北鎌尾根から残雪の槍ヶ岳 快晴で最高のGW山行
- GPS
- 80:00
- 距離
- 41.1km
- 登り
- 2,523m
- 下り
- 2,516m
コースタイム
- 山行
- 11:55
- 休憩
- 1:05
- 合計
- 13:00
- 山行
- 9:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 9:40
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 10:20
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 1:20
- 合計
- 6:50
天候 | 5/1晴れ 5/2晴れ 5/3晴れ 5/4曇り時々雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
関西組はあかんだな駐車場より路線バスで上高地へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
【上高地〜大曲】 槍沢ロッジ手前までほぼ積雪なし。道もほぼ夏道が露出している。槍沢ロッジにて12本爪アイゼンを装着。ここから上はルート上に旗竿あり。 【大曲〜東鎌尾根の乗越〜北鎌沢出合】 本来はここから水俣乗越を詰めて天井沢を下降する予定だったが、大曲手前から見る水俣乗越は垂壁のようにせりたっており、とても登れそうに思えなかったので、一見登りやすそうな一つ東のコルを目指して詰め上がった。4日に下山するときに改めて確認したら、傾斜もさほどきつくなく、北鎌沢左俣よりはるかに緩やか。 東鎌尾根の稜線上から天井沢の枝沢への下降は、練習も兼ねて3ピッチほど懸垂下降で下った。 天井沢はすでに雪渓が割れて水流がところどころ露出している。取水しやすい場所は出合より100mほど上流にあったので、出合までいかずにそこをC1とした。 【北鎌沢出合〜北鎌沢右俣〜北鎌のコル〜独標手前】 北鎌沢はまだ雪が全面かぶっている。クマの足跡が多いので注意を要する。 北鎌のコルからP8、P9ともに雪とハイマツの岩場のミックス帯。通過した時間帯が正午前後だったので、気温が高く雪の状態が極めて悪かった。 P9天狗の腰掛山頂と、独標の取り付き手前に幕営適地あり。 【独標〜北鎌平〜槍ヶ岳山頂】 独標の取り付きは一部夏道が露出、核心部は3ピッチ分。独標からP14手前まで夏道が露出しているが、岩の状態は悪く、落石には厳重注意。この日、前穂高で落石事故で死者が出たことをあとで聞く。 P15は右側から夏道伝いにトラバースして巻いた。 大槍へはチムニーを2箇所ロープで超えていくが、今年はほぼ岩が露出しており、岩の登りと雪壁のミックス帯をうまくつないでロープなしで登れた。 【槍ヶ岳山頂〜槍ヶ岳山荘〜上高地】 テント場は地面が露出している所としていないところは半分ずつ程度。 槍沢ルートは旗竿が立てられており、トレースもばっちり。 槍沢ロッジより下はどんどん雪解けが進んでいる。 ・ロープは50mを2本用意 ・テントは4人用を1張 |
写真
感想
槍ヶ岳・北鎌尾根といえば、過去に数多の登山家がドラマチックな登攀で彩り、ときに悲劇の歴史を刻んできた岩稜。
孤高の人・加藤文太郎が雪煙の彼方に消え、松濤明が風雪の中に壮絶なる遺書を遺して斃れた地。
独標までの登攀は要所要所で緊張を強いられ、穂先への一気に高度を上げながら詰めていく。
GWに残雪の北鎌尾根に一緒にいかないかと誘いを受けたときは、今の実力では登れるか未知数だったけれど、せっかくの挑戦のチャンスだからと参加することに。
仕事が忙しくてなかなか準備ができなくて、体力的な不安が残るがそれでも事前にルートの調査など万全を期して、いざ出発。
5/1
関東組は沢渡で車中泊、関西組はあかんだな泊で、早朝に上高地で合流。今日からしばらく天候は安定。登頂への期待が高まる。
上高地で挨拶を交わし、いざ出発。このメンバーで登るのは昨年の立山BC以来。この冬もそれぞれが雪山登山、山スキー、アイスクライミングなど、それぞれが得意な分野で経験を重ねてきたメンバーだ。
明神、徳澤、横尾、槍沢と要所要所で小休止を取りながら、快調に進んでいく。徳澤ではコーヒー休憩もとった。槍沢ロッジでアイゼンを装着。
