北アルプス/白馬三山
- GPS
- 80:00
- 距離
- 17.0km
- 登り
- 1,943m
- 下り
- 1,931m
コースタイム
4:00 猿倉登山者用無料駐車場 起床
5:55 猿倉荘 出発
6:55 高度1540m 5分休憩
7:18 高度1590m 中山沢 5分休憩
7:55 高度1760m コル手前の広場 10分休憩
8:10 小日向のコル 通過
8:50 高度1780m 水場 昼食 30分休憩
11:00 白馬鑓温泉小屋 到着
行動時間 4:00
休憩時間 多分トータル1時間位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
<2日目>
4:00 白馬鑓温泉小屋 起床
6:50 白馬鑓温泉小屋 出発
8:30 高度2500m 水場 5分休憩
10:00 鑓温泉分岐
10:20 白馬鑓ヶ岳直下分岐 20分休憩
10:45 白馬鑓ヶ岳 5分位滞在
11:00 白馬鑓ヶ岳直下分岐 出発
12:00 杓子岳分岐 5分休憩
14:00 白馬頂上宿舎 到着
14:15 白馬頂上宿舎キャンプ指定地 到着
行動時間 5:00位
休憩時間 トータル2時間強位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
<3日目>
4:00 白馬頂上宿舎キャンプ指定地 起床
6:50 白馬鑓温泉小屋 出発
7:00 白馬頂上宿舎 出発
8:30 大雪渓上部 30分休憩
9:30 大雪渓下部 10分休憩
10:00 白馬尻小屋 到着
10:30 白馬尻小屋 出発
11:05 猿倉荘 到着
行動時間 3:00位
休憩時間 トータル1時間半位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
過去天気図(気象庁) | 2011年08月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
北アルプス白馬三山周回
<プロローグ>
「ココに来ることをどれだけ想像(妄想)していただろう・・・」
「ココに来る為に山を歩き、旅を重ね、生きてきたのだろうか・・・」
「・・・鑓温泉最高!白馬最高!・・・」
そんな風に心の中で叫びながら2011年8月9日正午、北アルプス白馬山麓の白馬鑓温泉小屋の露天風呂に浸かっていました。
初めてこの温泉を知ったのはいつの頃だったのかは覚えていません。しかし、高校時代や20代前半のスキー最盛期に白馬方面には何度か来たことはありましたが多分知らなかったと思うので、30代になってから何かの温泉ガイドブックか、インターネッツで見たのだと思います。
「歩いてしか行けない温泉」
「秘湯中の秘湯」
この温泉を形容するキャッチコピーは私の温泉魂と旅心を刺激しまくりました。
確か2010年に発刊された山雑誌「ピークス」(確か夏か秋の号)に
「ご褒美は山温泉」
と題された特集で水着のおねいさんと髭のおにいさんのレポートが大きな写真と共に掲載されていました。別におねいさんの水着に釘付けになった訳ではなく、そこに写っているいつかどこかで見た秘境の露天風呂に心を奪われました。
その頃はまだそこまで歩く自信も経験も体力もなかったので、「来年こそはっ!」と思うだけでした。
季節は冬期に入り、2010年のテント泊シーズンは終わりました。冬の低山を歩きながらいつも猝温泉瓩某擦る自分を想像していました。
初雪の奥三河明神山でも・・・
真冬の鈴鹿の鎌尾根でも・・・
自宅ではトイレに入る度に「ピークス」を持ち込み、食い入るように同じ記事を見る・・・
(トイレに必ず雑誌を持ち込むのが私の悪い癖です)
春になり2000m弱の山の雪は消滅し、梅雨が明け南アルプスの林道バスが北沢峠まで開通し、夏が来て2日間の行程で完了できるテント山行を開始し、遂に2日間以上の連休が取れる8月が来ました。
「これはもう白馬三山縦走し、鑓温泉に行くしかない!」
「他に選択肢はないのだ!!」
そんな気持ちで行ってきました。
行程は2泊3日。今回は前日を移動日として登山口で車中泊。4日間も奥様を放っておけないので、夫婦で出掛けました。
結果から言うと奥様曰く
「もう二度と山には同行しないからね!ひとりで行ってきていいよ」と。
ツンデレではありません。ガチのヤツです(笑)
別に道中で喧嘩をした訳ではありません(笑)、奥様が温泉に満足しなかった訳でもありません。
ただただ歩くのが辛かったのでしょう(笑)
本来、完璧なインドア派の女性ですから・・・。
最終日の夜は台風直撃と直下型地震を半日近く連続で体験したような時間でしたが、無事に下山できて良かったです。
やっぱり山中で3泊できると私の心は満たされました。
<登山計画と実際のコースタイム編>
<移動日>
14:00 自宅を出発
17:00頃 長野道豊科インターチェンジ 下車
18:00頃 白馬のローソン 買出し
18:30頃 白馬塩の道温泉「倉下の湯」 入浴
19:30 猿倉登山者用無料駐車場 到着
20:00 車中泊 就寝
<1日目>
登山計画書 実際のコースタイム
4:00 猿倉登山者用無料駐車場 起床
5:55 猿倉荘 出発
6:55 高度1540m 5分休憩
7:00 猿倉荘 出発
7:18 高度1590m 中山沢 5分休憩
7:55 高度1760m コル手前の広場 10分休憩
8:10 小日向のコル 通過
8:50 高度1780m 水場 昼食 30分休憩
10:00 小日向のコル
11:00 白馬鑓温泉小屋 到着
13:00 白馬鑓温泉小屋
14:00 夕食
17:00 就寝
行動時間 6:00 行動時間 4:00
休憩時間 0:00 休憩時間 多分トータル1時間位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
<2日目>
登山計画書 実際のコースタイム
4:00 白馬鑓温泉小屋 起床
6:50 白馬鑓温泉小屋 出発
7:00 白馬鑓温泉小屋 出発
8:30 高度2500m 水場 5分休憩
10:00 鑓温泉分岐 10:00 鑓温泉分岐
10:20 白馬鑓ヶ岳直下分岐 20分休憩
10:40 白馬鑓ヶ岳
10:45 白馬鑓ヶ岳 5分位滞在
11:00 白馬鑓ヶ岳直下分岐 出発
11:40 杓子岳
12:00 杓子岳分岐 5分休憩
12:50 白馬頂上宿舎 到着
13:00 白馬頂上宿舎 出発
13:20 白馬岳 到着
14:00 白馬岳 出発 14:00 白馬頂上宿舎 到着
14:15 白馬頂上宿舎 到着 14:15 白馬頂上宿舎キャンプ指定地 到着
16:00 夕食
17:00 就寝
行動時間 6:00 行動時間 5:00位
休憩時間 1:10 休憩時間 トータル2時間強位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
<3日目>
登山計画書 実際のコースタイム
4:00 白馬頂上宿舎キャンプ指定地 起床
