権現岳(南八ヶ岳)
- GPS
- --:--
- 距離
- 12.4km
- 登り
- 1,435m
- 下り
- 1,417m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
ミレニアムの夜明けは南八ヶ岳の赤岳山荘で迎えた。その前年には通年営業する温泉で標高が日本一高いという本沢温泉に泊り天狗岳を往復した。もちろん露天風呂にも入った。爆裂火口の景色も良かったが、道中の落葉松の紅葉が見事だった。反対側の渋の湯から黒百合ヒュッテ前にテントを張って、冬の天狗岳に登ったこともある。八ヶ岳は新潟からは遠いが片手に余るほど訪れている。八ヶ岳は岳人を引き付ける魅力を持っているのだと思う。それは柔と剛の山容だったり山の厳しさと優しさなど、相反する物が混在することだ。それが人を引き付けるのである。季節や山行形態を問わず、縦横無尽のコースが選択でき、アプローチが比較的容易であることもその要因である。とは言いながら新潟からはやっぱり遠かった。
地図や記録を読んだりしているうちに、一番端山に当たる権現岳から赤岳方面を眺めたら絶景だろうなあ、と思い始めた。最近、その気持ちが強まって、いつでも出かけられるように準備を進めた。時期は冬だ。雪があると風景が一段と映える。磐梯山の翁島口からアイゼン歩行で往復。万全の体制とは言えないが、それなりのトレーニングも行った。後は天候だけだ。これが一番の難敵。3月初旬まではと思っていたのに、すでに中旬。雪が融けちゃうよう(-_-;) ところが三日間快晴の予報が発表された。これが今年最後のチャンスと勇んで出発。
野辺山付近を走っていると南八ヶ岳が夕闇の中に全容を現す。オー!やっぱりこれだ、この風景なんだよなあ。明日の晴れも間違いなし。明日は未明出発だ。問題は体力か。最低でも三ツ頭までは行きたいなあ。最長12時間行動、遅くとも6時までには戻る計画。取りあえず風呂へ。ところが予定していた温泉は休日だった。それも行きつ戻りつ、最後はコンビニで確かめて行ったというのにだ。明日はどうなる。これが明日の暗示でないことを祈る。風呂にも入らず車中泊となる。
朝、準備をしていると車が一台停まった。地元の人でベテランのようだ。スノーシューを持って登るかどうか迷っていたので伺ってみると「トレースもあると思うのでいらないのでは」とのこと。スノーシューの重量も馬鹿には出来ないので有り難い情報である。彼は一足先に出発して行った。私も間をおかず出発する。少し登ると駐車場に出る。だらだら登っていくと、ふと気配を感じ振り返ると富士山だ。でかい!! 思わず息を呑む。右手に目をやれば、北岳〜甲斐駒〜仙丈の連なりだ。青空に真っ白な山の連なりは一気に寝ぼけ眼を覚醒させる。
天の河原を過ぎると雪に覆われる道となる。融けた雪が固く凍りついて滑りやすい。行く手に前三ツ頭が見えて、やがて道は針葉樹林帯の道となる。日の当たる所は雪が融けだしてチョロチョロと流れ出している。季節は間違いなく春なのだ。しかし、つるつるに凍り付いた所も多くなり、踏み跡をたどるのも楽ではない。トレースの無い林へ迂回する箇所が多くなりアイゼンをつける。アイゼンつけて20分も登ると「ここが一番きつい もう少しで前三ツ頭がみえる」の看板がある。先を見るとだらかな感じである。この文言は多分、下から登って来ると「ここまでが一番きつい」で、上から下って行くと「ここからが一番きつい」なんだろうなあ、正確にいうと。ここでアイゼンを脱ぐ。前三ツ頭には一張りのテントがあるが誰もいなかった。ここからアタックをかけたのであろう。
前三ツ頭から観音平の分岐を分けるとほどなく三ツ頭。男性が一人。前三ツ頭のテントの住人だった。夜は風が強かったという。スコップやマットを持ってこなかったので、あの場所しか張るところが無く、まともに風を受けて大変だったそうだ。雪が悪くてここまでしかこれ無かったとのこと。盛んに“雪が悪い”を強調する。それがどういう状態をいうのかは分からないが、所どころ凍り付いていて滑りやすく、迂回したらしたで踏み抜きが多い、という事でもあろう。問わず語りに「ここから見る風景が南八ツでは最高だ」「山渓のグラビアを飾ったこともあり、それより良い写真を、と毎年登っている」のだとおっしゃる。確かに眼前に広がる光景は圧巻だ。「今年は、雪が悪くてこの先へは行けない」とのこと。「雪の悪さ」よりも「年を重ねる悪さ」かもな。決して他人事ではない。いつか来る道である。