気温はぐんぐん上昇して非常に暑い。この日はシャツ1枚で行動だったが、それでも体力を奪われる。
1名が寝不足でスピードが上がらなかったので、ここで共同装備の配分を調整して再スタートした。
大曲まで来ると、目の前に乗越までの雪壁が立ちはだかる。通常正面に見える一番右の低いコルを目指すと水俣乗越のはずだが、ちょうど見上げたコルまでは雪壁となっていて、とても登れそうに思えない。
周囲を見渡すと、そのさらに右側の沢筋が登りやすそうに見えたので、こちらを登ることにした。
登りやすそうにみえても、実際は登れば登るほど角度は急になり、最後はグズグズで悪い雪を慎重にキックステップで登りきった。
途中で気づいたが、結局水俣乗越より1つ東のコルに出た。
ここで東鎌尾根を西に歩いて水俣乗越から天井沢を下降するか、そのままこのコルから天井沢の枝沢を下るか、選択肢は2つだったが、時間も迫っていたのでここは枝沢を下ることにした。出だしが急に見えたので、練習を兼ねてここから懸垂下降3ピッチで沢床に下降。2ピッチ目以降は懸垂の必要はなかったかも。
3ピッチ目を降りる頃には緩やかになったので、あとはロープをしまってひたすら天井沢出合を目指した。ちょうどこの枝沢との出合部分が幕営適地だったので、迷わずここをC1にした。すぐ横からダイレクトに沢の水が取水可能だったので、水作りに時間を取られずにすんだのはよかった。
この日の夜は牛丼。食後のコーヒーやお酒を楽しんでいたらあっというまに9時を回ってしまった。
5/2
この日は3時起床。朝食の棒ラーメンを素早くかき込んで撤収作業。空を見上げると雲一つない青空、絶好の北鎌日和だ。
まずは北鎌沢出合まで100mほど河原歩き。すぐに出合に到着。ここから見上げる北鎌沢右俣は、雪の回廊が天に向かってまっすぐ伸びていておもわず息を呑む。それにしても上部はかなり急そうだ。
北鎌沢左俣出合をすぎると、ところどころにクマの足跡が。過去の記録をみるとクマの目撃情報が載っているが、やっぱりこのあたりは熊がたくさんいるようだ。
それにしても、この北鎌沢の登りはキツイ。その上気温はみるみる上昇してシャツ1枚でも非常に暑い。吹き出るような汗でザックを下ろして休みたくなるけれど、あまりに急すぎてザックを下ろすことすらできないくらい。
3時間もかかって北鎌のコルに到着するも、すっかりバテバテになってしまった。後から見たら、ちょっとした脱水状態だったのだろう。
なので、ここから本番の北鎌尾根というのに、どうもペースが上がらない。最初のP8への登りは最初は雪壁を少し登って、あとは雪とハイマツ帯のミックスを登っていく。
P9の天狗の腰掛も、それだけでも立派なピークだ。ここから見る独標の大迫力に圧倒される。P8もP9も油断ならない登攀で体力を消耗する。P9のピークでランチタイムにするも、どうも食欲がわかなかった。
ここから一旦、北鎌沢左俣が突き上げるコルに向かって下降し、登り返す。この時点で12時すぎ、気温はみるみる上昇し、雪はグズグズで非常に悪く神経をすり減らす登下降が続く。独標の登りは最初天井沢側からとりつこうとするもすぐに進退極まり、千丈沢側へ。アイゼンで岩を捉えながら慎重に進んでいく。次の壁は岩が脆く直登は非常に悪い。右からトラバースしていく夏道が見えるが途中が雪壁に埋まって、雪の状態も悪く嫌らしい。
結局CLが無理やりフリーで登り、上からロープを出して中間2名は登高器とプルージック、ラストはビレイして無事に通過。
この時点で3時、ここから独標を越えて北鎌平まで行ったら確実に日没だし、かなりバテバテで腕は動くけれど足がどうも思うように動かない。ここでの幕営を申し出て、ちょうど1張り張れるスペースがあってちょうど雪もあって水の確保も出来る場所があったので、ここをC2とした。
目的地の北鎌平までは行けなかったけれど、それにしてもこのテン場、目の前には独標の大岩壁が迫り来て、すぐ横には大槍が見下ろすように聳え立つ。
西に目を向ければ急峻な西鎌尾根が高度を下げながらきれ落ち、その雪先には双六、三俣蓮華そして鷲羽岳へ続く緩やかな稜線が続く。三俣山荘は千丈沢をはさんでちょうど向かい側に見える。
西鎌尾根のさらに奥には笠ヶ岳、はるかかなたに白山も望むことができる。