6:50 白馬鑓温泉小屋 出発
7:00 白馬頂上宿舎 出発 7:00 白馬頂上宿舎 出発
8:00 葱平
8:30 大雪渓上部 30分休憩
9:30 白馬尻小屋 到着 9:30 大雪渓下部 10分休憩
10:00 白馬尻小屋 出発 10:00 白馬尻小屋 到着
10:30 白馬尻小屋 出発
11:00 猿倉荘 到着
11:05 猿倉荘 到着
行動時間 3:30 行動時間 3:00位
休憩時間 1:10 休憩時間 トータル1時間半位
※メモしていない5分休憩が何回かあり
※行動時間は休憩を含まない歩行時間です。
※計画書の区間タイムは山と渓谷社が出版する複数の書籍に記載された標準タイムを反映しています。
※3日間共メモしていない5分休憩を何度かしていますが、記載した時間はその通りです。
※夕食や就寝時間は大体の時間ですので目安として記録してあります。
今回はほぼコースタイム通りでした。前回の常念岳〜蝶ヶ岳では歩荷訓練を兼ねてバカみたいに20Kg超のザックで挑み、己の未熟さを痛感したので今回は自分の「衣」二人分の「食」二人分の「住」二人分のエマージェンシーグッズと快適グッズで18Kgに抑えました。加えて前日から登山口でぐっすり眠りましたので、元気満タンで出発できたのが良かったのだと思います。しかし1年を通してテント泊でゆったり日程を組めるのはこの8月の1回キリですので、毎回このようにはいきません。8月の残り1回の2日間連休・9月の2回の2日間連休・10月の1回の2日間連休と1回の3日間連休は「仕事日」→「山」→「山」→「仕事日」になってしまうので、体力を付けながら荷物の重量に気を配りたいと思います。
<移動日(自宅→猿倉)編>
山に出発する日の前夜、自宅ではゆっくり寝られないものです。牘鸞の前の高揚瓩發△蠅泙垢掘∋間を気にして「寝なきゃ!・・・寝なきゃ!・・・」と思うと余計に眠れないものです。
しかし、今回は余裕です。時間を気にせず自然に眠たくなったら寝て、本能のままに目覚める(山に行かない休日でも朝8時には起きていますが)。
同行してくれる奥様は午前中だけ仕事をするので、出発するまでひとりで買出しと最終的な荷造りをしました。氷と卵は出発直前に仕入れたかったのです。正午過ぎに奥様が帰宅したので、今度は奥様が最終的な荷造りをして、
2011年8月8日
14:00
自宅を出発しました。もう気分はウキウキです(笑)いつものように中央道の駒ケ岳パーキングエリアに立ち寄ってトイレ休憩しつつ中央アルプスを見上げてテンションを上げました。南アルプスの稜線は大半が雲の中でした。
17:00頃
長野道豊科インターチェンジで下車し、前回登った常念岳を探すもこちらも雲に阻まれて見えませんでした。ちなみに豊科ICのすぐ近くに同じ車買取専門アップルのチェーン店があります。毎回前を通過しますが、立地もいいですし、綺麗に店舗管理されているのが外観からも分かります。ここに転勤ならいつでもOKです(笑)。お近くの方で愛車をご売却の際は是非っ!
などと、仕事っぽいことも書きながら・・・
安曇野の豊かな田園風景とそれを見守るように聳え立つ北アルプスの稜線と山々を眺めながら国道をひた走り、
18:00頃
白馬のローソン(無料第5駐車場の近く)を発見したので、今晩のおつまみ(夕食)とビール(もちろん猿倉で飲む分)と初日の朝食と昼食を買出ししました。
18:00頃
インターネッツで調べておいた倏鯒榔の道温泉「倉下の湯」瓩謀着し、入浴しました。白馬は温泉パラダイスですが、特徴的な温泉が少ないと見受けられたので、画像で見る限り私的に一番ピンときた倉下の湯を選んだのです。建物は外観も内装も非常にレトロな感じでほぼ狙い通りでした。先ず変わっているのが入泉料の支払い。入り口の自動販売機でコインを買います。大人は@500円です。二人分なので千円つっ込みましたが、一度に一人分しか買えないのでお釣りが出てくるのですが、コインと100円硬貨がそっくりなので、一瞬「???」となります。さらに入場口は古い遊園地の入り口や昔の地下鉄の改札みたいな歩きながらバーを回転させて入場するヤツです(笑)。ここでコインが必要な訳です。いろんな意味でノスタルジックな気分を高めてくれます。建物の中は天井が高く、黒くて太い柱と梁が組まれていて、壁は漆喰(のようなコンクリート?)。湯船も私の大好きな桧造りでした。湯の色も茶色なので温泉情緒満点です。顔を洗いながら少し味見したら・・・「旨い!?」・・・。「旨いって何だ?」と思いながらもう一度舐めてみたらやっぱり「旨い!」。こんなお湯は初めてです。形容するのが難しいですが、ダシの効いた薄味の中華スープのような味と感じました。何だかお腹が空いてきました(笑)。洗い場の蛇口からはおそらく温泉が出ていたのでシャンプーなどの泡立ちはイマイチですが仕方ありません。ただ・・・唯一にして最大の難点は爛▲岫瓩任后C鷦崗譴ら始まり、休憩室・更衣室・洗い場・当然露天風呂・・・それはもう猛攻を加えてきます。やる気マンマンのアブ君たちがオラオラ状態(死語?)で襲い掛かってきます。私も強烈な一撃を右太ももに喰らいました。コレを書いている今も腫れていますし、痒いです。当然奥様も2,3箇所ヤラれたようで、プンプンしながら女湯から出てきました(笑)
しかし、休憩室から見た月を今でも忘れません。節電対策なのか虫対策なのか室内は電気を消していて薄暗く、中庭に一灯のあかりがあるだけでした。中庭の風情とうっすらと雲を纏った儚げな半月・・・ノスタルジックな木造の温泉・・・天井が高いので開け放たれた縁側のサッシも巨大で景色のフレームも大きい・・・
「夏すなぁ〜・・・」(遠くを見つめる)
「田舎はいいなぁ〜・・・」(しみじみと)
でも、アブっ!
みたいな(笑)
温泉的には満足です。ちなみにヌルヌル系ではなく匂いも印象的ではありません。雰囲気は100点満点で120点です。※但しアブ注意
19:30
猿倉登山者用無料駐車場に到着しました。この時間で80%以上の駐車率です(「どんだけぇ〜!」)。想像以上の混雑ぶりです。一般的なお盆休みの前ですし、平日ですし、基本的には今現在山に居る人たちの数だけのハズですが・・・。
ちなみにココには100台程度駐車できます。トイレと水場は猿倉荘を利用できます(トイレの協力金が必要)。駐車場から山荘まで歩いて2,3分程度です。
私の自家用車はダイハツのアトレーワゴンです。後部座席を倒せば180×150(cm)程度の平らな空間が確保できますので、テントよりも快適です。
しかも、何とこんな山中でも地上波デジタルの電波がビンビンに飛んできています。テレビを見ながらビールを飲めば、白馬山麓の谷間の駐車場にいることを忘れてしまいそうです(笑)。
いつまでもアイドリングしておけませんので、
20:00
就寝しました。到着した時は風呂上りでしたし、気温が高く感じましたのでクーラーを掛ける為に少しアイドリングしていましたが、エンジンを切ってみると今度は逆にエンジンの熱が冷めるまで車内の暑いことこの上なしっ!
