セドノ沢・書策新道(遭難者捜索救助)
- GPS
- 11:00
- 距離
- 3.6km
- 登り
- 618m
- 下り
- 613m
コースタイム
6:02水無川本谷F1−
6:11セドノ沢二俣−
セドノ沢右俣へ−
7:43セドノ沢右俣2段35m大滝−
(警察救助隊から要救者ヘリで発見の連絡)
大滝を登り右岸尾根を書策新道目指し登る−
9:02書策新道標高1120m−
書策新道下降−
セドノ沢左俣2段13m大滝上部−
(先行した機動隊救助を待ち、もし人海救助の場合の要員として待機)
15:20天候好天でヘリによる要救者ピックアップ−
16:00戸沢に下山
天候 | 晴れのち雨のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
■書策新道(かいさくしんどう) 今回遭難が発生した方は、現在廃道となっている書策新道を登る途中、 道に迷ってセドノ沢左俣の支流に入り、滝から転落して動けなくなった ものです。 書策新道は現在、一般登山道ではなく管理もされません。 すなわち管理登山道ではなくバリエーションルートということになります。 入口に進入禁止の意を示すテープが張られています。 それでもこのルートを愛好する入山者がいらっしゃり 大体同じパターンで遭難事故が発生しています。 <道迷いを起こしやすい箇所> ・このルートを登りに使う場合、後半部でセドノ沢左俣沿いに100m近く 主に右岸(登る際は沢の左側、下る際は沢の右側ということです)を 歩きます。 開けた河原の中央にある木にペットボトルがぶら下がっている ポイントで右側の斜面につけられた踏み跡に入ります。 夏は径路上に少々藪が覆っていて見つかりにくいことがあります。 今回の遭難者は、登っていく際、その河原手前の「白竜の滝」(右岸の支流 にかかる5mくらいの滝)あたりから獣道を追って右手の尾根斜面に 入ってしまったようです。 ※その手前に水無川本谷を横断する箇所もありますので、セドノ沢と お間違いのないように。 ・またこのルートを下降に使う場合、同じくセドノ沢左俣の河原に降りたら 沢の右側を100m近く沢に沿って下降すると、径路は沢を離れ右(西)の 斜面へ向かいます。 数年前の遭難者は、この沢から離れるポイントを見過ごし、そのまま セドノ沢左俣を下降し滝から落ちたものでした。 その他、前半部の水無川本谷を徒渉する手前の、下がえぐれたトラバース箇所 は2012年の台風4号と7月豪雨で足場になっていた土砂が流失しており 2012/08現在は杉の木橋がたて架けられております。これも大雨があれば 落ちる可能性があります。 またさらに戸沢側のガレた小沢に架けられた木橋もかなり緩んでおります。 従いまして、仮に迷っても地形図とコンパスを使ってリカバリーができる方 (GPSではそこまで細かい地形を読み取ることは厳しいでしょう)。 沢登りに慣れている方、同ルート経験者を同行する方など向きのルート でしょう。 表丹沢のしっかり管理されたルートしか歩いたことがない方、単独者は 控えた方がよいです。 また捜索する側の立場からですが ・コンパス等方向が確認できるものを持っていれば、要救助連絡の際 例えば「沢は南南西に向かって流れています」とか 「水量は膝くらいで、両側は切り立っている狭い沢です」とか なるべく冷静に伝えてもらうと、遭難ポイントの絞り出しも やりやすくなります。 ・携帯が通じて要救助の連絡ができたら、救助側と次の連絡時刻を決めて それまでは携帯電話の電源を切っておきます。 山では町よりも電池の消耗が激しいためです。 また、携帯を使った写真や動画撮影はかなりの電力を消費してしまうので 山の中では携帯はそのような使い方は避けるべきでしょう。 私は常に携帯充電池(乾電池式。もちろん予備電池も)を携行しています。 ・要救助連絡をしたら動かずに保温、体力温存に努める。 焦って動いてしまうと、折角助かるかもしれなかったのに転落してしまい 命を落とした事例が多数あります。今年の冬に湯河原新崎川方面でもあり。 金・銀のレスキューシート、ツエルト(簡易テント)、小型ストーブ、 非常食、ヘッドライトおよび予備電池はたとえハイキングでも携行する。 ・捜索ヘリが来たら、ヘリに向かってライトを点滅したり、銀シートなど とにかく光るものを掲げたりする。 ・登山では当たり前のことですが、登山計画書を管轄警察に提出すること。 届出ポストがあれば入山前に投函、ない場合は事前に管轄警察署を 調べて何かしらの手段で送付が理想です。 山岳会に入っていれば計画書提出と下山連絡がほとんどの会で義務化 されいるので、下山連絡がない場合は会が救助または救助要請してくれる ので安心です。 会に入っていない場合は、すくなくとも家族や友人、職場などに 計画書を渡したり、どのルートに入り、何日何時までに下山連絡をいれる よと伝えてください。もちろん連絡がない場合は警察に連絡を入れてよと 併せて依頼しておくのがセオリーです。 単身でお住まいの方は特にこの仕組みができていないと、 永遠に消息不明者となってしまいます。 (実際、丹沢クラスでもそのような不明者が大勢いるのです) |
