鷲羽・水晶(過去レコです)。
- GPS
- 80:00
- 距離
- 45.8km
- 登り
- 3,683m
- 下り
- 3,680m
天候 | おおむね晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ここは北アルプス最深部、それなりに危険個所はあります。 |
写真
感想
2008年の夏山、3泊4日の日程で北アルプス最深部の鷲羽岳と水晶岳を選んだ。欲張って黒部五郎岳も登ろうかと考えたが、3泊4日では少々無理だということが分かり、こちらは断念。新穂高から高瀬ダムまでの縦走も考えたが時間的に難しく、新穂高からの往復登山とした。7月31日、朝3時に出発し、6時10分に新穂高に到着。木曜日のウイークデイだというのに深山荘前の無料駐車場は3段ともほぼ満車状態であるが、隙間を見つけて無事駐車。6時25分に駐車場を出発し、新穂高バス停を経てホテルニュー穂高脇のゲートに至る。途中の有料駐車場には数台の車が停められているのみである。この駐車場の料金は6時間500円、一日停めれば2000円、山で何泊もすればかなりの料金となるので、停める人は少ないのだろう。「双六岳・笠ヶ岳方面、わさび平小屋まで約70分」と標識が立っているゲートの横から林道に入る。錫杖岳を左上に仰ぎ、砂防ダムで固められた穴毛谷を過ぎ、左俣林道を進む。1時間ほどで笠新道の登り口に達すると、水場の横で数人の人が休んでいる。わたしはそのままやり過ごし、わさび平まで行く。新穂高からわさび平小屋まで緩やかな登りではあるが、標高差は300mあり結構汗もかく。ザックを下ろしてひと休み。長袖シャツを脱いでTシャツ姿となり、露出した腕に日焼け止めクリームを塗りたくる。目の前を乗用車に先導されて大きなダンプが通り過ぎて行く。ここはまだまだ下界である。わさび平小屋からしばらく行くと左俣谷が近づいて、林道は谷に掛かった橋の手前で閉鎖されている。橋の方向を指し、「↓奥丸山」、谷の右岸を指し、「→鏡平経由双六岳」と標識があり、ここが小池新道の入り口であることが判る。太陽が燦々と降り注ぐ中、白い大石が積み重なった河原を赤い○印に従って登ると、間もなく低木の中に切り開かれた細い道となる。木々の間から、右手に穂高連峰が姿を現し、振り返れば新穂高ロープウェイの鉄塔が見える。独標、西穂、その間に見える小さな三角はピラミッドピーク、そしてジャンダルム、前穂、奥穂、涸沢岳、北穂、一旦落ちて大キレットから南岳、大喰岳、そして槍と稜線が続く。槍は小槍を従え、魚を刺す銛のような形をしている。目の前の山は弓折岳だけだろうか、取り合えずその山を目指して登りが続く。秩父沢の少し先の水場で1Lの水筒に水を入れ、ポカリスウェットを作る。重くなったザックを背負って急登を登ると、ミヤママンネングサや大輪のキヌガサソウが出迎え、そしてイタドリが原に出る。急登が続き、左右二股に分かれた右側の道を登る。ゴゼンタチバナが群れ咲いている。シシウドが原はまだなのか、木道が現れ、大岩に白いペンキで、「鏡平500m」と書かれてある。知らぬ間にシシウドが原は過ぎたようだ。岩を辿って登り、再び木道を歩いて鏡池に到着。鏡池、その名の如く池の向こうの木々が水面に写っている。先ほどまで姿を現していた穂高連峰、今は雲の中、残念ながら池面にその影は無い。鏡平山荘のベンチに腰掛け、一杯400円也の温かいコーヒーを飲む。ポツリ、ん? ひょうたん池の池面を見ると、小さな波紋が幾つも広がっている。小雨降る中、鏡平山荘を後にして木道を渡る。低くなった木々の中の溝状の急登、崩壊斜面に雪が残っている尾根、ヨツバシオガマ、ヤマハハコ、ミヤマキスミレ、レイジンソウ、エンレイソウ、クルマユリ、オオウバユリ、花々を愛で、写真を撮りながらゆっくり登る。