南ア 二軒小屋〜蝙蝠岳〜塩見岳〜小河内岳〜荒川前岳〜赤石岳〜大沢岳〜兎岳〜聖岳〜聖沢登山口
- GPS
- 170:21
- 距離
- 78.3km
- 登り
- 8,023m
- 下り
- 7,989m
コースタイム
0800畑薙臨時駐車場《東海フォレストバス》0900椹島0915-1235二軒小屋(登山小屋泊)
2013/8/11(日) 二軒小屋→蝙蝠岳
0405二軒小屋-0440蝙蝠尾根取付-0610中電管理棟0625-1035水場・小休止1130
-1150徳衛門岳-1415上四郎作沢の頭(2721)-1510蝙蝠岳(幕営)
2013/8/12(月) 蝙蝠岳→小河内岳避難小屋
0350蝙蝠岳-0625北俣分岐-0715塩見岳0725-0830塩見小屋0840-1025本谷山
-1145三伏峠(小休止と水場)1215-1320烏帽子岳-1525小河内岳避難小屋(小屋泊)
2013/8/13(火) 小河内岳避難小屋→荒川小屋
0455小河内岳避難小屋-0500小河内岳-0630大日影山-0725板屋岳0730-0820高山裏避難小屋
-水場-1235荒川前岳1250-1400荒川小屋(幕営)
2013/8/14(水) 荒川小屋→百間洞
0525荒川小屋-0620大聖寺平-0815小赤石岳-0910赤石岳-1100百間平-1205百間洞(幕営)
2013/8/15(木) 百間洞〜兎岳避難小屋
0510百間洞-0700大沢岳北峰-0710大沢岳南峰0730-0750大沢渡分岐-0850中盛丸山
-1010小兎-1150兎岳1245-1255兎岳避難小屋(小屋泊)
2013/8/16(金) 兎岳避難小屋→聖平
0540兎岳避難小屋-0850聖岳0925-1140聖平(幕営)
2013/8/17(土) 聖平→聖沢登山口
0630聖平小屋-1010聖沢吊橋-1135聖沢登山口
1310《井川観光協会バス》1405畑薙臨時駐車場
天候 | 2013/08/10(土) 晴 2013/08/11(日) 晴 2013/08/12(月) 晴 2013/08/13(火) 晴 2013/08/14(水) 晴 2013/08/15(木) 晴→午後から雷雨 2013/08/16(金) 晴 2013/08/17(土) 晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
県道27号利用。新静岡ICより夜間走行で約2h。 新静岡IC出口にローソンができていた。 ◇東海フォレストバス乗車条件 二軒小屋の登山小屋は、畑薙ダム〜椹島間の乗車対象施設ですが、椹島〜二軒小屋間は バスに乗れません。徒歩でCT3h。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
◇登山道状況 ・二軒小屋〜蝙蝠尾根取付 昨年同様に、田代湖方面へ進み橋を渡った直後のトンネルを経由する。 流された西俣の橋は「修復の予定は今のところ無し(意訳)」だそうです。 ・蝙蝠尾根取付〜蝙蝠岳 全体にまずまず明瞭な踏み跡とピンクテープのある尾根通し。 登山道整備は行き届いている様子。関係者に感謝です。 徳衛門岳直下の水場は豊富に出ていたが、砂利で埋まりつつあって500ccペットも入らない。 ガッツリ汲みたい場合はコップ・漏斗などのツールがあったほうがよさそう。 ・荒川前岳北側カール上部 崩落の淵からカール側に登山道が付け替えられているところがあるので注意。 ・兎岳〜聖岳 急なアップダウンの多いキレットで滑落事故も発生している。余裕を持って通過されたい。 上記以外は特に危険箇所のない一般登山道。 |
