白出沢〜奥穂高岳〜西穂高岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 17.7km
- 登り
- 2,755m
- 下り
- 1,655m
コースタイム
- 山行
- 7:29
- 休憩
- 0:43
- 合計
- 8:12
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
下山に新穂高ロープウェイを利用(1600円+荷物券300円) |
コース状況/ 危険箇所等 |
白出沢ルートは沢筋のガレ場をひたすら直登するが、ペンキの印が見えないところが多い。 迷う心配はほぼないが、踏み跡を外すと足元がゴロゴロ動いて前に進みにくく、かなりストレスがたまる。 奥穂〜西穂の縦走ルートは良く知られた難関ルート。 今回はコンディションが良く、難度は低かったと思うが、ルーファイの能力と体の使い方、また高度感に惑わされない集中力などをとことん試されているルート。 鎖や梯子は少ないが、岩自体手がかり足がかりに苦労しないので、立ち往生することは少ない。 ただ、山に命を預ける気でエイッと動く瞬間が何か所かあった。 |
その他周辺情報 | 新穂高のロープウェイのりばからすぐの中崎山荘 |
写真
装備
個人装備 |
グローブ
防寒着
雨具
日よけ帽子
行動食
非常食
飲料
ハイドレーション
地図(地形図)
コンパス
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
ファーストエイドキット
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ストック
ナイフ
カメラ
ヘルメット
携帯トイレ
|
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感想
申し分のない天気予報に思い切って奥穂〜西穂のルートを歩いてきた。
もう何年越しになるか、ずっと憧れのルートではあったのだが、1泊では歩けないとの先入観が邪魔をして手つかずになってしまっていた。
良く歩かれるように、西穂山荘発で奥穂に向かうとどうしてもそこでもう一泊が必要になる。
そこで、少々強行軍だが白出沢から奥穂に上がり、翌日は縦走後にロープウェイ利用でなんとか収めることにした。
コースタイム7時間の白出沢ルートも不安を感じるが、天候の助けも借りて歩いてみよう。
平日とはいえ秋のシーズン真っただ中。
早朝の新穂高の駐車場がすでにほとんど満車状態なのに驚いた。
何とか潜りこめるスペースを見つけて準備を背ませる。
まだヘッデンの必要な暗さだが、林道を歩く間に明るくなるのでそのままスタートした。
右俣の林道はほとんどが槍への登山者。
ハイシーズンでも間違いなく静かな山歩きが楽しめる。
ただ、予想通りきつい登りではあった。
沢と言ってもガレ場が延々と続く。
迷う心配はないが、踏み跡が判別できない。
ペンキの印が見つからないので、適当に歩くと足元がガラガラ崩れる。
進みづらいことこの上ない。
荷継沢の表示を過ぎて、しばらく進むと穂高岳山荘のあるコルが見えてきた。
少しずつ勾配を増すこの沢に苦労が続くが、岩に書かれた印が少し目立つようになり、踏み跡もはっきり見えるところが増えてきた。
そうなると、足元も安定して推進力も出せる。
けっこう足にきた状態ながら、想定よりは早めに到着できた。
着いてしまうと欲が出るもので、だったらこのまま山頂まで行ってしまおうと決めた。
明日の体力は今夜補充すればいい。
小屋の前にも大勢のハイカーがいたが、山頂の混雑も負けてはいない。
平日でもこの混み具合なのは全く想定外。
今週の好天予報に急きょ動いた人もかなりいそうだ。
気温も眺望も全く文句なし。
昼を回ると少しガスが出てきたが、翌朝のコンディションにも十分期待しながら小屋に戻った。
チェックイン時に宿泊人数を聞いてみたら、160人ほどとのこと。
寝具を二人で使う事態にはならずに済んだが、夕食も三交代だった。
それでもたいした混乱やトラブルもなく過ごせたのは小屋のスタッフのみなさんの頑張りです。 ありがとう ご苦労様です。