弓折岳分岐でひと休み。左に行けば笠岳へ、わたしは右手の岩の階段を登って双六へ。じきに勾配は緩やかになり稜線歩きとなるが、小雨が降っていて穂高の展望は無い。ミヤマダイモンジソウが群れ咲き、雪田では夏姿のライチョウの一家が戯れている。雨が本格的になりそうなのでカッパを着込んで歩く。軽いアップダウン、雪田を渡る風は冷たく、カッパを着ていても汗をかかない。広い稜線は今が盛りのお花畑。ハクサンイチゲ、チングルマ、シナノキンバイ、ハクサンフウロなど、色とりどりの花が所狭しと咲き競っている。やがて登山道は右山のトラバースとなり、ガスの晴れ間から遠くの谷間に、カラフルなテン場、そして双六小屋の屋根も見えてくる。谷に降り立つと木道が続き、ハクサンイチゲなどに混じって、アオノツガザクラやコイワカガミ、ミヤマクロユリも目立つようになる。もう着いたも同然、花を楽しみながらゆっくりと木道を歩き、本日の山小屋、双六小屋に到着したのは3時過ぎであった。受付をし、案内された2階の「笠ケ岳」の間は12畳ほどの広さ、奥の片隅が今晩の寝床。夏山最盛期なのに、なんと今日は一人一枚の布団を占拠できるとの事。ラッキー。外で缶ビールと生ビールでのどを潤し、持参のウイスキーをちびりちびり、すると睡魔に襲われ夕食までのおよそ1時間、布団をかむってグーグー。5時半から夕食を食べ、7時前には眠りに着いた。
翌朝は4時半に起床。昨晩と違って晴天。小屋の人に、谷を隔てて正面に見えるあの立派な山は何て云う山かと聞くと、ワシバダケだと教えてくれる。今日はあの山に登るんだが、どこをどう通って行くのか、ここからは良く分からない。6時10分に小屋を出発し、双六岳への登山道に入る。いきなりの急登、みるみる小屋の赤屋根が小さくなり、西鎌尾根のジグザグの登山道が向かいに見える。軽装の若者たちがわたしを追い越して行く。テン場を基地にあちこち登っているのだろう。そういえば、双六小屋の宿泊者には若者の姿は無く、ほとんどが中高年者、でも行き交う登山者には若者の姿も多い。急坂を登り切ると双六岳が姿を現し、道は平坦となって三俣山荘巻道との分岐に出る。ハイマツの中のゆるやかな道は再び急登となり、これを登り切って予定より少し早く頂上に着いたかと思うと、そこは広い頂上台地の一角、まだ先にもう一つ盛り上がった本当の頂上がある。展望は抜群。これから向う三俣蓮華岳、鷲羽、黒岳が連なり、左手には黒部五郎が始めて姿を現し、遠くに太郎兵衛平から薬師岳とゴールデンルートが続く。大きなカールを広げた黒部五郎は、思い浮かべていたよりずっと立派な存在感のある山であった。振り向けば樅沢岳の向こう、雲の上に槍の穂先、それに続く穂高の峰々が、緑のハイマツの台地の上に黒々と並んでいる。ここから見る槍にはもう小槍の姿は無い。弓折岳から続く尾根が南に伸び、その終点に笠ケ岳が端正な姿を浮かべている。広い稜線を朝の陽を浴びて気持ちよく歩く。緩やかに下り切ると登りになる。結構な急坂で、下ってくる人に、「この山は何ていう山か?」と尋ねても、誰も知らない。名も無い山にしてはシンドイ山だなと思いつつ登っていると、何人目かの人がやっと、「マルヤマだと思いますが、どこが頂上なのかよくわかりません」と答えてくれた。登りついたところは広い台地、なるほどどこが頂上なんかわからない。三俣蓮華岳までの稜線上に登山道が続き、その右手斜面には雪がたっぷり残っている。一旦下って三俣蓮華岳に登りつく。三俣、三つの国、すなわち飛騨、越中、信濃の国の境である。後ろが岐阜県、前が富山県、右手が長野県であろうが、どちらを眺めても山ばかり、どの県であろうが全く関係ない。ここは「北アルプス」、それで良い。