結局暑くて何度も目覚め、深夜0時頃には堪らず後部ドアの窓ガラスを全開にしました。暑くて眠れないのも困るので多少大嫌いな虫が入ってくるのは覚悟しました。
外気は眠るのに十分な温度だったのでここから朝4時まで快適でした。窓を開けてからはうとうとしながら満天の星を眺めながら眠れて大変思い出深いものになりました。
<1日目(歩き)編>
2011年8月9日
4:00
猿倉登山者用無料駐車場で起床しました。幸い何処も虫に刺されていませんでしたし、見たことも無い虫が車内に侵入している形跡もありませんでした。
車内で着替えて、朝食に買っておいたおにぎりを食べ、ポータブルクーラー(釣用)に入れておいた食材をザックに詰めて、車を施錠して歩き出しました。朝5時ごろも駐車率は変わっていませんでした。日によるとは思いますが、前泊しなくても停められたかも知れません。
5:55
猿倉荘でトイレを借り、登山相談コーナーで登山計画書を提出し、出発しました。ココの高度は1230mです。山荘に向かって左脇が登山口です。5分弱ほど山道を登り治水工事用のダートの林道に出ます。そこからさらに5分弱ほどで鑓温泉方面の登山口が左にあります。道しるべは立っていますが、ぼんやり歩いていると通り過ぎてしまいそうです。(ちなみに帰りは気付くことなく通過してしまいました)
この分岐を真っ直ぐ行くと白馬尻小屋を経由して大雪渓方面です。
我々は左に折れて一路鑓温泉を目指します。
こっちの登山道は、前半はゆっくり高度を上げていきます。重い荷物でも楽々です。
6:55
1時間ほど歩いたので、高度1540mの地点で5分休憩しました。ここまで休憩できる広場はありませんでしたし、ここも座りやすい岩があっただけの登山道の真ん中です。水を飲んで汗を拭いて衣服を調整したらすぐに歩き始めました。さらに高度をゆっくりと稼いで、
7:18
高度1590mの狠羯蛎瓩5分休憩しました。何故かメモに「中山沢」と書いてあったのでココにもそう書きますが、看板でもあったのでしょうか?全く印象に残っていません。さらに歩き出すと、覆いかぶさる樹林帯を抜けて、開けた明るい登山道に変わりました。谷側に道がバンクしている箇所が数箇所ありましたので、バランスを崩さないように慎重に歩きました。丁度登りが一段落した頃に地面も開けた場所がありましたので、
7:55
高度1760m地点のコル手前の広場で10分休憩しました。ここには先着の2名のうら若き女性二人組みが休んでいらっしゃいました。ここでは軽く挨拶した程度ですが、以後温泉につくまでの間、抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り返すことになります(笑)
結局、「小日向のコルって何処だろう?」と思いつつ歩き始めると、
8:10
すぐに小日向のコルと書かれた看板の前を通過しました。おそらく鑓温泉から下りてこられたダンディーな殿方が6人ほどで立ったまま談笑していらっしゃいましたが、それで満員になってしまうくらいの広場でも何でも無い場所です。座るところなどありません。偶然手前の広場で休んでおいて良かったと思いました。
ココからはドロドロの道あり、全体的に細かく登ったり下ったりする道で、なかなか楽ではありません。
8:50
高度1780m地点に水場がありましたので、浄水器を通して水をガブ飲みしながら昼食用に買っておいた爐いなりさん瓩鮨べました。おいなりさんは暑くても寒くても食欲が無くても食べられる私のマストフードです。若い頃は苦手でしたが最近は美味しくて仕方ありません(笑)。ここでは30分休憩しました。この間も二人組みの女性と抜きつ抜かれつのデットヒートです。
水場を後にして歩き出すと、極小の雪渓が1箇所と滝がある場所に座れるほどの大きな岩があったのでちょっと休憩しました。そこから見る限り落石の危険度が高いと思われる急なガレた谷のトラバースが2本見えたので、そこを休憩せずに一気に通過する為にここで休んだのです。その時女性二人組みと一緒になったので少しお話ししました。聞けば今日は鑓温泉の入浴目的で歩いているそうで、「日帰りです」との事。タフですね。
危険な箇所を無事に通過した後はひたすら横歩きです。
さて、ここからも厄介でした。道は鑓ヶ岳の東斜面を水平に巻くように作られているので、高度1800m付近を延々登ったり下りたりし、谷をいくつもトラバースし、幅50mほどある雪渓を2回トラバースし、河原のようにこぶし大の石が積み重なる歩きにくい緩やかな斜面をトラバースし・・・。
何が厄介かって、現在地が全く把握できないのです。いつもは地形図の等高線と腕時計の高度計を見ながら地形で判断するのですが、高度は延々1800m付近を指し続けていますし、小さな谷がいくつもあるので地形図の谷と目前の谷の照合ができませんし、大きな地形で判断しようにも、一帯があちこちガスに包まれていて見えません。
ただ、道は真っ直ぐな1本道ですし、丸印や道しるべもしっかり設置してありますし、定期的に登山者とすれ違うので迷うことはありません。
しかし、現在地が分からないというのは精神的に辛いです。
この辺からガスもどんどん濃くなってきました。雪渓付近は空気が冷やされていつもこんな風でしょうか。見通しは50mほどだったと思います。
そんな中、2回目の雪渓のトラバースの途中ですれ違った紳士に
「鑓温泉まであとどれくらいでしょうか?」
と聞いてみました。
もちろんこの種の質問は登山者が聞かれて困る質問だと分かった上で・・・。
先方もやはり、答え辛そうでしたが、
「この雪渓が終わったらすぐに足元が滑りやすい登りになります。登るともう一回雪渓を横切ります。そこからちょっと登ったらそこが温泉です」
と、相手の体力を考慮しなくても確実に案内できる完璧な回答を頂きました。さすがです。私もこれからそのように答えようと思います。やはり山には尊敬できる年長者が多いので勉強になります。
忠告いただいた通りの滑りやすい斜面を20分ほど登ると、更にどんどんガスが濃くなってきました。見通しは5〜10mほどです。最後の雪渓のトラバースの入り口で更に別の単独の紳士とすれ違いました。
「あと25分だよ!頑張れ!」
と、声をかけて下さったのでテンションが上がりました。このような豪快かつ具体的なアドバイスもまた疲れて思考回路が麻痺しつつある者には単純に効きます。それらも考慮してお声をかけたとすればそれはそれで大変高度なことだと思いました。
3回目の雪渓のトラバースを終えると、道は登りに変わります。するとすぐに左手のなだらかな岩の斜面に水の流れが見えてきました。実はコレがすでに温泉なのです。
登り始めてすぐに、
「何か硫黄臭くね?」
「屁、したでしょ?」
などと冗談を言い合っていたのですが、すでにそこは目指す鑓温泉のレッドカーペットの上だったのです。
