9歳児と臨む人生最高快晴絶景の甲武信ヶ岳〜雁坂峠縦走【日本・山梨百名山】
- GPS
- 16:51
- 距離
- 22.0km
- 登り
- 2,025m
- 下り
- 2,017m
コースタイム
- 山行
- 6:54
- 休憩
- 0:08
- 合計
- 7:02
- 山行
- 8:11
- 休憩
- 1:32
- 合計
- 9:43
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・徳ちゃん新道:危険箇所ほぼなし ・戸渡尾根:上のほうにガレ場 ・木賊山〜甲武信小屋:ザレの降下あり ・甲武信小屋〜甲武信ヶ岳山頂:きれいな道 ・甲武信小屋〜破風山避難小屋:ややザレのところもあるけれど基本的には歩きやすい ・破風山避難小屋〜西破風山:岩の急登、滑落の危険はあまりないけれど息をととのえて ・西破風山〜雁坂峠:気持ちのよい尾根歩き ・雁坂峠〜西沢渓谷: もともとはよくできた道だったと思われるが、雨風をうけての崩落箇所が多い。沢に沿うところはかなり破壊されていてピンクテープをよく見ながら進む必要がある。気をつけて臨む必要のある渡渉が3〜5ヶ所くらいある。これらのことから、地図などにあるコースタイムどおりには歩けないことも |
その他周辺情報 | 道の駅みとみ 客の多くが登山客、山で見かけた方にまた会える |
写真
感想
今年こそ富士山に登るんだ!
と意気込んでいた息子なのだが、いろいろあって結局果たせず。
ならばそれに匹敵するようなでっかい山に登ってみよう、ということで泊まりがけの山行を企画してみた。
鳳凰三山や権現岳などと悩んで、甲武信ヶ岳をチョイス。山小屋の評判がよいこと、高度が2400m程度であることなどがその理由だった。
計画を妻に話すと、いやそんなもん土日でできるのかよ、といった反応が帰ってきた。当然である。なんでもGoogleを駆使するなどして調べたらしく、「キツい」「ツラい」とばかり出てくると。でもまあ、きっと楽しいよ!
ということで、前泊のうえ甲武信ヶ岳を目指すことに。超早朝の出発&高速道路はキツすぎるから石和に泊まろう、朝食もついてるし。
ビジネスホテルの朝ごはんはちょっと塩がきつめだった。妻は味噌汁マシンの操作を失敗し、地獄みたいな超濃味噌汁を飲んでいた。これは後で響いてくることになる。
石和から甲武信ヶ岳の玄関である西沢渓谷までは、ちょっとしたルートミスを含めて40分程度。途中のコンビニで水分を買い込み、無料駐車場に車をとめて、スタート!
沢に沿った遊歩道のような道を気持ちよく進むと、なにやら微妙に凝ったトイレがあった。「ねとりインフォメーションセンター」というらしいが実質ただのトイレのようだ。ここでしっかりすませていこう。
近丸新道は「崩落が進んでいる」という話もあるので(とはいえ登ってる人も多いから大丈夫なんだろうけど念のため)徳ちゃん新道で登る。妻がいう「みんなキツいって書いてる」はこの徳ちゃん新道のことのようだ。まあなんとかなるよね。
にょきにょき生えてるキノコを観察し、ちっちゃいカエルを捕獲するなどしながら西沢山荘に到着。旧三富村営だったようだが休止中らしい。ここの横から徳ちゃん新道が始まる。さあ、頑張っていきましょう!
