360度感半端ないって‼️クラシック木曽駒ヶ岳


- GPS
- 13:07
- 距離
- 22.5km
- 登り
- 2,157m
- 下り
- 1,950m
コースタイム
- 山行
- 11:47
- 休憩
- 1:21
- 合計
- 13:08
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
将棋頭山からがずぼずぼで中々苦しかった |
写真
感想
少し前に買って読んでいなかった「山岳遭難の傷痕(羽根田 治著、山と溪谷社)」のページをめくった。第一章が木曽駒ヶ岳の学校集団登山事故の記録だった。登山における天候急変の恐ろしさがありありと伝わってくる。早速、この事件をテーマに書かれた新田次郎の「聖職の碑」をキンドルでダウンロードした。
今まで、きらびやかな北アルプス、家から近い南アルプス(実は近いのは甲斐駒だけか。)ばかりに目が行き、中央アルプスに行っていない。何となく印象が薄かった。聖職の碑を読み始めたのと時を同じくしてHikariMonoさんが将棊頭山と茶臼山のレコをあげていた。(彼のレコは僕の散文と違い要点がピンポイントに纏められている。)これは、何かある。満を持してアルプスのセンターを味わいに行くための準備に取りかかった。
年をとってから、クラシックが好きだ。ワイシャツにも胸ポケットはつけない。やはり木曽駒ヶ岳に行くなら桂小場からのクラシックルート一択だ。しかし、そもそも桂小場が読めない。発音しにくいがそのままの「かつらこば」でいいようだ。ネット検索をしていると、桂小場へ繋がる伊那駒ヶ岳線に冬期通行止めがありそうなので、伊那市役所観光課にメールで問い合わせた。すると、明日(12月3日)から4月6日まで通行止との回答が来た。この冬期ゲートは小黒沢溪谷キャンプ場付近(登山口から2kmほど手前)にあるのだが、今夏の大雨でそこから700mほどいった所の道路が崩落して、そもそも登山口までは徒歩になっていたらしい。(暗くてよく見えなかったが、崩落しているようには見えなかった。)その、冬期ゲート付近に駐車できるかを聞くと、市の管理ではないが「若干」のスペースがあるという。「若干⁉️」また、競争率高いパターンか?何でもモーメント投稿する悪い癖でその事を投稿すると、HikariMonoさんが冬期ゲート前の状況等を教えてくれ、心配するほどではない模様に一安心。
最初は夏道の感覚で、宝剣岳まで登るような無謀な行程を組んだが、絶対無理なようだ。それどころか、下手したら木曽駒ヶ岳にたどり着くかも怪しい。時期は違うが、スーパーハイスピードの彼も12時間かかっている。「また、最低でも13時間コースやな…。」少し嬉しかったのは、桂小場は意外に自宅から近い。八ヶ岳と同じ感じだ。しかし日没に間に合うように登山口に戻るには、かなりの早出をしないといけない。睡眠時間との兼ね合いで、12時に自宅を出て、3時に冬期ゲートに到着、速やかにスタート(これが自分にはできないが…)というプランを立てた。12時に出るということは11時45分には起きないといけない。もう、時間にAM/PMをつけないと何がなんだかわからない。
いつも長野道に入る岡谷JCTをスルーし、中央自動車道をひた走り小黒川PAに入った。分かりにくいスマートICを緊張しながら通り、高速を降りる。基本ナビに入れた小黒川溪谷キャンプ場に従うだけなのだが、のっけにちょっと分かりにくい右折がある。そこからかなりの登り坂をジムニーをヒーヒー言わせながら駆け上がると、程なく冬期ゲートの所までやってきた。午前3時に着いたのだが、予想外にかなりの殿のようだ。土曜日から入山している人が多いのか。隣の車の登山者は、何故かこの時間に仮眠をとっていた。