11:00
遂に白馬鑓温泉小屋に到着しました。
<1日目(幕営)編>
2011年8月9日
11:00
白馬鑓温泉小屋に到着しました。着いてみれば意外に楽勝だと思いました。今回はいつもより重量の嵩む食材を担ぎ上げていたので、1泊毎に軽くなっていくハズです。つまり猿倉から鑓温泉までが一番辛いハズだったので、逆に拍子抜けした気分でした。
猿倉から登ってくると登山道の右手は草むらと崖になっていて、左手は温泉のせせらぎを挟んですぐキャンプ指定地です。登山道の終点が足湯になっていて、そのすぐ上は雑誌やパソコンのモニターで何度も見た露天風呂になっており、その上が山小屋です。全体的に斜面に張り付くように点在しており、段々畑のような構造です。
私は最初にテントを張る位置を確認しました。この時点では、1組が幕営の準備をしているだけでガラガラでした。事前情報では15張りほどできるとの事でしたが、もう少し張れそうです。ただ、大抵の部分は独立したような段々畑の1区画に張ることになり、地面の状態は様々です。私的に最優先すべき点は「平ら」であることです。ここのテント場の画像をいくつか見てきた中で一番理想的と思われた場所が空いていたので真っ先に向かいました。実際そこに立ってみると完璧にフラットですし、私の二人用のテントのスペースにピッタリでした。
とりあえずそこにバックパックを置き、貴重品だけ持って、山小屋にテント泊の受付をしに行きました。荷物を置いた場所から直線で30mほどですが、急な斜面に全てがありますのでちょっと移動するだけでも登山道を歩くのと変りません。
受付で宿帳に記帳すると、テント代(@500円)+温泉利用料(@300円)+缶ビール(大)500ml(@/800円)を二人分支払いました。
テントを張る場所に戻りながら、温泉(男湯は露天風呂/女湯は仕切られた別の場所)や水場やトイレの位置を確認しました。
バックパックを置いた場所まで戻ると、何はともあれ乾杯しました。
「ぷはぁ〜・・・旨いっ!最高っ!」
仕事終わりのビールよりも秘境の温泉で飲むビールの方が旨いに決まっています。
そろそろ小屋に着きそうだと思ったあたりから水を飲むのも我慢していたので、あっという間に飲んでしまいました。
ここからやっとテントを張りました。持ってきたエスパースのテントは基本的なドーム型でポールをスリーブに通すだけで設営できますからひとりでもすぐに完了します。
このキャンプ指定地で特筆すべきはペグの刺さり具合です(区画によって違うかも知れません)。基本的には砂地ですが絶妙に堅く閉まっていて、面白いようにペグが効きます。私は嬉しくなって普段はフライシートの張り綱しか張りませんので4本しか固定ませんが、エスパーステントのペグを止められる箇所全ての8箇所をペグダウンしました。※標準装備はペグ6本ですが、前室ようにロングのチタンペグを追加しています。
テントはパツパツにしっかり張れて、立地がいいので見晴らしも良いし、ビールも飲んだし・・・
「やっぱ、温泉でしょ?」
などと言っていたら、少し晴れてきたので濡れ物を広げて日光に晒し、夕食用の生米を水に浸し、夫婦でお揃いのウールのアンダーシャツに着替えてから温泉に向かいました。
私は当然男湯ですから大きな露天風呂。奥様は女性専用の建物の中。一応水着を持ってきたのですが、現場で男湯を見た時に水着を着ても入る勇気は出なかったそうです。
男湯は開放的というよりも全てが全開です。すぐ下にある足湯やテント上から丸見えにも程があります。一応更衣室はありますが、結局湯船に入る時点で全裸でファッションショーの舞台に立つようなものです。私の所有物は決して立派ではありませんが、こういうシュチュエーションではあまり恥ずかしいという気が起きませんのでエチケット程度に隠す程度で、逆にこの開放感を満喫しました。お湯の温度は超適温!おそらく40度程度でしょうか?私的には熱くも無くヌルくもありませんでした。硫黄泉独特の匂いが温泉情緒を増大させます。湯の色は透明ですが、白い湯の花があちこちに漂っていました。どうやらここは立地だけが取り柄の秘湯ではなく、硫黄泉として単純に1級品でした。
コンクリートで固められた湯船の縁に腰掛けながら雄大な白馬山麓の絶景を見ました。
世の中にこんな場所があっていいのでしょうか?
正に別天地・桃源郷・ユートピアです。
ビックリするほどユートピアです!
※オチなので大きくしました。
何度も出たり入ったりしながら満喫しました。
ふと湯船の山側の石垣の部分に目をやると、指1本分の太さのお湯の流れが絶え間なく注ぎ込んでいました。当然源泉直入でしょうし、湯温調整や濾過などしているハズもありません。完璧な源泉掛け流しです。逆にお湯の流出口を見ると流入する量の5倍以上は流れ出ています。「・・・???・・・」。でもちょっとオカシイです。「入る量より出る量の方が多い?」。そんなハズはありませんので、湯船の底か何処かからも流入しているのでしょう。
そんな事を考えながら、体を自然乾燥させて服を着ました。ちなみにココには洗い場はありません。当然シャンプーや石鹸は使えません。山では当たりまえですが。
宿敵のアブ君たちも1匹も見かけませんでしたのでラッキーでした。基本的はこのような場所にいないハズはありません。
※約20時間滞在しましたが、いつも誰かが湯船に入っていたので露天風呂の撮影は遠慮しておきました。様々なwebサイトで紹介されていますので、そちらをご覧ください。
テントに戻ると奥様が先に帰っていたので女風呂の感想を聞きました。それによると湯船は小さく、5人程度が入れるくらい(男湯は20人は楽勝)、湯の色は真っ白とのこと。洗い場もなく、ただ温泉に浸かることが出来るだけの場所とのことです。ちなみに午後19時半から20時半まで(18時半〜19時半までだったかな・・・スミマセン)は男女が入れ替わります。でも、やっぱり全開の露天風呂は入りたくないと言っていました。
高山を渡る風で湯上りの体を覚ましていると急に二人ともお腹が空いてきたので、
14:00
早々と夕食を作り始めました。今晩のディナーは、炊き立ての白米と奥飛騨名物犒椶舛磴鷯討(鶏肉のすき焼き)瓩寮戸馘困┐任后
鶏ちゃん焼きは春に平湯温泉に行った時にお土産屋で冷凍物を買っておいたものです。この日の為に我が家の冷凍庫で出番を待っていたのです。
私がテント泊の山行を始めて以来、最高に豪華な食事でした。去年単独であちこち行っては永谷園の玄米雑炊ばかりススっていたのは何だったのしょうか。あの侘しい食事の時も涙が出そうになりましたが、今日は今日で積年の念願であるこの場所で大好きな奥飛騨名物鶏ちゃん焼きを食べているかと思うと違う意味で涙が出そうでした。
食後にお腹を落ち着かせてから、寝る前にもう1回温泉に浸かりました。もう極楽です。