最初はのんびり、だんだん斜度が出てくる。山栗がたくさん落ちていて、息子が栗拾いに心奪われる。いや素手で拾いにいくなよ刺さるだろうよ。
時期柄、キノコもたくさん生えている。美しい白さのドクツルタケ、その茶色バージョンのカバイロツルタケをよく見かけた。
そして話題の急坂へ。確かに壁みたいな急登だ。けれど山梨百名山のマイナー山にはこれよりヒドいところがあったし、ていねいにジグザクをつけてあるので登りやすい。徳ちゃんの優しさを感じつつ登る。
急登を終えるとのんびりした登り、ときにややくだり。ほっとする。平らなところにはイノシシのヌタがあって、毛がたくさん落ちていた。きっと彼らのなかでここは有名な温泉なのだろう。しばらく進むともうひとつヌタがあったが、ハイカーが踏み込んだ足跡があり、息子はなんてことするのかと怒っていた。
シャクナゲのトンネルを抜けたあたりから、岩っぽい急登。手を使うところもわりとある。こういうところは息子は大得意なので、さっさと進んで大人たちをしたり顔で待っている。早く行くと危ないぞ、と言ってやりたいがたぶん我々大人のほうが下手くそで危ない。
岩の細尾根のようなところを抜けて、近丸新道との合流点に到着。ふもとから3時間かかったぜ。でもまだ全然疲れてない。
続いてまたシャクナゲのトンネル、こちらのほうが本格的。シャクナゲのシーズンは混むらしいけど、これは確かに満開のときにいちど来てみたい。
順調に進めば木賊山あたりで13:30、そこでお昼かな?なんて考えていたけど、思ったよりスピードは出ない。これでは息子のおなかがもたない、ので登山道からすこしそれたところでお昼ごはんにする。しょうゆラーメンにチャーシューをどっさり追加。おいしくてしょっぱいラーメンになった。
朝ごはんも塩味強め、昼ごはんもしょっぱめ。そんなわけで我々一行はのどがかわきまくりである。自分が5L、妻と息子がそれぞれ500mlの水やお茶をもって登っていたが、どんどん減っていった。
あまり急登らしいところはなくなったが、急な段差がときどき現れる。実況系ユーチューバーなのか、マイクとカメラをつけたハイカーさんが「ここおりづらくてしょうがねえな」などとつぶやきながら降りていった。
ゆるく広い斜面のところでは道が左右にばらけ、どこを歩いてもいいような形になった。こういうところが大好きな息子さん、ニコニコしながら登る。
平たくて浮石というよりトラップみたいなガレが道を覆いはじめる。こういうところも息子は得意。
急な岩登りのあと、なかなかよい展望個所があらわれた。息子の写真をとったが半目になってしまった。
その後も続いた森の中の道に、みんなさすがにそろそろ終わらないかなと思い始めた。急登より、この長さがちょっと大変な登山道だ。息子がだらだらし始めてあまり進まない。疲れた?と聞くと、「ぼくだってつかれるんだよ」と。いつもなら「つかれてないよ」という息子、まあそりゃそうか。がんばろう。
展望台のところから30分ほど歩いて、ついに木賊山への尾根道と合流。ここまできたら、もうあとちょっとだ。しかしこの30分が長かった!
