六甲全山縦走2往復
- GPS
- 41:55
- 距離
- 155km
- 登り
- 9,972m
- 下り
- 9,960m
コースタイム
- 山行
- 2:28
- 休憩
- 0:06
- 合計
- 2:34
- 山行
- 21:43
- 休憩
- 1:52
- 合計
- 23:35
- 山行
- 13:00
- 休憩
- 1:04
- 合計
- 14:04
天候 | 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
帰り:阪急宝塚 |
その他周辺情報 | ナチュールスパ宝塚 (感染防止のため浴室での歯磨きは禁止) |
写真
感想
できる、できないではなくて、
やるか、やらないか。
某愛読トレランブログにはそう記載されていた。
〜六甲全山縦走2往復〜
全く達成できる気がしないが、やってみなければ、できないかどうかも分からない。
9月3連休の目標が出来た。
目的の一つはLAKE BIWA100(LB100)に向けた100mileの予行練習。
LB100の目標は40時間切りなので、今回の六甲2往復も40時間切りを目指してスタートした。
■準備
LBでは何が欲しくなるかの実験なので、補給食は深く考えなかった。結果的に道中のコンビニやショップ、自販機に頼ることになるのだが、同じところを4回も通るので自販機のラインナップもだいたい覚えた。
今回は気温が高くなることも予想して、ノースリーブのウェアをベースに、アームカバーや薄手のシェル、ウインドブレーカーで温度調整の予定だったが、予想を上回る気温だったのでLBでは暑さ対策としてタンクトップ1枚必要だと分かった。
昼の12時まで寝て、昼食後1時間ほど昼寝をしたので睡眠対策は万全と思っていたが、終始睡魔に襲われていた。
■1本目(宝塚20:14→須磨4:35)8:21
午後8時2分宝塚駅に到着した。コインロッカーに着替えをデポするか悩んだが、どこで止めてもいいようにすべて背負っていく「修行スタイル」で挑むことにした。
須磨まで行って帰ってきて、また行って帰ってくる。
言葉にすれば単純なので、深く考えなければ達成できるだろう。深く考えていてはスタートすらできない。まずは塩尾寺に向けてのロードを走り始めた。
スタート直後から体が重い。しっかり睡眠もとって万全なはずなのに、体が重く、思うように走れない。大会でもない一人旅、焦る必要など全くないのだが、必要以上の発汗は避けないと、水を飲み過ぎて胃にダメージを受ければ走れなくなる。慎重な自分と攻めたい自分の葛藤が頭の中を巡る。まだ始まったばかりだというのにもう止めたくなってきた。
というのはいつものことで、ロング走の時は最初が一番調子悪い。好不調の波は交互に訪れてゴールをすればプラスマイナスゼロになるはず。幾度となく経験していることだから今は耐え時だ。気持ちを落ち着かせようと自分をコントロールしようとするが、全く調子が上がらない。こんなはずはない。焦ってペースを上げようとすると単純なトレイルで滑って転びそうになる。
ココロとカラダの歯車がかみ合わない
何かが足りないのは分かっている。だけど何が足りないのか分からない。水分、補給、ペース、気温、睡魔、足の状態、胃の調子。悪い場所を一つ一つ確認するように走り続けるが原因が特定できない。思うように走れないので歩くと睡魔が襲ってくる。明らかに不調だ。高度を上げていくと台風明けでハッキリと見えていた月夜がガスで隠れ、六甲山頂付近は霧の中。火照ったカラダを冷やすのに丁度いいヒンヤリとした空気が体を包む。真っ白で誰もいない山頂を通過し、ここからペースを上げていける。そう思うココロと裏腹に、カラダはついてこない。ダメだ、一旦落ち着こう。ガーデンテラスのバス停ベンチで早くもコーラ補給。チーズを挟んだ黒糖バターロールを頬張り少し落ち着いた。走る、消費する、食べる、また走る。この繰り返しだ。心と体に言い聞かせるが完全な復調には時間がかかりそうだ。
