常念岳―燕岳〜槍暁照
- GPS
- 16:22
- 距離
- 23.0km
- 登り
- 2,613m
- 下り
- 2,486m
コースタイム
■28日:常念小屋6:10→6:57常念岳7:25→8:00常念小屋8:50→9:40横通岳→10:45東大天井岳11:30→12:15大天荘12:33→12:45大天井岳12:50→大天荘13:00→喜作レリーフ分岐13:20→大下り鞍部14:20→14:55蛙岩15:00→15:30燕山荘
■29日:燕山荘6:50→7:15燕岳7:25→7:48燕山荘8:27→9:00合戦小屋9:15→9:25富士見ベンチ→10:10第2ベンチ→10:42第1ベンチ水場10:48→11:00中房温泉
天候 | 27日=曇り時々晴れ 28日=曇り時々晴れ 29日=晴れ後曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2011年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一ノ沢から常念乗越(常念小屋)への道は、王滝ベンチ付近から沢の河床を辿る部分があるので増水時は注意。踏み跡は一本で間違えようがない。 常念小屋〜燕山荘の縦走は、横通岳まで登ると、しばらくは非対称山稜の荒れ野を行く緩やかな小道が続く。後半の大天井から先は一転して険しくなるので油断大敵。鎖場もあるが、そちらは問題ない。 燕山荘からの合戦尾根の道は、登りは険しいが下る分には快適。合戦小屋名物のスイカは甘かった。登山口に隣接する中房温泉の日帰り湯は露天風呂しかないが、アルカリ性のヌルヌルの湯が気持ちよい。生ビール、軽食、カキ氷などもある。 |
写真
感想
【27日】 昨年は奥穂、一昨年は槍だったので、今年はそれを眺める山に行こうと話がまとまり、常念岳から燕岳へと縦走した。昼間の縦走は雲に邪魔されたものの、天気予報が良い方に外れて、朝は二日間とも見事な「赤槍」を拝むことができた。
alps165ことDr.エモンの甥っ子、小学生の猿飛クンを交えた我々3人パーティーは、JR東日本ご自慢の新鋭ハイブリッド列車から穂高駅に降り立った。新宿から直通特急で来るはずが、猿飛クンのレインコートがないことが分かり、松本駅前のコンビニに寄った結果乗ることになった臨時列車。指定券代500円を奮発したにもかかわらず満足そうな「鉄」分の強い大人2人に対して、猿飛クンの心は早くも山に飛んでいる様子。ガタガタのタクシーに乗り込み、一ノ沢登山口に着くや、すぐにも走り出しそうな元気だった。
初めは樹林帯をゆるゆると登る。猿飛クンはたびたび横切る小沢の冷たい水をすくっては歓声をあげていた。タクシーから見上げた山は上半分がガスに隠れていたが、おかげで直射日光の暑さは避けられている。1時間余り歩いて烏帽子沢で昼食とした。
だんだん勾配が増し、時に沢筋を辿る道になってきた。振り返ると雲の隙間にわずかに下界の平地が覗く。シジミチョウがキオンらしき花に群れていた。行く手はガス。あたりの花でも見るよりほかに楽しみがない。
やがて胸突き八丁にかかった。先行パーティーがかなり上に見える。猿飛クンは頭にペットボトルの水を降りかけながら相変わらず元気だが、当方の息が上がってきた。元喘息持ちの肺は、標高2000mを大きく超すと酸欠状態を呈すのだ。そんな牛歩ペースに嫌気がさしたか、猿飛クンが一言Dr.に告げて風のように走り去った。間もなく森林限界に達し、人声が聞こえてやれやれ山小屋も近いと思ったら、猿飛クンが迎えに戻ってきた。15:20分、常念乗越着。あたりはガスで何も見えない。
さほど大きくない常念小屋は、団体客を迎え入れて大混雑だった。寸詰まりの6畳足らずの部屋に8人詰め込まれたため、トイレに出るのも一苦労だ。食事を終えると、まだ午後7時だが寝るより仕方がない。団体さんのガイドが早朝出発のミーティングを告げて歩くのを聞きながら眠りに就いた。
