雪山初心者の一人雪山合宿(蓼科牧場リフト終点〜北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅)
- GPS
- 80:00
- 距離
- 12.8km
- 登り
- 1,096m
- 下り
- 677m
天候 | 晴れのち時々雪 |
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過去天気図(気象庁) | 2014年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
写真
装備
個人装備 |
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
バラクラバ
毛帽子
着替え
靴
ザック
ザックカバー
アイゼン
ピッケル
スコップ
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
ライター
地図(地形図)
コンパス
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
カメラ
テント
テントマット
シェラフ
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備考 | 携行した装備のインプレッション (1)モンベル オーバートリガーフィンガーミトン ロング アクシーズクインのオーバーブローブのXLが第一希望だったが、いざ購入しようとしてみて探してみたが見付からず、やむなく購入した代用品。XLを買ったが、まずサイズが小さい。厚手のグローブの上に装着しようとすると、指が圧迫されて装着しにくく、血行が阻害されていないか心配になる。また、元々生地が硬めだが、低温では更に生地がゴワゴワになり、装着に力が要る。自前でシームシーラーによる目止め加工も行ったが、結局1日目で懲りてしまい、2日目以降は使わなかった。メーカに苦情を言うか考えたくなるレベル。 (2)ニーモ タニ 1P 昨年の春頃から愛用しているテント。今までの不満点は、テント本体とフライシートの接続が面倒だという位だったが、初日の低温下での設営では、フライシートに装着するポールが、低温で生地が縮んだのかどうしても装着できず、やむなくフライシートにポールを挿したのみの状態で設営せざるを得なかった。一方、換気機構がテント頂部にあるので、二泊目に雪に閉じこめられたときにも、酸欠の心配がなかったことは美点。 (3)サーマレスト ネオエアーXサーモ テントと同様、昨年の春頃から愛用している。膨らますのに手間が掛かり、パンクに常に注意を払わなければならない点は変わらないが、今回の雪上キャンプでも冷たさを一切感じなかったのは特筆できる。このマットがあれば、季節にかかわらず、マットをどうするかで悩まなくて済む。畳むのが自動膨張式より簡単なのも美点だと思う(マットの上に横になってバルブを緩め、空気が出たら端から丸めていくだけ)。 (4)モンベル スーパーメリノウール バラクラバ 今回の山行では途中で帽子を紛失してしまったが、薄手でもこのバラクラバがあれば頭部の寒さは感じなかった。バラクラバを使ったのは初めてなので他との比較はできないが、息が上がってきたときや、風雪が強くなってきたときに、こまめに調節することで快適に過ごせたので、有用だと思う。 |
感想
雪山に関しては全くの初心者で、行ってみたいと、10月頃から少しずつ用具を揃え始めていた。本来なら雪山講習等を受講して経験を積み重ねるべきなのだろうが、資金を用具に回してしまっていたし、関東から雪山に通おうとすると交通費も嵩むことから、今回の年末年始の休暇が9連休であることに着目し、初心者なのでちょっと無謀かなとも思ったが、9日間で八ヶ岳を北から南へ縦走し、まずは北八ヶ岳で雪山に慣れた後に、可能なら南八ヶ岳に挑戦しようと計画を立てた。
