槍ヶ岳
- GPS
- 49:15
- 距離
- 32.7km
- 登り
- 1,785m
- 下り
- 2,188m
コースタイム
■13日:槍沢ロッヂ7:10→7:40ババ平→9:50坊主岩9:55→10:20殺生分岐→11:05槍ヶ岳山荘12:25→12:55槍ヶ岳山頂13:30→14:00槍ヶ岳山荘泊
■14日:槍ヶ岳山荘6:30→6:50槍ヶ岳山頂7:25→7:45槍ヶ岳山荘8:10→9:10千丈乗越分岐→10:15槍平小屋前10:45→11:40滝谷避難小屋→12:45白出沢出合12:50→13:30穂高平→14:15新穂高ロープウェー駅
天候 | 12日=雨 13日=曇り後晴れ 14日=晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2009年09月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
雨でも上高地から槍沢ロッヂまでの道は問題なく歩ける。新穂高温泉へ下るルートは、距離は短いが標高差2000mがつらい。途中、槍もほとんど見えないので、登りに使うのはつまらなそう。 穂高ホテルの日帰り入浴は800円。広くてきれいで露天風呂から笠ヶ岳も見えてお勧め。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
【12日】 上高地は本降りの雨。レインコートに身を固め、傘までさしてまずは上高地ベテランのalps165ことDr.エモンの先導で河童橋を目指す。大回りだが景色が良い(この天気で?)北側の自然探勝路から槍沢に向かうとのこと。観光客の群れる河童橋を渡り、林間の道を急いだ。のんびり行くと暗くなるし、この低気圧の雨は後半、寒冷前線でひどく降る危険がある。一時間ほどで風の強まる梓川の河原に出、明神橋を渡った。明神館前のトイレを借りて一休み。
砂利敷きの歩きやすい登山道(ここも地図上は自然探勝路)の傾斜は緩く、傘をさしていてもなんら問題ない。たちまち徳沢園に着いた。パノラマコースへ向かう新村橋を分けてしばらく行くと道が崩れていて、広々した河原へ迂回させられた。風が強く、ここでは傘がさしていられない。ほどなく樹林帯に戻り、ほっとする。 午後4時、横尾着。なんだかんだでだいぶ薄暗くなった森の中を行く。緩勾配ながら登山道らしくなってきた。つまり、やや歩きづらい。5時になるころ、轟々たる水音が聞こえて一ノ俣谷。続く二ノ俣谷も轟音となかなかの水量で迫力があった。降りしきる雨を集めてのことだろう。道もところどころ半ば沢筋のようになってきている。二ノ俣谷あたりから勾配がかなり増し、そろそろ疲れてきたころ、道端にポンプのような施設を発見。ひと登りで槍沢ロッヂに到着した。
今日はすいていると思ったら、そうでもなかった。要は我々の出発が遅く、脚も遅かったということらしい。狭い乾燥室はいっぱいで、Dr.は一部干すのを諦めてしまった。
実は当方、この種の山小屋は初体験。もっと安い(3食付1万円)と思った分、もっと簡素な施設、つまり寝袋とマットは必携だと思っていたら、雑魚寝ながら布団と枕はある。「常識だよ」と笑われ、何のためにかさばる35リットルを背負ってきたのやらとアホらしくなった。そんな話を、同じく遅めに着いて隣で夕食をしていた男女二人としているうちに、場所を移してコッヘルでお茶を頂くことに。55歳の男性と30台前半の女性で、会社の同僚とのこと。男性の方が所属するグループの下見山行を兼ねているらしい。槍から上高地へ戻ると言ったら、裏の新穂高へ抜けた方が近いし、変化があると勧めてくれた。