合流点から木賊山まではほぼ平坦な道、すぐに山頂に到着。甲武信ヶ岳と10mほどしか標高が違わないけれども登山者以外には知られていないちょっとかわいそうなこの山で少し休み、山小屋へ。
木賊山山頂から少しくだると、甲武信ヶ岳と遠くの山々が一望できる絶景ポイントに出た。さすがにこの景色は堪能してからおりよう。ちょいとハードにザレているので、気をつけて歩きながら。
そしてついに甲武信小屋到着、15:30。8時半スタートだから、休憩を含めて7時間かかった。早くはないけれど、頑張った! 息子にはごほうびのおしるこを、我々大人はビールと日本酒を。ビール缶は持ち帰り、日本酒はコップ提供。長野(千曲錦)、山梨(七賢)、埼玉(秩父錦)がそろう。この景色とは、秩父錦がよく合う気がした。
息子にとって、というか我々家族にとって、人生2回目の山小屋である。そして大部屋は初めての体験。甲武信小屋は古い建物だがとてもきれいに保たれている。ここに決めてよかったと思う。
ところで、あずまやについている温度計によれば午後4時の気温は9℃。さすが2400mの世界だ。山小屋にはストーブがたかれていて、この暖かさがなんとも幸せ。
山の夕暮れをひとしきり楽しんで、17時に夕ごはん。甲武信小屋名物のカレー、人生で最高のカレーだと思えるほどにおいしかった。息子は大盛りをオーダーして感心されていた。
翌日のルートを山小屋の方に伝えたところ、破風山の登りが子供にはきついのではないかと教えてくれた。台風のあとに整備に登ったけれど僕でもキツかったですから、と。妻と悩んで、息子にも話して。けれど「じゅうそうできないの?」と言われて、いややはり予定を変えずにいこうと決めた。息子は泊まりがけこそ2回目だけれど、人生のほぼ半分を山登りしてきたのだ、きっと大丈夫。ただあんまり危険そうなら引き返そうね。
消灯は20時、朝ごはんは5時。山の時間は早いが、またそれが楽しい。明日は早起きして、ごはん食べたら甲武信ヶ岳に登ろう。ちょっと早いけど、おやすみ。
と、すんなり寝られたのは息子だけだった。目が冴えたのでトイレに行きつつ星空を眺める。満点の星、ここまでの星空は北海道でも見たことがなかった。天の川が白く光り、いたるところに星雲がくっきり見えた。明日もいい天気になりそう。
***
4時半、大部屋の明かりがつく。起きられるかちょっと心配だったけど、これなら大丈夫。寝ていたみなさんが一気に動き出す。外はまだ暗い。
出発の荷物を整え、着替えて息子さんを起こす。5時のあさごはんを逃すわけにはいかない。歯みがきのために一緒に外に出てみると、遠くの空が真っ赤に染まっていた。息子が思わず声を上げる。もうすぐ日の出、気温は4℃。
朝ごはんはごはんと味噌汁、漬物と茶碗蒸し。子供はふりかけを選ばせてもらえる。食べられるなら何個でも取っていいよ、と言われた息子、なぜか遠慮する。
ごはんをしっかり食べて、荷物をデポさせてもらって甲武信ヶ岳山頂を目指そう。山小屋前からきっちり整備された道をあがってゆく。多少の斜度があるけれど、短いから気にならない。木々を通って金色の光が一帯を照らしている。なんだ、この最高すぎる世界。
ほどなく、岩のポイントに到着。さえぎる木々のない絶景地、ハイカーさんたちが景色を眺めている。陽の光が真っ赤に山を照らす。富士山が少し赤く色づいている。そうか、今回は大変な思いをしてこれを見にきたんだ。しばし酔いしれる。
でもここは山頂ではないらしい。少し奥に行くとまた視界が開けた、日本百名山の標柱がある。ここだ、これが甲武信ヶ岳の山頂だ。こぶしがたけにのぼったよ!
