朝日連峰《日本百名山》
- GPS
- 25:57
- 距離
- 60.1km
- 登り
- 3,788m
- 下り
- 3,794m
コースタイム
- 山行
- 7:53
- 休憩
- 1:09
- 合計
- 9:02
- 山行
- 5:41
- 休憩
- 3:41
- 合計
- 9:22
天候 | 1日目(9/20):晴れのち曇り 2日目(9/21): 曇りのち雨一時曇り 3日目(9/22):曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2008年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山:小国町五味沢の”りふれ”から小国町営バスでJR米坂線小国駅 |
写真
感想
1日目(9/20):晴れのち曇り
“のぞみ”の車内でTさんと合流し前祝のビールで乾杯した。台風13号の接近で静岡辺りでは車窓を激しく雨が打ちつけた。心配していた列車抑止や遅れもなく東京に到着し、無事渋谷から夜行バス“夕陽号”に乗り込み鶴岡を目指した。
大鳥行のバス待ち1時間30分は、ホテルのブレックファーストを優雅に楽しみ時間を過ごした。7・8月のシーズン中は泡滝ダムまでバスが入るが今日は11.8キロ手前の大鳥登山口BS(標高263m)までしか行かない。我々の他に沢屋が一人同乗している。八久和川を4日で詰めるそうだ。彼に言わせると日本で一番長い沢登りルートだろうとのことで沢屋にはとっては名所だそうだ。
予想に反して山形県は天気快晴、暑くなりそうだ。覚悟を決めて林道を歩き出した。振り返れば昨年登った摩耶山と思われる山体が見える。沿道には秋の花に混じって夏の花もまだ元気に咲いている。バス停付近が最後の集落でそれ以後人家はなく東大鳥川右岸を延々と歩いた。東大鳥ダムを過ぎ暫く左岸を歩き、左京渕ダムの手前で右岸に復帰し、そのまま泡滝ダム(標高約520m)に到った。
泡滝ダムの手前に舗装された広い駐車場があり6台駐車中だった。シーズン運行の会員バスもこの駐車場までのようだ。ダム横で休憩していると、大きなタモをザックに被せ釣竿を担いだ男性が一人登山道へと入って行った。大鳥池で幻の魚タキタロウを狙うという。タキタロウとは、以東岳の麓、大鳥池に棲む巨大魚で、捕獲されたモノは「アメマス系のニッコウイワナ」あるいは「オショロコマにちかいエゾイワナ」と専門家が鑑定しているが確定していないそうだ。ソナーで調査したところ2mはあろうかという魚影が確認されているとか・・・
泡滝ダムで林道は途切れ登山道となるが相変わらず東大鳥川右岸を行く。山深くなってきたのは確かで対岸のゲンカ森、甚六山の急斜面が迫ってきた。冷水沢の吊橋を渡ると先ほどのタキタロウ青年に追いついた。時刻は昼過ぎ、吊橋の橋口に丁度良い広場があり昼食休憩を取った。歩き出すとすぐタキタロウ青年を追い越し、いつの間にか七ツ滝沢と名を変えた本流を吊橋で左岸に渡り徐々に高度を増すと、やがて七曲りと呼ばれる急斜面となり七ツ滝沢を離れた。勾配を緩和するジグザグ路だが緩すぎてショートカット道を歩く人が多いようだ。それを禁止する立て看板もあるが、少しでも楽をしたい人間の心理は致し方なく踏跡はしっかりしている。
傾斜が緩くなるともう大鳥池の縁。池の北東端には大鳥小屋がある。麓の朝日屋旅館が管理する大きな小屋で、しかも新しく綺麗だ。小屋番が外で寛いでいたが、あまり親しみの持てる感じの人ではなかった。時刻は14時、明日の天気はあまり良くなさそうなので、もうひと踏ん張り進むことにした。立て看板に以東小屋は小さいので大鳥小屋で状況を聞いてから行くようにと書かれていた。さっきの小屋番に以東小屋に泊まる旨を言うと、今日は5〜6人だろうとのことだった。この情報は無線で以東小屋に連絡されるらしい。
池はタキタロウの気配もなく静かで鏡のようだ。この池に姿を映し以東岳が聳えている。その西肩には以東小屋も見える。この山域の森林限界は低く1,450m位。その上は全て露出している。七ツ滝沢の水門を渡り少し行くと分岐点、以東岳に直登するルートと三角峰・オツボ峰を経由するルートが分岐する。時間的には直登した方が早いが、途中の2峰が捨て難く遠回りルートを採った。
標高966mの大鳥池から発する三角峰西尾根は急登で500m登る。上空に雲が広がりだし以東岳の姿を隠し始めた。大鳥池から1時間半掛り三角峰の直下に達した。ピークへの登路はないようだ。しかし此処は通過する訳には行かず、笹原に這松の混じる山頂へ藪漕ぎ突入。自然保護のためには余り好ましくないのだが・・・6分ほど藪を漕ぐと三角峰(1,520m)山頂に達した。石が一つあるだけで山頂標識はないが展望は360°、雲に隠れた以東岳が残念だった。