掬星台に到着すると若者たちで大賑わい。汗だくのオッサン仲間を探すが見つかるわけもなく天狗道へ向かう。高度を下げると蒸し暑さで再び体内深度の温度が上昇し始める。夜のトレイルに体が溶けていく、いつもの感覚が全くつかめない。アツイ、ネムイが頭の中を支配する。朝になればまた走れるはず。大好きなはずの夜は苦しいまま過ぎてゆき、空が白み始めた。アツイ、ネムイは変わらないが、太陽が出ると不思議と力が湧いてくるはずだ。もうすぐ夜明けという時間帯に須磨浦公園駅へ到着したが太陽からのエネルギーを吸収できないほど疲労していた。既に始発の時間だ、全ての荷物は背負っているのでいつでも止められる。どうする、止めるなら絶好のタイミングだ。
疲労から思考も負のスパイラルに陥っていたが、少しでもプラス要素を探そうとスマホを開く。すると、Team-M6のIキャプテンと、Nアニキも須磨に向かって応援に駆けつけてきてくれていることを知った。ここで止めるわけにはいかない。宝塚を目指して歩き始めた。
■2本目(須磨4:43→宝塚14:45)10:02
須磨アルプス辺りで完全に夜が明けた。長い一日のスタートだ。相変わらず調子は上がらないが、何か食べれば復調するかもしれない。妙法寺ローソンでモグモグタイムだ。うどんが無かったのでソーメンをチョイスし、駐車場で広げていると先客の若手ランナーと遭遇した。
若「先ほどすれ違いましたよね。どちらまで行かれるんですか?」
私「宝塚まで行こうと思ってます。どちらまで?」
若「(よくぞ聞いてくれました)宝塚まで行って折り返す1.5往復挑戦中なんです!」
私「すごいですね!私も2往復挑戦中なのでまたどこかですれ違いますね」
若「にっ、におうふく!?」
お互い頑張りましょうと言い残し、先にスタートさせてもらった。若者から最高のリアクションをいただき、自分でも2往復と言ってしまったのでやるしかない。調子は上がらないが、気持ちは2往復達成に向けて切り替わった。
しかし、暑い。水道を見つけるたびにジャブジャブ水浴びをする。市ケ原を越え、摩耶-六甲ゾーンの“涼しい側”を進んでいても、体の熱が放出されない。歩くには良い気候なのだろう、多くのハイカーさんとすれ違い、「どこまでですか?」「宝塚までです」「すごいですね、頑張って」と声をかけていただける。実は宝塚まで行ってもう一回戻ってくるのでまたお会いするかもしれませんね。とは言えなかった。
2度目の六甲山頂を過ぎ、再び宝塚に戻ってきた。これで半分とは、冗談じゃない。絶対にもう一往復なんて無理だ。しかし、あの若者ランナーに2往復と言ってしまった以上、止めるわけにはいかない。駅構内のコンビニで補給をして再び須磨を目指した。
■3本目(宝塚14:45→須磨2:30)11:45
塩尾寺を過ぎて、ロードを横切る手前くらいのところで若者ランナーとすれ違う。
若「ホントに折り返したんですね。凄すぎる。僕は宝塚でリタイヤします」
私「宝塚まで行ったら折り返したくなるかも。もう一回お会いできるのを待ってますよ。頑張れ!」
こっちだって須磨で止めちゃうかもしれないのに、よう言うわ。と思いながら、これで若者が根性見せて折り返してきたら申し訳ないから絶対に止められないな。強い決意!とは言い切れない、謎の使命感でもうちょっとだけ頑張れる気がした。