こちらからは朝日は見えないけれど、赤い光が照らす山々が見える。陽の当たっているところだけが赤く染まり、世界を二分していた。その奥に、富士山。こちらには人は多くないので、のんびり景色を眺める。
素晴らしい景色と登頂の達成感をぞんぶんに味わったら、縦走に向かおう。甲武信ヶ岳を降り、山小屋の荷物を回収してさあ、出発。時刻は6:30。
木賊山の巻き道はやるやかにアップダウンを繰り返していく。こちら側には日が当たらないのか、いちめんに苔が広がっている。そのあいだにキノコが生えていたりしてなんともかわいい。かわいいもの好きの息子さんはそうしたキノコ&コケを見つけては観察している。
木賊山山頂からの道と合流すると、高度が下がりはじめる。なかなか急なくだりなので気をつけて進もう。ハイカーさんとすれ違う、妻が「きつかったですか?」とたずねて「う、うーん、まあそれなりにかな?」と困り気味の返事をいただく。そりゃいきなりきついかと聞かれたらそうなるよね。ただこの方とすれ違ったのが7時。いったいどちらからいらしたんだろうと不思議がりながら進む。
下り坂がゆるんできて、小屋が見えてきた。サイノ河原、破風山避難小屋に到着。富士山を望む空の上の草原に、新しめの小屋が映える。またこれはいいところだね、泊まりに来てみたいね。息子さんはさっそく中に入り込んでくつろいでいる。恐ろしくきれいな小屋である。
小屋の外には立派なベンチテーブルが2つある。せっかくだからここでひとやすみしよう。息子はホットココア、大人はコーヒー。富士山と朝の雲ひとつない青空を眺めながらの一服、たまらん。
さあ、山小屋の方がきついと言っていた破風山に登ろう。派手な登りは今回、これが最後のはずだ。
ごつごつの岩の尾根道がだんだん急角度になる。確かにこれは一般的にはキツい登りかもしれない。しかし、息子はこういう道が大好きなのだ。足の置き場を瞬時に見つけ出して、ひょいひょい登っていく。こういうとき、大人2人はまったく追いつくことができない。
滝子山のジャクショウ尾根、毛無山、十二ヶ岳。日帰りでキツい山にけっこう登ってきた。それがいい練習になっているようだ。
かくして圧倒的1番乗りで岩登りを終えて、向こうを見ている息子。追いついて、どうしたのと聞いたら「頂上じゃなかった」、気が抜けている様子。とはいえこの岩登り到達点から振り返って見える三宝山、甲武信ヶ岳、木賊山の眺めは見事なものだった。
そこから西破風山山頂まではまったくもって気楽な道、のんびり歩いて到達した。(西)破風山、山梨百名山である。ここで息子はたまらずお昼ごはんに買ったはずのおにぎりをいただく。まだ9時前だというのがすごい。
西破風山山頂を過ぎてすぐのところに、この日いちばんなのではないかという展望地があった。富士山がむこうにどーんと見えて、眼下には広瀬湖とどこまでも広がる森。さっき休憩したばかりだがもういちど休憩していこう。
ここから東破風山の山頂まで、多少のアップダウンはあるものの、大きめの岩がごろごろした稜線を進む。富士山と甲斐国を眺めながら空の中を歩くようで、これ以上ないくらい気分がいい。ほどなくして東破風山山頂、ここはひと息ついて次に向かう。
そこから立ち枯れの木の多い笹藪をくだり、雁坂嶺に向かってのぼる。いずれもおだやかな坂道、木々のあいだからは富士山がいつだって見える。夢の散歩道みたいだ。めちゃくちゃトゲだらけの草を発見、息子は大喜びでさわりまくり。ハリブキというそうだ。
ゆったりと坂を登っていけば、雁坂嶺山頂。本日3つめの山梨百名山である。まだ11時前だけど、ここでお昼ごはんにしよう。さっき息子にとられたおむすびをいただく。
あとはもう、のんびりくだるだけ。青空と白い立ち枯れの木々がコントラストを描く、ゆるやかな下り坂。木々の間、そして木のない場所からは、富士山と下界の絶景。こんなところを歩けるというのも、山登りのごほうびのひとつだ。
雁坂峠のベンチが見えてきた。余裕かまして遊び歩いていた息子は転んで笹やぶの中に転がっていった。
雁坂峠に到着。ベンチがいくつかあり、案内板にこの峠の歴史が書かれている。日本三大峠のひとつであり、山梨のスーパースター・武田信玄公が軍用道路として整備した山越えの道。ここを越えて秩父、そして下野上野に攻め込んでいこうとしていたのだという。
でもそれは秩父の人たちからすると迷惑だったみたいですよ、とベンチにいた男性が教えてくれた。なるほど、歴史は一方だけから見てはいけないね。峠で休んでいたら男の子が笹やぶに転がり落ちたので大丈夫かと思っていたという。すみません大変元気です。
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