残雪の急斜面で突然の雨! アイゼン外して合羽着るの!? 〜涸沢から奥穂高〜
- GPS
- 32:00
- 距離
- 34.1km
- 登り
- 1,792m
- 下り
- 1,787m
コースタイム
- 山行
- 7:36
- 休憩
- 0:34
- 合計
- 8:10
天候 | 16日:午前は晴れていましたが午後から雨。 17日:稜線上では朝は晴れ。梓川沿いを雲が覆い、午後には雨に。 |
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過去天気図(気象庁) | 2015年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
(往復2,050円) |
コース状況/ 危険箇所等 |
涸沢までは特に危険個所はありません。 まだこの時期、カールの登りでは雪の斜面を直登するシーンがあります。 時間帯や天候によって雪の緩み具合が変わるので、注意が必要です。 白出しのコルから山頂までは夏道が出ているので、アイゼンは不要です。 浮石が多いのでピッケル、ストックは手に持たず、三点支持を守って慎重に動きましょう。 |
写真
装備
個人装備 |
ツェルト
地形図
ファーストエイドキッド
医薬品
防寒着
カメラ
ヘルメット
アイゼン
ピッケル
食糧(2食)
行動食
非常食
飲料
時計
スマホ(GPS)
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感想
シャトルバスを降りて梓川に沿って歩き出します。
去年の9月以来の上高地、そんなに頻繁に来るわけでもないのに帰ってきた感が強くて足が軽い!
天気予報では今日の午後から下り坂、明日は微妙な具合・・・
昨日は絶好の山日和、今朝も同様に真っ青な空です。
一日ずれていたら・・・とすれ違う下山のハイカーをうらやましく思ったりもして・・・
ないものねだりをしない! あるものを喜ぶ!
去年の教訓の一つが「涸沢まで時間と体力を温存する」ってこと。
明日の天気が微妙なので、次第によってはカールを上がって穂高岳山荘まで行きたいのが希望です。
ま、涸沢で余力があればですけど・・・
テン泊のつもりでしたが、前日に山小屋泊に変更し、装備を軽くしてきました。
ちょっと楽してる? と気が引けるところもありましたが、結果的にはこの装備の差が成否を分けたことでした。
涸沢小屋から見上げたカールの斜面は1年前と同様の印象で、ザイテンの岩は出ています。
アドレナリンが出ているときの見え方はちょっと違うのか、白出しのコルが去年より近く感じていました。
時間はまだ余裕があります。
ならば体力と気力があるうちにコルまで登ってしまおう。
明日の天気がどうなるかまだわからないけれど、残りの行程を楽にしておこうと決めました。
暖かい食事で腹を満たして・・・と小屋に入って呼びかけますが反応がありません。
外にいる気配はなかったのですが、何度呼んでみてもどうやら不在・・・?
ならばもう一軒のヒュッテに行ってみようとは何故か考えず、そのまま登り始めてしまいました。
(横尾で食べたおにぎり2つのおかげでまだ空腹感はなかったんです。)
涸沢小屋と穂高岳山荘の標高差はおよそ800m、滋賀の伊吹山のゲレンデ直登より少し大きい斜面だとイメージできます。
ストックをピッケルに持ち替え、雪の感触を足でしっかり感じて雪質を判断してみます。
さすがにこの時期、この時間帯、雪はかなり弛んでアイゼンの爪はあまり効きそうにありません。
その代りけり込めば足元を安定させることは難しくなさそうです。
上部の傾斜がきついところは別ですが、ザイテングラードの岩場まではツボ足で行くことにしました。
あの岩場に上がれば険しくても楽に進めるものと、それを励みに体を持ち上げて進みます。
斜面を覆う雪の上には大小の石が無数に転がっています。
雪の上を静かに転がり落ちる岩を去年見ました。
この中のほんの小さな石でも気づかずに直撃すれば無事では済まない・・・
身体が疲れていても、周りの自然にアンテナを張っておくことは必要です。
岩場に差し掛かったところで取り付きを探しますが見える範囲には夏道らしきものはなく、岩場を巻こうとして斜面をトラバースし始めました。
(ツボ足では無理で、ここでアイゼン装着)
ようやく見つけた取り付きから岩場に上がってしばらくは夏道で高度を稼ぎ、再び雪渓へ。
「小屋まで20分」の表示を見て、なんとか力を振り絞ります。
ここまで晴れ間を見せていた空が急に黒くなってきたかと思うと行く手のコルの向こうからガスが湧いてきました。
で、とうとう雨が・・・
みぞれ混じりの雨がいきなり降りだして、しかも強い!
