【飛越】三ヶ辻山(1764m)芦倉山(1124m)北平山(1438m)有家ヶ原(1263m)
- GPS
- 13:17
- 距離
- 21.1km
- 登り
- 1,799m
- 下り
- 1,801m
コースタイム
- 山行
- 12:48
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 13:17
●有家ヶ原にチャリデポして芦倉集落から時計回りするルートも考えましたが、前回同様に有家ヶ原スタートの人力登山に決定。
●この時期、このコースの東尾根からの三ヶ辻攻略は、前爪のある12本爪アイゼンとピッケル必携です。滑落停止の技術と急斜面でのトラバース対応が必要です。単独の場合、ソロ山行に伴うリスクをよく理解して臨む必要があります。
●<重要>三ヶ辻は高峰とは言いがたいのですが、時期やルートによっては、部分的に難易度がアップすることを実感。
過去天気図(気象庁) | 2021年03月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
<有家ヶ原〜北平山〜主稜線>
沢型に詰まった雪を踏みしめて林道をショートカットします。そのまま林道を突っ切って登尾尾根に乗ろうと思っていましたが、灌木がわずらわしそう。そこで一旦は林道を歩き、頃合いを見はからって尾根線に立つ鉄塔へと直登しました。
ミソサザイが美しいソプラノでさえずり、アカゲラは張り切ってトンネル工事中です。この一週間で、春の気配が一気に濃くなった気がします。
まずは有家ヶ原山。先週、私がつけた足跡がまだ残っていて、頬がゆるみます。
さらに高度を上げると、白山とその北方稜線、籾糠山や猿ヶ馬場山、対岸の三ヶ辻山と人形山の存在感がアップしました。続いて北平山を越え、その北東1460m地点の見晴台に立ちました。
仙人窟・シッタカ・笈・大笠・奈良・見越・赤摩木古山・大門・猿ヶ岳がつむぎだすスカイラインは圧倒的。
反時計に視線を動かすと、三方岩・野谷荘司・白山御前・別山・奥三方・三方崩・日照岳・猿ヶ馬場・籾糠・御前・栗ヶ岳。加えて御嶽・乗鞍・焼岳・奥穂・槍・笠・水晶・鷲羽・黒部五郎・薬師のスーパー展望です。
前回の最高到達点1512をあっさり越えると、雪におおわれた広尾根になりました。うっとり気分で、お散歩です。今回の主役、三ヶ辻や人形だけでなく、北アルプスのスター級が勢揃い。おまけに、立山・剣・白馬・雪倉・朝日までがここに集った。目の前には金剛堂山。振り返ると白山がいる。
<主稜線〜三ヶ辻山>
胸を高鳴らせながら1631北峰を越え、コルへ降りる。ここを登り詰めれば、いよいよ三ヶ辻東尾根です。
三ヶ辻の東面を見ながら、攻略のための作戦を練り上げていく。ブロック雪崩の痕が三箇所。まずは正面突破が可能か探りを入れる。徐々に斜度が強まる。足元の雪面に深いクラックがある。雪が自重でスライドした痕跡だ。ヒドゥン・クレバスを踏み抜かないよう全神経を集中させる。
雪壁の直下に立つと、雪庇の大きさがリアルに実感できた。急傾斜で足場の悪い中、背丈をはるかに越える雪庇を乗り越えるのは相当なリスクを伴う。雪庇が崩れれば、雪のブロックともども一気に押し流されてしまう。
氷瀑ならダブルアックスで、アイスクライミングしながらフリーで逃げ切る場面。あるいは、ソロでなければ、フォールラインを避け、アンカーを取ってビレイもできる。
しかし、今日の私は丸腰だ。とすれば次の手は?右か左にトラバースして山頂の一角に這い上がる選択肢はあるのか・・・右方向へのトラバースは30〜40mの距離だ。だが、急斜面のトラバースを強いられる。これは相当量の時間と緊張を伴うだろう。
となると左へのトラバースか・・・距離自体は20m超。その先には、雪庇が薄い区間がある。そのエリアまで、雪庇直下をトラバースできれば、何とか雪壁を掻き登ってフィニッシュに持ち込めそうだ。
Goサインだ。はがれる寸前のクラックの上端に足をかけ、だましだましトラバースをはじめた。けれども、雪庇の崩落の心配が終始つきまとう。しかも、足場が剥落や崩壊する可能性もある。この高度じゃ滑落は後がない・・・徐々に追い込まれていく。
やはり戻ろう。この作戦は失敗だ。油汗をかきかき、クレバスの表に裏にと、少しでも信頼できそうな足場を探す。そしてどうにかスタート地点の雪庇の直下に戻った。
一体どうする?・・・考えた末、足元を崩さないよう、慎重にクライムダウンする。シングルアックスでの雪壁の下降は、神経をすり減らす。
慎重にブッシュ帯まで降りていく。ブロック雪崩れで顔を出した灌木帯だ。冷蔵庫ほどのブロックの弱点をついて、左へ左へ。この時間帯は、気温も上がって雪の状態も不安定だ。全層雪崩を誘発しかねないし、機嫌を損ねたブロックがバランスを崩せば、その下敷きになる。単独行だし、誰がプローブやビーコン、スノスコの三種の神器を持っていると言うのか。
ブロック帯をクリア。二つ目の草付きを渡ったところで壁を直上。さらに今度は右へとトラバースで切り返していく。雪庇の薄い部分にじわりと迫る。仕上げはピッケルをしっかり握って頭上に打ち込み、体重を預けてマントリングで一気に山頂に這い上がった。
<三ヶ辻山〜芦倉山〜芦倉集落>
やった!!身体中の血が沸騰した。全身が鳥肌立つ。最高の展望が僕を出迎える。恋焦がれたこの瞬間。感動の波が幾重にもなって押し寄せる。甘美な時間。そして陶酔のひととき。
いつまでも居座りたい気分に折り合いをつけるのはつらい。しかし、時間も時間だ。泣く泣く、魂の解放区に別れを告げる。
下山尾根は絵に描いたような白銀のパラダイスだ。次々に変貌する人形山やカラモン峰、大滝山の表情が痛快。それだけじゃない。こちらの尾根も見事なブナの回廊が続いた。白山やその衛兵たちに見守られながらの下山。
しかし、楽々下山というわけにはいかない。日照にさらされる時間が多いのか、1167のコルへの下りにして、早くもヤブが顔を出した。雪も途切れ途切れに。
芦倉山は、往路に取った尾根から遠望した通り、もろ通過点っぽい。ヤドリギの尾根になった。キーになるのは、955と778の尾根分岐あたり。ちょいとわずらわしい植林道が続く。最後は鉄塔からの巡視路を利用する。
ここからは雪田が残る下山道となり、たびたび巡視路を見失った。最後の最後まで気が抜けません。
芦倉集落の集落には生活の香りが漂っていました。厳しい寒村の暮らしに揉まれ、たくましい表情の村の人たちの顔を探して、のんびり歩きました。
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