湯俣川赤沢から鷲羽岳
- GPS
- 56:00
- 距離
- 38.8km
- 登り
- 2,896m
- 下り
- 2,894m
コースタイム
8/11起床(450)高瀬ダム(630)晴嵐荘(845-900)噴湯丘(920-45)ワリモ沢出合(1215-50)赤沢出合(1345)滝場上標高2140m泊地(1540)
8/12発(620)鷲羽岳(1100)水晶小屋(1300-30)真砂分岐(1540)南真砂岳(1710)湯俣岳西鞍部泊(1840)
8/13発(650)晴嵐荘(950-1030)高瀬ダム(1340)七倉(1355)
天候 | 晴、山頂はガス |
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過去天気図(気象庁) | 2022年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
湯俣川は平水だったと思われる。 |
写真
感想
昨年に引き続き、東沢谷とその一支流である二ノ沢に掛かる大滝を目標に計画したものの、結果としてまたしてもその目的を果たせずに計画の半分で終わってしまった。昨年は高瀬川支流五郎沢を登路に、今年は未遡行の湯俣川を登路として地図で長い東沢谷を降ろうとしたものの昨年は停滞前線が、本年は突然発生した小さな台風8号が我々に待ったをかけた。気候変動で、この盆休み時期の天気の安定は今後見込めないのだろうか? ただ、ご一緒した藤原先輩との会話が可笑し過ぎて二年連続の計画半分でも楽しい記憶ばかりが残る。また、お初の湯俣川は私の予想を越えて素晴らしい溯行空間を提供呉れた。ごく普通の沢でしかない隣の水俣川と、こうも渓相が違うかと驚きすらあった。殊に、出だしの衝立岩周辺の景観は荒々しい火山性崩壊地形も手伝って、集水域と周辺山岳を比較するに黒部上ノ廊下にも決して引けを取らない立派なものに感じた。あの景観に特別なものを感じないならば、沢登りなんて別にやらなくてもいいのではなかろうか。条件を選べば黒部上ノ廊下よりもアクセス良くあの素晴らしい景観を目にすることが叶うのだから私には価値高い沢に映った。また今回は詰めに記録無い赤沢を選んで鷲羽岳鷲羽池に到達したいと計画したがルートミスにより果たせなかった。ただ、出だしから小気味良い滝が連続して想像以上に面白い沢だった。
⓪8/10(水);仕事も早く済み、自宅を17時に発てた。高山経由で豊科駅を目指し21:27着の藤原さんとドンピシャリの合流だった。アルプスあずみの公園で一杯ぇやって寝た。
8/11(木);山の日とあって餓鬼岳を目指す登山者に早々と起こされて、我々も我々の山を目指す。昨年に続いて七倉からタクシー相乗りで高瀬ダムまで。大町駅から歩いてきたという爽やか青年と晴嵐荘まで一緒に進む。呆気にとられるほどに昨夏の様相とは違って水の無い湯俣で、昨年の停滞中に世話になったドラえもんとの再会を果たして更に奥へ。藤原さんは1991年だかに伊藤新道をトレースしているが、今回はお初の私の意を汲んで貰って再度湯俣川へ。国の天然記念物である噴湯丘で写真を撮り、いよいよ期待の湯俣川を遡上する。東坡肉(トンポーロウ)そっくりなピンクの玉髄アリ。硫黄を含んだ渓水の独特の色と、赤茶け屹立した火山性の岩壁とがここにしかない景観を醸している。殊に衝立岩周辺のワイルドさは空の蒼さと相まって目の覚めるような、クラクラチカチカするようなスケールある空間である。近日、大した降雨はなかったと思われるがそれでも水量は多く、下降してくる数パーティーを見たがちょっとでも増水したら進退窮まるシーンもあるのではと要らぬ心配をした。遠からず復旧されると噂あった伊藤新道、第一の橋が架かったのみで一般開通はまだまだ先のことだろう。一ノ沢を迎えた先辺りで峡谷地形は止み、両岸は穏やかさを見せて緊張も解ける。ワリモ沢を分けると、さしもの湯俣川もその勢いを半ば減じて一般的な沢登りの領域に落ち着いた。焼けつく陽射しに、こんな夏らしい沢登りは一体何時以来だろうかと考えた。辿り着いた目的の赤沢は水量比1:7程度か、小沢ながらも見上げた先に意味ありげに滝を垂らしている。伊藤新道もここから尾根に取り付く地点だが、そんな痕跡は見当たらない。名通りに赤岩の多い沢は、右に支沢を分けるや小滝が連続する滝沢へと転じた。