(1日目)
雪山初心者のため、何を持っていくか前日まで悩んだが、装備の不足は命に関わるので、安全サイドで考えて装備を揃えた結果、荷物は27kgもの大荷物になってしまった。新宿から朝9時のバスで、八ヶ岳の北の端にある蓼科山の麓の蓼科牧場へ向かった。到着は午後1時過ぎで、蓼科山の山頂を目指すには時刻が遅すぎるが、とりあえず行けるところまで行こうと、ゴンドラリフトの終点から初めての雪山を歩き始めた。
登山道はトレース有り。始めはつぼ足だったが、荷物が重すぎるのか度々足を取られる。それでは、とワカンを装着した。以後、結局は4日目の終点までワカン+ストックで歩き通した。荷物は重いが、7合目までは急坂もなく、快適に登れた。
7合目の蓼科神社の鳥居を潜った後は、時折急坂が現れた。色々と試したが、傾斜が急になってきて、ワカンで普通に登ろうとしても滑るようになってきたら、ガニ股の逆のように、右足は左斜め上へ向けて斜面に置き、左足は右斜め上に向けて斜面に置き、という風に、傾斜方向に対してワカンを斜めに置くと、或る程度までの傾斜を登ることができた。試していないが、ガニ股のようにワカンを斜めに置いても有効かも知れない。それ以上に傾斜が急になったら足先を雪面に蹴込むキックステップしか選択肢はないが、キックステップは疲れるのでなるべく使わずに、ワカンの斜め置きが通用する斜面ではそれを使って登った。
登山道は樹林帯で展望はなかったが、途中で「天狗の露地」の看板があったので行ってみると、蓼科山の北側の展望が開けていて、登り始めたスキー場などが眼下に広がっているのが見えた。何枚か写真を撮ったが、今回はデジカメは忘れなかったものの、そのデジカメに充電したバッテリを入れるのを忘れてしまったので、二つ折り携帯のカメラしか手元になく、画質には不満が残った。
ザンゲ坂の急登を登り、将軍平に辿り着いたときにはかなり暗くなっていたので、ここでキャンプすることにした。さて、とヘッドランプを取り出したが点灯しない。電池を交換してみても変わらない。仕方なく、ヘッドランプを懐に入れて暖めつつ、手探りでテントを設営した。その後、懐からヘッドランプを取り出してみると無事点灯した。どうやらかなり気温が低いらしい。テントの設営中に地面に置いておいたバッグに付けてある温度計を見てみると-23℃!! 最低気温を-20℃位と予想していたので、日没直後の時点でのこの気温には驚いた。山行中、時々温度計は見ていたが、この日は特に気温が低かったようだ。
設営後はテント内に籠もったが、テント内の気温は-15℃位。ただ、羽毛量700g超のシュラフと羽毛量350gのシュラフの二枚重ねなので、-15℃位なら寒さを感じることなく、ぐっすり眠ることができた。
(2日目)
昨日、登りの途中でバラクラバを身につけるために帽子を脱いだ折、サングラスを落としてしまったようだ。前日のうちに気が付いていたが、翌朝考えた末、たぶん天狗の露地よりは上だった記憶はあることから、見付からない可能性は覚悟の上で、サングラスを探しに下山してみることにした。ザンゲ坂の急登を下りると、程なくしてサングラスが雪の上に落ちているのを見付けた。雪盲は怖いので一安心だ。急登を登り返し、張りっぱなしにしていたテントの前を素通りして蓼科山への登山道に取り付いた。
途中まで樹林帯の急登が続いたが、その後は岩稜帯の急登となり、強風に晒された。ワカンのキックステップで少しずつ登ったが、空荷なので楽だった。山頂は広く、360°の眺望が楽しめた。百名山のためか、登山者が別ルートから次々と山頂にやって来た。但し、皆さんはアイゼンを装着しており、ワカンで登ってきた人はいなかった。山頂は風がかなり強く、登頂を果たした登山者は、手早く写真を撮って早々に下山していく。自分も山頂滞在を早めに切り上げ、将軍平へ下山した。