オツボ峰との鞍部から東の谷に下ると水場があるが遠そうなのでパス。オツボ峰(1,640m)山頂に近づくと雲の中に入ってしまい視界はなくなった。小さなピークを幾つも越え、雲の中をただ只管歩く。長丁場にペースは落ちたが、それでも大鳥小屋から3時間20分で以東岳(1,771m)山頂に到達した。山頂の1等三角点名は何故か「以東ヶ岳」と“ヶ”が入っていた。
点標にタッチしただけで直登コース側に下ると以東小屋は直ぐ下、4分で到着した。間もなく日没、急いで水汲みに行く。5分ほど下ると壁玉水(へきぎょくすい)と呼ばれる美味しい水が湧く。ガスの中、分からずに下ったが戻りは結構きつかった。ここも朝日屋旅館が管理しておりシーズン中は小屋番が入り宿泊料1,500円を徴収している。先客は2人2階に居たので終に話す機会はなかった。19時過ぎガスが晴れ満天の星空となった。明日の好天を祈り寝についた。
2日目(9/21): 曇りのち雨一時曇り
星空も何処へやら、夜半から雨となり、4:30起床した頃はまだ雨が残っていた。出発する頃には殆ど雨はあがり見通しが利くようになった。以東岳が眼前に聳え見下ろすと大鳥池も見ることができた。雨具を着て出発し以東岳からご来光と行きたいところだが上空の雲は厚い。山頂から東を見ると雲の隙間からは朝日が漏れている。天候回復を期待して山頂を後にし、縦走路を南下した。
昨日以東小屋まで頑張ったので今日の行程は随分短縮され気が楽だ。朝日連峰の縦走路は標高はそれほどでもないが、森林限界を越えているので北アルプス3,000mの稜線のようにずっと見晴らしが利く。しかも比較的なだらかで天気さえ良ければ爽快な縦走が楽しめそうだ。西俣沢を抱きこむように左巻きに円弧を描くように下るので、振り返ると以東岳の山体をしっかり望むことができた。
約1,455mの鞍部へ下る頃また雨が降り出した。ガスが出て遠望もなくなり視線は足元へ。登山道にはタカネマツムシソウやオヤマリンドウに混じりハクサンイチゲやイワカガミなど春夏の花のまだ咲いており、始まりかけた紅葉と相まって素晴らしい。折角の花も雨の中でカメラを出せないのが残念だ。
中先峰(1,523m)に登り返して小休止。40分弱で狐穴小屋に到着、昨日のバスに同乗した沢屋の男性は八久和川を遡行し最終的には中俣沢からこの小屋に来ると言っていた。雨の中無事を祈るのみ。ここもきれいな立派な小屋だった。稜線に戻り三方境(1,591m)に向けて登りだすと地元のボランティアの人達が登山道の整備をされていた。こういう人たちの努力で山が守られているのだ。労いの言葉を掛け通過し北寒江山(1,658m)へと進んだ。
前線の影響で天候回復は望めず、降ったり止んだりを繰り返している。ガスの寒江山(かんこうさん1,695m)、南寒江山(約1,680m)を通過し竜門小屋に達した。これまた立派な小屋で登山道に置かれた水瓶に缶ビールが冷えている。「お分けします800円」と書かれているがレギュラー缶にしては一寸高い。Tさんが小屋を覗くと結構人が居たらしい。雨で停滞しているのだろうか。竜門岳(1,688m)からは朝日連峰の核心部に向けて高度を上げる。
雨は降り続くがガスが晴れ西朝日岳(1,814m)山頂に達すると南方に中岳と大朝日岳がドンと現れた。円錐形に聳え立つ大朝日岳は日本百名山に名を連ねるだけあり惚れ惚れする山容だ。これは捨て置けず小雨の中カメラを取り出し雄姿を撮った。中岳(1,812m)は山頂東側を巻いているのでピークへの登路を探すが何処にもない。山頂部にはハイマツなどの樹木が繁茂し藪漕ぎも手強そうだ。雨も降っているので登頂は諦め先に進んだ。南に廻り込むといよいよ大朝日が眼前に迫りその西肩には今日の宿となる大朝日小屋も見える。鞍部まで下ると水場への分岐。金玉水(「きんたまみず」ではなく「きんぎょくすい」と読む)。分岐からはすぐで冷たく美味しい水が得られる。小屋には水がないので金玉水を満タンにして小屋に向かった。
静かそうだった小屋も扉を開けると先客が8人2階の片隅に陣取っていた。到着時刻は12:16、取り敢えず昼食を食べて寛ぎ、Tさんが鶴岡で買ったワインや私のウィスキーを飲み始め、ずるずると夕食になり、後から来た新潟市の愉快なお母さんT岡さんや長井市で葉っぱ塾という自然学校を運営されているYさんも仲間に入り山談義に花を咲かせた。その後1階で盛り上がる山形県大江山岳会の皆さんにJOINし“ひきつりうどん”なるもののご相伴に預かった。この小屋は大江町の所有だが大江山岳会が管理委託を受け84歳のOさんとSさんが小屋番として夏季の間常駐されている。
