記録ID: 63546
全員に公開
アルパインクライミング
槍・穂高・乗鞍
槍ヶ岳北鎌尾根
2010年05月01日(土) ~
2010年05月04日(火)
長野県
岐阜県
snowy
その他3人
- GPS
- 95:27
- 距離
- 47.8km
- 登り
- 4,430m
- 下り
- 4,214m
コースタイム
7:00高瀬ダム-9:30湯俣温泉-15:00千天出合-16:10P2基部
5:00P2基部-8:10稜線-14:00P7手前
5:00P7手前-10:00独標-14:00北鎌平
4:45北鎌平-7:00槍ヶ岳-12:00横尾-15:45上高地
5:00P2基部-8:10稜線-14:00P7手前
5:00P7手前-10:00独標-14:00北鎌平
4:45北鎌平-7:00槍ヶ岳-12:00横尾-15:45上高地
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年05月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
湯俣のつり橋一部崩壊 4月中旬にビスターリーさんからメールにてお誘いを受けましたが、自他共に認める体力不足の私であります。そして槍ヶ岳は登ったことがありません。 北鎌尾根・・・山渓「日本のクラシックルート」に載っているのを読んだ程度であまり知識はありませんでした。がしかし、道無きルートを辿り独標からの槍ヶ岳を眺めて山頂に立ってみたいという思いが強まり、全ての面で力不足を認識しているにもかかわらず、二度とないチャンスと思い参加することを決意しました。 今年は天候不順で例年になく残雪量が多い為、直前に追加装備(ビーコン+プローブ)の見直しがありました。私としては緊張と不安がさらに高まりながらの出発となりました。 5月1日(快晴)☆立川〜信濃大町〜高瀬ダム[07:00発]〜湯俣〜P2基部(幕営)[16:10着] 00:00立川駅に着くとすでにビスターリーさんと砂ッチが売店の前にいました。砂ッチのザックにはタケノコ堀に使ったスコップがくくりついていました。砂ッチ恐るべし。やがてユッキーも揃ってムーンライト信州81号を待つ。私は睡眠用のビールを購入しようとホームでウロウロしたが買えずに電車に乗り込んだ。座席を反転させBox席にして4名が席に付く。予約の1座席が空いている。リチャードの席である。今回は持病が芳しくなく、最後まで望みを託したのであったが直前不参加となりました。(残念です) 座席の裏側にペットボトルに入ったウイスキーとつまみを発見。愛するコーチャンからの差し入れでした。私はアルコールを控えようと思っていたにもかかわらず、信濃大町に着く前に砂ッチとコ-チャンウイスキーを飲み干してしまいました。すなわち寝不足である。信濃大町駅で少々の空き時間があり、ほろ酔いの砂ッチは、鳥居みゆきは嫌いだと言いながら「♪ヒットエンドラ〜ン♪ヒットエンドラ〜ン」と身振り手振りを交えて踊り叫んでいた。「事務局長としてあるまじき姿だ!」と誰かが言っていたような気がします。予約済みのタクシーにて高瀬ダムに到着。身支度をしていると別パーティーの男4名がタクシーから降りました。柴笛隊と同ルートで槍を目指す様です。この時点では、P2基部手前付近に於いて、最後尾の方が、沢まで滑落して呆然と立ち尽くす姿に遭遇することを誰もが予想していませんでした。 高瀬ダム出発[07:00]湯俣目指してダラダラと長い林道(右岸)をひたすら歩く。林道終点で一休み。4名パーティーも到着。ここからは1列になって右に高瀬川を見ながらの歩行。途中では何ヶ所かデブリにより荒れて寸断された道もありました。吊橋を渡って湯俣(左岸清風荘前)に到着[09:40]。 休憩中4名パーティーが吊橋を渡らず追い越して行きました。我々はハーネスとヘルメットを装着して出発。今来た吊橋を渡り返して高瀬川右岸沿いに歩く。5分ほどで水俣川に架かる壊れた吊橋に着く。橋桁が中央付近で抜けていたが、代用の細い木が架かっていて、なんら問題はありませんでした。吊橋を渡った対岸では、先行パーティーがへつっていました。しばらく待機して一人ずつ慎重に橋を渡りきると、登山道はここで無くなっていました。いよいよ水俣川入口からへつりが始まりルーファイと渡渉を繰り返しながら千天出合を目指します。水俣川左岸の踏み跡をたどり、高巻、トラバースを繰り返し1回目の渡渉地点に着きました。