明日も4時起きなので、
17:00
就寝に入りました。私はモンベルのダウンシュラフの♯4。奥様はイスカのダウンシュラフの450。これで少し暑いくらいでした。私はパタゴニアのR1フーディー(私が通年着用する薄手のフリース)をここでは着ませんでした。
半月が綺麗で良い夜でした。
日付は変り8月10日、
4:00
白馬鑓温泉小屋のキャンプ指定地で起床しました。夏山の起床時間は決まって4時です。日の出ちょっと前。寝起きにグズグズしていると丁度目覚める頃に朝日が昇ってきます。起き抜けのタバコに火をつけてぼんやりご来光を眺めていました。
トイレの方に目をやると明らかに順番待ちで並んでるのが見えたので、とりあえず先に朝食を作って食べました。朝は決まってキチンラーメンです。しかし、「今回のチキンラーメンはノーマルにあらず!」。何と生卵とシーチキンと食べるラー油を贅沢にブチ混んだ特製チキンラーメンです。山に行かない休日の昼食はいつもこの特製チキンラーメンです。こんな山奥で普段と同じ食事が取れるのは幸せな事です。重たい食材を背負って来て良かった。これも全ては奥様に「来年はどこにいこうかなぁ〜(当然山です)」と言ってもらう為(笑)。
食べ終わったら速攻で荷物を撤収して、トイレを済ませて、水場で給水し、歯磨き粉なしで歯を磨きしました。ちなみにココのトイレはパラダイストイレです。建物も綺麗。床も綺麗。洋式便器。簡易水洗。芳香剤の設置。完璧です。温泉マニアさんには感動的ではないかも知れませんが、地獄のトイレの場数を踏んでいる山屋2年生の私にとっては楽園でした。
最後にバックパックを背負ってハーネスを調整してユートピアを後にしました。
<2日目(歩き)編>
2011年8月10日
6:50
白馬鑓温泉小屋を出発しました。小屋の受付の横が鑓ヶ岳への登山口になっています。
一歩踏み出すと即急登です。左手は雪渓。右手は崖と綺麗で多種な高山植物の壁です。
少し登ると長いクサリ場の始まりです。事前調べでは今回の行程の唯一の危険箇所です。危険度が高いと奥様のご機嫌が悪くなるので少し心配しながら登り始めました。
実際はあまり危険とは思いませんでした。この程度の斜面は何処にでもありますし、クサリは太いタイプのステンレス製ですし、アンカーもしっかり刺さっているので安心して通行できます。逆に必要以上にクサリを設置していないのでちょっと楽しめる箇所もあります。ただ、雨の後や下りの場合はちょっと怖いと感じる人がいるかも知れません。ひとつ言えることはクサリ区間が「長い」。まとめて直線距離にしたら100m以上ありそうです。途中に岩の斜面を流れる涼しげなせせらぎもあり、少人数なら休憩できるスペースも結構ありました。楽しみながら登れる良い岩の斜面でした。クサリ場も終わり、
8:30
高度2500mの地点に冷たい水が流れるせせらぎと3人くらい休めそうなスペースがありましたので5分休憩しました。携帯ボトル型の浄水器で濾過しながら冷たい水をガブガブ飲みました。この高度でも蝉が鳴いていて、夏休み気分を盛り上げてくれました。
「来て良かったなぁ〜・・・」
と鑓温泉の余韻と相まって朝っぱらからシミジミしてしまいました。
しかし、ココからが長く感じました。高度2100mの山小屋からココ(高度2500m)まで1時間半。今日の行程の時間的な中間地点である鑓温泉分岐(高度2750mくらい)までコースタイム通りならあと1時間半。クサリ場で一気に高度は稼いだものの距離的には全工程の15%程度。分岐までまだ倍以上前進し、高度も200m以上・・・。奥様は若干疲れ始めている・・・。
「とてもまだ1/6しか歩いてない」とは言えない・・・ガクガクブルブル・・・。
「よーしっ!あそこに見えている稜線まで行けば今日の半分は終わりだよぉ〜!」
と、カラ元気を振り絞って声を掛けました。
「う・・・うん・・・」
ちょっと辛そうです。
でも私は嘘は言っていません!本当にあそこまで言ったら半分なのです。
(時間的には・・・ね。距離的には今1/6。分岐で1/3だけど・・・汗)
水場を発ってからすぐに森林限界に出ました。そこはカール状になっていて様々な高山植物が咲き乱れていました。反対方向から歩いてくる登山者は皆カメラで写真を撮りまくっていました。わたしが、
「ほら、綺麗だねぇ〜!名前は知らないけど(笑)」(←笑うトコ)
とハシャイでみても
「う・・・うん・・・」
とツレない返事・・・。歩き出してもどんどんペースダウン。
「ヤバイ・・・」
そう思い始めた時、奥様がぼそっと言いました。
「もう山は当分いいやっ・・・」
疲れているのでしょう。でも、山は歩き始めたら文句を言っても何も解決しない場所です。お金では解決できませんし、他人に助けてもらう訳にもいきません。自分たちの意思で苦境に乗り込み、全て自己責任で行動しているのです。「やれない」ではなく、何が何でも「やるしかない」のです。
そんなことを付いてきてもらった奥様に言ってもそれこそ埒が明かないので、私は一言、
「頑張って!」
とだけ声を掛けました。
30分〜1時間に1回5分間休憩しつつ、
10:00
何とか鑓温泉分岐に到着しました。ここに着く少し前からすれ違う人は例外なく雨具を装着しているので「おかしいな?」とは思っていました。それが、分岐(稜線上)に着いた途端に理解できました。とてつもない強風です。流れるガスが国道を走る自動車並みのスピードで音も無く走っていきます。正直立っているのがやっとでした。私はパタゴニアのフーディニというウィンドヤッケを装着し、奥様は雨具の上着とパタゴニアのR1という薄手のフリースを着ました。先ほどまでは暑さに体力を奪われていましたが、ココからは向かい風と戦って前進しなければなりませんでした。でも、暑いよりはまだマシでした。風は冬山のように強いですが、水分を含んだガスが暑い体を冷やしてくれるので嫌な脱力感はありません。地味なザレた稜線の登山道をムキになってハイペースで突き進みました。すると意外早く、
10:20
白馬鑓ヶ岳直下分岐に到着しました。そして二人で倒れこむように座り込みました。少し落ち着くと眼前に鋭利な頂の杓子岳とその奥に杓子岳のお父さんのような白馬岳がガスの中で見え隠れしていました。昨日猿倉の駐車場から見上げて以来30時間振りに最大の目的地の頂を見たのです。
山頂の直下には日本最大の山小屋である白馬山荘が見えました。私達がテントを張る予定の白馬頂上宿舎もその手前の岩峰斜面にへばりついています。
鑓ヶ岳の頂に向かう前にここで私の爛好撻轡礇襯潺奪スナッツ瓩鯔膨イ蠅泙靴拭C羶箸蓮岾舛亮錙廖屮魁璽辧璽魁璽謄ングのピーナッツ」「エムアンドエムズ」「ミックスナッツ」です。私が両手を使って物凄い勢いで次から次へと口に運んでいると奥様が笑いました。
