雲ノ平・読売新道

山キチどん
その他1人 - GPS
- --:--
- 距離
- 56.4km
- 登り
- 4,841m
- 下り
- 3,776m
コースタイム
- 山行
- 6:47
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 7:37
- 山行
- 7:45
- 休憩
- 1:21
- 合計
- 9:06
| 天候 | 1日目(8/6):晴後一時曇後小雨 2日目(8/7):晴れのち一時曇り 3日目(8/8):晴れのち一時曇り |
|---|---|
| 過去天気図(気象庁) | 2005年08月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山口:室堂から富山地鉄バスでJR北陸本線富山駅 |
| 予約できる山小屋 |
|
写真
感想
1日目(8/6)
前夜23:27大阪駅を急行“きたぐに”で出発し4:32富山駅に到着した。予約しておいた5:10発、富山地方鉄道の直行バスに乗り折立に入った。2時間の乗車で3,400円、あまりの高さに登山者の足元を見られたようでため息が出る。折立のゲートには“折立連絡所”と書かれた小屋があり立山カルデラの砂防工事の大型車が行き来している。ゲート手前の駐車場はすでに満車で、あふれた車が数100m路肩駐車をしていた。富山からの直行便のすぐ後に有峰口経由のバスが到着し東京から来たF澤さんと合流した。
7:16に歩行開始すると登山道は渋滞し牛歩の足取り。1時間も歩くと前後にバラけたが、すれ違う下りの人はうんざりした事だろう。樹林帯の登路は暑く、忽ち汗びっしょりになった。標高約1,350mの折立から1時間ほどで3等三角点「青淵」(1,870m)に達し展望が開けた。登山道が緩やかな木道・石畳の道となり周りはお花畑となった。ミヤマリンドウに混じりタテヤマリンドウも咲き、紫と白の競演といったところだ。ガスが多目だが佐々成政の黄金伝説の残る鍬崎山(2,090m)が雲を背負いながらも望むことが出来た。
薬師岳(2,926m)の雄姿が近づいて来ると五光岩ベンチだ。暫し休憩し歩き出すと大きなザックを背負った男性が追いついてきた。今日はトレーニングで雲ノ平に幕営するという。本番はと云うと1週間後に北鎌尾根を登るとのことだ。既に2度登っているそうで興味深く話を聞きながら暫らく同行した。北鎌は岩登りの経験者なら登攀道具は無くても行けるそうだが、かなりハードなルートであることに間違いはない。しかしこのところ北鎌の営業ツアーも催行され、かなり俗化しているのかもしれない。
快適な高原歩きで太郎兵衛平に達した。まだ10時過ぎだが大休止を取り、腹拵えをした。薬師と太郎山の鞍部に位置する太郎兵衛平は大きな小屋もあり薬師岳を目指す人やダイヤモンドコース縦走者に利用されている。東を望めば雲ノ平の台地や黒部五郎岳、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳の山並み、北アルプスに戻ってきた事を実感できた。
太郎山(2,373m)の東を巻くように尾根筋の急坂を下ると30分程で中俣に出合う。鉄橋で左岸に渡り、暫く行くと湾曲部で再び右岸に渡った。赤木山の懐から発する左俣を渡り大きく高巻いた後、川面に下ると薬師沢小屋に達した。薬師沢が黒部川に合流する地点にあり、谷間のほんの少し開けた空間の高台に建っている。黒部川を吊橋で渡るが、少し踏み板がずれており危なっかしい。梯子を伝い河原に下りると、いよいよ雲ノ平への急登が始まった。湿っぽい岩の散在する樹林帯の悪路、標高差450m程を一気に登る。息があがる今日一番の難所だ。