【13日】 早朝、目が覚めると、周囲の人が「また降り出した」なんて話していた。談話室の窓を見に行くと、東の空は明るいのに雨が落ちている。7時にようやく上がったので出発。前方の稜線は暗いガスがかかっているが、後ろからは朝日が当たり、風がないので暑い。出てすぐにレインコートを脱いだ。左はそそり立つ急斜面で、10分も歩くと右上に岩稜が覗き、アルプスの景観らしくなってきた。そして、ポンと視界が開けて前方にカール地形が広がるとババ平。キャンパー5,6人がテントを畳むのに忙しそうだ。
ミヤマアキノキリンソウ、ミヤマトリカブトなどに混じってアザミの花が目立つ道を行くと水沢乗越分岐。小屋を出て1時間、行く手は相変わらずどんより曇っている。モレーンの名残のような地形が現れ、谷の中央に雪渓が見えた。その雪渓近くで小休止。風が吹き通ると寒いが、また風がやむと暑い。困った天気だ。
天狗原分岐を過ぎ、ハクサンフウロなどの高山植物をめでつつ、源流の様子を示す槍沢北俣の細い流れに沿って急登する。いわゆるグリーンバンドがどこか分からないまま通り過ぎ、坊主岩に着いた。岩の組み合わさった天然のトーチカの中に小さな仏像が置いてある。その裏手、イワギキョウとミヤマアキノキリンソウが群生する一角で小休止。ヒュッテ大槍が近い。
出発して2時間半、振り向けば赤沢山越しに常念岳が端正な稜線の上部を見せ始めた。既にかなりの高みに来ているわけだ。2500m付近からところどころ残雪が見え始めた。未明に寒冷前線が通過した時に雪になったのだろう。
やがて、頭上に三角形の槍の穂先がぼんやり浮かんだ。ガスが薄れかけている。いい兆候だ。ただ、空気の薄い高山のせいか、すぐ息が切れる。最後はジグザグの急登でカールを詰める。槍沢ロッヂから3時間50分かかって、やっと槍ヶ岳山荘に着いた。
今日はここに泊まるが、値段は槍沢と一緒。ところで、腹ごしらえの弁当にスープかお茶を沸かそうと思ったら、火は自炊室でしか使えないとのこと。仕方なく無人で寒い別館の自炊室へ行き、得体の知れない混ぜご飯のような弁当を食べた。
食後、とにかく頂上を踏もうと急ぎ出た。岩登りの連続で少しお尻がむずむずしたものの、鎖やハシゴが豊富なので難くはない。30分ほどで狭い山頂に立つことができた。時折切れるガスの向こうに山小屋の赤い屋根などが見える。
所在無く20畳敷き程度の狭い山頂を見渡していたら、霧の中から昨夜の二人が現れた。健脚を生かし水沢乗越から尾根伝いに来たのだという。女性が、まだ早いので南岳まで脚を伸ばそうと男性を誘っている。南岳進発を決めた二人を見送り、こちらも小屋へ降りることにする。最上部のほぼ垂直のハシゴはさすがに緊張したが、後はホールドの宝庫みたいな岩壁なので気楽に降りられる。
さて、戻ってもすることがないので、地酒のワンカップを一杯やって昼寝することに。そんなものまで売っているのが驚きだが、これも北アの人気ゆえなのだろう。布団が湿っぽくて寒かったが、酒の力で少しうつらうつらし、目覚めると5時を過ぎていた。
窓の外を見ると、どうやら晴れている様子。ちょうど槍が見える位置で、全身を現しているようだ。ほどなく日没というころ、暖かく全身武装し、カメラを片手に外へ出てみる。サンダルを借りようとしたが、すでに皆出払っていたので靴をはく。雲が低く沈んで上空は晴れ渡っていた。雲海に峰々が浮かび、徐々に槍の山体が赤く夕日に染まりだす。詳しそうな人の話に耳をそばだてて山名を確かめると、富士山は雲の塊に隠れていたが、遠く南アルプスや八ヶ岳、浅間山までが見えているようだ。せっかく靴をはいたので小屋の西の裏手へ降りてみると、笠ヶ岳が雲海から頭を覗かせはじめ、やがて下の鏡平山荘も見えてきた。振り向けば赤い槍ヶ岳。笠ヶ岳のかなたに沈む夕日を見送るまで、約30分間の絶景のショーに酔いしれた。