少し準備に手こずり、3時40分に駐車場をスタートした。最近毎週のように13時間登山が続くなか、疲労の蓄積と経験値の向上がせめぎあっている。意外に登山口までが遠い。溪谷にかけられた橋を2本渡り桂小場登山口に到着した時には4時を少し回っていた。登山ポストに登山届けを投函し、右側の登山口から登山道に入る。比較的すぐに真っ暗闇の中、煌々と光る信州大学の施設が柵の向こうに見える。ここから、ぶどうの泉や野田場の水場(枯れている)を越えて非常に歩きやすい登山道をいいペースで登っていく。田渕行男氏の「黄色いテント」に、「登山道も色々で非常に疲れさせるように付けられたものもあれば、疲れを感じにくくうまく付けられたものもある。」とあったが、正にうまく付けられた登山道に感じた。単調だが、もし、帰りにダブルヘッデンの危機が迫っていればここで大幅にまくれるはずだ。
馬返し(標高1890m)の辺りで、地面がツルツルになってきたので真っ暗闇の中チェンスパを装着した。もうすぐ大樽避難小屋(標高2062m)だったので、そこまで我慢しようと思っていたが、あまりにもツルツルだったので諦めた。程なく大樽避難小屋に到着。ほぼ6時になっていたが、辺りはまだ真っ暗だった。ここはトイレのシステムがユニークで「便袋」形式らしい。漢字から想像するしかないが、とりあえず避難小屋の固い扉を開けてみる。幸い誰もいない。ぱっと見ただけではどれが便袋だかは分からなかった。とりあえず小屋の左脇に回り込み、簡易トイレの入り口の前に立つ。トイレ前にポリバケツが小屋の壁にぴったりくっつけて置かれていた。ポリバケツは怖くて開けれなかった。
ここから、少し行くと「胸突八丁(標高2136m)」というすごい名前の分岐がある。ここから、続く信大ルートは「通らないこと」と注意書があるものの、いかにも行ってくださいという道標もある。このクラシックルートには他にもYAMAPには載っていない道への分岐が何回か出てきた。この胸突八丁から少し道がワイルドになるも他の急登に比べるとマイルドな感じ。かつ、2300メートルを越えてくるとかなりたっぷりの雪になり、ますます気持ちのいい雪山ハイクになってくる。かなりクリスマス感を漂わせていた。
さほど胸を突くことなく、胸突八丁の頭に到達した。ここで、通のレコには「茶臼山分岐へトラバースせずに稜線に直登」とあるが、直登にはトレースがなくトラバースにびっちりトレースがある。折角どこを通るのも自由な雪山感を味わいたかったのに、少しトラバースする。しかし、「いや、まだ時間も余裕ありそうだし、トレースばっかり辿っててもしゃーないやろ?」と少し行った所でザックを下ろしアイゼン、ピッケル、ヘルメットの厳冬期セットに衣替えし、直登を試みようとする。狭いトラバース道なのに、誰も通らないだろうと思ってごそごそしていると一人がすごいスピードで僕を避けて通ってくれた。「すみません‼️」と謝る。いつも苦労するアイゼン着けだが、今日はさらに上手くいかない。夏にモンベルのアルパインクルーザー3000の漏水検査をやって漏水が確認できたので今シーズンからまた新しいものを使い始めたのだが、明らかに外側が大きくなっている。外側のサイズに個体差があるのはよくあることらしい。そのせいで、アイゼンのかかとの金具の間にブーツが入らない。ブーツのかかとに付いた雪をとったり思いっきり手で押し込んだり大苦戦。また、狭いふかふか雪のトラバース道で着けようとしたのも失敗だった。結局1時間弱も格闘し、かつ、結局右足のかかとの入りが甘いままの再スタートとなる。
「よし、どこを歩いても自由な雪山行くで〜?️」と勢いよくアイゼンを着けた場所から直上するが、いきなりずぼる。しかも、ここは来たらアカン道だったようで、前に横たわる雪に埋もれたハイマツにしてはリアルに背丈のある木々を乗り越えないと前に進めない。「これ、木の枝から落ちたらどこまでも落ちて死ぬんちゃうか⁉️」と、早々に諦め元いたトラバース道に戻る。おとなしく夏道で行こうと茶臼山分岐まで向かう。無駄に時間浪費してもうたな…。