木道が現れると漸く傾斜も緩やかなになり、いよいよ雲ノ平の領域となった。最初のポイントは“アラスカ庭園”で3等三角点「奥平」がある筈だが気が付かなかった。この辺りの花はそれほどでもない。だんだん樹木の背が低くなり、展望が開け出し周りの山々が姿を見せた。小屋を目指して歩き続けると花が増え憧れの“雲ノ平”を実感した。その名のように雲が低くなり、ポツポツしだした。小屋が目前になり、アルプス庭園の分岐が現れた。F澤さんは小屋に直行してしまい、一人で右へ分岐し祖母岳(2,560m’)を目指した。山頂には小さな山頂標識があり、雲ノ平を一望、黒部五郎はまん前。一しきり写真を撮ると急いで引き返し雲ノ平山荘に駆け込んだ。
この日の小屋は100人ほどの宿泊者があり、布団1枚に2人の混みようで、夕食は3部制、水は天場からひいた溜水で、1ℓ 100円で売っている。夕食は酒粕入りの鍋物で温まる。何杯もお替りをしてお腹一杯になった。
2日目(8/7)
3:30起床、仄々と明るくなりだした4:30に出発した。テント場にある水場で小休止、冷たい水がコンコンと湧き、旨い!ポリタンにいっぱい詰めて祖父岳(じいだけ2,825m)の登りに掛った。水晶岳の右に朝日が顔を出し薬師岳が焼けだした。山頂はもうすぐのようでも球面の上を歩いているようで、なかなか着かない。5:30に漸く山頂に達した。水晶、ワリモ、鷲羽岳がシルエットになり、大きな薬師岳、雲に浮かぶ黒部五郎岳、朝日に映える三俣蓮華、雲の上に笠ヶ岳の先穂、槍から穂高への黒い稜線、360°の大パノラマを満喫することができた。そして東の斜面にはイワギキョウが朝日に映え可憐な姿を見せてくれた。
山頂を後にし、岩苔乗越に向かい岩稜を進んだ。水場がある筈だがかなり下らなければならないようだ。高天原への道と黒部川源流経由、三俣蓮華小屋に到る道が交差した。ワリモ岳の厳しい道を避けてこの源流ルートを取る人が多く今日も登ってくる数人の人影が見えた。そのまま直進しワリモ北分岐に至ると裏銀座縦走路に合流し、水晶小屋へ向けて二重山稜帯の登りが続いた。水晶小屋は野口五郎岳と水晶岳の分岐点にある北アルプスで一番小さい営業小屋。定員は16名で小じんまりして良いのだが、シーズン中は連日50人前後の宿泊があり、昨夜も47人泊まりと布団1枚に3人が寝るという凄まじさだったそうだ。
小屋からは比較的なだらかに進み岩稜の尾根が険しさを増すと最後の登りで水晶岳(2,986m)山頂に達した。薬師岳は山頂を雲が覆い姿を隠し、裏銀座の山々も雲の切れ目から時折姿を現す程度で余りすっきりしなくなった。大学生のパーティーが空身で先着しており、狭い山頂は窮屈。水晶岳は双耳峰で北峰に3等三角点「水晶山」があるが標高は8m低い。
ここまでは小屋に荷物を置いてピストンする人が多いが、この先はいよいよ北アルプスの最深部、赤牛岳に踏み入れる。ここまで来る人の大半は読売新道に下る人達だ。岩稜帯が続きピークを幾つか越えるとひと際高くなった温泉沢の頭(2,904m)の山頂に達した。這松帯の山頂は標識もなく物足りない。すぐ北に高天原への分岐があり丁度登ってくる人がおり遠くから言葉を交わすと、昨日の高天原山荘は比較的空いていたそうだ。実はここに温泉沢の頭の標識があり尾根の先端がここに達しているので山頂のようだが、ピーク性はない。この先は黒部湖の渡船場までは一本道、エスケープルートはなく覚悟の要るルートへ踏み出すことになる。
赤牛岳への長い道を行く間に、まず9人のパーティを手始めに3人、1人、7人、1人そして5人のパーティーを追い越した。それに我々を合わせて28人が今日の奥黒部ヒュッテの宿泊者となりそうな感じだ。一旦2,720mあたりまで下りての再登となる。黒部川から立ち上がる薬師岳はあくまでも大きく、どこまでも付いてくる。残念ながら雲の帽子を被ってしまいその雄大な全姿は望めなかったが・・・ P2803を巻いて通過すると続いてきた岩稜が穏やかになり、赤土の山容に変化し東側から巻き込むようにして赤牛岳(2,864m)の山頂に達した。山頂には先着の5人が記念撮影中。ガスが上がり周りの展望は殆ど奪われてしまった。