写真
感想
昨年夏のリベンジ。
・GWの思い出の兎岳〜聖岳をなつかしくまた歩いた
・昨年の経験から精神的に余裕が持てた
・日程に余裕を持たせ、結果的に今回の核心部をゆっくり楽しみ、且つ雷雨を避けることができた
・小河内避難小屋に初めて泊まれた
・山小屋スタッフとの再会、登山者との素敵な一期一会の出会いに恵まれたよい山行となりました。
※またもや長文日記。閲覧注意
【2013/8/10:0日目】自宅→二軒小屋
夏休み突入前の金曜夜宴会をノンアルでやりすごし、帰宅後、暫くお預けとなる風呂、午前2時自宅発。深夜なのに交通集中による渋滞を引き起こす東名にウンザリしながら新静岡IC到着、県道27で井川へ。盆休み連休土曜早朝は臨時駐車場がいちばん混むとの予想通り、駐車場の空きはわずか。バス待ち行列に並ぶ頃には見た目満車となっていた。
7時の臨時便には乗れず、8時の便に乗り込む。運ちゃんの軽妙な解説と絶妙な運転でバスは椹島に到着。トイレを済ませ、水補給して、二軒小屋に向けて出発。
灼熱の林道を日蔭を拾いながら歩くのは昨年同様。東海フォレストのバスがすれ違うときにプッ!と軽くクラクションを鳴らしてくれ、元気づけられる。暫くは千枚岳東尾根が左手にずっと続く。大分歩いた頃にようやく蝙蝠尾根が見えてくる。
大井川の河原がひろがり、林道が直線になったのちに二軒小屋に到着。登山小屋にザックを置いて本館受付へ。去年と同じ女性が受付、「去年も来られましたよね?」といわれる。覚えてくださってたのですか、嬉しい♪
お弁当をお願いして取り敢えず生ビール。プハァ〜うまい!登山小屋へ戻り、荷物整理し、本館自販機でビール入手。芝生の木陰にグランドシートを敷き、ビールしながらゴロ寝。微風と木立の静かなざわめきと野鳥の声の中、気持ちよく睡魔に襲われ、昼寝ZZZzzzz・・・・
肌寒くなったので登山小屋に戻って引き続き昼寝。気が付くと他のパーティも入っていた。東海地方からの3人組は西俣から塩見に上がり、蝙蝠尾根を降るとのこと。今いちばん自分が興味を持つ分野であり、そのようなコースを辿る場合の装備は?など色々教えていただく。明日は自分は尾根を、彼らは沢筋を進み、明後日塩見あたりでお会いできるかもしれませんね、と話す。もう1組は地元の単独者で、取りこぼしの蝙蝠岳が目的で、明日は徳衛門岳に張って蝙蝠岳をピストンの予定と。
指定された17時半に本館へ行き弁当を受け取る。早速生ビール片手に芝生のテーブルへ向かい、晩御飯にいただく。やわらかい鶏肉と魚の甘露煮にビールが進む。二軒小屋本館ディナーを楽しみたいのはやまやまだが、縦走前夜にはやはり贅沢。美味しい弁当と下界価格の生ビールで十分幸せ、英気を養う。登山小屋に戻っておやすみなさい。
【2013/8/11:1日目】二軒小屋→蝙蝠岳
3時起床。軽くコンビニおにぎりを腹に入れる。昨日林道で離合した人から、徳衛門岳の水場はよく出ていたときいたので、水分は2Lだけ背負う。4時すぎにまだ暗い二軒小屋を出発。
昨年も暗い中を歩いたので不安はないが、真っ暗な直線道路を歩いているとき、正面からホタルどころではない明確に明るい2つの光源が、ホタルどころではないスピードでこちらに向かってくる!地面から50cm程度の高さだったので、小動物かな、と思ったが、こちらへ近づくにつれ急に高くなり、自分より見上げる位置に!自分は超常現象の類はカケラも信じていないが、さすがにビビる。さらに近づくと、イタチか何かが法面を駆け上がっていった。まったくもーーーーーーーーーーービックリさせるなよぉ!!!!!