【28日】 早出の登山客の仕度する音で目が覚めた。外はガスだが、薄れつつあるようにも感じる。サンダルを突っかけて出てみると、常念岳の姿がぼんやり浮かびあがってきた。モタモタしているDr.は見捨てて、猿飛クンと少し常念側へ登ってみた。みるみるガスが切れて常念に続いて横通岳、そして待望の槍〜穂高連峰がその全容を現した。朝日が差して槍ヶ岳がモルゲンロートに染まる姿に感動し、ついついカメラのシャッターを何度も押してしまった。
昨夜の団体さんは未明に常念山頂へご来光を仰ぎに行ったので、ゆったり朝食を採ってから、こちらも空身で常念へ。青空に浮かぶ槍〜穂高連峰と、南の雲海にかすかに頭を出す富士山や中部山岳の山々の景色を堪能した。
小屋に戻ってコーヒーを飲み、いよいよ縦走に出発。槍、穂高に比べれば楽な行程だと少々甘く見たのは失敗で、後半いささか疲れた。
まず横通岳へ一気に登る。途中、早速コマクサを発見。燕岳に近づくと群生地が見られるが、同じ花崗岩質の山だけに縦走中ちょくちょく目にした。森林限界を抜け、周囲はハイマツのほか、たまにダケカンバやミネザクラと思しき小木が混じる程度で日差しがきついが、槍や穂高はすでにあらかた雲に隠れている。
横通岳の頂上を西に巻くと、なだらかな稜線の下をゆるゆる辿る歩きやすい道になった。快調に飛ばしていくと左下に沢の音が聞こえる。この沢へ下るのか?と青くなったが、実際は源頭近くまで並行に辿ってから大きく西へ回り込んだ。はるかに涸沢カールが望める。上の峰々は雲の中だが、去年の同じころ歩いた時より残雪が豊富に見える。足元を見れば(花(胞子のう)を伸ばしたスギゴケの仲間⇒×間違いでした。訂正!)実を伸ばしたツガザクラ。奇妙な造形に見とれて、ふと視線を上げると稜線に道標が見えた。ここが、もう通り過ぎたと思っていた東大天井岳だった。
間もなく11時。まだまだ先は長いと知って少々がっかりしたが、腹が減ったので昼にした。昼飯担当のzaoluckがアルファ米や肉の缶詰、ドライフルーツの献立を振舞う。お味は立派な食品メーカー製であるからマズいはずがない。猿飛クンも喜んで食べてくれた。
食後も同じような稜線歩きを続け、やっと小屋が見えて大天荘着。荷物を置いて再びコーヒーブレイクを取ってから、大天井岳山頂へ往復した。目指す燕岳は沸き立つ雲の中で定かではない。
大天荘前に戻り、ザックを背負い直して歩き始めると、よろよろとこちらへ向かう老人ハイカーとすれ違った。息子くらいの年恰好の男性がザックを2個重ねて担ぎ、付き添っている。「そんなにきつい道かねえ」などと不謹慎なことを考えていたら、道は喜作レリーフの分岐に向けて一気に下り出した。その後、小さなアップダウンを小一時間繰り返し、さらに一段と急勾配で落ち込む。大下りにかかっていたのだった。
周囲に木々が戻り、カワラナデシコやハクサンフウロ、ミヤマコウゾリナなど、稜線では見かけなかった花々が咲いている。その彩りに喜んだのもつかの間、下れば登らねばならない道理で、つらい登り返しのアルバイトが待っていた。
疲れを知らない猿飛クンも飽きることはあるようで、時おり「まだ着かないの?」という問いを発するようになった。「あの坂を上ったら蛙岩かも」「あのピークを曲がると山荘が見えるんじゃないか」…。大人2人の無責任な希望的観測が次々外れても、全くすねた素振りを見せないのは立派だ。
ついに向こうに蛙岩らしきピークが見えた。痺れを切らしたらしい猿飛クンが例の如く風のように走り去る。岩の下で合流し、左の巻き道らしいルートへ入ったら道がなくなってしまった。気がせいて踏み跡を間違えたようだ。ぐるりと回って元に戻り、ガイドブックで見覚えのある岩のスリットを通り抜けた。
ここまで来れば燕山荘は近い…はずなのだが、またも「あそこを越えたら」と期待させる“裏切りのピーク”が連続。気力がなえかけたころ、やっとガスの切れ間から右上すぐ近くに山荘が姿を見せた。いつの間にか周囲は濃霧に包まれている。一瞬だけ燕岳が白い山肌を覗かせ、またすぐに白い帳の中に消えていった。