昼食を終え追い越してきた人達が着く頃、山頂を後にし、いよいよ読売新道の下りに入った。コースタイム5時間、6.5劼旅堋だ。コース上は何もポイントとなるものはなく、ただ只管下り続ける道は、予想以上に険しく樹林帯に入ると岩が苔むして湿っぽい。木の根が縺れ上がるように断崖に張り出し通過には気を遣う。ロープ、梯子も現れ赤実線の道だが難路に類するだろう。ただ2001年に整備が行われたようで恐らくその時に設置されたと思われる“1/8”から“7/8”までの指導標が小屋側から順に行程を8分割し目安を与えてくれた。但し“2/8”の標識は見つからなかった。同宿者に確認してもみんな分からなかったと言っているので失われてしまったのだろう。このルートは下りに利用されることが殆どで、上りに使う人は殆どいない。しかしこの日、奥黒部ヒュッテに泊まった男性一人が登って来た。赤牛に近いところで出合い敬意を表した。強者はいるものだ。
右から東沢谷、左から黒部川が近づき、沢音が大きくなり、その中に人工の音が混じりだした。発電機の音のようだ。森の中に奥黒部ヒュッテを見つけ、この日の行程を終えた。時刻は13:36、チェックインを済ませ、早速缶ビールで乾杯しようと外に出ると、ポツポツと雨が落ちてきた。仕方が無いので食堂に退避し喉を潤していると、外は夕立となった。少しの差で雨具を着ることなく到着できたことを祝し合った。水の豊富なこの小屋は、なんとお風呂がある! 山中でお風呂などこれ以上の贅沢は無い。15:30から15分ずつ男女を区切り入浴、石鹸の使用もOKでシャンプー、ボディソープも備え付けられていた。(排水のことが心配になるが・・・)
入浴が始まる頃に追い越してきた人達が到着し始め最後の9人組が着いたのは17時を過ぎていた。宿泊者は途中の計算どおりで、その後から来た若い男性は湯ノ俣から来てさらに進むといって最終の渡船を目指して行ってしまった。今日は定員どおりの部屋利用でゆったりしていた。小屋にはタイ人の若い女性がヘルプに来ており、しっかり日本語を話していた。
3日目(8/8):
昨日の雨もすっかりあがり、星が輝いている。3:30起床し朝食の準備を始めると、朝抜きでもう出発する金沢の3人組、真っ暗な中6:20の渡船に乗るべく自分たちのペースを勘案してのことだろうが、年配者の行動に危惧を感じた。朝食を済ませ、ほんのり白み始めた4:22我々も小屋を後にした。
まずは河原のテント場から東沢谷を河原に梯子で下り急な流れの上に架けられた木橋を渡った。暫くは黒部川の右岸を歩くが、やがて高巻きが始まり長い梯子を登った。黒部川に流れ込む枝沢を越えるたびに急下降と急上昇を繰り返し、渡渉も3回、増水こそしていないが昨日の雨で岩や梯子は滑りやすい。慎重に進みコースの半分ぐらい来た所で、早くも先行の3人組を追い越してしまった。正直言ってこんなところで追い越して渡船に間に合うのだろうかと首を捻ってしまった。
5時半頃になると陽が昇り谷間から見える峰を照らして清々しい。難路だが登山道は十分整備され心強い。軈て黒部川が流れを止め黒部湖となると静けさが訪れた。若干アップダウンが少なくなったように感じ、湖の対岸が遠くなってくると案内板が現れる。直進すると針ノ木谷の遡行コース、渡船場は仮設桟橋で岸に向けて梯子で急降下、湖面に辿り着いたが桟橋はなく梯子がそのまま湖へ落ち込んでいる。一体どのように船は着くのか想像がつかない。渡船時刻まで約30分、足元の不安定な際どい場所で立ったまま船を待つことになった。対岸には平ノ小屋が丘の上に見え、きっとあそこから対岸に人影を見つけたら迎えに来るのだろう。渡す人、向かえる人がいない場合は動かないようだ。この渡船は黒四ダム完成によって分断された登山道の補償として関西電力が運行する無料の渡船で、定員10名程度の白鳥丸(しらとりまる)が運行している。
定刻になっても船は姿を現さず待ちくたびれた頃漸く対岸の半島裏から一人の登山者を乗せて船が姿を見せた。船首をハシゴの手すりにくっつけ這い上がった。対岸には龍王岳、鬼岳、獅子岳の雄姿が聳え壮観だ。平ノ小屋側はきっちりした桟橋になっており長い階段を登り小屋へ向かうが登山路は右に折れて進む。
