小嵩沢山(こたけざわやま) 島島谷 小嵩沢よりワサビ沢
- GPS
- 32:00
- 距離
- 22.9km
- 登り
- 2,080m
- 下り
- 2,066m
コースタイム
- 山行
- 8:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:00
- 山行
- 6:50
- 休憩
- 1:55
- 合計
- 8:45
天候 | 両日晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ケミ沢から 小嵩沢山へ直登する予定がうっかり小嵩沢を詰め上がってしまった。登りの 小嵩沢も、下りのワサビ沢もほとんど不安定なガレの沢だった。 |
その他周辺情報 | 徳本峠への登山道は気持ちのよい道。 稲核のそば屋は渡辺食堂 http://tabelog.com/nagano/A2002/A200201/20001959/ |
写真
装備
個人装備 |
沢個人装備
|
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共同装備 |
ツェルト
タープ
グランドシート
ザイル40m
捨て縄
鍋
夜(2)
朝(2)
焚き付け
非常用ストーブセット
|
感想
高校同級生のシンドーと故郷の裏山山行。島島谷を巡るマイナーピークスを三連休で荒稼ぎする計画だったが、三日目は台風19号接近とのことで一泊二日に縮んだ。小嵩沢山は無名中の無名ピークで、直登するケミ沢を登路に選んだが、うっかり小嵩沢を詰めてしまった。紅葉の三連休だったが無人の山域で、紅葉もはじまっていた。
江戸から来たシンドーに双葉インターで載せてもらって、松本へ。島島谷を入ると10台くらいの駐車スペースとゲートがある。支度して出かける。出会ったのは関西言葉のお嬢さんが一人、徳本峠目指して行ったのみ。
小嵩沢二股の少し先に整備ホヤホヤの立派な吊り橋が本流を渡っている。これで右岸に渡って小嵩沢に入渓。少し行くと取水堰堤があり道はここまで。出始めにゴルジュな渓相が暫く続く。大した事は無いが水が冷たい。1210mがケミ沢と小嵩沢の二股だが、これを見落として進んでしまった。
後から推測すると、ケミ沢は山頂直登沢だがあくまで支流で、きっと出会いの見かけがショボかったのだろう。暫く行ってしまってから同じような角度で二股になっている1380mのあたりをケミ沢出会いと思って右に行ったのだろう。
このあたりから沢全体がガレガレ、土石流災害現場のようになる。足元安定せず、極めて登りづらい。三段の滝があり、一つ目は水流に手をかけ飛沫をあびて登る。カッパ着ないと寒くて落ちそうだ。二つ目と三つ目は左から巻く。小さく巻こうとしたら掴めるブッシュが乏しく、結局大回りした。薮を掴むのに肩を挙げると五十肩が辛い。沢に戻ってもガレ。ずっと登って、また6mくらいの滝を左からまいて更に登って行くが、ずいぶん上がったあたりで、磁石が北を向いているのに気がつく。これはおかしいので200mくらい戻ってさっき巻いた滝の左の沢を詰める。これを最後に水は無くなってしまった。ガレがいつか終わるだろうと思って登るが、どこまでもガレだ。そして詰めの当たりになってようやく、これがケミ沢ではない事に気がついた。西を向いている沢はケミ沢以外では小嵩沢一本のみ。どこで間違ってしまったのか。かなり早い時期に、ケミ沢出会いを見過ごしていたことになる。思ったより、足が速かったのだ。小嵩沢に入って数キロは沢が南に向く。あそこで磁石を見ていれば簡単に気がついたはず。
遠大なガレの向こうに夕暮れ色の松本盆地を見おろして相談する。もう稜線はすぐそこだけど、水のあるところまで戻って泊まるか、このままその辺で水無しビバークするか。ガレガレの急斜面を明日また登る気がせず、水無しビバークにする。標高2000mちょっと、ガレ沢から左の小さな尾根型に乗って、大きなシラビソの木の生えている下に、奇跡的に平地1m×2mを見つけてツエルトを張る。水は10ccほど。ワインを飲んで喉を潤し、スモークレバーをスライスして少しピーナツ食べて眠る。薄いシュラフで寒いかなと思ったけど、着込んで寝たし、やはりツエルトは暖かい。月明かりが凄く明るかった。
