剱岳・剱尾根主稜1day
- GPS
- 21:52
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 3,496m
- 下り
- 3,475m
コースタイム
- 山行
- 18:20
- 休憩
- 3:27
- 合計
- 21:47
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
「試練しかない」この山行に挑む事となったのはムラっちの「剱尾根行きませんか、日帰りで」。この一言である。
私は1秒もかからずに「行く」と返事した。
この山行を行うにあたり、ヤマレコで公開されている日帰り記録を参考にさせていただいた。非常にありがたかった(むしろそれがなければやっていないだろう)
やると決まればまずは装備の確認。靴については、ロープを出さないまでもそこそこのクライミングが必要なところでは縦走登山靴だと重く登りにくいので、アプローチシューズで行き、ロープを出すピッチはクライミングシューズで登る事にした。
そうなると問題となるのは雪渓である。ローカットのアプローチシューズ(コバ無し)でも使えるアイゼンが必要となる。というわけでペツルのレオパードFLを調達した。
◯装備
主な共同装備:50mダブル(7.3mm)x1、カム0.3~2x1、アブミx1、60cmアルヌンx10本、ヌンチャク2本
主な個人装備:登攀装備、軽量バイル(ペツルガリー)、10本爪アイゼン、アプローチシューズ、クライミングシューズ、GoPro一式、ドローン一式
◯食糧
初期水分:コーラ700mlx2、水500ml(ハイドレーション)。
飲料水は渡渉地点と池ノ谷雪渓から採れる事を期待して初期装備はコーラ700mlx2+水500mlのみで軽量化(全然軽くない)。深夜から朝方にかけてなのでそれほど汗もかかないはず。帰路は早月小屋で購入する事も出来ると思わせて小屋営業はないので雪渓からなんとかするしかない。
予定では18時間行動を想定し、64kgぐらいな私は出発前の食事である程度満たして、予備食糧と合わせて4500kcal程度(コーラ含む)あれば十分かなと想定(割と適当)。最終的には3500kcalほど食べた。
◯山行詳細
22時半起床。朝食?はいつもの山行時の朝食ルーティーンお稲荷さん(ミニ3個)、オニギリ2個、バナナ1本、軽いカフェで約900〜1000kcalだろうか。水は多めに飲んだ。
午前0時55分スタート。
<馬場島〜雷岩徒渉地点>
高巻きはかなり悪い。わかりにくい。間違えて坑道に入ってしまった。
雨のせいか、夜露なのか藪はびっちょびちょで斜度もありズルズルで早速の核心。全身がびちょ濡れになった。靴の中も。
<雷岩徒渉地点〜池ノ谷>
雷岩を目印に渡渉する。水量が多くないので靴は脱がなくて良さそうだった。岩をジャンプして渡渉するが、既に靴の中も濡れていたので絶対に落ちないぞという強い意志はなく、適当にちゃぽんしてしまう。気にしない。水はとても冷たかった。
この先の雪渓で水を確保できるか分からないのでここで水を汲んだ。ハイドレーションは250mlほど減っていただろうか。2リットルまで増やし、この時点で3.4リットルの水分とした。結局雪渓でも水は取れたが、最終的にこの山行で5リットルほどの水分を摂取した。気温自体は高くなく、暑くも寒くもない丁度いいぐらいだった(恐らく10度前半、晴れていたので、日が当たると少し暑いぐらい)。もう少し気温が高い場合はもっと水を背負わないとダメかも。
<池ノ谷〜R10>
アイゼン、ピッケルを装備する。池ノ谷雪渓自体は斜度もなく、快適な登りだった。
ところどころ雪渓からも水を確保出来そうだった。時折、落石が堆積している所もあり、気をつけたい。
運よく通過困難なクレバスもなくルーファイも必要無しでサクサクと進む事が出来た。心地良い温かい風が吹き濡れた衣類は乾いたが、靴と靴下は家で乾燥機にかけるまで乾くことは無かった。
6時ちょうど、途中の二股に到着。左に進みR10を目指す。
<R10〜コルC>
7時5分、R10の入り口へ到着。ルンゼ内に入るのは容易だったが、出だしで右側の岩から行くと少し悪かった。左にトラバースし、雪渓に乗り上げる。
意外と雪渓がゆるく、ぐちゃぐちゃでアイゼンもバイルも全然効かない。爪は効かないので滑落停止もクソもない。ここで脹脛がパンパンになる。精神的にもかなり疲れた。
7時42分、R10を登りつめコルEに到着。ここでアイゼンを外しハーネスを装着。しばらくハイマツ漕ぎを堪能する。嫌というほど堪能できる。ハイマツのトンネルが最高に嫌だった。
途中で露岩(Ⅲ+程度)があるのでここはアンザイレン。ムラっちがアプローチシューズでリード。フォローの私はとにかくスピード重視で登ったが、中間部が嫌らしく少しモジモジした。案の定、どうしたん?と聞かれた。
<コルCの登り〜門>
11時20分、今回のグレード的核心、コルCの登り。
1ピッチ目40m:Ⅳ、A1(Ⅴ+、A0)、がんちゃんリード。
1ピッチ目は垂壁から右にトラバースしてカンテ沿いからフェイスを登る。トラバース箇所はよく見ると残置ハーケン、スリングが幾つか見える。折角なのでA1を封印してA0突破にトライ。思った以上にA0区間が長く続くので腕はパンプする。時折テンションを交えながらなんとかトラバース区間を突破。
