奥穂高岳 南陵〜吊尾根〜前穂高沢下降
- GPS
- 17:26
- 距離
- 12.6km
- 登り
- 1,720m
- 下り
- 1,722m
コースタイム
- 山行
- 2:39
- 休憩
- 0:06
- 合計
- 2:45
- 山行
- 8:25
- 休憩
- 2:47
- 合計
- 11:12
- 山行
- 1:58
- 休憩
- 0:07
- 合計
- 2:05
天候 | 快晴の3日間 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
写真
感想
春合宿で奥穂高岳南陵へ。一度は行ってみたい初級アルパインのクラシックルート。岳沢ベースにするため、下降は吊尾根を経由して前穂岳沢。入山の前日、隣の奥明神沢で悲しい事故があった直後なので心して向かう。
初日は平湯からタクシーをチャーターしたので楽に上高地入り。5名で¥6200なのでバス代とほとんど変わらない。岳沢にも早く到着。せっかくなので明神へでも行って来ようとの話になるが、前日の乗鞍BCの疲れが残っている私は最初からテントキーパーすると宣言。予定変更して初日に南陵へ行く案も出たのに、私に気を使ってもらい予定通り中日になった。すみません。
奥明神沢をピストンして明神岳へ向かう4名を見送ってからひと眠りし、お腹が空いたので岳沢小屋へご飯を食べに行くという優雅なテント暮らし(笑)。ブラックキーマカレー¥1500をいただいたらこれが絶品!美味しいですよ、お奨めです。その後南陵の取付きを見に行ったり天狗沢の取付きを見に行ったりして皆の帰りを待つ。夕方メンバーが帰還後、3月にTさんから講習を受けた「スタンディングアックスビレーで確保中にリードが滑落した場合の自己脱出から救助」に向かうまでの動きをおさらい。Tさんの講習後に本チャンの講習を谷川岳で受講してきたMさんから詳細な説明と実際の試験内容を教えてもらいながら練習する。
2日目、いよいよ南陵へ。あまり朝早くても雪面が固くて難儀するだろうということで5時半にテン場を出発。何回も南陵を経験しているメンバーが全員口をそろえて「雪が少ない」と。事前に読んだガイドブックによると、この時期は取付きが雪壁になっているとのことだったが、岩が露出しいきなりの岩登りからスタート。水が滴りベルグラ張っていやらしい。岩が不慣れなメンバーのためにフィックスロープを張り、後続をサポートするMさんGさん残し私が先行するが、雪壁の登攀中に上部から「落!」の叫び声。私の50兀犬鯆眠瓩靴心笋呂修硫爾離離匹良分で登っているまっ最中のメンバーの元に。私も「落!落!」と必死に叫ぶ。岩はOさんの顔面をかするように落ちて行ったそうです。怪我が無くて良かった!
その後は雪壁と草付とハイマツ帯を黙々とトリコニーまで登る。通常なら全て雪稜歩きになるそうだ。本当に雪が少ないみたい。でも、ずっと急こう配の雪稜登るより体は楽。全部雪壁だとフクラハギパンパンになりそう…。出発から3時間ほどでトリコニーに辿り着き、核心の2峰へ。そこでMさん「ここは全て3級程度の岩でフリーで抜けられるから。自分でルート見つけて突破しないと南陵を登れたことにはならないから」と、2峰は全て私が先行するように指令が飛ぶ。ひぇ〜と思いながらも付いて歩きでは力つかないしね、腹をくくって登り始める。3級以上は絶対無いってことは、4級以上のルートは間違いってことね。K氏の岩特訓のお陰で岩のグレードは体感できるようになっていたのが幸い。ルートの解りにくい所でMさんから助け舟引き出そうとするも、「さぁ〜…」と笑っているだけなので、仕方なくあちらに登りこちらに登り…。下からは見えなくても上に行くと見えてくる道があるんですね、何とか2峰終了まで歩き通すことができました。感謝感謝。よいトレーニングになりました。
2峰からの眺望はもう筆舌に尽くし難い。ここまで来た人にだけ提供される絶景。感動しました。ピークで後続が揃うのを待ちしばし休憩後、残雪期のため岩場からの下降はほとんどなく広い雪原へ。岩から雪の上に降りた途端に目に入ったのは大量の勾玉型ウンチ(笑) 多分雄ライチョウの見張り糞。春先、繁殖のために縄張り争いを繰り広げる雄ライチョウは、ライバルを見張るため同じ場所に居座る。これだけの絶景ですからね、トリコニー2峰は見張りにもってこいの場所なんでしょう。