先行Pは長ズボン+スニーカー装備でどこを渡るか思案中。柴笛隊も渡渉スタイルに変身・・・出前一丁パンツ一丁であった。(私だけカッパの下を履いていた)この出で立ちで千天出合まで進むのであるから柴笛は逞しい。しかもY会長はこれから渡る水俣川めがけて小便を飛ばしているし。最初の渡渉を終えて次ぎいつ渡るか解らないので、このままの格好で行きましょうとなり、おパンツトリオ+1で進むことになった次第です。 左岸斜面トラバースの時でした。足元の岩が滑って登れなく手間取っていましたが、場所を変えて登りきました。そこは熊笹が下方向に倒れて雪が載り、非常に滑りやすい斜面でした。立ち位置の下に長さ6m程のFixロープが水平方向に垂れて架かっていましたが、7mm程度の白いロープで信用できそうもありませんでした。砂ッチ、ユッキーはそのロープを使わず上部を通過したようでした。最後尾の私はビスターリーさんの後ろを追いかけていました。ビスターリーさんが白ロープ上部の中間あたりで腹ばい状態のまま下に滑り出しました。やばい、だめだ、落ちた、瞬間思いました。真直ぐに伸びた両足がロープの下にもぐったと同時に足元にあったロープの端部を掴んでもちあげていました。無意識でとっさの反応でした。ロープが背中とザックの間に入ってビスターリーさんは止まりました。そしてあっという間に脱出しました。2m弱の滑落、10秒位の出来事だったと思います。私の心臓は高鳴っていました。心の中で助かった!良かった!と叫んでいました。落ちればただでは済まない高さだったと思います。ビスターリーさんは何事もなかったように進んでいました。すごい人だ。 おパンツトリオ+1は寒さに耐えて水俣川の渡渉と雪渓の高巻きを繰り返し、両足は擦り傷と切り傷だらけで最後の渡渉地点(6回目)千天出合の手前に到着[14:00]。対岸(右岸)で先行Pの身支度場所が空くのを見て渡渉。おパンツにおさらばして通常の登山装備に整える。あとひと踏ん張りということで、幕営地P2基部目指して出発。天上沢の高巻きは急登でかなりきつい。でもあと少し。P2基部手前の沢沿いのところで先行パーティーの一人に会いました。滑落して沢まで落ちたようです。怪我した様子もなく落ち着いていました。ビスターリーさんがタオルを差し上げたのですが、「大丈夫です」と言って受け取りませんでした。最後尾の為、他メンバーが気づいていない様でした。ユッキーが知らせる為に追いかけたのですが、私はどうしていいのか判断できず見守っていました。結局滑落者を連れてP2基部まで向かうことになりました。滑落した場所(熊笹で滑りそうで沢まで15m程あったかな?)を慎重に通過してようやくP2基部到着[16:10]。テント設営 他テントは1張りのみで先行パーティーのものでした。テント内での会話「やっさんはパンツ一丁じゃなかったからさー、今回の山行記録から削除だよなー」。「柴笛おパンツ隊も今はヒーローかも知れないけどー、3.4年後は評価が下がるかもねー」。「後ろから見ているとさー、バラ族みたい!」「パンツ一丁で雪の斜面をルーファイしていたKさん超かっこ良かったよねー」。「だいたいさー、柴笛会長、副会長、事務局長の会を代表する3人がさー、パンツ一丁でさー、山とか藪をウロウロしてさー、それって問題じゃねーか」他、たくさんでました。 就寝[20:00] 5月2日(快晴) ☆起床[03:00] P2基部[05:00発]〜P2〜P7手前(幕営)[14:30着] P2基部出発[05:00]。稜線上のP2までは雪の急斜面を、登っても、登ってもひたすら登りだ。滑落したら下まで落ちるような斜面で緊張の登りでした。やさしいメンバーは私の遅いペースを許してくれます。やっとこさP2手前の稜線へ出ました[08:09着]。すばらしい眺めでした。ここからは槍は見えません。いよいよ北鎌尾根の始まりです。独標手前を目指してP3〜P4〜P5・・・???です。 ピークにP何の旗でも立っていれば解るのですが、前も後ろもでこぼこでした。とにかく急登有り、トラバース有り、ピーク超え有りで進みました。トラバースはかなりやばいですね。雪がやわらかく斜面も谷底まで落ちています。さよならトラバースですかね。私の歩行ペースがあがらない為、分担荷物テントと食料を砂ッチとユッキーが分担してくれました。申し訳ない気持ちでいっぱいですが、相変わらずペースは上がりません。