鷲羽の横には水晶岳、右は雪がなく、砂礫が露出した野口五郎岳から裏銀座縦走路が続いている。高瀬ダムの奥にはとんがった針ノ木岳も確認できた。
東には燕岳から大天井、常念と続く表銀座の山々に囲まれており、この絶景と1夜を共にできるのは、ここに来ることのできた人しか味わえない贅沢だ。
一眠りして水をたくさん飲んだら少し元気になったので、水作りの手伝いをして早めの夕食にして7時には就寝となった。
ここからなら頑張れば1日で北鎌沢まで戻れるが、ここをすぎて独標へ向かってしまえば、もう後もどりはできない。体力不足でパーティーに迷惑をかけて申し訳ない思いだったが、かといってここで撤退することも心の残り。不安の中の就寝。
5/3
この日は2時半起床、いよいよ核心の大槍への登攀だ。しばらくは夏道が露出しているのでノーアイゼンで出発。すぐに核心部に到達する。最初は雪稜を歩いて取り付くのでここでアイゼンを装着した。
1ピッチ目は2箇所に立木からランナーをとることができる。左へ少しトラバースして、2つ目のランナーをすぎるといよいよ90度近い雪壁の登攀になる。ここはラストで全員をビレイし、2ピッチ目はリードで登らせてもらった。ここは比較的簡単で難所もなく終了点へ到着。3ピッチ目は高度感のある登攀だった。
ここでビレイヤーがATCを落とすハプニングがあるも、気を取り直してここからは独標山頂へちょっとの登り。あっという間に独標に到着して一息入れることができた。
独標から上部は次々に岩峰を超えていく。ここから先、あきらかに夏道が出ているのでここでいったんアイゼンを脱いだ。正面にはいよいよ大槍が聳える。
P11、P12と夏道通りに超えていく。ところどころのクライムダウンは緊張を強いられる。どうもクライムダウンが苦手だ。しかも岩がもろく剥がれやすく浮き石も多い。一度パーティーのラストの落石であやうく拳大の岩が直撃しそうになるハプニングもあった。
P13の手前からは天井沢側の雪壁をトラバースしていくので、ここでアイゼンを再び装着。少し進むと明らかに雪がもろく、崩れ始めている。ここは危ないのでフィクスロープを張った。通過中に早朝2時に北鎌沢出合を出たというパーティーに追いつかれた。
ここからはそのパーティーと抜きつ抜かれつしながら、北鎌平を目指していく。
船をひっくり返したようなP15は千丈沢側をトラバースする夏道が露出していたので、ここを慎重に通過した。この日は晴れて気温も上昇、けれど少し西から雲が湧いている。やはり明日以降天気が下り坂というのは本当のようだ。
北鎌平で一息いれると、いよいよ大槍だ。まずは岩塊が折り重なる雪稜をくの字型に登っていく。穂先へは階段状のフェースになっていて、凹状のチムニーを2箇所超えていく。
ただ、やはり今年は雪が少なく、最初のチムニーは左の雪壁と露出した岩場を慎重に上りきり、上部チムニーは右側の雪壁と岩場をロープなしで通過することができた。
ただ、最初のチムニーの取り付きでアイゼンが片方外れてしまい、その対処に15分くらい要してしまった。
ロープは出さずに通過できたといえど、このあたりは必死で無我夢中で登る。
最後は天上沢側の雪壁と岩場を登りきると、賑わいを見せる山頂へと到着。がっちりと握手を交わして登頂の喜びを味わった。
明日天気が崩れることもあり、C3予定の槍沢まで下ることも考えたが、今日は山荘での宴会を楽しみに登ってきたのだからと、この日は槍ヶ岳山荘でC3に。小屋の近くに雪のない幕営地も確保、テントを張って、小屋でビールとおでんで乾杯して、みんな若干の高揚感を味わいながら最後の夜を過ごした。
5/4
翌日は2時起床、4時にはテントを撤収して、昨夜小屋泊に変更した1名と小屋前で合流して濃いガスが立ち込める槍ヶ岳山荘を後にする。ここからは旗竿が等間隔に立てられており、ルートは明瞭。途中は尻セードで順調に高度を下げていく。みんなこの日は下山日ということもあり、リラックスモードだ。
7時間ちょっとで無事に上高地に到着。なんとか無事に帰って来れた。
体力不足を痛感したが、それでも登りきることができた。
残雪の北鎌尾根は中級者の総合力を試される場所だと聞いていたけれど、これで初級者から中級者くらいにステップアップできたかな。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する