テントで一休みした後、テントを畳んでパッキングを済ませ、大河原峠方面へ歩き出した。登山道は、トレース有りだが、将軍平から双子池まで他の登山者を見掛けなかった。このときは、トレース有りの有難みを感じることもないまま、淡々とトレースを辿って大河原峠に到着した。大河原峠は風の通り道のようで、強風だったが、北アルプスの山々や浅間山が綺麗に見えた。写真は撮ったが、例によって画質には不満が残った。
強風を避けて看板の裏で一休みした後、双子山へ登り始めた。トレースは有り。そろそろ山頂が見えてくるかな、という辺りで、絶好のキャンプ地を発見。遠くで風の音がしているが、そのキャンプ地は、風が樹木で遮られて無風かつ平らだった。ちょっと時刻は早いが、出発前に見た週間予報では、明日は大荒れという予報だったので、天候次第では明日1日停滞することも考えて、風の影響を殆ど受けないこの場所でキャンプすることにした。
夜半から雪が降り始め、目が覚めたらテントを揺すってテントから雪を落とすことを繰り返しながら寝た。
(3日目)
朝起きて外を見てみると、テントの周りに20cm程雪が積もっていて、フライシートの裾が雪の中に埋もれている。テントの換気口がテントの頂部付近にあるので助かったが、換気口が無ければ酸欠になっているところだ。慌ててテントの周りの雪かきをした。天候は時折雪がパラつく程度で風も殆ど止んでいる。これなら行けると判断した。
パッキングを終えて登山道を歩き始めたが、昨夜の雪でトレースが完全に消えてしまっている。新雪に足を取られ、ただ歩くだけなのにかなりエネルギーを消耗する。そのうち、深みに嵌り、腰まで雪に埋まってしまった。何とか抜け出したが、しばらくは雪に嵌らないように四つん這いになって進んだ。遠くに山頂の道標が見え出した辺りで、急に雪が浅くなった。風の影響らしい。立ち上がって普通に歩いて山頂に到達した。
山頂からホーロク平までは、杭の間にロープを渡した簡単な柵が登山道の両脇に続き、雪も浅かったので、特に問題なく進めた。ホーロク平から細い尾根に沿って進む間も、トレースが無くても影響なく進めた。
問題は、その尾根が左右に広がり、地形的な特徴が乏しくなってからだった。本来の登山道からさほど離れていない場所だったが、いきなり片足が雪を踏み抜いて深く埋まり、埋まった足を抜こうとして反対側の足に体重を掛けると、反対側の足も雪に埋まり、手に体重を掛けると手も雪に埋まり、結局体全体が胸まで雪に埋まってしまった。喘ぎながら、長い時間を掛けて、やっとの思いで雪から体を抜き出し、元のルートを後退した。
どうやら,この時期は雪の降り始めで,短い樹木の上に積もった雪の下が空洞になってしまっているようだ。見た目には全く区別がつかないのだが、本来の登山道から少しでも外れると踏み抜きを起こしてしまう。GPSで現在位置を何度も確認して、登山道からは大きくは外れていないことは確認できているのだが、本来の登山道の位置がどうしても判らず何度も踏み抜きを起こしてしまう。結局、同じ辺りに何カ所も踏み抜きの跡を残してしまい、進退に窮まってしまった。
思案の末、この状況で、踏み抜きを避けて本来のルートを見極める能力は今の自分にはないので、踏み抜きがあってもそのまま突破する以外に選択肢が無いことに気づき、なるべく踏み抜きがなさそうな雰囲気を嗅ぎ取りつつ、結局は踏み抜きに嵌ってしまうことを何度も繰り返しながら、すこしずつじりじりと進んだ。だいぶ体力を消耗し、本来のルートからも外れてしまっていたが、何とか双子池(雌池)のほとりに出たことで、ようやく現在地が判明し、双子池の湖面上を歩いて、双子池ヒュッテの前に辿り着いた。
今日はコースタイム30分のルートに約半日掛かったことになる。もう、ここから別の場所へ向かう気力は湧かず、双子池ヒュッテの前でキャンプした。
(4日目)
