鳳凰1山(過去レコです)。


- GPS
- 32:00
- 距離
- 18.7km
- 登り
- 1,711m
- 下り
- 1,711m
天候 | 1日目 曇りのち雨。 2日目 雨。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所はありません。 |
写真
感想
豊橋のSさんから、3連休を利用して鳳凰三山に行こうというメールがあり、久し振りに2人で登ることになった。2005年9月16日、天気予報によれば巨大台風14号が秋雨前線を刺激して連休中は雨との事であるが、Sさんとの山行は雨である事が多いので躊躇することなく決行。電車で豊橋駅まで行きSさんの車に乗り込む。東名高速道を清水で下り、国道52号線を富士川に沿って北上して南アルプス市に至る。南アルプス林道は夏季の交通規制で、芦安からはバスかタクシーを利用するしか方法は無いとの事であったが、夜叉神トンネルの手前の登山口まではマイカーでも入る事が出来た。芦安からは細い山道となり、カーブミラーと「警笛ならせ」の連続である。今晩の宿泊先である「夜叉神の森」の宿泊客はわれわれ2人だけである。誰もいない風呂に入り、2人で日本酒の4合瓶を空にし、夕食時にはビールと酒を頼み、酔っ払って早々と布団の中に入った。
白々と明けだしたので窓を開けると、森に霧が立ち込めている。どんよりとした曇り空の中、6時に「夜叉神峠、60分、現在地標高1380m」と書かれた登山口に入った。「60分」の横には「80分」と書き足されており、60分」は健脚者の所要時間であると推測される。雑木林の中の登山道は歩きやすく、ジグザグ道で地図上の等高線から考えていた程の勾配ではない。「ミズナラ、ブナ科」、「ヤマハンノキ、カバノキ科」、「ハリギリ、ウコギ科」などと記された木札が掛けられており、ハイキングコースとして整備されている。いつもの事ではあるが、Sさんはさっさと先に行き、わたしはゆっくりと登り、Sさんが花の写真を撮っている間に追い越して先に進む。やがて暗い雑木林に日が差し込んできて、明るい空が見えてくる。スパッツを履き、ザックカバーを掛け、いつ雨が降って来ても大丈夫なように準備万端整えてきたが、予想外の天気で大喜び。「五本松」と木札の掛かったカラマツの巨木は、その名の通り1本の太い幹から5本の太い幹がすくっと立ちあがり、見上げればはるか上方に緑の葉を付けている。登山口から1時間5分、「南アルプス国立公園、夜叉神峠、標高1776m」と記された広場に到着。広場の奥に小さな小屋があるが、人の気配はしない。雲海に覆われた谷の向こうに白峰三山が見える。とは言っても緑の中腹が見えるだけで、肝心の稜線は横長に広がる雲をかぶり、しばし待ってもその姿を現さない。トリカブトが群生し、ツリガネニンジンや半分散りかけたヤナギランが咲いている。ひと息ついて長袖の登山シャツを脱ぎ、夜叉神峠を出発。平らな道の横にはヤマハハコ、シオン、キオン、ヒメウメバチソウなどが咲き、赤い実をつけたゴゼンタチバナが秋を感じさせる。一旦下り、緩やかな道は段々急になり、息を整えながらゆっくりと登る。右手の木立ちの間から、櫛形山から続く尾根が見え、その向こうに富士が黒々と雲の上に浮かんでいる。雨で何も見えない予想であったが、思わぬ光景を目にしSさんと喜びを分かち合う。大崖頭山の西山腹を斜めの登り道は歩きやすいが、これが延々と続き嫌になる。林の隙間から雲の取れた北岳がちらほら垣間見える。最後の急坂を頑張って登り、8時35分、杖立峠に到着。林に囲まれた峠で展望は無く、「苺平(辻山)2時間30分」と書かれた錆びた鉄製の案内等が立っているのみである。花崗岩の砂利状の道を下り、再び登りが始まる。緩やかな道はまたまた急になり、中年の男2人、女1人の3人グループと、単独行の男と抜きつ抜かれつしながら、とは云ってもどちらかが休んでいる間に追い抜くだけのことであるが、頑張って登る。高い木立がなくなり、急に展望が開けた広場に出て、ここでひと休み。正面に白峰三山が大きく立ちはだかっている。北岳は雲の中、間ノ岳は半分雲の中、農鳥岳の頂上が姿を現しているだけだが、期待していなかっただけに感激もひとしおである。再び林間の急登が始まるが、息を整えつつゆっくりと登り、10時17分、苺平に到着。苺平といってもそれ程の広さがあるわけでもなく、苺が生えているわけでもない。休憩のたびに何かを口に放り込み、水分を補給する。苺平からは緩やかな下りとなり、心肺への負担はなく、11時17分、楽々と南御室小屋に到着。本日の宿泊地である薬師岳小屋へはここから1時間半程、あんまり早く着いてもすることが無く、ここでゆっくりしようと缶ビールを買って飲み干す。天気が良いので、広場には小屋の布団も干してある。ベンチにひっくり返っていると、急に雲行きが怪しくなってきたので、雨の降らないうちにと出発。薬師岳小屋には飲み水は無いとの事なので、南御室小屋の水場で2.5リットルの水を補給しザックに詰める。重くなったザックを背負い、急坂を登る。やがて森林限界となり、「ガマの岩」で休息。大岩と大岩の間から涼しい風が吹き抜け、汗を飛ばしてくれる。さらに登りが続き、大石が積み重なった砂払岳に到着。その名の通り、白砂を払うがごとく強い風が吹き抜ける。赤い○の印された大石を渡って下ると、林に囲まれた薬師岳小屋の青い屋根が見えた。13時5分、小屋に到着、夜叉神峠登山口から7時間5分の行程であった。