明るくなって、昨日の小さいおにぎりを半分こして出発。水も飲んでいないのに小便が出るのには驚く。
スパイク地下足袋で笹薮をざくざく登れる。40分で稜線に出た。やはりここは小嵩沢山南峰の南の肩だった。南峰に登ると浅間山、美ヶ原が樹間から見えた。済んだ青い空だ。
コルに下ってケミ沢源流の緩い沢型地形を右に見下ろす。小嵩沢山の南側には小さな二重稜線地形があった。山頂には丈1mほどの笹の中に三角点があった。北信のたぶん志賀高原の山が遠くに見える。大滝山、鍋冠、黒沢山から金松寺山にかけての稜線も樹間から見えた。
槍ヶ岳、穂高岳もシラビソの梢の間に見える。日を浴びて美しい。山頂の笹は一面に生えているが、丈が低いのでさわやかな印象だ。年に数人来るか来ないかの静かな山頂だ。ゆっくりしたいが喉が渇いたので下る。
穂高岳方向目指して、コケとシラビソの美しい斜面を、水を目指して下降する。ガツガツ下って行くとやがて水の音。ワサビ沢源流に交わった。水がうまい。
ワサビ沢は事前情報全く無し。懸垂下降あるかとザイル持って来たが結局何も無かった。しかし上から下まで水こそ流れているが、崩壊のガレで、足元が悪い、置けば崩れるか滑るかでスネを何度も打つ。崩壊のガレ流入は両側から。絶える事が無い。
標高1600mで傾斜が緩まり、倒木の枯れ木が手頃にあったので、火を焚き、メシにする。モチ入り納豆汁青唐辛子入れ。凄く辛くて大汗をかく。見回せば、カツラの葉が黄色く、山は錦秋になっていた。
島島谷本流に合流するところで徳本峠からの山道に出会う。人のほとんど通わない、歴史ある道。渓谷と木漏れ日との静かな道は美しい。途中サルの群れが横切る。炭焼き釜跡がある。戦争直後のものらしい。敗戦で外地から引き揚げて、喰うものにも困った時代、都市に居るよりもこんな山裾ならばなんとか生業が立ったのだろう。母方の祖母は島島出身で満洲に嫁に行って無一文で帰って来たのだった。
続いて1585年、甲斐の武田家滅亡後の混乱期に秀吉に攻められ飛騨松倉城から徳本峠を超えて逃れて来た三木秀綱夫人がここで杣人に殺されたという石碑発見。500年前の日本はシリアみたいな戦国だったのだなあ。
島島谷北股と出会うと、道は林道に変わる。北沢へ延びるトンネルがある。てくてく歩いて車まで。この日は一人とすれ違ったのみ。本当に静かで良い道だ。上高地のすぐ近くなのに。
稲核のおそば屋渡辺食堂でもりそば大盛りを食べる。ウラで育てたカブや水菜やほうれん草の塩漬けをたくさん出してくれてうれしい。おそばもおいしい。50年くらい前の建築が、新しくては決して得られない価値を放ち、落ち着くたたずまいのお店だ。
島島の対岸の竜島温泉でヌルヌル湯に浸かって高速道路へ。波田や新村の昔の話をし乍ら、いつか松本に帰りたいなあなんて思い乍ら。
甲府の双葉サービスエリアで下ろしてもらった。このあと小仏では2時間渋滞との事でシンドーには気の毒な話だ。
***
今回の地図読みは大失敗ながら、あらためて、地図読みとは失敗を修正し乍ら行うものであって、そのこと自体が無人山域を歩く楽しみだと思った。自分が間違っている可能性をいつも吟味し、証拠を集め照らし合わし乍ら前に進む。それを計算機に頼ったのでは、何をしに山へ行くのか分からない。人生と同じだと思ったけど、人生に正解は無いところがちょっと違う。
コメント
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ケミ沢の手前、標高1000辰△燭蠅龍曲点とケミ沢出合いの二股が角度的にも似ていたので間違えたのかなあ、としみじみ地図を眺め考えた次第。
島々谷の杣人のはなし、怖かったですね。
その後少し調べたら、杣達が女から奪った品物は、後から気味が悪くなり神社を作って奉納したらしいが、祟りは消えず、皆ろくな死に方をしなかったそうじゃのう。乱世とはいえむごい事じゃのう。ナンマンダブ。
横山篤美著 「ふるさと 野麦の道」の感想
http://sassanarimasa200.blog59.fc2.com/blog-entry-383.html
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