昨晩、雪を融かして作った水1.5Lをプラティパスのボトルに入れ、凍らないようにシュラフに入れて寝たのだが、朝ボトルを取り出すと水が殆ど入っていない!! 確認してみるとシュラフがびしょびしょに濡れてしまっている。後日確認してみたが、ボトルはパンクしていなかったので、水を入れてキャップを閉めた際に、たぶん氷の噛み込みでちゃんと閉まっていなかったのが原因のようだ。この気温で、濡れて保温力がなくなったシュラフで寝るのは危険と判断し、残念ながら下山することにした。
下山するならロープウェイの山頂駅へ行くのが早い。双子池から山頂駅へは、大岳を経由するルートと、亀甲池を経由するルートがある。昨日の経験から、トレース無しの登山道を自力で開拓するのは難しいと考えていたが、今朝見ると、大岳を経由するルートにトレースが付いていたので、大岳を経由するルートを登ってみた。しかし、トレースは100m程登ったところで消えていた。
このため、このルートを諦めて下山し、亀甲池を経由するルートへ行ってみた。しかし、双子池(雌池)を渡っていくらも行かないところで、また胸までの踏み抜きに遭ってしまう。今回は右足がなかなか抜けず、ザックを下ろし、スコップで自分の右足を掘り出して、ようやく脱出できた。
この踏み抜きですっかり消耗してしまったことで、踏み抜きが確実に無いルート、すなわち双子池から10分の山道を経て雨池方面へ林道を行くルートを選択することにした。双子池ヒュッテまで戻ってヒュッテの裏手の道を進むと、このルートにはトレースがあった。大岳へ登ることを諦めた人は、同じルートで下山したようだ。ところどころ消えかかっているトレースに沿って、林道を黙々と歩いた。また、岩石帯有りと書いてあった大岳を登る積もりで、アイゼンを装着した上にワカンを装着していたが、もうアイゼンは必要ないので途中で取り外したら、足がだいぶ軽くなった。
雨池がかなり近くなった辺りで、ロープウェイへ向かう道の道標があった。この道は全く意識していなかったが、地図を見るとコースタイム1時間でロープウェイの山頂駅へ着くらしい。しかもトレースがある。時間も2時前だったので、日没前に山頂駅に着けるのではないかと考え、急遽この道を行くことにした。
登っていくと、途中にキャンプをした跡があり、その先はトレースが消えかかっているが、この登山道は幅数mに渡って樹木を伐採してあるので、トレースが無くても迷うことはないだろうと先へ進んだ。そのうちに風雪が強くなり、目を開けていられなくなったが、ゴーグルを出して装着したら、視界が確保されて不安を感じていた心も落ち着き、これなら行けるという気持ちになった。
雨池峠に着いてからは、他の登山者の姿をちらほら見掛け、縞枯山荘も営業していて、やっと文明社会に戻ってきたような気がした。ロープウェイの山頂駅には、大勢のスキーヤーやスノーボーダーが10分間隔で登ってきていて、喫茶店もあり、雪山にいる間常に感じていた緊張感が、ようやく解けた気がした。
(追加情報)
仕事を終えて新宿東口の石井山専へ行ってみたら、山岳ガイドの松原尚之さんが雪山初心者向けの講習をしていたので、途中からだったが話を聞いてみた。天気図と天気の話やビバークの話など、なかなか興味深かったが、一番の収穫は、双子山からの下りで難儀した話をして、それに対してのコメントを聞けたことだった。
松原さんは、今回自分が歩いたルート(蓼科山〜北横岳)は歩いたことがないそうで、理由はラッセルになると思うので、お客さんを連れていけない、とのことだった。また、どうしてもルートが判らなかった話をしたら、ルートが判らなければ踏み抜けになってしまうのは仕方ないが、自分ならワカンでなくてスノーシューを使うと思う、とのことだった。なる程、スノーシューか。
ワカンを買うときにスノーシューにするか散々悩んだ末に、重量と汎用性でワカンを選んでいたので、スノーシューは全く考えつかなかった。単独行は性に合っているし、今後もこのスタイルで山に行くと思うが、先人の見解を聞ける今回のような機会があれば、進んで参加するべきだなと強く思った。
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