白峰三山(白根三山)
- GPS
- 32:14
- 距離
- 25.6km
- 登り
- 2,786m
- 下り
- 3,501m
コースタイム
- 山行
- 8:21
- 休憩
- 0:54
- 合計
- 9:15
天候 | 晴れのち曇り、晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
大門沢の発電所近くの吊り橋は結構怖い。大門沢登山口あたりの林道が工事中で、川を渡らなければならない。 |
その他周辺情報 | 奈良田の里温泉(550円)が便利。 |
写真
感想
台風一過の好天を期待し、日月の連休に南アルプスの白峰三山(白根三山、北岳・間ノ岳・農鳥岳)を縦走しました。この縦走路は、3,000m級の稜線としては国内最長で、北岳は国内第2位、間ノ岳は第3位の高峰です。2泊3日の行程で行くのがふつうですが、がんばって1泊2日で歩いてしまおうと、相棒くんとともに出かけたのでした。
温帯低気圧に変わったとは言え、台風の影響で雨が降ったりやんだりのなか、自宅から3時間ほどで、秘湯の里・奈良田に着きました。2時から4時半まで仮眠。起きたら、来た時はガラガラだった駐車場が結構埋まってきていました。始発に乗り遅れまいとバス停に向かうと、広河原行きのバスが3台待機しており、2台目に乗ることができました(運賃1,050円・協力金200円)。
広河原までは狭い林道ですが、運転手は慣れているのでしょう、結構飛ばします。左右に大きく揺られますが、眠気がまさって、ほとんど寝ていました。
広河原に着くと、まずインフォメーションセンターに寄り、トイレを済ませ、案内の人に登山道の状況を訊きました。もともと大樺沢沿いを歩き、八本歯のコルを目指す、北岳への最短ルートを考えていたのですが、沢の橋が台風の被害を未然に防ぐために撤去されており、白根御池経由で行かざるを得なくなりました。また、奈良田への下山を大門沢から下りるか、笹山ダイレクト尾根を下りるか迷っていたので、それも訊いたところ、案内のかたは笹山ダイレクト尾根を開拓した人らしく、多くの人に歩いてもらいたいので、是非行ってみてほしいとのことでした。踏み跡も結構あるようです。天気がよければ、広河内岳から笹山への稜線歩きが気持ちいいそうです。
ようやく登山開始。吊り橋を渡ると、いきなり急登が始まり、終わりが見えません。地図を見るとわかりますが、詰まった等高線をずっと垂直に登っていく感じで、平坦な箇所がほとんどありません。白根御池のあたりで一旦落ち着きますが、またさらなる急登が立ちはだかります。かなりこたえます。高度が上がってきて、葉の色づきを見られるのが、せめてもの救いでした。紅葉のおかげで、秋の山は思いのほか明るいものです。
登り始めこそ青空でしたが、稜線に出る頃にはだいぶガスが出てきて、間近に見えるはずの鳳凰三山も甲斐駒も、雲隠れしていました。一気に高度を上げたためか、ぼく自身、軽い高山病になったようで、頭が痛み出し、心も曇りがちです。
南アルプスは、北アルプスに比べ穏やかなイメージで、北岳・間ノ岳間の稜線も、写真で見る限りはのどかな雰囲気という印象を抱いていたのですが、実際に登ってみると岩がちで、アップダウンも激しく、ずっと頭痛に悩まされているぼくには、いっそうこたえました。北岳・間ノ岳のピークでは、ガスガスの真っ白けで眺望がなく、全く気分が上がりません。足取りは重く、とぼとぼと歩いていたら、農鳥小屋に着いたのは16時過ぎでした。
農鳥小屋のオヤジに怒られたとか、クセのある人だという噂はかねがね聞いていたので、15時までには着きたかったのですが、かないませんでした。しかし、怒られることはなかったです。休日でかなり混雑していましたから、それどころではなかったのでしょうか。とは言え、ものすごい強烈な個性を発しているのは間違いなく、正直、あまり会話したくないなと思ってしまいました。テント泊の手続きをさっさと済ませて、必要最小限のやりとりにとどめました。テント泊ならまだしも、小屋の傷み具合や衛生面を考えると、小屋泊はしたくないですね。トイレは、今どきめずらしい環境への配慮が全くない、垂れ流しの粗末なものでした。途中寄った北岳山荘(休業中)のトイレはとてもきれいで、環境対策もすぐれていました。
厚い雲に覆われ、夕焼けは見られず、夜景や星空も期待薄だったので、夕食を摂ってさっさと寝ました。夜中、時々起きて外の様子をうかがいましたが、薄曇りと明る過ぎる月明かりのせいで星はほとんど見えません。せっかく持ってきた三脚や広角レンズは出番がありませんでした。