P7手前(北鎌のコル手前のピーク[14:30]で今日は終了となりました。斜面を均してテントを設営してゆっくり休むことになりました。 今日もたくさんのこと教わりました。雪面での足運び、疲れないピッケルの使い方、ロープを出した時は先を読んで準備する。他たくさん教えていただきました。実践を通じての指導は私にとって貴重なことでした。ビスターリーさん ユッキー、砂ッチ 有難うございました。 テン場からの眺めは素晴しい。天狗の腰掛、独標 他、名前の分からない山がきれいでした。でも槍はまだ見えません。風もなく穏やかな夕暮れです。 20:00就寝 5月3日(快晴) ☆P7手前[05:00発]〜北鎌のコル〜独標〜北鎌平(幕営)[14:00着] 今日は槍ケ岳を踏んで槍岳山荘でおいしいビールを飲みましょう。という予定です。よーし、がんばるどー。P7手前ピークの天上沢側トラバースは、ロープを出しての通過で始まりました。ピークらしきを越えて北鎌のコルへ懸垂下降で下る。ここは北鎌沢右俣から登ってくる登山者との合流地点。他パーティーが出発の準備をしていました。ここで休憩。先を譲ろうとしたのですが、お先にどうぞということで出発。相変わらず私のペースがあがらずゆっくり進みます。所々でロープを出しました。天狗の腰掛を越えて独標を目指して登ります。独標の取り付きはロープを出して登り、そこからは急登の連続でした。槍が現れました。独標ピークに立ったのです。子槍も見えます。素晴しい眺めの槍でした。感激しました。多分みんなも。ここから槍目指してどんどん進みます(どんどんは進んでいないみたいなのは、私のせいかしら)。北鎌平に到着[14:00]。槍の穂先を越える時がきました。が、私の疲労度と取り付きの渋滞を考慮して今日はここで幕営となりました。ここでも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。北鎌平からの眺望は予想通りで素ん晴らしいの一言です。風が強くなっていました。テント設営開始。雪のブロックでテン場を囲みました。砂ッチ愛用のタケノコスコップが威力を発揮します。他パーティーの女性から「早くてすごいですね」のお声をかけていただきました。テン場を雪均ししてテント設営終了[15:40]。最終的にテン場は4パーティーが設営されていました。現在快晴ではあるが風強しです。明日の天気が気がかりでした。予報は低気圧が近づいていて好天は期待できなくて風も強い模様。ビスターリーさんから「明日は山頂までの最後の1Pを行きユッキーがリードして最後を砂ッチで行きましょう」になりました。明朝はトップ取付を狙って 02:30起床で04:30出発を確認 20:00就寝・・・ 夜中 寝袋に入っても強風はやまず。テントが風であおられるバタバタ音で寝付けません。おそらく皆そうだったと思います。私はほとんど寝付けませんでした。 5月4日(曇り・風強し) ☆北鎌平[04:45発]〜槍ヶ岳〜槍沢ロッジ〜横尾〜上高地[15:50着]⇒帰京 起床[02:30] 風強し 強風の中、テントを撤収。槍ヶ岳山頂目指して出発[04:45] 穂先に近づくにつれ斜面が急になってくる。ピッケルとアイゼンを効かせて滑落しないように確実に上に進む。私はユッキーに離されないように必死で付いていく。風は穏やかになったが斜面がきつくなる。予定では山頂直下の1Pでロープを出し、ユッキーがリードで登るはずであった。やがてユッキーがそこまで登り上がった。続いて登ろうと見上げた斜面は、自分にとっては距離が長くてかなり急でした。下を見ると滑落したら助かりそうもない斜面である。少しためらっているとビスターリーさんが登ってきた。私は顔を見ました。「ロープ出しますか?」「お願いします」即答でした。ビスターリーさんのザックからロープを出していると砂ッチが登ってきました。最後の1P下で待っているユッキーのところまで砂ッチがロープを付けて登ることになりました。ちなみに北鎌尾根では、ロープを出すたびにリードとビレイヤーの状況確認を無線でやりとりしていたので、次の行動がスムーズにできていました。この様な状況下で無線は必須アイテムだと感じていました。「登っていいよ」の合図で私が登りました。続いてビスターリーさん。流れからして砂ッチがリードして山頂を目指すことになりました。「ユッキーじゃなくていいの?」「そんなんええよ、行って行って」二人の会話でした。