どうやら機嫌が治ったようです。
不思議なもので私たちを取り囲んでいたガスも晴れ、あれほど猛威を振るっていた風もいくらか穏やかになっていました。
結局ココで20分休憩し、
10:45
高度2903mの白馬鑓ヶ岳の頂上に立ちました。分岐から直線距離で50m無いくらいです。横長のワイドな頂です。分岐から手前に三角点。その先に山頂の柱。その向うも同じくらいの高さの広場?があります。
道中で何度か一緒になった同年代の夫婦もいらっしゃったので、お互いに記念写真の取り合いっこをしました。それから山頂からの景色を楽しみました。山頂はガスに隠れていますが剱岳や立山も見えました。完全体ではないものの今回の2番目の目的であった「剱岳を見る」ことができて満足でした。5分位滞在して分岐まで戻りました。
分岐にデポしておいたザックを背負って出発しました。ここから今夜の宿となる頂上宿舎までは標準コースタイムで2時間程度です。楽勝の予感です。ハズレましたが・・・。
11:00
白馬鑓ヶ岳直下分岐を出発し、杓子岳とのコルまで一気に下ります。道はしっかりしているので少し急ですが問題ありませんでした。その間もどんどん白馬岳山頂を隠していたガスが晴れて、杓子岳とのツーショットを見ながら快適に歩きました。下りながら決めていましたが、杓子岳の山頂には立ちませんでした。勿論奥様の体力に配慮したというのもありますが、そもそもピークハンターではありませんのでどうしても踏みたいという気にならなかったのです。
12:00
杓子岳分岐に到着しました。ここから片道15分〜20分程度で山頂をハント出来ますが、天気が良いうちに白馬岳の山頂に向かいたかったのです。白馬三山の西斜面は緩やかで雄大な大地が広がっており、「緑」「白」「岩の色」「砂の色」が絶妙なコントラストを展開していたので、見とれながら10分くらい休憩しました。来年の夏山テント山行の筆頭目的地である「雲ノ平」の写真で見る光景に似ていると思いました。まだ見ぬ雲ノ平に思いを馳せながら、射程距離に入った白馬頂上宿舎を目指して歩き始めました。
しかし、ココからも辛かった・・・。
杓子岳の分岐を過ぎた後、しばらく進むと大きく切れ込んだコルの手前に立ちました。ココから一気に高度を下げて、今度は下った分の2倍程度登り返さなくてはいけないという現実に少し唖然としました。多分奥様は絶望していたことでしょう。でも、とにかく行かないとどうしようもないと分かってくれたのか、ココからは休憩なしで一気に下ってまた登りました。下りきったところにえもいわれぬ草原が広がっていたので写真を1枚だけ撮りました。
結局この区間の標準コースタイムの2倍を要して、
14:00
白馬頂上宿舎に到着しました。
<2日目(幕営)編>
2011年8月10日
14:00
白馬頂上宿舎に到着する頃には頂上全域や山小屋周辺は強風とガスで荒れ模様でした。とても荷物だけデポして山頂に向かう気になれませんでした。
キャンプ指定地は杓子岳方面からの縦走路から見渡せるような窪地にありました。登山道からみる限りでは岩だらけだけど、水捌けは良さそうでしたし、地形から想像すると風からは守られている印象を受けました。縦走路を右に折れつつ白馬頂上宿舎の方に下っていくと、テント場があり、トイレと水場があり、山小屋がある構造でした。全ては隣接していて便利そうでした。山小屋の入り口が分からなかったのでザックを背負ったままちょっとウロウロしましたが、結局テント場からは正反対に山荘の入り口がありました。しかも地味に少し登って下って辿り着けるので、この時に「バックパックだけ置いてくれば良かった・・・」と思いました。距離的には100mくらいありそうです。
入り口の左手には大雪渓方面からの登山道があります。明日はここから下るので少しだけ覗き込んで偵察しようと思いましたが、ガスがドンドン湧き上がってきていたので全く先が見えませんでした。
とりあえず小屋に入ってテントの受付をして、ジョッキの生ビールで乾杯しました。
小屋の外の自動販売機で缶ビールの500ml(@700円)を2本買ってテント場まで戻りました。途中、トイレの手前に黄色い巨大ポリタンクがあり、これはキャンプ指定地用の飲料水だと受付で説明を受けていたので持っている水筒全てを満タンにしました。しかしこのポリタンク・・・蛇口が低い!・・・。蛇口と地面の間隔は15cmくらいしかありません。マグカップに水を汲んでから水筒に移し変えないといけません・・・。無料で支給されていますし、生のまま飲める有難い水ですからここは己の工夫と応用力で対処しなければなりません。
14:15
白馬頂上宿舎キャンプ指定地にバックパックを下ろしました。
テント場にはすでに20張りほどの色とりどりのテントが張られていました。その大部分は学生のテントです。やはりダンロップの使用率が高いと思いました。丈夫さが最優先なんでしょう。
私たちはちょっとトイレからは遠いですが、斜面沿いのフラットな高台を見つけて陣取りました。丁度テントの寸法分だけ若干砂地になっている良い場所です。斜面にそって緑色のナイロンロープも張られていたので干し物もできます。
とりあえず我が家を設営し、濡れたものを干して、風防の為の炉を岩で組んで缶ビールで乾杯しました。少しお腹が減っていたので、担いできた「さんまの蒲焼」と「ホテイの焼き鳥」の缶詰をコンロの直火で暖めておつまみとしました。今晩用の生米を水に浸していると、パラパラと雨が降ってきました。折角乾き始めた衣類と寝袋が少し濡れてしまいました。この頃からこの窪地にも容赦なく風が吹き込んできていました。私はテントのフライシートの張り綱を固定していた岩の周りに重ねるように大きな岩を組んで、風に対して鉄壁の守りを施しました。本当に荒れてくるとそんなことも出来なくなるからです。結局この作業が効いて、とりあえず安心して翌朝を迎えることができた訳ですが、この頃はそれほど酷くなるとはまだ想像していませんでした。あくまで慎重に保険を掛けただけだったのです。
ビールとおつまみが終わっても空腹が満たされることがありませんでしたので、
16:00
この日も早めに夕食を作り始めました。メニューは炊き立ての白米とレトルトカレーです。カレーは先月か先々月の山渓で紹介されていた「銀座カリー中辛」です。炊いたご飯を蒸らしている時に、鍋の蓋が風で飛ばされたようで水分が蒸発してしまい米がパサパサになってしまいましたが、銀座カレーの旨さに助けられて何とか美味しく食べられました。それでもまだ満腹感がなかったので、日帰りでも毎回携行しているインスタントのオニオンスープを飲みました。このスープを飲むと不思議とお腹が満たされるのでいつも助けられています。