燕山荘に入ると、猿飛クンが登頂記念の表彰を受けた。小学生以下対象という粋な計らいだ。実はDr.と昨夏も登頂していることを伝えると、山バッジのオマケまで付けてくれた。そのまま気分良く部屋へと案内を受ける。階段をさらに登るのが億劫だったが、さすがに広々した山小屋だ。我々が泊まるのは新館で、広い廊下の両側に三畳分ずつ2段に仕切られた区画が並んでいる。廊下との仕切りはカーテンだが、これなら夜中に他の人を踏んづけたりせずに出入りできる。荷物を置いてガスに包まれた戸外へと戻り、生ビールと紅茶(猿飛クン)で乾杯して今日の長丁場を歩き終えた喜びを分かち合った。
さて、夕食を済ませ、後は早々に寝るだけかと思っていた7時半ごろ。我々にあてがわれた上段の区画で愛用のゲーム機をいじっていた猿飛クンが、ポツリと「あ、星が出てる」と漏らした。まさかと窓に顔を付けると、確かにガスが晴れている。カメラを片手に出てみると、文字通りの満天の星空が迎えてくれた。モヤモヤと流れる細長い雲のように、天の川もはっきり見える。それを見た猿飛クンが思わず「あれ何?」と尋ねてしまうほど、都会では縁のない夜空だった。
【29日】 例によって早立ちの人がレジ袋をガサガサやる音で目が覚めた。東に向いた窓を見やると、水平線がオレンジに染まり始めている。Dr.と猿飛クンを起こして外へ向かった。振り向けば槍ヶ岳がボンヤリ見えている。空は見事に晴れて雲一つない。山荘の展望台で見ていると、だんだん見物人が増えてきた。東の水平線に目を凝らす人々のシルエットがまた印象的だ。
そして日の出。低い雲海から太陽が顔を出すとパアッと光が増し、山々が赤く強く照り返し始めた。槍ヶ岳の赤みは昨日の方が強かったようにも思うが、アルプス全体が見渡せるような燕山荘からの景色はお見事と言うほかない。小1時間も見続けていたら、手袋なしで頑張ったDr.は手がかじかんでしまい、朝食で箸が操れず困っていた。
今日は空身で燕岳を制した後、中房温泉へと下る。7時前に山荘を出、まず間近に聳える花崗岩の塊を目指した。白い小砂利のような斜面にはコマクサが群生している。尾根伝いにいったん軽く下り、わずか登り返すとめがね岩を経てすぐ山頂に着いてしまった。ここもまた全周の景色が素晴らしいの一語に尽きる。昨日歩いたコースを目で辿ると常念岳ははるか向こうにあり、それなりに距離のあるルートだったと悟らざるを得なかった。
山荘に戻ってまたコーヒーをいただき、いよいよ下山開始だ。歩き出して数分、登山道が山荘の真下を辿りだしたころから風もなく暑くなってきた。だが、猿飛クンは容赦ない。ひらひらりと飛びながら凄いペースで降りていく。槍ヶ岳に最後の別れを告げ、急勾配をジグザグに下ると合戦小屋の前に飛び出した。Dr.がスイカを買っている。何でも去年、登る途中に食べて大変おいしかったのだとか。確かに今年のスイカも甘くておいしかった。
その先も登山者をどんどん追い抜きながら下っていく。第3ベンチでは休憩中の中学生の学校登山とすれ違ったが、月曜日にもかかわらず登ってくる人が多い。大学山岳部なのか、大荷物を背負った若者のパーティーにもいくつか出会った。メンバーの女の子に荷物の重さを聴くと何と27キロとのこと。大したものだ。
登るに辛いその急勾配を我々は快調に下り、第一ベンチに到着。猿飛クンはここの水場の水をお土産にするのだと言って、ペットボトルに計1.5リットルを流し込んだ。
ほどなく下の方に建物の屋根が見え、午前11時、中房温泉日帰り浴場前に無事到着した。ここでも1500m近い標高があるはずなのだが、やはり下界は暑い。そそくさと荷を降ろして着替えを出し、気持ちよい温泉に急行した。
zaoluckさん、おはようございます。
はじめまして。
2泊3日の北アルプス縦走おつかれさまでした。
お天気にも恵まれ、槍ヶ岳のモルゲンルートや満点星空などなど素晴らしい眺めですね
写真も堪能させていただきました。
こんな縦走してみたいです。
今夏、ヤマレコユーザーの皆さんと薬師岳に登りました。
来年もまた北アルプスに行こうとなり、zaolockさんの山行を参考にさせてもらって提案してみたいです
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