同部屋の方たちや、夕食のテーブルを囲んだ方たちとの山の話でひとしきり盛り上がり、翌日の心の準備ができていく。
ひとつ心配だったのが前日北穂に泊まった方の情報で、朝テラスの水が凍ったとのこと。
翌朝稜線で滑る岩を歩く勇気はない。
幸いこの夜は気温が下がり切らず、外に出ても苦にならない程度の絶好のコンディション。
早朝館内の照明が点くと、前夜のうちに準備を済ませておいた荷物を背負い、早めにスタートした。
山頂でのご来光のタイミングを重視するつもりもなかったが、足元が明るくなるのを待つついでに日の出を眺めておこう。
祠の周辺の狭いスペースは人でいっぱい。
ピークから少し東にずれたところが、うまい具合に朝日を待つ特等席になっている。
そのテラス状の地形の先端に座って日の出を待つ。
最初の光が地平から射す一瞬を目にしながら、今日の無事を自分に誓った。
縦走路の案内を事前にあまり詳しく読んでいなくて、ピークの名前もはっきりしない。
ただ地形やその状況はしっかり見て自分にできることを判断して動くことにする。
馬の背やジャンの岩肌を見ても、手がかり、足がかりに事欠かないのはありがたいこと。
逆に長い鎖の不安定さの方が気になる。
できるだけ鎖を持たずに通過できれば越したことはない。
馬の背のナイフリッジではさっそく足の置き場に迷うシーンがあった。
ほんの5〜10センチが届かず、そのわずかな高さを身体をずり落とすシーンがあった。
身を支える手を緩める瞬間に、足元が見えないまま「山に命を預ける」ことを実感した。
10センチ先にはつま先を乗せる段があるのを前もって見ているのに、その瞬間に見えていないことの不安。
そんな一歩一歩の状況に全身で反応しながら、緊張感と同量のワクワク感が湧きあがり、顔が緩むのを押さえられない。
幼い頃に、造成で土を削った跡がむき出しになった10mほどの崖を〇〇ごっこのつもりでよじ登っていた高揚感。
半世紀を隔ててまたそれを感じさせてくれた今日のルートに感謝。
それと、ニヤニヤが止まらなかった自分をちょっと見直した。
ジャンダルムの取り付きポイントが分からず、壁を見上げながら登るイメージを湧かしてみる。
すると案外途切れずに上まで行けてしまったので、そのイメージのまま壁を登って行った。
(テレビで見たボルダリングのシーンが重なって気分が良かった!)
ピークでは数名が休憩されていたが、ルートはどうやら逆側だったようで、下りるときには無理せず正しいルートを辿った。
ジャンのピークから奥穂を眺めると、山頂からこちらを見ている人がいる。
今まで自分が奥穂に立っているときにも、「あ、人がいる!」と(別世界の)ジャンダルムを眺めていた。
次にジャンを眺めるときには、ちょっと仲間意識を持ちながら眺めても許してもらえるだろうか。
無事に下山することができた理由はメンタル面では2つ上げられる。
ひとつは急がなかったこと。
標準のコースタイムよりは速く動けるが、プランでは標準のタイムを当てはめて、浮いた時間を休憩他にあてたこと。
普通に歩けば時間が余ることで2日間とも余裕を持って動けた。
もう一点、高度と危険は切り離して考えたこと。
高いから危険なわけではい。 落ちたら危険だが、それは低くても同じ。
壁を登るとき、下りるとき、この取っ掛かりの多い岩に向き合うのはさしたることではない(これはお得意の自己暗示)。
それよりも身体をどう使うのか、どう安定させるのか、何を見て何を判断するのか、そこに集中して身体に言うことを聞かせることが大事だと感じた。
このルートを歩く人が今日は多くて、言葉を交わした方も何人もいてくれた。
私も今日はテンションが高く、よくしゃべる一日だった。
うんざりされた方がいたらごめんなさい。
ロープウェイの駅が近づくとすれ違う人も増える。
山荘まで、丸山まで、独標・・・
行先は違っても、それぞれが立った場所で「いいもの」を見つけられます。
今日の「いい天気」は皆さんにまんべんなく行きわたった「いいもの」でした。
「どこまで行った」じゃなくて、「何を見つけた」と言える山がいいですね。
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