が二つ、真ん中は何故か?囲いのない男性兼混浴用。
Aさんが入った下の女性用は、先客がいなく貸切だったとのこと。上の女性用にも女性が一人入っていた。
その連れ合いの方が男性用に入っていて、その男性から奥秩父で遭難救助のヘリが墜落したことを聞く。
25日昼前の事故だが、当日は午後から寝たので事故のことは知らなかった。
風呂から上がり、竜昌池へ行く。私達の他は誰もいない。
浅い池に林が映り、小鳥のさえずりが僅かに聞こえるだけの静謐(せいひつ)に満ちた空間であった。
山岳雑誌『山と渓谷』8月号によれば、25年くらい前まで、高天原から薬師見平を経由して奥黒部ヒュッテへ通じる高天原新道というのがあったらしい。
この幻のルートが微かにでも歩けるものなら・・・・・と思うのだが、現在は通行不可能らしい。
今日も午後から雲行きが怪しくなり、遠くではゴロゴロと鳴っている。温泉へは念の為、折り畳み傘を持って行っていたが降られることはなかった。山荘へ戻ってから降り出したが、それはあたかも私達が山荘へ帰り着くのを待ってくれていたかのようなタイミングであった。
ランプの宿と傾いた寝床、快適さには少々欠けるが、人情に篤い、いい山小屋である。
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7月28日(水) 高天原山荘〜黒部五郎小舎
真夜中の0時半頃、右隣に寝ていた男性のいびきで目が覚める。なかなか鳴りやまないので、その人をそっと押して揺り動かす。
それで一時的に鳴りやむが、更にその隣の人も小さな音ではあるが、かいている。
2時半頃まで微かに眠ったり目が覚めたりして、まんじりともせぬ夜半をやり過ごす。
5時間半くらいは熟睡しているので、もういいかと、眠るのを諦める。
いびきの主は相変わらず。
前の晩、Aさんには、『もし明日の朝、目が覚めて私がいなかったら、温泉へ行ってますから』、と言っておいた。
左隣で寝ているAさんを起こさないよう、そ〜っと出る。
今日は行程が少々厳しいので、朝食前に山荘を発つことにしていた。
3時半頃から温泉へ入る。昨日もそうだったが、熱くて長い時間は入っていられない。明け方の気温が低い時間なので、湯から出るとヒンヤリするのだが・・・
入ったり出たりして、40分ほどいた。服を着ていた際、中年カップルが来て二人とも下の女性用へ入る。その後、男性が3人来る。
Aさんを迎えに、山荘へ少し戻った所で行き会う。Aさんも上の女性用へ入ったが、他の女性は来ない。もし来て、下の女性用に中年カップルが入っているのを見たら、さぞかしびっくりしたであろう。
水晶岳へは温泉沢を遡行する。
4年前に歩いた時は水量が少なく、何の問題もなかったが、今回は多く、靴の中を濡らさずに遡行できるぎりぎりである。
露天風呂の所から水晶の頂上までの標高差は約900m。その内、標高約2500mの地点で沢から離れ、尾根に取りついてから温泉沢ノ頭までは、標高差約400mの急登となる。
山地図では熟達者向きと書かれているが、目印も多く、迷いやすい所や危険個所もなく、水量が多くなければ楽勝である。
9時半、温泉沢ノ頭へ上がる。早朝はよく晴れていたが、この時間には雲が増え、白馬岳や剱岳は辛うじて見えている。
北峰と南峰からなる双耳峰の水晶岳からの展望もまずまず。
槍ヶ岳は、温泉沢ノ頭からは見えていたが、水晶岳からは雲が増えて見えなくなっている。
水晶の頂上は岩がゴツゴツしていて、標高が高い分、じっとしていると寒くなりそう。
水晶小屋のベンチで昼食後、ワリモ岳(2888m)の頂上を踏み、鷲羽岳へ向かう。
鷲羽の頂上では、それまでガスに隠されていた槍の穂先が姿を現す。その一瞬のガスの切れ間以降、再び姿を見せてはくれず。
三俣山荘へ向かって標高差400m近いジグザグの急降下となる。
Aさんはすっかりお疲れのご様子だが、明日折立まで下山することを考えると、三俣山荘泊まりという訳にもいかず、予約済みの黒部五郎小舎まで頑張る。
前方の三俣蓮華岳(2841m)は、晴れていれば行く予定だったが、ガスが掛かり始めていたので北側をトラバースする。
