2泊3日・大雪渓から白馬三山、憧れの鑓温泉へ
コースタイム
8月10日 6:30頂上山荘-7:30杓子岳-8:30鑓が岳-9:00鑓温泉分岐-9:30大出原-11:30鑓温泉小屋
8月11日 5:40鑓温泉小屋- 7:40小日向のコル-9:40猿倉
天候 | 8/9雨のち曇り 8/10曇り時々晴れ、のち雷雨 8/11曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2010年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
白馬〜猿倉 マイカー 八方〜新宿 WILLERトラベル 2000円 |
コース状況/ 危険箇所等 |
この時期の大雪渓はアイゼン、ストックなしでも登れました。両方揃えた友達は、どっちか買うならアイゼンよりダブルストックのほうが頼りになるとのこと。 頂上山荘は4人以上のグループなら個室が断然お得だと思います。白馬館より食事も美味しいし。ただし喫茶部にお湯を買いに行くときはなるべく大きな容器を持って行き、その場でコーヒーは入れないように気をつけましょう。 鑓温泉近辺は雨が降ると滑りやすく、コースタイムより時間がかかると思います。遭対協に2つ目の雪渓を渡るところで落石注意、と言われました。私も危うく笹薮に滑落しそうになりましたし。白馬岳からその日のうちに公共交通機関に乗って帰宅したい方は確実に栂池に降りた方が無難だし楽しい。温泉から猿倉までの4時間は見所も少なく長く感じました。 |
写真
感想
そもそも、白馬三山をやりたいやりたいやりたい!というのはおかんの白馬移住以来、3年越しの夢でありまして。ワタシの場合はやりたい→やるまでが短いのに対し、あの人は案外あたためとくんだよね。去年ワタシが誘ったら、「最初はやっぱりちゃんとしたガイドさんと行きたい」と宣いおった。なんだ人任せか。でもワタシより早くブーツやトレッキングブーツや筋サポタイツを揃え、地図は買ったようだし去年の燕岳や雨飾山登頂で経験値も上げて自信がついたようだし、年賀状にも今年こそはやりますと書いてあったから計画してんのかな?と聞いてみたら、相変わらずやりたいやりたい!から進歩していなかった。やっぱりか。ガイドとまではいかないけど、ワタシも去年登頂したし山での経験も増えたし、おかん1人のサポートぐらいやれるかなと思ったので、ケコさんたちとお盆前に計画していた白馬山行に誘うことにした。
day1【猿倉〜大雪渓〜白馬岳】
8月9日 7:00猿倉-8:15白馬尻-10:45葱平-11:45避難小屋前-12:45白馬岳頂上山荘-15:00白馬岳
朝4時起床。梅雨明け以来ずっとカラカラに晴れていたのに、ここへ来てあいにくの大雨。九州には台風が接近しているという。天気予報では朝のうちに雨は上がるとのことだったので、とりあえずお弁当を用意しておかんと待ち合わせの登山口へ向かう。猿倉山荘に着くと、可愛らしい山ファッションでキメキメのケコさんと川野さんが待っていた。しかし外はどしゃぶりで、とても出発できたものではない。おかんは半ばあきらめて車から降りようとしない。私たち3人はひとまず休憩所でお弁当を広げてつまみながらおしゃべりをしていると、7時前になって空が明るくなりだいぶ小降りになってきた。おかんも車から降りて来たので雨具を装着し身支度を整え登山届けを提出して、いざ出発!