高度を上げると涼しくなってちょっとだけ元気が出てきた。しかし、一向に睡魔が取れない。ガーデンテラスのバス停ベンチで少し眠ろうと考えていたが、到着するとガーデンテラスは大賑わい。既に店は閉店して閑散としているだろうと思っていたので驚いた。夜は夜景のために遅くまで空いているようだ。こんなに賑わっていてはベンチで横になって眠ることは出来ないので、家族連れでにぎわうガーデンテラスのベンチに腰掛け、暗くなる夜空に浮かぶ月夜を眺めながらコーヒーとパンでまったりとした時間を過ごす。家族連れやカップルが「めっちゃ満月やん」「ヤベェ、マジキレイ」「お父さん寒いー」と言っている脇で、ノースリーブで汗だくの私が佇む。さすがにノースリーブに周りからの視線を感じるようになってきたので、薄手のシェルを羽織る。そろそろ私も寒くなってきたので出発しようとすると、先ほどの睡魔が嘘のように消えていた。コーヒー効果もあったのだろうが、薄手のシェルを羽織ることで、頭だけが冷やされ、体の熱と睡魔が共に月夜へ消えていった感じだ。
行ける!ついに好調フィーバータイムの始まりだ。
ガーデンテラスを駆け下り、記念碑台までのロードを爆走し、アゴニー坂を駆け上がる。昨晩は若者たちにブロックされて撮れなかった掬星台からの夜景を写真に収め、天狗道を駆け下りる。絶好調だ。しかし、ここまでだった。
市ケ原からの西側ルートに入った途端、再びアツイ、ネムイが始まった。市ケ原でキャンプしている若者たちから「ギャー、出たー」とお化け扱いされたことは関係ないと思うが、とにかく再び不調が訪れた。カフェインを切らさないように、コーラ、リアルゴールドを投入するが効き目が薄い。鵯越ロードで自販機の“あったか〜い”を探すが、まだ“つめた〜い”自販機しかない。妙法寺ローソンでHOTレモンティーを投入し、ホット一息で気持ちは落ち着いたが、眠気は取れない。とにかく須磨まで行こう。その後のことはそれから考えよう。そんなことばかり考えていたように思う。
高倉台、おらが茶屋のベンチで横になり少し寝ようと試みるが、ライトを見続けた目が疲労でチカチカし、目を閉じているのに眩しくて眠れない。とにかく須磨まで。そしてリタイヤしよう。ほとんど眠りながら須磨浦公園駅に到着した。
■4本目(須磨2:52→ゴール14:10)11:18
ラスト1本。行くのか行かないのか、脳に問いかけると須磨でリタイヤして始発を待てという指令が下る。本当にそれでいいのか、何度も問いかけるが答えはリタイアするという判断だ。仕方なく、脳には問いかけず、思考回路をシャットアウトして宝塚に向かい始めた。思考回路をシャットアウトしているので、身体の赴くままに旗振山までの石畳階段を登っていく。1歩1歩、無意識のうちに段を重ねる。しかし、遅い。鉛のように重かった体に、更に鉛を背負わされて登っているようだ。ハイキングペースともほど遠く、カメが並走していたら負けてしまうのではないかというくらい遅い。行けるところまで行って須磨に戻ればいい。とにかく行けるところまで、と歩みを進めるが、思考回路が止まっているので歩きながら昏睡状態に陥った。
これまでも歩きながら眠ることはあったが、完全に意識が停止して、立ちながら“眠り”と同じ状態に陥ったのは初めての経験だった。階段を登る速度は変わらないが、夢の中で寝言を言っている自分が、ふとした拍子に我に返ると、階段に向かって何かを語りかけている。先ほどの夢の続きのように寝言を言っていたのだ。時間は丑三つ時、ブツブツ言いながら、真っ暗なトレイルをカメのように登っている。今想像しても笑ってしまうが、何かに取り憑かれたようにひたすら前を向いて進んでいた。ダメだ、今度こそ仮眠しよう。目がチカチカして眠れないのは分かっていたが、それでも無理やり“おらが茶屋”のベンチに横になり、目を瞑る。
すると、ほんの一瞬“ガクッ”と深い眠りに落ちて間が覚めた。時計を見ると30分くらい経過していたようだが、感覚的にはほんの一瞬の出来事だったように思う。さて、行くか。再び進み始めようとしたとき、脳が復活し、思考回路が動き始める感覚が戻っていることをハッキリと感じた。
行ける!