カンテから楽になるだろと思ったら大間違いで、その先のフェイスも難しい。残置ハーケン
が多数あり、素直にかけていくと玉切れになるので要注意。ヌンチャクは12本持って行ったがちょいちょい架け替えてギリギリだった。そもそもゆるゆるハーケン多数なので落ちられないのもこれまた怖い。2ピッチ目は簡単でむらっちがリード。11時20分、フォローで登る。
この後再度ハイマツ漕ぎ地獄となり辛い思いをする。
<門〜剱尾根の頭〜長次郎の頭〜山頂>
この剱尾根のハイライトピッチ、門。11時45分到着。グレード的にはⅣ+だが難しいのは最初の身体が入るクラックのみでその先は易しい。スタートはバンドだがここはノーザイルで進み、クラックからアンザイレン。
クラックの出だしは残置スリングがあったのでA0すれば簡単。クラックはあまり入り込まなければフリーで抜けられる。その次はスラブからのルンゼⅢをリード。このルンゼはガレガレで、フォローはロープによる落石にも要注意だ。
この先は比較的簡単な岩場がちょいちょい出てくるが元気ならフリーで抜けられそう。疲れも出てくる頃なので怪しい所は時間をかけてでもアンザイレンした。山頂には陽が暮れる前に余裕で着けるので慌てず確実に進む事とした。
午後になりガスがあがってきた。
剱尾根の頭には15時7分頃到着。ここまで約14時間12分。このあたりはルーファイをあまり覚えていない。長次郎の頭周辺は岩が脆く要注意。長次郎のコルのトラバースは結構悪かったので、頭に一旦上がり巻く形とした。
16時2分、剱岳山頂。15時間7分。お互いを称えあう。ムラっちが感動して泣いていた。ゆっくり写真を撮ったりして休憩する。
<下山・早月尾根>
16時30分、下山開始。早く終われと心の中で2999回ぐらいは唱えたと思う。口から南無阿弥陀仏が仏の形となって出てくるぐらいに。途中で今回唯一のニンゲン(2人組)と出合う。池ノ谷〜三ノ窓から登ってきたらしい。早月の雪渓嫌い。19時34分、早月小屋着。
緩く悪い雪渓の通過が一番神経を使った
馬場島手前、10分ほどの所でムラっちが茂みの中の熊を見つける。慌てふためく。スマホBGMの音量をMAXに左手に笛、右手にアックス、俺は真後ろでダッシュで駐車場に逃げ込んだ。逃げるしかない。THE BANBAJIMA DASH。
22時47分、行動時間21時間52分。馬場島に下山。無事に帰ってくる事が出来た。疲労感というより単純に眠かった。
<完走した感想>
まずこのバカげた企画をやろうと言ってくれたムラっちに感謝。
正直、自分が剱尾根を計画するなら普通に2泊3日で行ってたと思う。もちろん今回は移動日を含めると結局3日近くかかっているのだが、アタック日が休日1日目というのは大きいと思う。若干直前の天気予報に振り回されたが。
今回、うまくいったからこそ言える事かもしれないが(予定18時間に対して22時間近くかかったが)、決まってからのワクワク感やそれに向けての準備(トレーニングしてるふりとか)、当日の登攀内容、終わってからの余韻、すべてが異次元の充実した山行となった。何よりも空いてるのは最高(そもそもそんな混雑するようなルートでもない気はするのだが)。
振り返ってみて、やはり大事なのはパッションだよパッション、情熱だよ。と思ったのである。やはり私は剱・立山が好きなようで、これからも剱の色んなルートに挑戦してみたいなと再認識したのであった。早月尾根は下りでももう通りたくないが。
「憧がれる心に試練があり、試練を超えて其の道を歩き続けん」
1 day 達成、おめでとう御座います。非常に大変だったと思います。取り付いてしまうと、撤退も容易ではないので、総合力を必要とする厳しい行程です。 1 Day ともなると、全員が一定以上の技術と体力をがなければ無理なだけに、登頂できた時は感動ものですね。
自分の方を向いているハイマツ藪に体力を奪われたのを思い出します。降りるだけと言っても、急で長い早月尾根が、非常に辛かったです。
こういう山行を始めてしまうと、辛いのがわかっていても、また、やりたくなるのが困ったものです。
お疲れ様でした。
コメントありがとうございます!
記録、ひじょーーーーに参考にさせていただきました。とても助かりました(そもそもヤマレコにアップされてなかったらやろうと思わなかったと思います。)
天気に恵まれて最高の景色の中登ることが出来ました。
ハイマツは兎に角嫌でしたね(笑)
個人的には早月尾根のゆるゆるの雪渓が(気持ち的に)一番辛かったです(泣)
なんとなくコスパが良いと言うか、天気的に狙いやすいワンデイ、、、ハマるかもしれません。
ありがとうございました。
1day達成、おめでとうございます。
剱主稜日帰りは、雪渓状況、ルーファイ力、体力、登攀力、装備選定...と、とにかく総合力を必要とする行程ですので、下山したときのやりきった感がいい感じですよね😊
大変お疲れさまでした!
ありがとうございます!!
普段は行動食とか適当にしているのですが、今回はカロリーを計算して持って行ったりしました。
総合力・・・色々な要素をまじめに考えないといけないので、準備は大変でしたがそれが面白く、終わってみると非常に充実していたなと感じられました。
ありがとうございました!!(また何か参考にさせていただくかも?)
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