今回のルートは、日本3大雪渓のひとつ、白馬大雪渓を登って百名山の白馬岳に登頂して眺望を楽しみ、杓子が岳・白馬鑓が岳と縦走して北アルプス随一のお花畑を堪能してから、雲上の鑓温泉に浸かって下山するというもの。夏山の楽しさが凝縮された1泊2日の王道コースだ。ワタシも去年は不帰の嶮から白馬岳に縦走してピークは踏んだとはいえ、天気が悪くて眺めはゼロだったので、リベンジを果たしたかった。
1時間ほど林道をおしゃべりしながら登ると、白馬尻という雪渓の始まる場所についた。雨は上がって青空がのぞく。やったあ!周りの人もいそいそとゴアテックスを脱いでアイゼンとストックを取り出している。ワタシは五色が原で会ったベテランのおばさまたち3人に「大雪渓でイゼンなんかいらないわよ」と言われていたので、丸腰のまま。おかんはシングルストック+登山口でさっき買った簡易アイゼン。川野さんは石井スポーツのおじさんに「何はなくとも」と薦められて買ったダブルストック(しかもチタン製)装着。そしてケコさんはダブルストック+4本爪アイゼンで満点装備だ。スキー場の中級者ゲレンデくらいの斜度がある雪渓に足を踏み出す。おお〜涼しい、真夏とは思えぬ別世界じゃ。想像していたより急斜面だけど雪は固く締まっているので、スプーンでくりぬいたようなカップ状のしっかりした踏み跡を順々に歩いて行けばそうそう滑らない。
ランニングやボルダリングをして最近めっきり鍛えているケコさんと加圧トレーニングまでやっている川野さんはさすがにサクサク登って行く。おかんは体力はそこそこあるけどバランスが悪いので、ちょっとした段差に手こずっている。山ガールズには先に行っててもらうことにして、ワタシとおかんは休み休み歩く。雪渓歩きも慣れないうちはスリルと非日常を楽しめるけど、2時間も歩いてだんだんガスが立ちこめて来て景色が見えなくなると、途端にビルの非常階段かはたまた踏み台昇降をえんえんとさせられている気分になるんだよな〜。
やっとこさ雪渓が終わって葱平で一息入れると、あさつきのようなピンクの花が咲いていた。ここから稜線まではまだまだタップリ登る。上がるたびに増えて行く花の種類。さすが花の名山だけあって、これまで1週間北アルプスを歩いて来て一度も見なかったような花も咲いている。特にこのレーシーなタカネナデシコ。うーーーーーん、好きな高山植物ナンバーワンになりそう。
ゆっくりゆっくり高度を上げて行くと、小さな避難小屋のまえで「お花畑まであと30分、下の小屋まであと1時間」とずーっと繰り返し叫んでいるおじさんがいた。村の関係者かなんかだろうか。それなら、ってことで適当なところに腰を下ろして、ランチ休憩を取ることにした。おにぎりと、今朝畑でもいできたキュウリやトマトがうまい。おなかがいっぱいになると元気が出て、そこから村営頂上小屋が見えるまではひと登りだった。
ケコさんが予約してくれた個室はきれいな畳の和室で、川野さんとケコさんがゆっくりくつろいでいた。私たちより小一時間早く着いたそうで、ワタシが担ぎ上げた崎陽軒のシウマイや野菜を楽しみに待っていたんだって。
コーヒーを入れようと、カップにフィルターをセットして売店にお湯をもらいにいくと、「お湯300円」と書いてある。どんな単位なのか売り子の女の子に聞くと、サイズを問わずひとつの容器いっぱいに入れての値段だとか。ではカップ3杯だとどうなる?と聞くと、どこかに電話で問い合わせて聞いているからおかしい。そのうち店の上の人らしきおじさんが出て来て、「それぞれ300円だ」と言う。えー、カップ3つで900円?それはあまりにぼったくりなんじゃないの?いくらコーヒーを1杯500円とかで出してるからといってそれはないだろ。頭にきて文句を言うと、「じゃあこのやかんに入れてやるから、俺の見えないところでやってくれ」と逆ギレ。まったく、接客を何だと思ってるんだろうなあ。
おかんが作ったロールケーキでコーヒータイムを楽しんだあと、頂上まで空身でお散歩にいくことに。ザラザラの白い砂礫を踏んで歩くこと30分くらいで、頂上に着いた。あいにくガスっていて何も見えない。とりあえず証拠写真を道標の前で撮っていたら、雨が降り出したので下山。密かに明日の早朝のリベンジをたくらむ。
小屋の食事はセルフサービスのカフェテリア方式で、珍しくタンシチューがあったり野菜もたっぷりでなかなか美味しかった。図書室でひまつぶしに写真集や花の図鑑や山の雑誌を借りて部屋に戻る。おかんは雨が上がったから夕焼けを見に行くといって外に出て行った。ケコさんとワタシが数年前のヤマケイJOYに載っていた北アルプス山小屋カルトクイズで遊んでいるうちに、川野さんが最初に静かになり、そのうちケコさんも寝てしまった。みんな、ワタシと違ってギリギリまで東京で仕事して来てるから、さぞかし疲れがたまってるんだろうな。
