タワ尾根往復(体調不良のため下山)
- GPS
- 11:32
- 距離
- 16.6km
- 登り
- 1,557m
- 下り
- 1,639m
コースタイム
- 山行
- 4:23
- 休憩
- 1:29
- 合計
- 5:52
過去天気図(気象庁) | 2015年03月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
土日に休日出勤してあらかたの仕事が木曜日までに終わったので、金曜日に代休をとって山へ行くことにした。本当は八ヶ岳の赤岳へ行って雪山の経験を積みたかったのだが、財布の中身と相談の上、奥多摩へ行くことにした。タワ尾根を登って、埼玉県と東京都の境のうち、まだ歩いていない水松山から雲取山までの区間を歩き、行ければ石尾根を奥多摩駅まで、と最初の計画はなかなか勇ましかった。1日では無理なので、テント泊の装備と2泊分の食糧をザックに詰め込んだ。
土日は東日原止まりのバスが、平日は鍾乳洞まで行くのでラッキー、と安易に考えていたが、5時起床で自宅を6時前に出たのに、青梅駅の接続で30分待たされ、奥多摩駅でバスの時刻表を見てみると、次のバスは1時間半近く後の10:15。こうなったら逆回りで石尾根を先に登ろうかとも考えて、登山口から少し登ってもみたが、やっぱり最初の計画通りタワ尾根から登ろうと、バスを待つことにした。天気は快晴で風もなく絶好の登山日和。ようやく来たバスに乗って終点の鍾乳洞バス停へ向かう。
ヤマケイオンラインに掲載されている雲取山荘発の情報によれば、雲取山の山頂付近にはそれなりに積雪があるようだし、タワ尾根は地図上で破線ルートなので、登山口からワカンでラッセル、をイメージしていたが、バスで奥地へ向かっても辺りの山には雪が無い。バスから降りて登山口まで10分程歩いたが、登山道も全く雪がない。今回の山行も雪山の経験を積むことを目的にしていたのでちょっとがっかりしてしまった。事前の情報収集が甘かったようだ。
気を取り直して神社の裏から、金袋山のミズナラの案内標識に従い、雪のない登山道を登り始めたが、すぐに迷ってしまい、目の前に聳えている崩落防止の巨大なフェンスの前をウロウロしてしまった。結局、フェンスの前を左手へ向かい、フェンスを左から巻いて登山道に復帰できたのだが、帰りも同じルートを通ったものの、踏み跡も僅かで、このルートで正しかったのかどうかは今も判らない。
雲取山荘の情報では最低気温-5℃とのことで、自分は足の指先に凍傷の不安を抱えているので今回も冬靴(2重靴)で来たのだが、これが大失敗だった。2重靴を買うときに登山用品店で登山道を模した模型を歩いてみたら足首の固定が強過ぎてまともに歩けず、これで大丈夫か?と不安になったのだが、その後の雪山で不思議と気にならなかったのですっかり忘れていた(たぶん、雪道の急な登りではキックステップが使えていたので、気にならなかったのだと思う)。しかし、今回雪の無い山道を歩いてみたら、傾斜の強い斜面で靴底をフラットに置くことすら難しく、アイゼン装着が前提なのか靴底の幅も狭くて安定が悪い。やはりまともに歩くことができず、すっかり困ってしまった。
もう下山してしまおうかと弱気にもなったのだが、くるぶしから上の靴紐をブラブラに緩め、雪のあるときにしか使わない積もりだったストックを安定性の補助に使ったら、何とか登れるようになった。ただ、今度は靴のアウターの中でインナーが動くようになってしまい、元々重い登山靴が、一体感が無くなってやたらと重く感じるようになってしまったので、喘ぎながら登った。また、踵のホールドが無くなってアウターの中で踵が上下に動いてしまっていたので、踵にマメが出来そうな雰囲気を感じ、マメが出来ないように気も遣うことにもなった。
二重靴は、厳冬期に何日もかけて雪山を縦走するような場面では真価を発揮すると思うのだが、今回のような、残雪期で、無雪の区間と積雪の区間が入り交じっているような状況では、足首を曲げようとしてもインナーが変形するだけでアウターがあまり曲がらない二重靴よりも、もっと足首が曲げ易いだろう保温材入りのシングルブーツの方が良いのではないかと思った。特に、最初に買う冬靴は、使える期間の長さも考えると、保温材入りのシングルブーツの方が汎用性が高くて良いのではないかと思う。
金袋山のミズナラは、地図には折損と書いてあったが、いざ行って見てみると、太い枝が折れて下に転がっていたものの、幹は無事で圧倒的な存在感があり、昔見に行った屋久島の縄文杉を思い出した。折れてしまった枝は痛々しかったものの、周囲の木々の中でひときわ目立っていて神々しさを感じた。
先へ進むと、音だけは時折聞こえていたキツツキ(赤ゲラ?)が木を叩いている場面に遭遇した。巣穴を作っているのだろうと思っていたが、見ていると、叩く木をちょこちょこ変えながら、巣穴などできそうもない細い木をつついている。何をしていたんだろう。登山道を先に進むと邪魔してしまうことになりそうなので、立ち止まってしばらく観察していたが、そろそろ先に進まなければ、と歩き出したら、やはり自分の気配に気づいてどこかへ飛んでいってしまった。