藤原さんが躊躇なくどんどん登っていくのに付いていく。地図で見て単なるゴーロ帯かと想像したが、意外なことに河原すら見せない連瀑帯だった。標高差200mをグングンと獲得していく、滝を数えることも忘れる気持ちの良い登行である。大きく捲くことなくほぼすべてを登れ、推奨できるアトラクションである。これら連瀑が果てるや傾斜は落ち、平坦部に差し掛かると藪と滑りが迎えてくれた。この平坦部に開けて快適な泊地が得られると楽観していた我々の思いは破られて不快調な一夜が予想されたが、辛うじて猫の額の平坦地が得られてそこを泊地とした。硫黄尾根の向こうに満月が昇った。
8/12(金);穏やかな朝を迎えた。藪を避けるようにガレと水とを登路に選んでいく。標高を上げるにつれてガスが巻き、時折冷たいものが服を濡らす。息上がる登行ながら、某先輩の女の口説き方が藤原さんの話術と相まって面白過ぎてその苦しさが紛れる。藤原さんも還暦を迎えて数年し、歩けなくなったと仰るものの登るスピードは早く、往時の勢いを想像してしまった。意外にも藪と無縁の快調な詰めで、あの高まりを越えたら鷲羽池がいよいよ見えるかと期待するものの、一向にその姿を見せてくれない。ドンデ エスト〜イ? 最大傾斜方向へと登れど登れど見えてこず、その西へと登る尾根の方角からして昨夕の段階で既に右沢に入り込んでいた結果、鷲羽岳東尾根に乗っていることを知り及んで意気消沈する。長く焦がれた鷲羽池への登路を外してしまっていたとは、如何にも恥ずかしい。それでもガスに煙る鷲羽岳山頂に到達し、湯俣川赤沢からの登頂は果たせたことにはひとまず満足してセンパイとの握手を交わした。ワリモ岳も何もない視界の中で水晶小屋に潜り込み、今後の天気情報を仕入れた。残念なことに小さな台風8号の影響か、予報は悪い方向に流れて後半の計画を放棄せざるを得ないこととなった。昨年に続いてまたか。ブルーシートのチープなタープしか持たない我々には耐え難い雨天停滞は選択肢に無く、共に4度目の竹村新道を辿る羽目となる。回復した天候下で周辺の高山が姿を見せてくれたが、ドーム型のあの烏帽子岳、登りたかった。登ってきた湯俣川も見下ろせたがこの荒々しさ、やはり特別な場所である。今回の赤沢の次に遡ってみたいと思う硫黄沢の滝も遠望された。昨夏の記憶を手繰りつつ降っていると、高天ヶ原温泉を往復してきたという爽やか君との再会があった。若いっていうのは全くもう、、、、、、。溜り小池ある湯俣岳西にて緊急露営体制をとり、ブヨがわんさと集る中でとっとと呑みだした。日本近代洋画や古い邦画の話なんぞを肴にして。ガルシア=マルケスに葬られた女の話もしてもらえた。
8/13(土);夏道上の平坦地に幕営していたために、早々と登山者に起こされた。我々も下界の人となるべく出立する。途中、爽やか君の好きだという方角からの槍ヶ岳が近くに望まれた。急な夏道を降っていくも、昨年同様に高刈した笹で歩き難いことこの上ない。休止した展望台では、この五ヶ月間旅したというチリやコロンビア、またボールドなクライマー御子息の話を伺う。舞い戻った晴嵐荘ではドラえもん氏に「あれま、また来たんですか」と言われる始末。爽やか君との再会は無く往路を引き返したが、藤原さんのかなり変わった二つ年上の兄の話に、笑いに笑った。「滴る日本の緑はイイよねぇ」と藤原さんは写真をバシャバシャ撮っている。で、アッという間に下界の人となりにけり。車中に置いたスマホを起動すると、海外溯行同人の一員だった木下君の訃報を知った。大町で蕎麦をご馳走になり、昨年同様に運動家及川さん宅でかなり美味しいコーヒーを頂き、暇乞いした。藤原さんとの笑いの絶えない三日間、高尚ながらユーモアを忘れないそのトークが実に楽しかった。歩ける登れる藤原さんとはまた来年、アレ願います。明日の富山市に向けて小雨降る中で親不知へと向かう車中、木下君と初めて出会ったゴルゴルジュ沢・不動川がここから近い偶然を思った。不動川の遡行を終えたあの時も、親不知の波音を枕にして眠ったのを思い出した。合掌。【20220815終戦の日に記す】
晴嵐荘のおじさんが、「先行の人はマニアックな人だから」と言っていたのに納得です
ドラえもんの野郎〜。
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