分岐に出ると右に行くと業者岩、左に行くと将棊頭山となる稜線に出て、一気に視界が開けた。進行方向には、本日初の御嶽山がくっきり見える。また、その先には木曽駒ヶ岳へ続くであろう稜線がものすごい存在感を放っている。「ちょっと風はあるが、めちゃくちゃ天気ええなぁ。」ストリームパーカのフードをかぶり先を急ぐ。
ここから、将棊頭山まではまだまだ余裕だった。2つほど手前のピークで初めてのすれ違い。4人のパーティで、前日入りしテントを張って、もう木曽駒ヶ岳まで行った帰りのようだった。「天気サイコーですね?」と自然に声が弾む。目の前のピークを指差し、「あれが将棊頭山ですか?」と聞くと、「あれ越えたあの先のやつですね。」と前方を指し示してくれる。「ここからも道、おんなじ感じですよね?」と聞くと、「はい、歩きやすいですよ🎵」とパーティのうちの女性登山者も答えてくれた。「よし、ええ感じやな、やっぱり人と話すと一気に元気でるよな。」と足取りも軽く進んでいく。
ここから、意外にトレースがあまりない。が、稜線で風に吹かれているからか、雪がカチカチでトレースがないところを自由に歩ける。たまにずぼるが、快適な稜線歩きだった。頭の中で、9時将棊頭山、11時木曽駒ヶ岳をターゲットに進んでいたが、将棊頭山に着いたのは9時15分頃だった。アイゼン装着に苦戦するまでは相当いいペースだったが、やはりあのタイムロスが痛かった。まあ、でもまだ15分の遅れだし、疲れもなかったのでこの時は楽観的だった。誰もいない将棊頭山で十分サイコーな眺望を楽しむ。御嶽山と乗鞍岳って、こんなにくっついてたのね🎵激しいなこの稜線。「やっぱり結局何でもセンターがええのか?」
しかし、ここからが試練だった。先ほどまでの根雪ガードが嘘のように効かなくなる。ガンガンずぼる。ワカンやスノーシューのトレースが散見され、堪らなく欲しくなる。至るところに先行者の悶絶の跡があるが、そこに自分もはまりに行くのか、あるいは根雪期待の賭けに出るのかのせめぎあい。かっちりホールドされたアイゼンの跡をたまに見つけると狂喜した。しかも、道も全然イージーではなかった。正に雪山としての醍醐味に溢れている。あまりに先まで見渡せる視界良好の稜線にいるので道迷いの可能性はゼロだが、どこを行くのかがそれほど決めつけられていない。たまにミニチュア表層雪崩もどきのような部分をトラバースしながら緊張したり、あえて岩が少し見えている部分を行って安心感を得たりと色々考えながら進んでいく。
どうやらここにも「馬ノ背」があるらしい。ちょうどその辺りに向かっているときに、上から登山者が降りてきた。かなり久しぶりのすれ違いだ。時間はずっと頭にあった11時駒ヶ岳頂上の正に11時になろうとしていた。少し前から時間切れ撤退が頭をよぎり始めていたが、すんでのところで思い止まっていた。「ここから木曽駒ヶ岳まで何分くらいかかりました?」「どうだろう?頂上からここまで3、40分かかってるので、後一時間くらいはかかるかもですね。」自分の見立て通りだったので、「やっぱりそうですよね。😅」すると、「でもきついのはもうすぐ終わりますよ!山頂付近はなだらかなので。」と励ましていただく。「日帰りですよね?速いですよ。自分は避難小屋泊まりだったので。」とテンションまで上げていただく。「まあ、このまま行くと5時とか超えてヘッデン終わりになりそうで…」と言うと「でも大丈夫じゃないですか?」と最後までポジティブな気持ちで送り出してもらう。