2峰の主が戻ってくる前に出発。眼前の雪壁は思いのほか長いが、南陵の頭も見えてきてあと一頑張り。1時間ちょっとかけて休む場もない雪稜を登り切り、11時半に南陵の頭着。スタートから6時間かかってしまったが、何とか全員無事に踏破できて感無量。この日で帰宅したい Mさんは休憩もそこそこに下山開始。あっちゅう間に吊尾根へ消えていくMさんを見送り、後の4名は少しゆっくりしていく。夏道では何度も通ったことのある南陵の頭は全く別の姿に見えた。
充実感に浸ってはいるのだが、はなっからこの日の核心は後半にありと思っていて緊張感は増してくる。行程としては南陵の頭までが1/3、吊尾根の雪稜で1/3、前穂高沢下降が1/3のイメージ。夏道だって吊尾根はそこそこ事故の起きる登山道、ましてや今まで夏道が出ていない雪稜を歩いた経験は無い。そしてそれ以上に下降点の急斜面が心配。昨年K氏と明神主稜に登った際、奥明神沢を降りてきたが、下降点最初の急斜面にはビビった。前穂高沢もそれと同じくらいの斜面でしょう。恐怖心が無いとは言えないが、経験豊富なOさんとGさんを信頼して自分でもルートを考えながら進む。幸いトレースは結構ある。ラッキーなことに最低のコルを過ぎて良さげな下降点を見つけたその場所でライチョウのツガイに出会う。「オラオラ!」状態の肉冠ムッキリ雄ライチョウが睨みを効かせる前で優雅にお食事する雌ライチョウ。もっと観察していたかったが下山せねばならぬ。写真をゆっくり撮らせてくれてありがとうね。7月には可愛い雛を連れて歩く姿が見られるでしょう。
前穂高沢の下降点取付きはやはり奥明神沢と同じく急斜面。これに慣れない私とKさんはしばらくクライムダウン状態で下がっていく。少し斜度が緩んでいつもなら前向きで降りられるところまで来ても、2日前の奥明神沢の事故が頭をかすめてビビってしまう。恐る恐るへっぴり腰になるよりはと再びクライムダウン。そんなことを繰り返しながら下降するので時間がかかってしまった。結局2時間近くかけて岳沢に到着。大きな岳沢が見えてきた時はほっとした。しかし、岳沢に合流する直前にシュルントあり。さほど大きなものではなかったが気を付けて渡る。最初適当に足を掛けたブリッジが崩れてしまい片足膝まで突っ込んだ。その時初めてシュルントの中をまじまじと眺めたが、そこは想像していた穴とはかけ離れた空洞だった。地熱のためだろうか?雪面と地面との間には隙間があり、当然その隙間は沢形状の傾斜がついている訳で、万が一落ちてしまったら雪渓の下にどんどん滑り込んでしまいそう。落ちたら怖いなぁと思いながら、たまたま先頭を歩いていたので後続に知らせる。4時半に幕営地へ帰還。ヘロヘロになりながらも充実した1日だったので皆で祝杯。
翌日は下山するだけなのでたくさん飲んだり食べたりしていたら、夜9時過ぎに回りが少し騒々しくなる。お隣のテントの方が前穂高沢から下山中にシュルントに落ちて怪我をしたとのこと。私たちが通過して2時間ほど後のことだったようだ。救助隊が出て搬送されてきたのがこの時間。シュルントの存在を知っていたのに、小屋の人に伝えておくとか、現場に何か目印を付けておくとか、何かすべきじゃなかったのかと悔やまれる。このような時はどのような対応が正しいのでしょうか?経験豊富な方の意見を聞いてみたい。
3日目はゆっくり起きてゆっくり食事をして撤収。8時過ぎに「やまびこ」が飛んできて怪我された方をピックアップ。早く良くなることを祈ります。いつものことながら、山岳警備隊のスマートな作業に感動。そして岳沢小屋のスタッフさん、名物小屋番の坂本さん、丁寧な情報と快適な岳沢小屋を提供してもらうおかげで安全な登山が楽しめます。お世話になりました。
朝からまるで初夏のような暑さの中、上高地へ下山。BTで全員ソフトクリーム食べたら元気回復。疲れも吹っ飛びました。アルパインは辛いが充実感もひとしお。老体に鞭打ってもう少しだけ続けてみたい。今回も引っ張っていただいたGさんOさんMさんに感謝。
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