左手に黒部五郎への道を分け、その奥に「三俣蓮華岳頂上」という柱がある。鷲羽岳がぐ〜んと近づき、その左手にはワリモ岳が寄り添い、そのまた左手奥の黒岳はまだまだ遠い。ワリモ岳から支尾根が延び、祖父(じじ)岳に連なっている。三俣蓮華岳から鷲羽乗越へ下る道は分かりにくく、頂上をウロウロしてやっと入り口が判明。急なガレ場を下っていくと下に三俣山荘の赤い屋根が小さく見えるが、じきに隠れてしまう。鷲羽岳への登山道を正面に見ながら、慎重に急坂を下って双六への巻き道の分岐に至る。その先のハイマツの切り開きにベンチがあるが、休まず下る。道は少し緩やかになり、随分下ったように感じ始めた頃、ようやく再び赤い屋根が見え始める。ハイマツの中を進み、テン場を通り過ぎると三俣山荘に到着。小屋の前の石に腰をおろして休憩。今降りてきた方を見やると、黒部五郎と見間違えるほど立派な三俣蓮華岳が立っている。丸山から眺めた三俣蓮華岳は丸い穏やかな山に見え、実際登ってきた時も女性的な趣きを呈していたが、ここから見る三俣蓮華岳は同じ山とは思えない、荒々しい岩肌を誇らしげに見せている男性的な山である。双六小屋で作ったポカリスウェット1Lは飲み干され、三俣山荘の豊富な水を使って新たにポカリスウェット1Lを作る。鷲羽岳からおばさんが下りてきて隣りのベンチに座ったので話しをする。「どこから来たのですか?」と聞くと、「しろうま」。「ん?」と一瞬訳が分からなかったが、わたしにはとても考えられない行程をスラリと云ってのける。白馬三山縦走〜不帰ノ険〜唐松岳〜五竜岳〜鹿島槍ヶ岳〜爺ケ岳〜岩小屋沢岳〜鳴沢岳〜スバリ岳〜針の木岳〜蓮華岳〜七倉岳〜烏帽子岳〜野口五郎岳〜真砂岳〜鷲羽岳、そして今ここに到着。この先は黒部五郎岳〜北ノ俣岳〜太郎兵衛平〜折立まで、全部で12日間の行程だと云う。あっけに取られて聞いていたが、ここまでくれば感嘆するより仕方が無い。世の中にはすごいおばさんがいるもんだ、と思いつつも、「薬師岳から立山まで行かないんですか?」と聞くと、「お金が無い」。いや〜まいったまいった。たっぷり休養をとって鷲羽の登りに掛かる。ジグザグの急坂をゆっくりゆっくり登る。いつしかハイマツも消え、岩だらけの中に道が続き、三俣山荘の赤い屋根がどんどん遠くなっていく。遮るものの無い陽射し、紫外線を四方から浴びながら高度を稼ぐ。途中、三俣蓮華岳を眺めながら休憩し、小腹がすいたとグーピタを食べる。一息ついて元気を取り戻し再び登り始める。鷲羽の尾根に刻まれた登山道の一番上が頂上だと思っていたが、さらに左手に廻りこんで、下からは見えなかったピークが現れ、そこに人の姿も見える。頂上はまだ先だ。右手下に水を湛えた火口が見える。鷲羽池だ。火口の南側は深い谷に落ち込み、その向こうの赤茶けた硫黄尾根を隔てて天を突く槍ヶ岳、それに続く北鎌尾根のとげとげしい稜線。槍の左手には東鎌尾根、その向こうに形の良い常念岳が顔をのぞかせ、その左手に大天井、そして燕岳、去年歩いた表銀座縦走路を見渡して、よくぞあんな長い距離を歩いたもんだと感慨にふける。12時前、鷲羽の狭い山頂に到着。大石にこしを下ろし、双六小屋で作って貰った弁当を食べる。山々には雲がかかってきたが、この山だけはザックを触ると熱いほど燦々と陽が降り注いでいる。予定より少し遅れているが今日は水晶小屋まで行くだけ、慌てることは無いのだがこの暑さ、さっさと先に向かうことにする。ワリモ岳を越え、黒岳へ道が続いているのが見える。まずは白い岩がごろごろする斜面につけられた狭い登山道を下り、鞍部からワリモ岳に登り返す。崩壊した狭い岩だらけの稜線を登りワリモ岳頂上に到着。黒岳まで、S字状に曲がって稜線がうねっている。目指す水晶小屋は赤岳の奥、まだまだ遠い。