まだ40km以上の道のりが残っていたが、この時ゴールを確信した。絶好調のまま、須磨アルプスで深夜の応援に駆けつけてくれた@ shintaro_03と出会い、元気分けてもらってから、妙法寺ローソンで空腹を満たして、腹を満たした分、身を軽くする。これまで30時間以上、お通じが悪く、なかなか出ずにモヤモヤしていたが、ようやく出てスッキリした。
高取、菊水、鍋蓋の3山を越え、市ケ原へ。櫻茶屋では、冷凍パインを楽しみにしていたが、まだオープン前だったので手持ちのジェルで我慢して天狗道へ。ここを越えればゴールが見える。サンバイザーを外し、少しでも頭部を涼しくした。時折ひんやりと気持ちのいい風が吹く。これまで調子が悪く、ペースが上がらなかった分、足は残っている。ようやく取り戻したリズムで淡々と登っていく。日が高くなり、気温も上昇してきたが、ココロとカラダの歯車がかみ合っている状態では気温の上昇も気にならない。とはいえ、登りを頑張りすぎると余計な発汗で再び不調になるので、登りは積極的に歩き、下りを走る。歯車が完全にかみ合っている良い状態だ。風が心地よい。
秋晴れの休日、ガーデンテラスは混雑しているだろうと考えたので、藤原商店で最後の補給をする。手持ちの食料も全て尽きた。あとはココロとカラダの総力戦で宝塚までのトレイルに向かう。徐々に高度が下がり、もう戻ってくることが無いと思うと、少しだけ寂しい気分になれるほど復調していた。時計を見ると少し頑張れば42時間は切れそうだ。制限時間の40時間には届かなかったが、少しでも早くゴールしたい。塩尾寺からのロードを爆走し、何とか42時間切りでゴール。3連休の全てを六甲に捧げた、0泊3日の旅が幕を閉じた。
2往復したからといって日常は何も変わらない。しかし、自分の中では、諦めなければ必ず奇跡が起きる。ということを、身をもって体験した大きな変化だったと思う。
できる、できないではなくて、
やるか、やらないか。
その意味が少しだけ分かった気がします。
さぁ、あなたも、レッツチャレンジ2往復!(笑)
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◇補給概要(この他にジェルやアミノバイタルなどのサプリ少々)
20:15 スタート/1時間前におはぎ2+牛乳250ml
23:35 ガーデンテラス/MAGMA+黒糖パンチーズ+コーラ500ml
00:14 市ケ原/黒糖パンチーズ塩+麦茶300ml
02:01 鵯越付近/魚肉ソーセージ+麦茶500ml+ミルクコーシー250ml
03:59 高倉台/塩ライチヨーグルト350ml
04:38 須磨浦/MAGMA+黒糖パンチーズ+ミルクコーシー350ml
06:25 妙法寺LS/ネバネバそうめん+牛乳500ml
07:32 鵯越/コーラ500ml
09:14 櫻茶屋/冷凍パイン+ゆで卵
11:42 ガーデンテラス/きつねうどん+ミルージュソーダ350ml
14:37 宝塚駅/とろろそば+ミルクコーシー500ml、バナナチップ+ポカリ500ml
18:17 ガーデンテラス/黒糖パンチーズ+ブラックコーシー350ml
20:13 天狗下り/カロリーメイト+ブラックコーシー350ml
20:48 大龍寺/コーラ500ml
23:24 高取手前/リアルゴールド250ml
00:19 妙法寺LS/ミニチョコパン+フルーツMIX+レモンティーHOT500ml
02:50 須磨浦/コーヒーゼリー350ml
05:36 妙法寺LS/味噌ラーメン+卵蒸しパン+ザバス500+ポカリ500
08:46 櫻茶屋/開店前(冷凍パイン食べたかった)
10:57 藤原商店/チーズカレー+麦茶500ml
今回も凄まじい挑戦で度肝を抜かれました。
その週末に私も縦走をしていました。もちろん一本だけです。
「1.5往復挑戦中」メッセを背中に貼った若者を鍋蓋山で追い越し、少しお話ししました。その際、2往復中の方がいるという事を聞いて驚きました。何処かで会えるといいなと思っていたらvonさんだったんですね。
コースタイムを拝見すると、須磨浦公園駅からのvonさんの2本目に1時間遅れで、私が付いていっている感じです。しかしゴール(湯本台広場)までvonさんに追いつけませんでした。お会いできず残念です。
「補給シリーズ」は、参考になりました。定番の携帯食に加え。カレー、うどん、蕎麦などガッツリ食べてますね。超ロングには脚だけではなく胃腸のタフさも大切なんですね。
「できる、できないではなくて、やるか、やらないか」、身に染みました。
偉業達成、おめでとうございます。
Kumainkobe ฅʕᵔᴥᵔʔฅ
コメントありがとうございます!
Kumainkobeさんのレコ拝見いたしました。
宝塚でほぼ同時ゴールだったんですね。お会いできず残念です><
でも、1.5往復の若者を通じ、間接的に繋がっていたのだと思うと不思議な感じです。
六甲縦走路は、いろんな方との出会いも含めて本当に良いトレイルですね。
Kumainkobeさんの100回達成を陰ながら応援しています!
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