ゲート解放されたトンネルを抜け、二俣を右に降り、蝙蝠岳取付へ。取付直後は傾斜きついが、細尾根に乗ると緩む。若干の梯子を越え、明瞭な尾根筋を進む。
暫くすると突然現れる中電監視塔。横にグラグラする鉄階段をのぼって休憩。右下に視線をやると西俣がよく見える。3人パーティが歩いているかな?休憩終了、出発。広い尾根は徐々に細くなり、右下に灰色のザレが見えるようになってきたら水場は近い。徳衛門岳手前の水場に到着。大休止を取り、サブザックを取り出して水場へ向かう。昨年見た頻繁なピンクテープは健在で迷うことなく斜面を降る。1/3ほど下ったところに少し平らになったところがあり、昨日出会った人は小屋番に勧められてここへ張ったそうだ。テントから富士山がよく見えたと言っていた。水場の水はこんこんと湧き出ているものの、受け口が砂利で埋まりつつあって、昨年は入れられた500ccペットボトルが縦に入らない。たまり水を汲むかたちとなり、よ〜く見ると微小な岩屑が混じっているが冷たく旨い。ここで4.5L汲み、満タンになって再出発。
徳衛門岳へはすぐだ。途中で抜かれた小屋単独者の大きなテントが張ってある横を通過し、引き続き上へ。暫くは微妙にアップダウンしつつ緑の深い山道を進む。2581の小ピークを越え鞍部に降りたあたりから、尾根の右側をトラバースするように道がついている。地形図的には何故わざわざトラバースなのかと思え、風もなく倒木多く歩きづらい登山道が意外と長く続き疲労する。まだ続くのか・・・とウンザリした頃、本当に突然という感じで2721Pの上四郎作沢の頭で森林限界を飛び出す。取付から暫くは若干体調不良で、なんかもう二軒小屋に引き返して今回の山行は諦めようかとまで考えたほどだったが、2721Pからの天空を行く道を進むと、あぁ本当に来てよかった、と心から思える。ハイマツ林を突破し岩屑斜面を蝙蝠岳へ向かう。
岩屑斜面はどこでも歩けそうに見えるが、よく見ると踏み跡があり、所々の岩に控えめなペンキマークがついているので、できるだけ踏み跡を辿るようにしたい。頂上直下の二重山稜を右に乗り移り上り詰めると蝙蝠岳山頂。昨年来たあと設置されたらしい新しい角柱標識が堂々とそびえる。手作り画鋲看板がなくなっていたのはちょっと残念。大体目標コースタイムで蝙蝠岳まで来ることができた。やったー!よくがんばった!直下に張ってひといき。1本だけ持ち上げたビールで乾杯。登ってきた蝙蝠尾根を眺めて感慨にひたり、向かいの荒川岳の避難小屋には人がいっぱいなのかなぁとか、反対側の白峰南陵には計画書を拝見したkuma****さんがどこかでテントを張ろうとしているのかなとか、色々な思いが巡る。今年もとりあえず無事ここまで上がることができたのが嬉しい。早々に就寝。
【2013/8/12:2日目】蝙蝠岳→小河内岳避難小屋
2時すぎに起床。外に出てみると、こぼれそうな星空。今日もいい天気になりそうだ。昨年は朝ノンビリしすぎて三伏峠到着時にヘトヘトになってしまったので、今年は反省も込めてちゃんと早起き早立ちし、昨年よりもCT+3.5hの小河内岳避難小屋を目指す。ここで頑張っておけば後半の日程が楽になるので、なんとしても行きつきたい。暗闇の中テント撤収し、塩見岳を目指す。
蝙蝠岳からはかなり高度を落とし、樹林帯まで降る。再び登りにかかった頃、空が群青色に色づきはじめる。富士山が小さく夜明けの空に浮かぶ。周囲は少しずつ白みはじめ、左手の塩見岳を照らし、自分の影が長くのびる。やがて塩見岳は赤く染まり、でもすぐに朝の光に包まれていく。北俣分岐手前のキレットは意外と手強い。まだ朝早いからか、塩見岳への登りまで誰にも会わなかった。塩見岳東峰がよく見え、山頂部に人がずーーーっと留まって大声で喋っているようだ。東峰に辿りつくと10名程度の若者集団がいて、ただダベっている感じ。かれこれ30分以上は狭い山頂に滞在しているだろう。自分が山頂標識を写真撮影するだろうというような気遣いは一切湧いてこないらしく、バカらしいので通過。西峰に行くと彼らの放り散らかしたザックがあちこちに。何処のバカ者集団か知らないが、もう二度と山には来ないでもらいたい。8/12の7時頃に塩見岳東峰に居たキミ達のことだ。