ウトウの頭へ近づくにつれて、まず北東斜面に残雪が目立ち始め、そのうち登山道にも雪が現れ始めたが、登山道の雪は部分的にアイスバーンになっていた。幾つかのアイスバーンはつぼ足でやり過ごしたが、そろそろ限界かなと思ってアイゼンを装着した。ウトウの頭の頂上を過ぎた下りは、北面だったので全面的に凍っている急な下りだったが、アイゼンのお陰で何とか下れた。しかし、アイスバーンではストックが刺さらず難儀したので、やはりピッケルを持って来るべきだったと後悔した。
ちょっと前までは土の道だったのに、日当たりによって道の状況がコロコロに変わるのは初体験だったが、これが残雪期の山なのかなと納得した。このときのタワ尾根の状況は、自分は12本爪のアイゼンしか持っていないのでそれで通したが、前爪は使わなかったので、軽アイゼンでも大丈夫ではないかと思う。
ウトウの頭を過ぎて登り返した後、尾根上を進もうとしたらトラロープが進行方向に張ってあったが、ここは左手に尾根を巻いて急傾斜を下って行くのが正解だ。自分は、登山道を戻ったり、本来は道ではないところをトラバースしたり、と無駄に時間を費やしてしまったが。トラロープの所から一旦下って登り返した後は、しばらく木材搬出用の簡易的なモノレールの軌道に沿って進む。軌道が終わって少し登ると、埼玉県と東京都の境の尾根に沿った登山道に出た。
当初の予定の半分位しか進んでいないが、日没も迫ってきていたので、今日はここでタイムアップ。なるべく平らな場所を選んでテントを設営し、早々に夕食を済ませて20時頃に就寝した。就寝前にテントから出てみると、空はまだ晴れていて見事な星空だった。都心方面の東側は星が殆ど見えないが、他の方向はしばらく振りに見る高密度の星空で、東京の星空と云うと星がせいぜい10個くらいしかないイメージだが、ここまで登ると(標高1700m位)なかなか侮れないなと思った。
翌日は4:00に目覚ましをセットしていたが、いざ起きてみると、体の芯が冷えているような感じで体を起こすことができない。目覚ましの時刻をずらして、寝て、起きて、を何度か繰り返してみたが、状況に変化無し。何度目かに起きて周囲も明るくなっていたときに、これはおかしいぞと思い風邪薬を飲んで目覚ましはセットせずに寝てみた。その後も、寝て、起きて、を繰り返し、過去の嫌な思い出がパターンを変えて迫ってくる嫌な夢を見て、ようやく体を起こしたときは既に10:00になっていた。夢が現実でないことを確認するために、フライシートの出入り口を開けて放心状態でしばらく外の風景を眺め、その後、テントを出て外で長時間佇んでいて、ようやく心が落ち着いた。
この時間にこの場所にいたのでは、当初構想していた計画通りには行動できそうにないし、何より体調が万全ではないことが明らかだったので、不本意ではあるが、昨日登ったタワ尾根を下山するのが一番早いと考え、タワ尾根を戻って下山することにした。
ようやく起きあがれたときには、空から時折雪が降ってくる程度だったが、朝食を済ませ、片付けてパッキングしているうちに、はっきり雪が降ってくるようになって、辺り一帯が白一色になってしまった。タワ尾根を下ってみたら、雪の下が土なのかアイスバーンなのかも判らなくなってしまっていたが、昨日歩いたので途中にアイスバーンがあることは判っていたので、最初からアイゼンを装着して出発した。
前日登った道を下るので、あまり新鮮味はなかったが、降雪で雰囲気は一変していたので、それなりには楽しめた。アイゼンの底に付く雪ダンゴも初めて経験し、雪ダンゴを一々落とすのも面倒なので、昨日の記憶からもうこの先にはアイスバーンはない筈、という場所でアイゼンを脱いだ。それから、金袋山のミズナラは、幹にうっすらと雪が積もっていて、昨日とは違う趣を感じた。
今回の山行は、体調不良もあって予定通りいかなかったが、山登りを再開してまだ1年ちょっとの自分は、残雪期の山も初めてだったし、少なくとも良い経験にはなった。近隣の山の雪山シーズンはもう終わりかけているようなので、金銭的な都合もあってなかなか遠くの高い山までは行けない状況では、次の雪山は今年の終わりまでお預けになってしまうかも知れないが、楽しみが先に延びたのだと前向きに捉えることにしようと思う。
雪山というと、以前は「危険」というイメージしかなかったが、今回の雪山シーズンに計4回雪山へ行ってみて、何より楽しかったし、同じ山でも無雪期と積雪期では全然違うということが判って、無雪期にもう登ってしまった山でも、積雪期にまた登ってみたい、同じ山の違う風景を見てみたい、と思えるようになってきたことが何よりの収穫だったのかも知れない。
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