遠方からゴロゴロと響いてくる雷鳴・・・
おいおい、まとまって来すぎやろ!
雨具を付けるには条件の悪すぎる雪の斜面。
アイゼンをはずして片足を上げてパンツを履いて・・・
一つ一つの作業に恐怖心が邪魔してきます。
「落ち着け、急ぐな、確かめろ・・・」自分に向けて呪文のように唱えながら何とか装着を済ませました。
(肌着まで濡れてしまっていたので風が強いと低体温症がヤバかったかも!)
あと50mほどの登りを残すだけですが、さすがに体がいうことを聞かなくなっているのを感じます。
この踏ん張りどころでよく効くのは自分の声。
一歩ごとに「足、動け!!」「がんばれ!!」「ファイト!!」なんて月並みなセリフを大声で叫びながら・・・
コルにたどり着いて小屋の建物の前に立った時、自分の無事を実感しようとしばらく雨に打たれたまま立ち尽くしてしまいました。
窓の中に人の姿を見つけて中に入るとロビーの槇ストーブの周りにくつろいでいる数名。
あいさつを交わしてみると、全員スタッフでした。
今日の宿泊者は飛び込んできた私だけ。
靴を脱ぐ体力が・・・と土間に立ったままの私を、まずは温まってとストーブの前に誘ってくださり、コーヒーをいただいてやっと人心地・・・
窓の外は雨脚が見る間に強くなり、この中でまだ斜面を登っていたらと想像すると、よくこのタイミングで上がれたものだと胸をなでおろしましたことです。
しばらくオーナーやスタッフの皆さんの歓談に加えていただいて、心身落ち着いたところでチェックイン。
部屋に上がる前に乾燥室にすべての衣類と装備品を放り込んで、ついでに自分も着替えを済ましてどうやらリフレッシュ、天気の悪化を待っていてくれた今日の空と山、この小屋に感謝の乾杯となりました♪
このあとの夕食ほど「いただきます」に気持ちが入ったことはなかったです!
翌朝、天気は回復して行動に支障はないようです。
少し空は白んでいますが、部屋の窓からは笠が岳がくっきり。
楽しみに歩けそうです♪
朝食後に小屋を出たのは6時半。
朝食前に山頂ピストンしてこようかと早く起きて様子を見ていたのですが、体調とも相談して今日はゆっくり動くことにしました。
小屋から上はほぼすっかり夏道が出ています。
雪が消えた後は浮石が多いので、ピッケル、ストックを持たずに両手をフリーにし、慎重に岩壁に取り付きます。
朝の空気は湿り気を帯びてしっとりしていますがガスはなく、空の青さに稜線の輪郭がくっきり見えています。
昨日の天気が嘘のような眺望に目を奪われながら、2年越しの涸沢ルート、奥穂登頂できました。
ジャンダルム、涸沢岳から北穂〜大キレット〜槍ヶ岳、吊尾根から前穂・・・四方の穂高連峰の稜線がはっきり見渡せ、こちらを手招きしているような気になります。
いつまでもこの風景の中に立っていたいと思いながら、誰もいない3,190mのピークを堪能していました。
コルまで下りると、小屋の前に昨日横尾で会話を交わした登山者が登ってこられていて、入れ違いにピークに向かわれました。
涸沢からカールを登る私を見て心配しておられたそうです。
ありがとうございます!
さて、ここからの下りは昨日以上に慎重に・・・
昨日の雨で雪がさらに弛んでいて、最初の数歩で足を滑らせて冷や汗!
足の角度や踏み込む強さを確かめながら慎重に、慎重に。
さっき上がってこられた方のトレースもしっかりお借りして下ります。
幸い昨日のような天気の悪化もなく、無事にザイテンの岩場を下りきるとあとは涸沢まで走り下りる楽しみだけ!
アイゼンの爪が効かない分足を滑らせながら歩幅を稼いで一直線に走り下りて行きます。
富士山の大砂走りのような快感はあっという間に終わってしまいましたが、この大きな風景の中で遊べる幸せはやっぱり最高です!