写真
感想
当初8/6前夜発で谷川の沢登り予定であったが
市から遭難者発生で我々民間救助隊にも捜索依頼連絡が入る。
(要救者は8/5に遭難したとのこと)
予定を急遽変更し救助に加わることにする。
8/6夜、秦野警察署に赴き情報収集。
要救者からの携帯連絡情報を基に事故発生ポイント候補を絞る。
7日は機動隊も加わり大人数体制を組む警察、消防はセドノ沢左俣を、
35m大滝を擁するセドノ沢右俣は慣れている私が担当することになった。
8/7早朝5時前に戸沢の臨時派出所にて警察、機動隊等と合流。
前夜急遽作成した1/5000地形図を基に再度ポイントを指し示す。
私の示唆したポイントは
・セドノ沢左俣標高975mあたりで合流する東側の支流
・同じく標高885mあたりで合流する東側の支流
またもしかしたらセドノ沢右俣標高915mで合わさる左沢、
セドノ沢右俣大滝西側のルンゼ、
標高1015mあたりで合わさる左沢。
警察隊に先行してビレイパートナーと右俣に入る。
右俣F1−2段(3+8m)の8mは左コーナーで卦蕁椒ライミング。
まだ朝日が当たらず凹角は暗くて残置ハーケンが見づらい。
すぐのF2−8mは左側の細かいフェイスから登る。(元蕁檗
この滝の上はドコモ通話OK。(F1の基部はNG)
少し離れて長さ5mトイ状滝、2段12m滝(右側から卦蕁法
要救者の名前をコール、ホイッスルをしながら遡行。
さらに少し離れてこの沢の核心部F4−2段35m大滝が出てくる。
少し休憩してロープをさばきクライミング開始。
残置ハーケン類は古いものばかりでテンションは掛けられない。
前日の降雨のせいで一部フェイスは滑りやすい。(元蕁
パートナーを引き上げたところで警察から携帯連絡が入った。
「ヘリが要救者を上空から確認しました」
やはり左俣の左岸支流のようだ。
大滝終了点から左側の巻き径を使い、右俣には戻らず
そのまま右岸尾根を書策新道目指し詰めた。
新道を下降し径路上で待機している警察救助隊から救助状況を確認。
ヘリがホバリングしているポイントは
やはり標高885mで合わさる左岸の支流のようだが
かなり合流点に近い下流部だ。
自分で以前作った遡行図を見ると、セドノ沢左俣2段13m大滝の
すぐ上ということになる。
あの辺りは特に左岸はたしかゴルジュ状で険しいはず。
ヘリでうまくピックアップできればよいのだがと期待していたが
やはり木々が上を覆っていてホイストは無理らしく
おまけに雷注意報が出たので、人海戦術による搬出の可能性濃厚とのこと。
左俣大滝上部に急なザレ尾根を下降する。
すでに機動隊が支流の滝(8m)左側にFIXロープを張り合流した模様。
やはりこの辺りは崖ゴルジュで引き下ろしは斜張り等の工作が必要と思われた。
沢を降ろすには2段13m大滝、さらに下流部は数mの小滝が連続しており
水無川本谷に出てからもF1−8m、堰堤が控えており
相当な時間と困難が予想された。
また書策新道に引き上げるのも、途中岩場が点在する急なザレがあり
こちらも困難さがある。
あれこれ考えながら、機動隊の救助工作を見守る。
そこにきて大粒の雨が降ってきた。
見る見る間に沢は濁り出し少しずつ増水してくる。
皆ずぶ濡れになる。
ヘリのピックアップの可能性はもうないであろうと諦めていたら
昨日同様、次第に雨も止み晴れ間が覗き出す。
上部の機動隊がにわかに動き出した。
要救者のストレッチャー梱包も終わったらしく
どうやら引き上げにかかっているよう。
おそらく航空隊と連絡を取って上部の少し上空が開けたところで
ピックアップするらしい。
再びヘリがやってきたのを確認して
我々は書策新道に戻って様子を見守る。
午後3時20分頃、要救者がホイストでピックアップされるのを確認。
今こちらができることは「ガンバー!」と声援を送ることだけであった。
要救者も動けない状態で二晩、雨と沢の水流によく耐えてくれました。
「生存」していたことが何よりうれしかった。
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