しかし、まあ、間違いなく絶景だ。雪と赤茶色の肌をさらす山肌のコントラストが絶妙だ。編笠山の名は、誰が見ても見紛うことなく編笠の形からきていることは間違いない。木々の緑とそれに雪がかかり優しい風景を作り出している。気分の落ち着く風景だ。赤岳の峩々とした山容と対照的である。最低の目標、三ツ頭までは到達した。権現岳までは、見た目は厳しそうだが、往復2時間と見る。ここまで来れば何としても頑張らなければならないだろう。三ツ頭からいったん下って権現岳へ最後の登り。最後のルートは一直線。山頂目指して進むだけだ。
ここまで時間がかかりすぎて、三ツ頭から中退かとも思ったが、何とか登頂の目安はついた。ご夫婦と思われるペアが登ってきて先行する。先日のトレースもあり目標が見えているので迷う事は無い。記録等によると最後に雪壁の厳しいトラバースが待っているらしい。鞍部でアイゼンをつける。朝、先行した人が戻ってきたので声をかける。まず、山頂までのかかった時間を聞いてみる。5時間くらいとの答え。私と一時間くらいの差だ。大雑把に往復で2時間の違い。まあ、まあの差にちょっとうれしい。トラバース部は「問題ない」とのことだった。
雪面は凍り付いているわけではないので難なく進めた。トラバース部分も30cm位の踏み跡があり問題なかった。確かに急斜面のトラバースだから緊張は避けられない。この部分の難易は気象状況に大きく左右されることは間違いない。トラバース部分が氷結していたり、斜面に新雪が積もっていたりしたら、これは最上級の難ルートになることは間違いないであろう。そういう時には、少なくとも確保してくれるパートナー無しには登りたくない。
まず岩の山頂に登る。鉄剣や祠、カエルのような岩などがある。権現だからやっぱり神様に由来のある山なのだ。ペアの方が登って来て先に山頂がありますよ、と教えてくれた。そちらに進むと小広い山頂に出る。権現岳と書かれた標柱がある。こちらも一段と景色は良い。左から阿弥陀岳・中岳・赤岳と並ぶ光景は一見の価値は有る。北アルプスなど遠くの山々は薄くモヤがかかり始めた。
復路はほぼ全線でアイゼンを使用する。ピッケルは使用する機会が無く、全てダブルストックで歩いた。あわよくば、東ギボシの稜線も往復したいと思っていたが、雪は少なく登頂意欲は消滅、というよりは時間切れで行かなかった。一日中、無心に歩いた山行は無事に終わった。たまに出かける遠征は、文句なしの晴天に恵まれ無事に幕を閉じた。ばっと、財布を無くした。最後の最後になって晴天の霹靂に見舞われる。嗚呼、天は無情なり。
妙高さん こんにちは〜。
南八ツ行かれましたね!
青空に雪の八ヶ岳と富士山と南アルプスの絶景!
本当に素晴らしいですね。
トラバースのところは写真で見るだけでも怖いです。
日帰りで雪の権現岳とはスゴイですね〜。
最後にオチがあった様ですが、帰ってこられてよかったです。
お疲れ様でした。
いいものをみせていただきました。
harunonekoさん こんばんは〜。
八ヶ岳遠征は15年ぶりくらいで懐かしかったです。やっぱり北アや八ツは華やかです。もう少し近ればといつも思います。
今度は、木曽駒に行ってみたいです。「聖職の碑」という本を読んでから「遭難記念碑」にお参りしてみたいと思っているんです。そんなこんなで興味あるんですが、いずれにしろ遠いです(-_-;)
北方面の焼石岳にも遠征したいと思っているのですが、なかなか実現できていません。残念です。まあ、そこにも、あそこも行きたいと考えているうちが花かもね。ではまた。
myoukohiuti さん こんにちは
南八ヶ岳遠征でしたか。お疲れ様でした。晴天で、景色も一段と綺麗ですね。
八ヶ岳は冬期栃木南部のある場所から、「同時に見渡せる百名山8座」のひとつです。残念ながら、百名山に拘りがないため、八ヶ岳には行った事がありませんが、人気は高いようですね。
県外遠征も体力と気力のある内ですから、益々ハッスルされて下さい。
tonkaraさん こんばんは。
権現岳遠征は、天気に恵まれたことが何よりでした。ちょっと新潟からは遠いのが難点です。3日がかりですから(-_-;) 人気は有りますね。越後の山と違って賑やかです。これからもたまには遠征したいと思っています。そのためにも体力を維持していきたいです。
tonkaraさんは、目指すのはまず早期の完全復活ですね。ご活躍を期待しております。ではまた。
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