それにしても去年は同じカルトクイズにほとんど回答できなくて、こんなもんわかるか!と憤慨していた自分が、今年はかなりの高率で正答できたことに嬉しいやら恥ずかしいやら。どんだけ山小屋に金使ってるんだっちゅー話だ。
day2【白馬岳〜杓子・白馬鑓〜鑓温泉】
8月10日 6:30頂上山荘-7:30杓子岳-8:30鑓が岳-9:00鑓温泉分岐-9:30大出原-11:30鑓温泉小屋
早朝4時。すでに10日間も早立ち生活を続けているため、自然に目が覚める時間帯。まだ寝ている3人を起こさないようにそうっと布団を抜け出し、ヘッドライトをつけて頂上を目指す。まだ白馬村も宇奈月もキラキラ夜景が見えている時間だ。ワタシはご来光云々というより、晴れたら頂上からはどんな景色が広がっているのか見たいのだ。なんたって3度目だかんね。
頂上に着いて、はじめはもやもやっとしていたけれど、空が明るい色に変わっていくうちにどんどん晴れ上がって来て、あちこち雲のベールが取れて行く。さーっとカーテンを引いたように、左手からは妙高・火打山が現れ、正面にはどんとボリューム感たっぷりの戸隠連峰が雲海の上に顔を出し、右手にはこれから歩く縦走路が杓子が岳に続いているのが見え、振り返ると雪がたっぷり残った朝日・雪倉岳、そして遠くに剱岳がツンと天を突いているではないか。すごいわ。どんどん紫からピンクに染まって行く山々。日が出る直前の、この時間帯が一番いい。太陽が顔を出すとさっさと下山して、食堂で3人と合流した。彼女たちも稜線まで上がってご来光を見たのだといっていた。良かった良かった。
ところで、ワタシが頂上で朝焼けに見とれているうちに、彼女たちは登山相談所のおじさんに下山ルートの安全確認をしていたらしい。真剣な面持ちで川野さんが「鑓温泉ルートで今日中に下山するのは危ないと言われた」という。まあ、コースタイム8時間で帰りの高速バスが4時半出発だから、あまりのんびりしてはいられないのは確かだが、朝6時に小屋を出れば2人のスピードなら間に合うと思うけどな。。。しかしおじさんの説得にはかなり効き目があったらしく、「滑りやすい岩場とかクサリ場とかハシゴとか危険なところを時間に追われて歩くと、怪我するからやめた方がいいって。どうしても今日中に下山するなら栂池コースから行った方が楽だって言われた」だって。確かにロープウェーで下山する栂池コースなら、せいぜい3-4時間も歩けば終わりだもんな。それなら全員そっちから帰ることにするか、白馬大池のお花畑も見事だし一応白馬乗鞍岳のピークも踏めるしな、とワタシが口を挟むまでもなく、ケコさんと川野さんは栂池コース下山、ワタシとおかんは鑓温泉コースとパーティを分けるという結論がすでに出ていた。おかんはハナから鑓温泉にもう1泊する気まんまんだった。
そんなわけで、山ガールズとは小屋でお別れし、それぞれの道を行くことになった。あの2人、地図持ってなかったみたいだけど大丈夫かな。まあおじさんによくよくルートを確かめていたから何とかなるか。思えば小蓮華山から三国峠を経て白馬大池へ至るルートはお花も雪もいっぱいの草原が続くハイジ気分満点の縦走路で、白馬乗鞍岳から天狗原を見下ろすと湿地帯がミニチュアサイズに見えてメルヘンなんだ。2年前、初めておかんにトレッキングシューズを借りてルミちゃんと歩いたよな。懐かしい。
我々も6時半頃には小屋を出て、稜線歩きを開始する。素晴らしい青空に新潟方面からどんどん雲が追いかけてくる。おかんは登山相談所のおじさんに薦められた通り「杓子が岳はどうせ景色が同じだからピークを巻いて、白馬鑓のピークをめざしてどんどん歩こう」という。ワタシは去年大雨の中、低体温症になりかけながら通ったトレイルなので、全くこのあたりの景色に見覚えがない。それはそれは見晴が良く、稜線の富山側はいつまでもいつまでも歩いていたいアルペンムード満載の草原。長野側はスッパリと切れ落ちて急峻な崖。この対比が見事。杓子が岳は面白い形の山で、白馬岳方面からは神社の祠の屋根みたいにのっべりした形に見えるのに、近づいて行くと案外尾根がギザギザしてとんがって見える。少し歩いては振り返り、角度を変えて、どこもかしこも写真に収める。虹も出て来た、言うことなしのお天気だよ。
ほどなくして白馬鑓への登り。真っ青な空のもと、ビーチのような白い砂礫をざくざく言わせながら登る。麓から見ると、いつもツンと尖って見えるのに、歩いてみると少女の乳房のような柔らかい形をしている。秀逸なのはその下り。砂漠のような真っ白い斜面を降りるのだ。この絵、中東かどこかを歩いているみたい。そして白い斜面には、ピンクのコマクサがびっしり生えている。どこもかしこも。しばらく降りると、分岐に出た。このまま真っ直ぐ歩けば唐松岳、左に降りると大出原のお花畑と鑓温泉。一息ついて、ところどころ雪が残る急な岩場を下って行く。足元がちょっとしたことで崩れやすくて、おかんの世代には嫌な道なので慎重にいく。