ワリモ岳を下ってワリモ沢乗越に至る。「ここはワリモ北分岐」と記された柱が立ち、岩苔乗越へ向かって急な道が分かれている。そこから登ってきた人が喘ぎながら休んでいる。そこから先は緩やかな広い尾根、ハクサンイチゲのお花畑が広がり、その向こうに白い薬師岳が長々と横たわっている。気持ちよく歩いて行くと、雪を冠ったように白く光る真砂岳と野口五郎岳が姿を現し、もうひと頑張りして水晶小屋に到着。水晶小屋は小さいけれど真新しい気持ちの良い小屋である。定員は30名であるが、夏山最盛期の今、布団は2人に一枚と告げられ、一階の部屋の奥の隅に案内される。水は全く無く、お茶は勿論、飲み水もも有料、トイレは外。まだ早いので今日のうちに黒岳に登ろうと、ポカリスウェットを一本500円で購入し、それを片手に持って出発。ザックを背負っていないので随分身軽となり、広い尾根を気分良く歩く。遠そうに見えた黒岳もどんどん近づいてくる。ひとつピークを越えると岩が重なる狭い道となり、ハシゴも現れる。遠くから見るとその名の通りクログロとした山であるが、近くによると灰白色の岩で白っぽく見える。重なった岩を登って黒岳山頂に到着。小屋から40分ほどの行程であった。岩に腰を下ろして周囲を眺める。ここは北アルプスのどまん中、鷲羽から野口五郎、さらにその先に続く裏銀座縦走路、北に赤牛岳からその先に続く読売新道、さらにその向こうに立山から薬師岳へと続くダイアモンドルート、眼下に岩苔小谷をへだてて雲ノ平、その向こうに黒部五郎、360度、全て北アルプスである。昨日今日と長い道のりを登り、ようやくたどり着いた今年の夏のメインイヴェント黒岳は、期待に違わないまさに別世界の山であった。
小さな水晶小屋、トイレの臭いが漂う部屋の片隅でうとうとと二日目の夜を明かし、4時半に起床。朝食を摂って外に出ると、昨日は曇って見えなかった遠くの山々もくっきりと見渡せる。立山・剣、黒部湖を挟んで後ろ立山連峰、さらにその奥に白馬連峰、目を転すれば常念岳の右手、表銀座縦走路の上に富士山と八ヶ岳連峰が浮いている。今日もいい天気が期待出来そうだ、6時に小屋を出発し、赤岳をいっきに下ってワリモ沢乗越に至る。ガレ場の急坂をズリズリとジグザグに下り、岩苔乗越に降り立つ。ここは十字路、右に高天原へ下る道、左に黒部源流に下る道がそれぞれ分かれているが、わたしは真っ直ぐ祖父岳を目指す。雪渓を登ると、岩だらけの見晴らしの良い場所に出る。小さなハシゴを上がり、岩を伝って登り、岩苔乗越から1時間ほどで祖父岳に到着。祖父岳山頂は大小の軽石が積み重なった広い溶岩台地、ケルンが立ち並び、荒涼たる雰囲気を醸し出している。台地の端に行くと雲ノ平の全容が見渡せ、雲ノ平山荘の赤い屋根も小さく見える。ここは三俣蓮華、鷲羽、黒岳、薬師、黒部五郎に囲まれたデべソのような山、ハイマツが地を這うだけの台地からは見渡す限りの大展望。しばし展望を楽しんだあと、雲ノ平に向かう。降り立った所は祖父庭園、お花畑の中、木道を伝って気分良く歩く。第2雪田を渡り日本庭園へ。お花畑の中の木道が終わって第1雪田へ入ると雲ノ平ともお別れ。右手に雪渓を見ながら急坂を下る。谷を隔てて三俣小屋が見え、いくつもの尾根を派生した三俣蓮華岳が迫って来る。黒部源流を見下ろすことが出来るようになってからも、まだまだ下る。大石がごろごろした急な下り、次の足場を選びながら慎重に下る。下り切った所は、音を立てて流れる豊かな水量の渓流。向こう岸まで掛けられたトラ紐ロープを掴み、転石を伝って渡る。下流から男が一人登ってくる。たった一人で薬師沢小屋から黒部川の沢登りをしてきたと云う。三俣山荘はどちらへ行けばいいのかと聞くと、この男、山登りには全く関心が無いらしく、山や登山道をご存知でない。