満腹になったところでまだ少し明るいうちにテントの中を整理してトイレを済ませました。頂上宿舎の外のトイレは天国ではありませんが地獄でもありません。だた、男子便所の「大」のスペースが4部屋あるうち2部屋は扉が歪んで閉まらず、残る2部屋の内1部屋も強引に引っ張らないと扉が閉まりません。でも、室内はコンクリートの床がそれほど汚れていませんし、風が強い為かそれほど臭いも篭ってないので快適です。テントに帰りがてら更に全ての水筒と満タンにすべく給水しました。
テントに戻るとすでに薄暗くなっていました。やはり窪地なので陽を遮られるからです。
今夜は星空どころではなさそうです。この頃には鑓温泉の分岐で食らったような猛烈な風がテント場を襲っていました。何とか立っていられる程度で、歩き難い程度の風です。
テントの中で1本の水筒にポカリスウェットの粉末を濃い目に投入して特濃ポカリを作って枕元に起きました。寝ている間は大抵喉が渇くからです。奥様用の2Lのハイドレーションパックにも生水が満タンに入っています。
17:00
すでに暗くなっていたので就寝体勢に入っていました。
随分と風も強くなってきて「強風」と呼べるレベルを超え始めていました。それほど眠くはなかったのでテントの天井を見ていると、テント場内の他のテントのフライシートがはためく音が遠くから一気に近付いてきました。こういう時はそのまま同じ風が私たちのテントに直撃することもありましたが、外れることもありました。暴風状態が連続することは無く、ほぼ等間隔で波の様に押し寄せてきました。酷い時はテントの長辺側の壁が正反対の壁と接触するほどでした。テントごと飛ばされるとは思いませんでした。張り綱が切れない限りは大丈夫なくらい大きな岩で固定していたからです。それよりもあり得ないほどの歪み方をしている天井を見つめているとポールに変なクセがついてしまいそうで心配でした。実際翌朝には少々曲がっていました。
何度も何度も寝たり起きたりを繰り返していました。風は強いですが寒くは無かったのが幸いでした。普段は寝袋内では下半身はウールの股引だけですが、緊急脱出用に雨具のズボンをはいていましたし、上半身はウールの爺シャツ+R1を着ていたというのもあります。夏山で荒れた夜は快適睡眠10℃程度の化繊の寝袋の方が気兼ねなく使えて便利かもしれないな・・・などと考えていました。
深夜0時頃目覚めた時も状況は変わっていませんでした。相変わらず外は見ませんでしたが他のどこかのテントがありえないくらいフライシートをはためかせている音がします。おそらく張り綱の張りと固定が不十分ではないかと心配しました。
私たちのテントはフライシートの張り綱しか固定していませんでしたので、時々フライシートとテント本体の間のスペースに吹き込んでくる風に地面から押し上げられるようになり、テント本体全体がブルブル震えます。天井を見つめながらウトウトしていると、長時間に渡り大地震に遭っているかのようでした。
それでも私は「朝には止んでるだろ・・・」くらいに考えていましたが、外は雨も混じってきていました。雨自体は小雨程度でしたが、強く速い風に乗ってくるのでフライシートに当たる音はちょっと尋常ではありませんでした。
それから何度も夢を見たり、起きたりを繰り返していると突然携帯電話のアラームが鳴りました。
4:00
朝です。
外の状態はあまり変わっていませんでした。雨は止んでいましたが風はむしろ強くなっていました。
とりあえず寝袋をコンプレッションバックに詰め込んで、マットの空気を抜いてスタッフバックに入れて、バックパックから出してあった全ての袋をパッキングし、行動着に着替え、テントとマグカップと小型のコンロとチキンラーメン以外を詰め込んだザックに腰掛けてテントの中で朝食を作りました。その間もテントの長辺が何度か倒れ掛かってくるのでコンロを右手で押さえながら左手でテントの壁を抑えていました。とても二人分作る気持ちの余裕がなかったので、1人前を奥様と半分づつ食べました。そして二人で協力してテントを撤収し、山小屋のラウンジ?に逃げ込みました。テント場から山小屋まで移動する間、いくつかのテントが倒れているのを見ました。テントの構想上の強度を越える風に襲われたのか設営ミスなどの人災なのかはわかりません。中にはペシャンコになっているテントもありました。中の人は小屋に避難したのでしょうか・・・心配です。でも、周りに人はたくさんいたので大事には至ってないと信じています。
白馬頂上宿舎のラウンジの喫煙コーナーに座ってホットコーヒーを注文し、トイレを借りて、雨具を装着し、水筒をセットし、出発の準備を整えました。
この時点で白馬岳の頂上を踏むことは諦めていました。奥様と無事に下山することしか考えていませんでした。
窓越しに外を見ると、外に出る気を失い欠けますが行かねばどうしようもありませんので、暴風&濃霧の登山道に取り付きました。
<最終日(歩き)編>
2011年8月11日
6:50
気温は計測し忘れましたが、ウールの爺シャツとパタゴニアのR1フーディーとモンベルのストームクルーザー上下(雨合羽)を着込んで丁度よい位の濃霧の中、白馬頂上宿舎を出発しました。
山小屋の前が即登山道です。広め(待機しないですれ違える程度)のゴロゴロ岩の下りです。右手には広大なお花畑が広がっていましたが、ガスに巻かれてテンション下がりまくりでしたので写真は撮りませんでした。ただただ夫婦揃って無事に下山することしか考えていませんでした。ガスで見通しが悪かったですが、道自体ハッキリしていますし、同じく下山する人や登ってくる人が多かったので道に迷う心配はありませんでした。下り始めて30分ほどで避難小屋があり、ちょっとした広場があったので少し休憩しました。
他にも10名近く休んでいました。もしかしたらもう少し下ったら天候がマシになるかも知れないと思ったので、少し水を飲んだ程度で出発しました。下りはついついハイペース&無休憩になりがちなので、疲れたり膝に違和感が出ていなくても意識的に休憩するようにしています。
すぐに小雪渓に到達しましたが、この日は雪渓の上を歩くような場所はありませんでした。
更に下ると葱平(「ねぶかっぴら」と読みます)と書かれた黄色の小さな看板を発見しました。大抵のガイドブックにポイント名として表示してある場所です。でも、そこにあるのは小さな看板1枚と1m程のベンチひとつ・・・。登山地図を見ながらここで休憩しようと登ってくる人もいると思います。ここは天下の白馬大雪渓を有する人気の登山道・・・。この葱平という休憩も出来ないような・・・ごく普通の登山道のつづら折のひとつの曲がり角ほどのスペースが何で登山地図に載っているのでしょうか・・・私的には摩訶不思議です。あまりにもショックだったので写真を撮りました(笑)
でも、心配はいりません。休憩できる腰を下ろせる場所はアチコチにありますので、余程の大パーティーでなければ休みたい時に休めるハズです。