砂ッチが登り始めてからしばらくして、ユッキーが無線で残ロープ長さを知らせていました。しばらく応答がありませんでした。・・・・・「山頂着きましたー」・「砂ッチ登頂おめでとう・砂ッチおめでとう」砂ッチの声はいつもより甲高く聞こえ、ユッキーのおめでとうは2回叫んだと記憶しています。二人とも槍ヶ岳は初めてでした。二人の無線でのやり取りを聞いて、鼻の中が広がる感じで鼻水が出そうになりました。すなわち感動していたのです。次々に山頂に登りました。最後はユッキーだったかと思いますが覚えていません。祠の前で握手しました。皆でタバコを吸いました。ガスで眺望はありませんでしたが、素晴しい槍の山頂でした。 10分程山頂にいて下山開始。雪の斜面は足場が小さく滑落に注意して慎重に下りました。槍岳山荘着[07:50]。山荘前にてビールで乾杯。大休憩。一瞬ガスが切れて目の前に槍ヶ岳が大きく現れました。2010年5月・北鎌尾根王道を辿る 終了を告げたのでしょうか。衣服、装備を整えて槍岳山荘出発[08:25]。空は青く、強い日差しの中、照り返しが強く、白くてまぶしい雪渓をへたくそなシリセードを駆使して下る。槍沢ロッジ、横尾、徳沢、明神館とで休憩と水分補給をとりながら上高地到着[15:50]。へんてこりんなタクシーに乗り込み松本駅近くの温泉で降ろされる。さっさとお湯につかって、定番のコーヒー牛乳を腰に手を当てながら飲んで、ボロボロの足なのに歩いて松本駅へ。帰りの電車もBox席にして帰京。 最後に 北鎌尾根〜槍ヶ岳 ビスターリー様 ユッキー様 砂ッチ様 有難うございました 心より感謝いたします。 北鎌尾根山行 報告(補足) ビスターリー 私は5月連休に過去2度このルートを登っていますが、毎回こんなにドラマを作ってくれるルートはないのではないかと思っています。 このルートを登るには、 ・ 基礎的な体力 ・ 確実なアイゼンワークとピッケルワーク ・ 基礎的なロープワーク ・ ルーファイ ・ 雪質の見分け方 ・ 諸要素からの行動の終了・続行の判断 ・ 翌日の天候予測と計画の見直し 等、諸要素が求められ、それ故総合力が求められる山行ではないかと思います。 ルート中の大半のところが一歩も踏み外せない個所であり、アイゼンとピッケルの効きや雪質に神経を使ったことと思います。 過去に2度行っていた経験からすると、今回は積雪量があったことで過去何の問題もなくロープを出さずに通過していた所が難所となりロープを出しました。 過去2度では北鎌沢のコルまでの下半部では、P2への登りの1ヵ所と千丈沢側へのトラバースでの1回しかロープは出していませんでした。 今回はP2への登りは若干ルートがずれて出すところはありませんでしたが、千丈沢側へのトラバースに始まり、北鎌沢のコルへの懸垂降下を含めてロープを多用しています。 北鎌沢のコルからの上半部でも過去は独票の上りと槍ヶ岳本峰の登りで出したり不要だったりしていたのが、今回は途中のピークでも使用するなど難度は高かったものです。 次に今回の山行が成功した要素としては、参加者が自分の力量を発揮するとともにメンバーの不足している部分を補うことができたことです。 きつい山行で体力が消耗してくると、つい自分本位となって他のメンバーへの思いやりに欠けてくるものです。 そうなってしまうとパーティーの力量は1×4=4とならず、1×4=3以下となってしまいます。逆に力が結集すれば1×4=5にも成りえます。 槍ヶ岳本峰へのアタックではユッキーが1ピッチ目をリードし、2ピッチ目はスナッチがリードして登頂しました。 無線でロープの残メートルを報告している時に山頂到着の連絡を受け、ユッキーが「登頂おめでとう」の交信をしていました。今でもその情景は思い出されます。 これからもクラブでは多くの山行が行われますが、仮に予想外の展開となってもリーダーを中心としてメンバーの力量を結集して、計画に沿った安全な登山を楽しんでください。 |
写真
撮影機器:
感想
憧れの北鎌尾根に行ってきました。渡渉と藪こきをパンツ一丁で通したことは楽しい想い出になりました。高巻きで滑落したパーティもあり、やはり気の抜けないコースです。稜線に上がってからは、今年は残雪が多かったせいか、思ったよりテクニカルな雪の処理があって楽しめました。いつかは厳冬期に挑戦してみたいです。
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