夕張マッターホルン(1415m峰)The Day ! 願い続ければ叶う
- GPS
- 14:09
- 距離
- 33.3km
- 登り
- 1,409m
- 下り
- 1,408m
コースタイム
- 山行
- 12:51
- 休憩
- 1:19
- 合計
- 14:10
天候 | 快晴! |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
長年思い続けて,昨年ようやくその姿を目にするところまで辿り着くも登頂が叶わなかった憧れの山,夕張マッターホルン(1415m峰).初めて知ったのは,15年以上前だろうか.その頃は,ネットでごくわずかに記録がみつかるくらい.夏は夕張側のシューパロ川からアプローチしていたらしいが,林道の崩壊で到達困難になった.百々瀬満氏の「気軽に北の山」(P424-426)では,シューパロ天狗岳として紹介されている(1987年11月).ここで「マッターホルンの刃尖の鋭利な頂点」と記載されているのが,夕張マッターホルンと呼ばれるきっかけだったのかもしれない.彼は,「シューパロ天狗岳がベストな呼び方と思われ,揺るぎない名峰である」と記載しているが... 残雪期の記録は2003年のものがあり,金山を出て滝の沢沿いのルートから登っている.距離が長いためテン泊が必要なのと渡渉を繰り返しながら進むためスノーブリッジの状態で登れる期間が限られる事が問題で遙かな山域だった.2017年4月9日,ogino氏(単独)の結梗川左岸ルートにより日帰りの可能性がでてきた.最初にこのルートから登頂したのは,この2年前の2015年4月20日,北大山岳部OBのsaito1987氏(2人パーティ)らしい.その後,少人数ならこのルートから日帰りで登頂している記録が散見されるようになった.雪の状態によっては藪も使って,アイゼン・ピッケルなしでも登れるようだが,白き頂に立ちたかったので,難易度が上がっても,4月上旬に登頂したかった.
そして,ついに昨年,満を持して挑戦.しかし手も足もでずに跳ね返され,ピークに辿り着けなかった.1年間,このために準備してきた.札幌からその姿を目にする度に思いをつのらせてきた.今年も日程的に可能なのは,今週末だけ.「てんくら」を確認すると,4月11日(日)は,登山指数A,快晴.気温が低いので,もしかしたら昨年同様カリカリで危険かもしれないけれど,お昼くらいになれば,太陽の光で緩むことを期待して決行を決定.過去の記録を読むとゴールデンウィークの頃の方が,林道の雪も消え,夕張マッターホルンもザクザクで登りやすいのかもしれないけれど,雪崩の危険も増すし,なにより白く美しい夕張マッターホルンを登りたかった.駄目ならまた来ればいい.
2時10分,出発.道央道から道東道へ.占冠インターで降り金山へ.4時過ぎに森田の沢林道ゲート前に到着.まだ真っ暗.ゲートを開けようとしたら,昨年は通過できたゲートが,ダイヤル錠で施錠されている.愕然.茫然自失.ネットで解錠法を調べたりして,解錠を試みるも開かない.パートナーは解錠の自信があるといい頑張っている.車のライトで照らし,手がかじかむ中,しばらく試みたがやっぱり難しい.諦めて引き返して,鍵の番号を確認した上で,次回に持ち越すかという考えも浮かぶ.しかし,「歩くか」と提案したら,あっさり同意してもらった.こういう時,「えー」って嫌がらないところが有り難い.林道を余計に歩くことより,ダイヤル錠を開けられなかったことの方が心残りだったらしい.歩くことを決めても,最後にまた開けようとしていた.明るくなってしまったけれど,4時46分出発.
5時18分ポントナシベツ川出合.6時28分結梗川出合.結梗川左岸を伐採のためと思われる古い作業道を利用して進む.作業道崩壊地点は慎重に通過.落ちたら沢までまっしぐらでただではすまない.C617から作業道を離れ,岩峰間に挟まれた広い沢筋を進む.
そしてタンネの林の向こうに夕張マッターホルンが姿を現した.9時55分,南コル基部取り付きに到着.10時40分登頂開始.鉄の12本爪 Petzl Vasak Flexlock CramponsとBLUE ICE Hummingbird ダブルアックス.斜度は西斜面が最も緩いが回り込むまでの急斜面のトラバースがいやらしいので南斜面の沢型から登る.昨年は,カリカリの雪面に新雪がかぶり,アックスもアイゼンも跳ね返されズルズルと滑り落ちた.鉄の12本爪でも全く歯が立たなかった(ちゃんとした冬靴持ってないから蹴り込みが弱い)しかし,今年はHummingbird のチタンのピックがしっかりきまる.雪は,大部分が,2回蹴り込んで,なんとかある程度安心できるステップを切れるくらい.ザクザクとは言えなかった.雪が中途半端に腐っている場所は,アックスのピックの効きが悪くて,スピッツェ(石突き)を根元まで刺して支持を得た.確保していないので,絶対に滑落できない.結構,怖かったので,ダブルアックスとアイゼンで確実に三点支持を維持.ダブルアックスを打ち込み,蹴り込みながら一歩一歩高度を上げていく.
11時30分,夕張マッターホルン(1415m峰)登頂.北端の三角点に辿り着き,緊張から解放されてしばらく立ち上がれなかった.360度遮るもののない大展望.
名残惜しいが,暗くなる前に戻らなければならない.12時3分,懸垂下降開始..ロープは30mの細引き,下降器はEdelrid Micro Jul,カラビナはEdelrid HMS Strike FG.懸垂下降と言いながら,細いロープなのでロープはロックしない.懸垂下降もどき.あくまでも補助なので,ロープにはわずかしかテンションはかかっていない.それでもこれだけでかなり安心.装備が重くなることは,個人的には最も大きなリスク要因だと考えているので,限界まで装備は削る.かといって削りすぎると安全を確保できない.その辺が難しい.装備を削る代わりに,危険を回避できないと判断した場合は撤退を躊躇しない.
ロープが尽きる前に支点となる灌木を見つけ,確実にピッチを切っていく.14時28分,8ピッチ,2時間半かけて下降した.何度も歓喜の雄叫びをあげた.
16時50分,無事に結梗川出合まで戻ってきた.ここまで来ればあとはなんにも考えなくても自動運転で帰れる.18時53分,無事に帰還.14時間10分.距離33.2km.獲得標高1176m.
開いているか心配だった占冠村湯の沢温泉は20時30分まで入浴可能だった.
22時20分,帰宅.移動時間も合わせると行動時間20時間.朝見たモルゲンロートと同じ色の茜色のワインで乾杯.ふたりで1本空けちゃった.お疲れ様でした.ありがとう.
これ以上のコンディションに恵まれることはきっとないくらい素晴らしい1日だった.奇しくも昨年と同じ4月11日.だからこの日は,「夕張マッターホルン記念日」としよう.
降りたときには,もうこれで訪れることはないと思ったけれど,なんとなくまた戻ってくるような気もしている.次は滝の沢からかな.
コメント
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1415峰への最短ルートとして以前結梗川左岸を紹介していただきましたが、最近少しずつ記録を目にするようになり、お役に立てているようで良かったです。
十梨別ゲートからの歩きはさぞ長かったことでしょう。
お疲れさまでした!
oginoさん,コメントありがとうございます.oginoさんの開拓したルートあってこその登頂でした.何年も前から記録を何度も読み返して計画を練りました.帰ってきてからまた読み返して,ああ,そういうことかという点もありました.次は,西に回り込んで登ってみたいと考えています.ありがとうございました.
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