トラバース路も山頂経由と10分しか違わないコースタイム通り、アップダウンの多い道だ。
二つのルートが合流し、しばらく平坦な道を歩いた後、黒部五郎小舎へ向かって急坂を下る。
夕方5時、疲れ果てて小舎(こや)へ着く。朝、高天原を出てから12時間が経っている。
水晶、鷲羽は、当初Aさんが立てたスケジュールには入ってなかった。私はどちらも3度目の登頂だったが、Aさんは初めて。
今朝の高天原出発時、天気が悪ければ水晶池経由で岩苔乗越へ上がる予定だったが、天気が良かったので温泉沢を上がった。
水晶、鷲羽へ登れたのは嬉しかったが、それと引き換えにAさんは可哀そうなほどの激疲労に見舞われていた。
夕食は6時半から。
畳の部屋で、遅く到着した3組のカップルだけ。
小舎へ着いて1時間半後だったので、休むことが出来て良かった。
明日の天気は曇りのち雨の予報だが、寝る前に外へ出て見ると、もう小雨が降っていた。
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7月29日(木) 黒部五郎小舎〜折立
初日、二日目と運良く雨具を着ずに済んだが、4日目は終日雨。
黒部五郎のカール内は美しい風景なのだが、それも晴れていればこそ。
カールの西端で尾根へ上がると風が強くなる。雨はそれほど激しくはない。
黒部五郎の頂上へは縦走路から分岐して南へ向かう。Aさんに、行くかどうか聞いてみる。きっぱりと、「行きます」。
聞くだけヤボであった。
山頂は意外に風雨ともに激しくはなかった。時刻をメモっただけだが、山での時間は4〜5分でもアッという間だ。
晴れていれば四周の山と雲ノ平へ一礼し、「山よ、ありがとう!」と言うべきところだが、それは叶わなかった。
縦走路へ戻り、黒部五郎岳の西側斜面を急降下し、風雨を遮るものは全くない尾根を延々と太郎平へ向かって歩く。
取り敢えずの通過ポイントは北ノ俣岳だが、行けども行けども辿り着かない感じ。
緩やかなアップダウンだが、丘状のピークではまともに立って歩けない。わが50キロそこそこの骨皮筋衛門では、強風に翻弄される。
転落する恐れのある岩場とか、滑落するかもしれない雪渓なら、引き返さざるを得なかっただろう。
これが登りなら、昨年7月のトムラウシの二の舞になりかねないが、次第に標高は下がるので恐怖感はない。
10時半、やっとの思いで北ノ俣岳へ着く。
その後、ほとんど平坦な太郎山を木道で通過し、間もなく太郎平小屋へ着く。
濡れたものを着替えたり、小屋で出して頂いた熱々のラーメンを食べたりして、1時間近く休む。
小屋の外には雨風をしのげるテーブルがあり、熱いお茶が無料で飲め、大変ありがたかった。
折立へ向かい、最後の行程を辿る。
風雨は相変わらず激しい。が、次から次へと人が上がって来る。
あまりにも登る人が多いので、道端に腰を降ろしていたおばさんに、「明日は天気がいいんですか?」と聞いてみる。
予報では、明日も雨で、明後日から晴れるとのこと。
まぁ、人それぞれ色んな事情があるだろうけれど、私達なら初日から雨の中を歩くことは考えられない。
10人前後の、ツアーかと思われるパーティーも何組かある。
中には傘を差して歩く人、ポンチョをザックの上から被っている若い人もいる。
雨の日の3000m級の稜線や頂上がどんなものか、これから先、長く山をやろうとする人は、最初に身をもって体験すべきだと思う。
折立が近くなった林の中では風がなく、雨もほとんどやんでいる。
16時少し前、下山する。
閑散とした駐車場では、ツアーバスのドライバーと思われる人同士が話をしている。
その後、Aさんが知っていた平湯温泉の温泉施設“平湯の森”で4日間の汗を流す。幾つもの露天風呂があり、打たせ湯はザックを担いだ肩には心地好い。
平日なので、時間調整し、高速料金が半額となる深夜に帰宅する。
身も心も山にのめり込んだ4日間だった。
今、静かに引く潮のように、あの非日常の余韻が薄れてゆく。
そして、いつも思う、山っていいなぁ〜と。
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