小屋の人が言うには、今夜は郡山と大阪二つの団体の予約があり、毛布は1枚づつあるが布団は2人で1枚との事である。缶ビールを飲みながら話しを聞いていると、明日の天気は大雨で、広河原から夜叉神までの林道は閉鎖されるかも知れないと言う。なんでも、以前、土砂崩れに巻き込まれて事故があり、以来降り始めから80ミリで林道は閉鎖され、許可証を持った山小屋の人でも通ることが出来ないとの事である。今のうちに薬師岳に登り、観音岳、地蔵岳はよして、明日はこのまま夜叉神峠まで下りた方がいいと言う。ビールを飲み終わり、取りあえず薬師岳に登ることにした。砂利道を少し登るとすぐに頂上(2780m)に着いた。遮るものの無い白い頂上台地は、風がビュウービュウーと吹きまくり、ガスで展望は全く無い。少し観音岳の方に行って見るも、強風で吹き飛ばされそうで、記念写真だけ撮って早々と小屋に引き返す。
食堂では3人組と単独行の男が酒盛りを始めており、われわれもこれに加わる。単独行の男は奈良からの単身赴任で、3人組の1人は山のヴェテランらしく、もう1人はオカマちゃんで、ただ一人の中年過ぎの女性を「ママ」と呼んでいる。オカマちゃんが2日間漬けて作ったたまご、古漬けのにたくもじ、フランクフルトソーセージ、おでんと、ものすごい量の食べ物を分けてくれ、わたしのブランデー、佐野さんのウイスキー、オカマちゃんの白ワイン、さらにはママが、「わたしのおごり〜」と言って一人に1本づつワンカップを頼む。外は雨が降り出し、その中を大阪の団体さんが到着。宿の人が大阪の団体さんは喧しいからと眉をひそめていたが、彼らは大変大人しく、反対にわれわれ酔っ払いの山談義は辺りかまわず大いに盛り上がった。ばさばさのご飯とおでんのおかずの、それはそれはまずい夕食を胃に押し込み、7時前には眠ってしまった。飲みすぎと食いすぎのため気持ち悪くなって目を覚まし、時計を見るとまだ10時であった。以後は屋根をたたく雨の音を聞きながらうつらうつらと夜を明かした。
翌朝は大雨と強風で、この調子で降り続いたならば80ミリなぞすぐになり、足止めを食っては仕事にならないと、迷うことなく縦走する気持ちは捨てられた。3人組は地蔵岳まで登って、それから引き返してくると言い、単身赴任者は青木鉱泉まで行けたら行くと言う。とてもまずい朝飯を食い、嵐の中、6時に小屋を発った。砂払岳を過ぎると風は遮られ、雨も小降りとなった。雨に濡れた石や木の根っ子で滑らないよう、ゆっくりと慎重に下る。6時50分、南御室小屋に到着し小休憩。ゆるやかな登りを気分良く歩き、7時25分に苺平へ到着。風で林がざわめく中、時々幹のきしむ音を聞きながら急坂を下る。短い登りを頑張って8時40分、杖立峠に到着。一服していると、例の3人組のヴェテランがダブルストックを使って息を切らせて登ってくる。少し遅れてママ、大分遅れてオカマちゃんとやって来て、聞くと彼らも強風のため断念したと云う。少し休んでからヴェテランを先頭に、3人ともダブルストックを使って勢いよく下りて行く。われわれは相変わらず滑らないようにゆっくりと下り、みるみるうちに3人との距離が離れていく。しかし3人組もその間隔が広まり、オカマちゃんが遅れ始める。オカマちゃんに負けては恥だと、われわれも歩を速め、その背中に追いつく。こんなことをしながら、9時半に夜叉神峠に到着。3人組は先に発ち、われわれも少し早めの速度で峠を下る。土砂降りの中、足がガクガクし、もうそろそろ膝に来るのではないかと思われる頃、夜叉神の森の駐車場に降り立った。薬師岳小屋を発ってから4四時間10分が経っていた。
芦安の南アルプス市営の日帰り入浴温泉で2日分の汗を流し、帰途についた。鳳凰三山が鳳凰一山になってしまったが、思わぬ晴れ間に富士山も白峰三山も見ることが出来、久し振りのSさんとのコンビで、おまけに変な3人組とも会え、十分楽しい山行であった。
翌日から両下肢が痛み出し、その痛みは5日間続いた。
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