翌朝、ゆっくり目覚めたら、ちょうど日の出でした。富士山とともに来光を拝み、モルゲンロートでいっそう鮮やかに染まる紅葉を見たら、気分も高揚します。高山病の頭痛はすっかりなくなっていました。気分よく、縦走再開です。前日の北岳までの登山道はかなりの人出でしたが、間ノ岳を過ぎ、農鳥小屋も過ぎると、登山客はまばらになって、静かな山歩きになります。
またしても急登が立ちはだかります。朝一からきつい運動になりますが、西農鳥岳の山頂まで来ると、昨日は曇って見えなかった間ノ岳と北岳の姿を拝むことができました。北岳は、思いのほか鋭くとがっています。北アルプスにおける槍ヶ岳のような、南アルプスの盟主にふさわしい、特徴的な形と標高を誇っています。南のほうに目をやれば、塩見岳をはじめ、南アルプス南部の山々が一望できます。本当に山深い、未踏の山域は、いずれ歩いてみたくなります。朝の数時間の絶景に出会えただけでも、前日の苦労やつらさはどこかへ吹き飛んでしまいました。
ガスはすぐに湧いてきて、白峰三山の最後、農鳥岳まで来た頃にはもう眺望がなくなってきてしまいました。山の天気は本当に一瞬です。農鳥岳のあと、大門沢から下るか、笹山ダイレクト尾根を下るかの選択は、自ずと大門沢一択になりました。まず眺望の問題。ガスってしまうと、稜線歩きの楽しさは大幅に減ってしまいます。そして、一番の問題が水。今回、水場がほとんどないコースだったので補給が困難であり、スタート時、多めに4L余りの水を用意しましたが、暑さときつさのせいもあり、農鳥岳あたりで底をつきました。
大門沢下降点から稜線を離れ、一気に奈良田を目指します。稜線に比べ、樹林帯を歩くのはつまらなく感じがちですが、まずナナカマド、そしてダケカンバ、続いてシラビソと、植生が変わっていくのがよくわかります。最後はブナとコケ、いろいろのキノコの共演でした。稜線付近は紅葉していても、下のほうのブナ林はまだ青々としていて、現代生活で疲れた目を養ってくれます。同じ山なのに、上と下で2つの季節が併存しているようです。大門沢の豊富な水が奏でる沢の音を聞きながら、奥深い原生林を歩いていると、なんとなく、前に仙丈・甲斐駒をふもとから登った時の光景に似ているなぁとも思いました。
大門沢小屋に着いて、すかさずコーラを購入し、一気飲み。爽快です。空になったハイドレーションにもようやく水を補給できました。
しかし、大門沢小屋からの下りもまだまだ長いです。やはり、1泊2日はかなりの強行で、大門沢小屋で泊まるのがふつうなんだなと実感します。延々と続く長い下り坂を歩きながら、今回の山行の反省が頭をよぎります。秋の登山は意外と難しいなと、実感。もっと涼しいかと思い、長袖のシャツと長ズボンで歩いていたのですが、かなり暑かったです。そして、汗も大量にかきました。水が足りなくなったことの原因はこのあたりにもありそうです。一方で、朝晩の冷え込みは警戒しないといけないので、防寒着を減らすわけにはいかないでしょう。必然的に荷物が増えていくので、秋山登山は思いのほかたいへんだと言えます。
もう終わりにさしかかるところに、意外な難所が2か所ありました。1つ目は発電所近くの吊り橋。ちゃちな造りでよく揺れますし、高度感もあります。敷いてある鉄板もところどころ傾いていたりと、2日間の行程で最も危険を感じた箇所かもしれません。もう1つは、林道との合流地点。林道が工事中のため、橋のない川を渡らなければならず、相棒くんの持っていたストックを借りて、なんとか渡れました。増水していたら渡れないでしょう。
15時頃、ようやく、車を停めた奈良田まで戻ってきました。前日の出発時よりもさらに車の数が増えています。おそらく、一時は満車くらいになったんじゃないかと思われます。
奈良田は、奈良時代の女帝・孝謙天皇が訪れ、湯につかったという伝説があることから、この地名になっています。そんな由緒ある奈良田温泉に入浴。今回は町営の奈良田の里温泉を利用しました。古民家を用いた入浴施設で、檜の2つの浴槽に熱めの源泉とぬるめの源泉がたたえるシンプルな造り。奈良田湖畔の高台に位置し、浴室の大きな窓から碧い奈良田湖の眺めが美しいです。お湯はちょうどいいアルカリ性で、ほどよく肌がなめらかになります。これで550円だから、ありがたいですね。大好きな温泉になりました。
奈良田を出発したのが16時くらいでしたが、連休最終日の中央道の悲惨な渋滞にはまり、行きは3時間でしたが、帰りは7時間かかりました。登山もきつかったですが、運転もなかなかハードでした。
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