夜は8時半消灯。湿った布団では寒そうで、持参したシュラフにもぐった上で、その布団を被った。これはなかなか快適だった。
【14日】 人声で目が覚めた。隣は韓国人の若い3人で、荷物の出し入れの音などに少々遠慮がない。明るくなるのを待って窓外に目を凝らすと、やはり晴れている! これはご来光を仰ぐべきと、もぞもぞしだしたDr.に「晴れてるぞ」と声をかけた。5時半、再び完全武装で外へ。サンダルで出ると、まさに朝日が昇ろうというタイミングだった。雲海はさらに低くなり、遠く台形の富士山の頭も浮かんでいる。
朝食を食べ、元気が出たところでもう一度空身で山頂を目指すことにした。6時半出発。今日は見渡す限り360度の絶景だ。再び南に影のような富士山の頭を望み、穂高連峰から乗鞍、御岳、振り返って常念から大天井、燕と続く表銀座を眺める。一眼レフを提げた詳しい男性がいて、北側足下にそびえる双六の丸い背、黒部五郎のカール、ごつい水晶などから遠く鹿島槍、白馬、立山、果ては西に霞む伊吹山、鈴鹿山地までを教えてくれた。
今日は当初の予定を変更し、二人組の勧めに従い新穂高に降りるつもりだ。距離が短いので時間的にも楽そうだが、バス便が少ないのが玉に瑕。どう転んでも、東京着は10時を過ぎてしまう。
槍を背にまず、キャンプサイトの急坂を南へ向かう。正面に大喰岳へ登り返す3人パーティーが見える。その先は南岳を経て大キレットへと至る。こちらは標高3000mの鞍部・飛騨乗越で右へ折れ、カールのザレ場をジグザグに降り出した。一気に下って約1時間、標高2550m付近の千丈乗越分岐に至り、暑くなってボタンがけのシャツを一枚脱ぐ。間もなくダケカンバなどの灌木が周囲に現れて、森林限界の下に入ったと知った。傾斜が緩み、ごろた石の道から土の多い道に変わってきたころ、槍平山荘に着いた。
トイレを借り、少し早いが手前の河原で早昼休憩とした。さて、弁当を使ってから小屋の前を通ると、カレーライス900円などとメニューが出ている。知っていたら弁当など頼まなかったのに・・・。小屋を過ぎて左前方を仰ぐと、なにやらゴツゴツした恐ろしい稜線が見えた。変な出っぱりがシシバナ、右の山が長谷川ピークとすれば、大キレットではなかろうか?≠(訂正:出っぱりが滝谷ドーム、右が涸沢岳、左が北穂だと思います)
見るものも見たし、もうここまで来れば里は近いと歩き出したが、実はここからが長かった。結構石くれの目立つ歩きにくい山道を通って藤木レリーフ、ついで滝谷出合に出たのが50分後。岩だらけの滝谷を渡り、さらに1時間歩いてやっと白出沢出合に到着した。
ここからは長い林道歩きとなる。砂利の路面はよく整備されていて、結構大きいトラックが登っていった。先ほどまで足下に見えた笠ヶ岳がはるか上空にそびえている。左前方に開けた牧草地が見えると、間もなく穂高平の小屋。地図には避難小屋とあるが、食事を提供する立派なロッジだった。屋根越しに槍ヶ岳から南岳方面の稜線が見える。槍は穂先がちょこっと覗くだけだが。
ここでいったん林道と別れ、再び山道を進む。車道の迂回をショートカットするためだが、思ったより険しく、あまり時間短縮にはならなかった。歩くこと1時間、ダンプの出入りする堰堤工事現場が見えて、ついに人里に到着。ロープウエー駅の隣、穂高ホテルへ入浴のため立ち寄った。入浴だけなら800円というのは、まずまず良心的だ。露天風呂も広い。見上げると笠ヶ岳と緑ノ笠が名残を惜しむようにそびえていた。
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