横尾から徳沢、明神、河童橋へと道行く人が増えてくる中、道沿いの植物に目をやりながらその花や葉っぱのバリエーションを楽しみ、無事にゴール地点に帰ってきました。
今回も山は試練を用意してくれていました。
天気図をちゃんと読めたり、空の変化を感じ取ったりできれば一歩ずつ先回りして危険の回避ができるのでしょう。
去年3度試みてすべて撤退したこのルート、今回無事に完歩できたのは「たまたま」だったかもしれません。
いつも少し背伸びして歩いている穂高の山、今回もかなり手加減して迎えてくれたようです。
常念越しの日差しや祠の写真…ホントに綺麗ですね
到着間際の雨…小屋についてホッと一息…
数年前に歩いた雹が降ってガスガスの中到着した蝶ヶ岳ヒュッテの事を思いだしました
貸切の穂高岳山荘…イイなぁ…そんなロケーション
utaotoさん、こんにちは
去年3度撤退しているこのルート、毎回楽しませてくれます
泊まった穂高岳山荘もそうでしたが、涸沢小屋もその日の宿泊客は1名だったそうですよ。
行きたいルートはたくさんありますが、この山域はまだまだ修行が必要なようです
あと50mのところで強雨
富士山の大砂走のような雪渓の闊歩
臨場感たっぷりでまるでそこにいるように
眠りについて夢を見ている時の自分
夢の中で視線だけになって自分自身を眺めているような錯覚
澄んだ薄い空気のせつなさ 刻々と変わる山々と空の世界
忘れかけていた北アルプスの美しさを改めて教えていただきました
共感できるレコを作っくれたことに素直に「ありがとう」とお礼を言いたいです
merさん、こんにちは
久しぶりに長い文章をズラズラ続けてしまいました
「まるでそこにいるように・・・」とまで感じてもらえたのは、
間違っても文章力ではなく、merさんの想像力(感性)の賜物です
merさんの山への気持ちがちらりと見えるコメントですよね
またレコを読めること、楽しみにしてますね
天候の急変、雪渓の急斜面・焦り・体力消耗・その瞬間をお聞きし、
今年登った、飯豊石転び沢を思い起こしました。 無事に登頂出来て良かったです。
またどこかでお会いしましょう。
hasetetuさん、はじめまして
コメント、ありがとうございます。
このルートは去年5月、6月に歩き、2度とも撤退しているんです。
(8月にも来ましたが、悪天候で上高地に入れずでした)
そのたびにいろいろなことを山に教えてもらい、体験し、違う顔の山に逢えるのを楽しみにまた来る繰り返しです。
こちらこそお会いできるのを楽しみにしています
楽しい写真とは裏腹にすごい状況になってたんでしょうね。
四度目の正直でしたか!
ええ経験してはりますね〜
senrakuyaさん、いらっしゃいませ
状況は確かに悲惨なものでしたが、救いは直前に見ていた「小屋まで20分」の表示でした。
ガスが出たといっても稜線はすぐ先に見えていたので、今から思うとそれほどの緊急事態でもなかったかも・・・
でも体力が尽きそうなとき、自分の声は確かにカンフル剤になります
むっしゅさん、こんにちは♪
久しぶりの遠征楽しんでこれましたね
劇的な変化の中、無事に奥穂登頂できた喜びは大きかったことと思います
特に53・54の写真の景色は、何かが降臨してきそうな神々しさがありますね!!
急斜面での生着替えのスリルは想像できませんが、素敵な2日間が過ごせましたね
私も「ないものねだり」をせず、あるものを楽しんでいます。
でも、そろそろ青空のご褒美が欲しくなってきました
みゆっちさん、「なまきがえ」って・・・なんだか恥ずかしいんですけど
そのスリル・・・1月の権現山頂直下のあのトラバース、あの途中で雨がザーッと降ってきて、アイゼン外して片足あげて雨具の下を履くのを想像してもらえば・・・
みゆっちさんの山を楽しむ感性は、もう遥かに高いレベルです
でも根っこのところではなにか自分も似ている気がしています。
7月の富士山、8月の剱・・・楽しみな計画ができていますが、みなちょっとずつ背伸びしてるんです。 困ったもんです
ひゃ〜!お天気、大変やったんですね〜
そんな時の小屋の方の温かさってとてもうれしいですよね〜!私は、いつかの薬師小屋を思い出します
2日めの青空、よかったですね〜(*^^*)
素晴らし景色を独り占めって最高でしたネ
bebebeさん、ありがとうございます
居心地のいい小屋の次は、テント担いで・・・ってのが理想なんですがね
今回も当初はテン泊予定でしたが、たぶん同じようには歩けなかっただろうと思います
来月の遠征までは、また武奈ヶ岳に通います
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