更に下ると大雪渓の手前で大きな岩を回り込みながら木製の足場を使って沢を渡るポイントがありました。工事現場の木の足場のような橋が架けられていますが、人はすれ違えないほど細いですし、沢の飛沫でエブリタイム濡れていますので慎重に通過しました。
そして、
8:30
大雪渓の上部に到達しました。この頃には随分ガスも晴れていましたので、雪渓の手前で座っている人を見ると登ってきた人なのか下ってきた人なのか服装で判別できます。勿論下りの人は雨具装着。登りの人は結構軽装です。私たちはちょっと高台になった場所で軽アイゼンを装着しました。正直無くても問題ないようですが、折角丸2日背負ってきたので出番を与えました。奥様のホーキンスの登山靴は土踏まずが浅いのでグリベルのスパイダーを装着し、私は無知ゆえに購入した4本爪アイゼンを装着しました。結果的には雪渓歩きには充分役に立ちました。この先は一気に大雪渓を1時間下るので30分しっかり休憩してから出発しました。
雪渓の上に足を踏み入れると、結構雪がしっかりしていたのでアイゼンの歯がしっかり効きました。調子に乗って歩く場所を外して歩くと危険なので、登りの人とすれ違う時以外は皆さんの足跡の上を忠実にトレースしました。
下りは体力的には非常に快適ですし、ガスも晴れて雪渓の末端付近には陽が指しているのも見えましたので、随分気が楽になってきました。
この雪渓では、すれ違いが多すぎてうんざりしているのか、それとも疲れて気力がないのか、半分くらいの人はすれ違いで目を合わせようとはせずにうつむいて歩く人が多かったです。
服装も随分軽装の方が多く、多くの人は小屋泊まりか日帰りだと推測できます。明らかに縦走スタイルの方は1割いたかいないか程度でした。多分縦走目的の人は栂池方面か蓮華方面か唐松岳方面から登るのでしょう。登りの人並みの中で何人もの小学生くらいのお子さんが頑張っていました。私は素直な若い人が好きなので、近所のウザイオッサンのように声を掛けまくりました(笑)
そして予定通り約1時間で大雪渓を抜けました。雪道に慣れていない奥様の安心した顔は何とも言えませんでした。
9:30
大雪渓下部でアイゼンを外して10分休憩しました。雪渓の末端付近から白馬尻小屋が見えていたので、この時点で今回の山旅の無事な帰還をほぼ確信しました。
10:00
白馬尻小屋に到着し、私はC.C.レモン(@400円)を購入しビタミンチャージしました。ここまで運動靴で登ってこられる人が多いので小屋の前の広場と沢沿いのベンチは随分賑わっていました。かなり軽装の人も多いので逆に私たちの方が浮いている感じでした(笑)
ここまで来るとかなり気温が上がっていたのでウールの爺シャツ以外の上着は全て脱ぎました。ズボンは面倒だったのでそのまま雨合羽のズボンを穿いたままでした。ここまで無事に来れた事の方が嬉しくて見た目は気になりませんでした。
10:30
白馬尻小屋の入り口の有名な石の看板?の前で記念札撮影して出発しました。
ここからが私的には非常にダルかったです。私は林道が苦手です。勿論歩きやすいのですが、自動車が走れる場所をわざわざ重たいザックを背負って歩くと言う効率の悪さが精神的に苦手なのです。どうせなら同じ距離の登山道を歩く方がマシです。しかし、奥様は水を得た魚の様に軽快に歩いていました(笑)。多分歩きやすい道に安心し切っていたのでしょう・・・もうすぐ自家用車に戻って文明の利器の恩恵に与れる喜びでしょうか・・・あれだけ「景色がいい」なんて一言も言わなかったのに、林道から見上げる白馬岳と小蓮華の稜線を指差し「こういう景色は好きなんだよね!」などとのたまっていらっしゃる・・・。ワカラン・・・山の天気とオトメゴコロは・・・わからん・・・(笑)
などど歩いていると、行きに通ったハズの鑓温泉方面の分岐点を見過ごしてしまいました。林道に突然鉄のチェーンが架けれているのでコチラを通り過ぎることはなく、猿倉荘方面に下る登山道の入り口を見つけられました。
11:05
無事に猿倉荘に到着しました。後で気付いたのですが、下山届けを出し忘れました(汗)
<エピローグ>
2011年8月11日
11時過ぎ
2日半振りに自家用車に乗り込みました。登山靴を脱いでTシャツと短パンに着替えてクロックスに穿き替えました。
そして白馬の駅前まで車を走らせ、事前にインターネッツで調べておいた白馬ハイランドホテルの天神の湯に浸かりました。この温泉は匂いもヌルヌル感もない透明のさっぱりしたお湯で、湯船は小さめですが展望は素晴らしいです。白馬の山並みが屏風の様に広がり、長野オリンピックで日本人選手が大活躍したジャンプ台が見渡せます。
私はコレでもかと髪の毛と体を大量のシャンプーで2回づつ洗って、歯磨き粉をつけた歯ブラシで5分以上ブラッシングしました(笑)
温泉でさっぱりした後は、国道を豊科インターチェンジに向かいながら蕎麦屋さんを探しました。お蕎麦屋さんはたくさんありますが、お昼時なのに車は停まってないし・・・実際閉まってる店が多いし・・・。青木湖の手前まで走ると風情のあるお蕎麦屋さんの前にたくさんの車が停まっていたのでそこに立ち寄りました。「そば神 神城」というお店です。とても素朴で美味しい蕎麦でした。
念願の白馬三山を歩いて、温泉にいっぱい入って、鶏ちゃん焼き食べて、おいしいお蕎麦を食べて、本当に大満足の白馬4日間でした。
メインの白馬岳の頂は踏んでいませんが、また来ればいいです。
それにしても白馬鑓温泉はパラダイスでした。奥様曰く「私は温泉入るだけなら平湯温泉に車で行った方がいいっ!」と何の風情も無い事をおっしゃっていましたが、何を求めて、何を感じる為にわざわざ遠方まで旅するのかという価値観は人それぞれです。ぶっちゃけ私の場合、本当に来年は一人で8月の5連休を全うして良いのなら、むしろ好都合かも知れません。好きな場所に好きな行程でチャレンジすれば良いのですから・・・。
来年の今頃はきっと北アルプスの雲ノ平を歩いていることでしょう。出来れば日本で最も到達するまでの歩行距離が長いと言われ、秘湯中の秘湯とも言われる犢眦係恐浩瓩卜ち寄りたいと思っています。
とりあえず2011年の私の夏は終わりました。
青木湖・・・中綱湖・・・木崎湖と通り過ぎるマイカーの窓は全開で、涼しい高原の風が車内に入ってきます。蝉の声や湖の湖面が「夏はまだまだこれからだぜ?」と誘ってくれます。
1泊以上はできませんが、雪が降るまでの間に行ける限りアルプスと名の付く山域に赴きたいと思います。そして、高度2500m以上の高地が白銀の世界に変わる頃、私はホームグラウンドの奥三河明神山に帰ろうと思います。
おわり(全部読んで頂けたのなら嬉しいです)
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