急斜面が終わって、雪の多い草地に出る。休憩適地に出たな、と思ったらそこは大出原だった。一面、ハクサンコザクラのピンクとミヤマキンポウゲの黄色とハクサンイチゲやらチングルマの白い花にしばし見とれる。大砲のようなカメラを持った男性が花にへばりついて写真を撮り、その連れの男性はいいかげん飽きたという感じでタバコを吸っていた。その先には若い外人カップル。名古屋在住のカナダ人だって、流暢な日本語で答えてくれた。さぞかしお国の山を思い出してるのかと思ったら、「こんな大きな山に登るのは初めて」なんだそうだ。暑さから逃げ出したかったのかな。
お花畑のあとは灌木帯へとどんどん下って行くにつれて風に運ばれて硫黄のにおいが漂ってくる。む、これは温泉が近い証拠だ。と同時にトレイルはどんどん狭くなり、急になり、崩れやすくなる。人がすれ違うのも山肌にはりついてやっと、のような場所にさしかかり、いよいよクサリ場の登場。クサリを握っていても滑りやすいもろい地質で、おっとっとになりやすい。すぐ下は崖なので、例え足を滑らせても手だけは絶対にクサリからはなせない。そんな場所を30分も下っただろうか、小屋の赤い屋根が見えて来て、ほっとした。鑓温泉だ。
まだ昼前だったけれども、ここで泊まることにして宿泊受付をしていたら、途端に雷が鳴りだし、ザーッと降って来た。まさに間一髪。あの崖をこの雨の中おかんと降りるとしたら一仕事だ。そしてはからずも、登山相談所のおじさんのアドバイスに素直に従っておいてよかった。明るいうちに下山できたとしても、怪我のひとつやふたつさせてしまったかもしれない。山ガールズたちも無事ロープウェーにたどり着いているだろうか。
我々と同様、足止めを食らった大勢の登山客が次々とチェックインしてくるので、小さな小屋はあっという間にいっぱいになってしまった。しかし小屋番の見事な采配ぶりに仕切られ、なんとか布団1人1枚で寝られることになった。良かった。
そして標高2100mの温泉!有名な展望露天は混浴、展望が良いだけに囲いがなくて外からも丸見え。まあ事実上の男性専用なんだけど、一応夜20時からは女性専用になるらしい。もうひとつ、女性専用の露天風呂があって、そこはバッチリ囲ってあるから景色は眺められないけど白濁でとてもいいお湯。うーーーーん、泉質でいえば高天原よりも立山の地獄谷よりもここでしょう。登山口から5-6時間登らないと入れないレア感も手伝ってるけど、じゃんじゃん湧いてバンバンかけ流す様子がまた贅沢。またまた銀の指輪が真っ黒になってしまったけど。まったりしてたら、ビキニをつけた元気のいい筋肉質のおばさんが一人で入って来て、「混浴良かったわよ〜!ワタシ、ここに来る前に蓮華温泉に入ってから登って来たのよ。最高ね!」という。温泉IN温泉OUTの山旅か。ワタシと路線が似てるな〜、と話をしてみると、もうずーっと前からソロ登山をしているという。「お友達と行くのも楽しいけど、大人は予定を合わせるのが一苦労でねえ。もう待ってられないから一人で出ちゃうのよ」おっしゃるとおり。それにしても、たとえ水着をつけてもあのおっさんがずらりと鈴なりになってる露天風呂に入って行く勇気はワタシにはないわ。ちなみに、写真はテント場の足湯。
夜ごはんは鶏肉の照り焼きがメインで生野菜もあってなかなかのボリューム。小屋番は男の子ばかりだけど、みんな頭にバンダナ巻いてテキパキ動いて挨拶して清潔感があって、体育会な感じがいい。白馬館グループの中ではキレット小屋に似た雰囲気で好きかな。本棚にはなかなか面白そうなレア本があったので、何冊か抜き出し、食後から消灯までの退屈な時間帯を読書と入浴を繰り返して過ごした。
day3【鑓温泉〜小日向のコル〜猿倉】
8月11日 5:40鑓温泉小屋- 7:40小日向のコル-9:40猿倉
天気があまりよくないようなので早々に出発。遭対協の人に、2つ目の雪渓を渡るところで落石注意、と言われた。雪渓が終わっても、いつまでも山腹を巻くようにルートがつけられ、なかなか高度が下がらない。ところどころ雨で滑りやすく、危うく笹薮に滑落しそうになる。小日向のコルの近くの地塘はニッコウキスゲがぽつぽつ咲いていた。その後ようやく樹林帯を下り始め、岩の上をまたぐようにダラダラと長く歩かされるのでおかんは膝に来ていた模様。猿倉までの4時間は見所も少なく長く感じた。猿倉で手作りのプリンとコーヒーが美味しかった。帰りにおびなたの湯に浸かって、どんぐり村の実家でお昼休憩をしてから、新宿行きのバスに乗った。
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