小休止ののちに塩見岳から降る。ここの降りは本当にキツい。焦って落石を起こすことのないよう慎重に降りる。相当高度を落として塩見小屋。みかんゼリー購入でひといき、再出発。ここから三伏峠までは自分にとっては楽しさの殆どない苦行のような道のり。放置倒木を跨ぐばかりで本当に疲れる。三伏峠から塩見岳をピストンする人はとても多いようだが、よくこの道を一日で往復する気になるもんだ。黙々と歩きつづけて本谷山、三伏山を過ぎる。三伏峠小屋へは行かずそのまま烏帽子岳方面へ。お花畑のところで水を取りに行って休憩していると親子が通りがかったので、この時間にこの方向へ行く人は小河内岳避難小屋を目指すはずと思い声をかけてみる。やはり今日は避難小屋までとのこと。この親子とは翌日まで前後することになる。自分は足が遅いのでどこかで抜いてくださいねと声をかけて出発。烏帽子岳へはガレの淵を行く。昨年は通らなかったような新しそうな道?もあったりして、木立の枝は払ってあって、登山道整備が行き届いている感がある。塩見〜三伏間は何故ああなんだろう?三伏峠以降、トレランの人を多く見るようになる。三伏峠から入るってことはTJARを意識しているのだろうか?すみませんと声をかけて抜いていく人はいいのだが、譲っているのに挨拶も礼もないまま抜いていく人や当たり前のように登山道脇を踏みつけてすれ違っていく人など、山に対する意識の一般登山者との乖離を強く感じる。極軽装で縦走し、暗くなった頃に山小屋に入るなどザラらしく、正直、別人種としか思えない。
閑話休題、烏帽子岳を越えて、あと2度の登りでようやく小河内岳へ至る。アップダウンが苦しい。時刻が想定内なのが救いで、なんとか平常心で、それなりに景色を楽しみながら歩く。お花も増えてきて、和む。遠目に小河内岳から左手に突き出たところに見えていた避難小屋は、小河内岳に近づくと見えなくなる。ハイマツ斜面を延々と登り返していると突然のように小屋があらわれる。
あーやっと到着した。なんとか2日目の行程を予定通り進めた。小屋へ行くとすでに小屋の半分は人で埋まっている。管理人ご夫婦に泊めてほしい旨伝え、自分の後にも親子づれと単独者の計3名はここに向かっているようだと話す。結局この日は小屋泊7名で大盛況だったようだ。
消灯19時で17時頃からぼちぼち皆さん晩飯を各々取りはじめる。管理人奥さんからポテトサラダの差し入れ。18時には落ち着き、夕暮れを眺めにそれぞれ小屋の外へ。自分は避難小屋からさらに奥の小西俣のほうへ向かってみる。砂利のゆったりした半島はあるところまで進むと急激に落ち込み、西俣へ注ぐ沢へと続く。まるでイザルガ岳のようだ。左手には昨日から登ってきた蝙蝠尾根から伸びる稜線、右手には荒川岳〜赤石岳。今、自分は、大きな南ア南部のど真ん中に居る。
西日が塩見方面の雲を茜色に照らす。あぁ本当にここへ来てよかった。しみじみ。
【2013/8/13:3日目】小河内岳避難小屋→荒川小屋
小河内岳避難小屋の朝は4時に灯が点る。宿泊者はボチボチ起床し、それぞれに支度をする。管理人さんからあったかいほうじ茶が出され、しみじみと胃袋に収める。夜明け間近の小河内岳避難小屋、管理人ご夫婦の見送りを受けながら出発。此処に泊まってはじめて対面する山があった。此処に来て本当によかった。ありがとうございました。
南アルプスのど真ん中は、全方位が夜明けの彩りに包まれる。今日は自分の○○回目の誕生日。好い1日になりそうだ。
小河内岳山頂へはすぐ。今日はできれば中岳避難小屋までと話す親子と前後して出発。小河内岳からは一気に標高を落とし樹林帯を進む。大日影山で小休止していると親子が追いつく。父親と中学1年生の息子、の組み合わせであることは昨日きいていた。とても礼儀正しい父子で、密かにジェントル親子と自分の中で呼んでいた。親子登山というものに縁のない自分は、ジェントル親子と何を話せばよいのかよくわからないので、当たり障りのない会話で済ませていたが、前後するたびにチラ見した父親が息子にあれこれ教えている様子に、ふと、まだ子供な感じの息子は親の嗜好を押し付けられて嫌ではないのか、どんな気持ちでこんな地味な処を歩いているのか興味がわく。休憩ついでに、色々尋ねてみた。親子登山は息子が小学校3年生からはじめていてかれこれ約20回目くらいになるとのこと。「山のどんなところが好き?」と訊いてみると、もじもじする息子をよそに「景色がきれいなのが好きなんだよなぁ?」と父、頷く息子。「そっか、山が好きなんだね」と息子に言うと、もじもじしながら軽く頷いている。いいなぁ・・・・正統派の親父に鍛えられる息子。近い将来、みるみるうちに親父の背丈を越え、親父よりもはるかに大きなザックを背負って、親父の前を歩くようになるのだろう。