ここからも、「こんなにキツいの初めてかも…。」と感じながら気合いで歩を進める。しかも、ここから最後の稜線に上がる所は危険度も高い。劔岳に行ってなかったら、びびって撤退していた可能性が高かった。雪がカチカチではなく、フロントポインティングがしっかり効くのでよかったが、高い緊張状態が続いた。正直、かなり帰りの下りが不安だったが、今は登りに専念しようとあまり考えないことにした。
なんとか最後の分岐を越え山頂がしっかりと目の前に見え始めた。前から降りてくる登山者に、前方を指差し「あれが木曽駒ヶ岳ですよね⁉️」と分かりきったことを聞く。もし、まだ先だと言われたら立ち直れないくらい疲れ切っていた。「そうですよ。どこから来たんですか?」と聞かれ、「下からです。」と言うと「下って、まさか桂小場から?でも、大分手間前から歩かされたでしょう?」「はい、30分くらいですかね。」「何時に出たんですか?」と呆れられた。
やっとビクトリーロードを歩けていた。ここも、自分の好きな道を選んで歩く。敢えてトラバースはせずに尾根づたいに御嶽山、乗鞍岳、宝剣岳などを見ながら歩く。「360度感半端ないって‼️」なんちゅう場所や…。明らかにスケールが今まで行った山頂とは違う。「こんな場所に今まで来なかったなんてもったいない。」
山頂はロープウェイを使ったとおぼしき登山者で賑わっていた。時刻は11時50分頃でギリギリセーフか。御嶽山をバックに鳥居の前の山頂標識で写真を撮ってもらう。自分でもGoProを持ちながら撮りまくり。と、前方から見覚えのあるヘルメットにGoProを付けたスマートな登山者が3人の真ん中で歩いてきた。ザックの背面にはダブルアックスがきっちり収まっている。Kei Fujimoto氏だった。サギダルが近くにあったのでその辺りを行っていたのだろうか?
時間がないとは思いつつ、サイコーの天気の中、スケールの大きな山々を見つめる。写真を撮るも、この景色を再現出来ないことは分かりきっていたので、歩き回りと振り返りを何度も繰り返す。いつもと違う裏側からの仙丈ヶ岳、北岳を見て印象の違いに驚いた。御嶽山、乗鞍岳からの北アルプス、南アルプスオールスターズどれも素晴らしかったが、取り分け宝剣岳方向の稜線に視線を奪われた。
そろそろ時間切れだ。行かないと?最初の分岐からの危険な下りは、慎重にトレースがない急斜面をバックフロントポインティングで降りた。行きにどこを自分が通ったのかは忘れてしまい、全く違うルートになってしまう。そこからも危険度はかなり落ちるも、行きと同様、かなりの緊張感を維持しつつ、落とし穴ゲームをこなしていく。穴ぼこトレースに見切りをつけて、ルートを探る賭けに出ては、見事に裏目に出る。が、お陰で行きには発見できなかった遭難記念碑の前に辿り着くことができた。やっとの思いで、将棊頭山に帰ってきた。「ここまで来れば安全地帯だな。」とやっと一息つき、妻にLINEで連絡する。時刻は2時20分を過ぎた頃だった。「さあー、こっからまくるで〜‼️」茶臼山分岐からは気持ちのいいたっぷり雪を滑り降り、避難小屋の前でチェンスパに履き替えかっ飛ばす。最後の歩きやすい林道は、日没との戦いに全集中、猛スピードで駆け抜けた。完全に意地になって桂小場の登山口をノーヘッデンでくぐり抜けることに撤し、4時50分頃ギリギリのゴールとなる。
ここから冬期ゲートまでも意外にうんざりする長さで、日はどっぷり暮れてしまった。駐車場に戻って来るとさすがに車は僕のを含めて3台のみになっていた。車のドアを開けようとすると、窓枠にメモ書きが挟まれていて、「まさかここも駐禁あるんか⁉️」とヒヤリとするも、「あー!」と先輩登山者からのメッセージというポジティブサプライズ。少し、ほっこりした気持ちになりながら、アウターレイヤーを脱ぎ帰り支度を済ませ、「大満足だが、ボチボチちょっと休憩もいるかな😅」と思いながらジムニーを走らせた。
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