夕方窓から北を見ると月山や鳥海山が雲に浮かび感激した。
3日目(9/22):曇りのち晴れ
今日は降水確率0%だと葉っぱ塾のYさんが言っていたが、明け方まで雨が降り午前中は曇りとの予報に変わってきた。上空に雲はあるが視界は良く大朝日や西朝日は姿を現している。雨具を着て出発し大朝日岳(1,870m)に向かった。朝から山頂に行っていたYさん一行が下りて来るのとすれ違い握手をして別れを惜しんだ。山頂に達する直前にガスが出だし惜しいことに山頂展望は得られなかった。平岩山(1,609m)まではガスの中で南西稜線を下ると雲の下に出て北大玉山、大玉山、祝瓶山を見通すことができた。しかし北大玉山(1,469m)に登る頃には雲が流れてきてまたガスに覆われてしまった。大玉山(1,438m)はこの山域には珍しく展望の良くない山で3方を樹木が覆っている。3等三角点「大玉」があるが傾いて用をなしていない。
大玉山からは急に薮が濃くなり、乾きだしていた雨具がぐっしょり濡れた。稜線を少し外して道が付いている所はガレが崩れ少し危険な箇所もある。P1097からは祝瓶山の姿が素晴らしくしっかりと望めた。最低鞍部は960mでこの縦走路最大の登り返しとなる450mの登りが待っている。祝瓶山はピラミダルな山容で特に長井市側から見る鋭鋒は凄いらしいとYさんが言っていた。Yさんは「山頂はどんなところですか」と聞かれたら「片足で立つのがやっとだ」と答えると云う。
祝瓶の登りは標高差と岩場・瘦せ尾根もあり厳しい。今山行最後の登りなので覚悟を決め登った。やがて祝瓶から北西に伸びる鈴振尾根に達し分岐点にザックをデポし山頂へピストンする。悪いことに見えていた山頂にガスがかかり、これまた山頂展望は得られなかった。ここまで山頂展望は全滅。山頂には長井市側にある祝瓶山荘から登ってきたカメラマンが一人三脚を立てて回復を待っていたが果せなかっただろう。一縷の望みをかけて我々も10分余り待ってみたが晴れる見込みもなく下山することにした。
分岐に戻り鈴振尾根を下ると先端に展望地、標識に「一ノ塔」とあり1山としてカウント。丁度1,239mの標高点の位置だ。もう少しで頭を出しそうな大玉山や西朝日岳から南西に伸びる袖朝日の稜線、北西側には岩稜を伴った巣戸々山などの展望を楽しみお昼ご飯。後は延々と下る。作業の人2人とすれ違った他は誰もいない静かな道。標高680m付近で“鈴出の水”の標識があり左の沢に下りて行くササで滑りそうな悪い道が分岐していた。両側の谷が出会うと荒川沿いに北大玉山に登る登山道に合流し大石橋に到る。大石橋は荒川本流を渡る吊橋で長さは20m余り、1mほどの幅に踏板が上流側に1枚だけ渡されている一寸おっかない橋だ。荒川右岸に渡ると林道終点で数台の車があったが大朝日に登っているのだろうか。Tさんのレポートではきれいだったというトイレもある。
この3日間の縦走で会った人は小屋で会った人や作業の人を除くと縦走者は皆無。タキタロウ青年と竜門山で出会った小父さん、祝瓶のカメラマンだけだった。そして林道歩きが長い。ここから五味沢まで9.2キロを歩かなければならない。初日の11.8キロと合わせると実に21キロ、ペテガリ登山の時には及ばなかったが良く歩いたものだ。バスの時刻も余裕なのでぷらぷら歩き15:45五味沢バス停に到着した。
バス時刻を確認すると始発は「りふれ」。“りふれ”とはすぐ傍の白い森交流センターのことで曲がり角に「生ビール」の幟が上がっている。バス待ちは50分、Tさんとの思惑が一致しそちらに向かう。すると看板には“人工温泉”の文字が、ゆっくり入ることはできないが、新潟まで行ってスーパー銭湯に行くよりは、今ここで入る方が気持ちもすっきりしそうで行水程度になるが入ろうということになった。男女とも貸切り状態で入浴した。結局レストランは準備中で生ビールにはあり付けなかったので、アイスクリームを買ってバ小国行のバスに乗り込んだ。
JR小国駅から米坂線で坂町に出て羽越線に乗り換えるが待ち時間は45分、駅前を物色すると1軒だけあるうどん屋でビールにありつき時間を潰した。いい心地になり新発田辺りから眠りに付き新潟へと入った。大阪行の急行“きたぐに”まで2時間55分、駅前の居酒屋で越後のお酒とお魚を味わいお疲れさん会を楽しんだ。
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