左岸に渡っても同じような難路が続きアップダウンは相変わらずだ。半島を回り込むと中ノ谷が湖に流れ込み、大きく入り込んでいる。その縁を大迂回して歩き急流に架けられた木橋を渡った。その後は湖の縁を忠実にトレースしやがて徐々に高度を増し湖面から100m位まで上がると再び大きく半島を巻き込んだ。対岸の呼べば聞こえそうな所に小屋が見える。ロッジくろよん以外にあるはずは無く、まだ早すぎるがなんとこの先、小屋に辿り着くまでに1時間近くを要することになる。御山谷の太い流れを越えるにはその懐に大きく入り込まなければならない。最深部を木橋で渡り対岸に出て、更に枝沢を何本か越えて最後にタンボ沢を渡ると漸くロッジくろよんに達した。
雲ノ平を共に越えて来たF澤さんと此処でパーティーを解散し、東西に分かれて帰路に着く。私は室堂へ抜けるのにアルペンルートの高価な乗り物を避け、山越えを選択。F澤さんは黒部ダムから扇沢に下り大糸線・中央線を青春18切符の旅となる。
ロッジくろよんの標高は1,490mで2,700mの一ノ越まで1,200mの登りだ。ロープウェイ駅の黒部平までは樹林帯、途中丸太橋が折れている場所なんかもあり、余り人が入ってないような感じがした。黒部平を過ぎロープウェイの下を行くこのあたりはタンボ平と呼ばれるが、樹林帯が続き結構藪が濃い。雪渓の沢を横断し一寸危険な崩壊地を過ぎると徐々に森林限界を抜け出し、お花畑へと変化した。人の少ない素晴らしいお花畑で、来てよかった。コバイケソウ、チングルマ、ハクサンイチゲの大群落、一寸赤みがかかる花は御嶽山で見たオンタデのようだが。今年はコバイケソウの当たり年で凄い群落だ。
誰も合わないだろうと思っていた予想は見事に外れ、知る人ぞ知るお花畑を楽しみに30人くらいの人と出会った。流石に“登る”人は少なく、7、8人の外国人ばかりのパーティーを追い越したきりだった。唯一の水場は冷蔵庫から溢れ出したように冷たい清冽な美味しさ。標高2,000m位のところにある。やがて雄山から張り出した尾根の先端東一ノ越を越えると龍王岳、鬼岳、獅子岳の姿が眼前に現れ、渡し場から見た山々が間近に迫った。ここまでよく歩いてきたものだと思う。以前立山のトンネルバス(今はトロリーバス)の途中に雷電という駅があり、東一ノ越に到る雷電歩道があったが、崩壊のため通行禁止になり、今は駅も休止されて久しい。
少し回り込むと一ノ越山荘が見えなだらかになった登山道を更に行くと御山谷側も花は素晴らしく、一ノ越から東一ノ越へピストンする人もいるようだ。ロッジから3時間、思ったより早く一ノ越に到着してしまった。体力はまだ大丈夫。立山に登ってこようかと思ったが登山道はすごく沢山の人で渋滞中、恐れをなし、立山を眺める山、すぐ南の秀峰、龍王岳に登ることにした。1時間程で往復できる、登山道の途中に荷物をデポし踏み出した。山頂から見る立山は雄大で、餌に群がる蟻のように人が張り付いているのが面白い。時々ガスが掛かるが、さっと晴れ山頂が晴れ渡る、目まぐるしい雲の流れだ。
一ノ越に戻ると、13:50、まだ16時のバスまで時間がある。歩いたことのない雷鳥沢へのコースを下ることにした。流石に誰もいない。ここもお花がきれいで、なんとピンク色のチングルマ! なぜピンク? 硫黄ガスの為だろうか? 帰って調べると変種でタテヤマチングルマと呼ばれているそうだ。雷鳥沢は色とりどりのテント、別山乗越からの下山路は高校生の団体が列を成している。ここからの登り返しは疲れる。リンドウ池、ミクリガ池、ミドリガ池と室堂の散策コースも全部歩き15:26室堂BSに着いた。いつも給水する“玉殿湧水”で持って来たポリタンに満タン給水し持ち帰った。
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