でも地図を広げて、この道じゃないかと教えて呉れる。黒部川はここより上は雪の下、男はここで引き返して戻っていき、わたしは登りにかかる。少し登ると岩苔乗越への道を分け、また少し登ると、「黒部川水源地標」と書かれた大理石の柱がある。でもそこには水は流れていない。ま、この辺り一帯が水源地といった所だろう。鷲羽から幾筋もの水が流れ、登山道を横切っている。その一つの所でザックを下ろし、顔を洗う。照りつける紫外線で火照った顔と頭が、冷たい水で癒される。三俣山荘までは結構急な坂道である。これを登り切って山荘に到着。まだ11時、昼飯にはちょっと早いがベンチに腰をおろして水晶小屋の作ってくれた弁当を食べる。時間はたっぷりあるので缶ビールを一本飲み、ザックを枕にベンチに横になる。しばらく休んで出発。三俣蓮華の巻き道分岐まで長い登りだ。昨日下って来たときも長く感じたのだから、登りが長いのは当然だが、うんざり。ハイマツの切り開きのベンチでひと休み。三俣峠からは巻き道に入る。お花畑の中の緩やかな下り、最初のうちは楽しいが、これが延々と続くと嫌になる。急な登りもあり、アップダウンが続く。今日の目的地は双六小屋、胸ときめかす未知の山小屋でもなく、楽しみはビールだけ。これではちょっとインセンティブを働かす原動力にはならない。まだかまだかとアップダウンを繰り返し、道がなだらかとなってなんとなく双六岳の分岐は近いと云う感じがし始める。そしてようよう昨日通った双六岳の登山道の分岐に辿りついた。そうなると元気も吹き返り、あとは双六小屋目指して一直線に駆け下りる。双六小屋の今日の部屋は一昨日と同じ「笠ケ岳」の間、違うのは入り口の隅、布団は二人で一枚。今日は大賑わいである。夕食まで二時間ほどあるが、布団を敷いて枕元に必需品をそろえ、寝る準備を整えて外に出る。缶ビールを一本、生ビールを一杯、ウイスキーを空け、いい気持ちになって夕食までの一時間ほど布団にもぐり込む。夕食は一昨日と寸分違わぬ献立、缶ビールを一本。夕食後、外のベンチに座り、小屋で買ったワインを、持参のお菓子をつまみに飲む。ダウンに厚手の長袖を着て防寒対策充分の筈であるが、それでも寒さで居られなくなり小屋に戻って布団にもぐり込む。
今夜は部屋中あちこちから大いびき、それに加えて色んな音色の歯軋り、人の迷惑顧みず、「星が綺麗だ」と話す声。うとうとと夜を明かし、4時半に起床すると寝ているのはわたしだけ、ザックは置いてあるが人の姿は無い。というわけで朝食は2巡目。これまた一昨日とまったく同じメニューの朝食を食べ、6時に小屋を発つ。今日も天気は良さそうで、朝日を浴びて気持ちよく歩く。弓折岳の分岐の尾根で、下から登ってきた人達が大勢休んでいる。わたしもひと休み。尾根から下って鏡平小屋でコーヒーを飲む。木道にオゴジョが現れ、写真を撮るまもなくチョロチョロと消えてしまう。鏡池では穂高の稜線に雲がかかり、池面にその姿を映すことは無い。道が2本に分かれ、登りに使った道ではなく、谷川の道を下る。再び道が合流する所に、登って来たときには見られなかった、「←急登ゴロゴロ早着コース」、「シシウドが原」、「→楽々ジグザグコース」という3っつの案内板が立てられている。できたてのホヤホヤの案内板である。イタドリが原、秩父沢も過ぎ、休むことなく小刻みにどんどん下ってわさび平小屋へ。もうここまで来たから良いだろうと、缶ビールを空け、双六小屋が作ってくれた弁当を食べる。林道をブラブラ下り、無事新穂高の駐車場に帰り着いた。深山荘の温泉で汗を流し、ビールを飲み、しばらく休憩して帰途に着いた。岐阜は今年最高の暑さに見舞われていた。
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