休憩終了、出発。大日影山から板屋岳にかけて、トラバースと短区間ではあるが激しい登りが続く。四肢を使った激しい登りはガレの淵で終わり、右下に切れ落ちた崖を横目にひとのぼりすると板屋岳に至る。板屋岳からはガレの淵と樹林帯を行き来しながらどんどん標高を落とし、マルバダケブキのお花畑の先に高山裏避難小屋がある。
高山裏避難小屋で親子が休憩していたが小屋番さんの姿はない。小声で「居るんですか?」と父親に尋ねるとウンウンと。しかし姿は見えず、顔が見えれば昨年幕営のお礼を伝えておこうかと思っていたが、ヘタにお仕事の邪魔をするとマズそうな気がしたので、また来ますね〜と心の中でつぶやいて避難小屋をあとにした。
ここからは恐怖のカール基部まで延々とトラバースが続く。じわじわと高度を上げるトラバース道を進むとやがて水場。そこそこの水量が出ていて、つめたく甘い!溜め水だった三伏の水は捨て、フレッシュな湧水と入れ替える。山の中で自然に湧く水の嬉しさ、水場設置のありがたさ。
喉を潤し、いよいよカールへ。ここがキツいことは情報面でも経験的にもよーくわかっている話で、とにかくマイペースで登る。昨年初めて登ったときは、高山裏避難小屋を出発して英気満々かつ適度な緊張感だったのでそれなりに登りきることができたが、今年はキツかった。登れば登るほど傾斜が強まることも実感。カール上端に行き着く手前で登山道は左手に進路を変え、少しずつ稜線に近づく。荒川大崩落地の淵まできて振り返ると、スーパークロスのジャンプ台かと思えるほどにカールが崖の淵に乗っかっている。成長を続ける大崩落地。登山道は崖の淵を避けるように北側カール寄りに付け替えられているところがあり、油断すると以前の危険登山道に入ってしまうので注意が必要。荒川前岳に到着すると、ジェントル親子はザックをおろして休憩していた。ザックを背負ったままウロウロしていると、ジェントル息子が「ここの岩のところにザックを下せばいいです」と誘導してくれて、ハイわかりましたと従う。自分に気を許してくれたみたいだ。
前岳山頂では多くの人が思い思いに眺めを楽しんでいる。静かで深い南アから、華やかな南アに来た。中岳避難小屋の管理人さんにまた挨拶したかったけど大勢のお客で忙しいかなと思い、そのまま荒川小屋へ降りることにする。ジェントル親子は中岳避難小屋に泊まり、明朝悪沢岳ピストンして荒川小屋〜赤石岳を目指すそうだ。彼らともここでお別れ。もう会うことはないだろうけど、「じゃあまた」と声をかけて歩き出す。ジェントル息子が「さようなら」と返してくれた。
さようなら・・・・さようなら・・・・・・大人になって、さようならと言うのが切なくて、いつも、じゃあまた、と濁していた。思いがけない言葉に鼻の奥が痛くなる。ジェントル息子。素敵な山男になってください。さようなら。
分岐を通り過ぎ、荒川小屋方面へ降りはじめる。上部よりも少し下ったあたりにお花が多い。鹿食害柵の内側と外側に目立つ差はなさそうで、軒並み首から上を食われている様子をよく目にするバイケイソウも柵の外側で堂々と花を咲かせている。鹿の食害は全国的に深刻らしく、どうかこのお花畑がいつかでもこのままでありますようにと願う。はるか下方に見える荒川小屋に隣接したテン場にはすでに色とりどりのテント。早く降りてなるべく良い場所を確保したい。名物カレーを食べるための胃袋もスタンバイOKだ。ガンガン下って荒川小屋到着。まず受付へ。
受付に座る女性。もしかして・・・・先方から声をかけていただいた。Hさん!お久しぶりです。昨年夏休み縦走のさい、荒川小屋で非常にお世話になり、感謝を伝えたくて下山後に金谷の東海フォレスト経由で小屋にお礼の品と手紙を荷揚げしていただいてから、小さな交流が続いていた。お目にかかるのはまる1年ぶり。スタッフリーダーの方もみえて、わーお久しぶりですまたお会いできて嬉しい〜〜〜〜!!と個人的に大騒ぎ。今日はテン場も混むからはやめに場所確保したほうがいいですよ、と言われ、ビールも我慢して寝床確保に走る。荒川小屋のテン場は大雑把に3か所に分かれていて、小屋前のところは四畳半程度の空地が数か所点在で木陰、という絶好のロケーション。1〜2人用がぎりぎり2張りの敷地の1/2が空いている。多分みんな遠慮してるんだろうなと思ったが、先住民の方がテント脇でのんびりと読書をされておられたので、ずうずうしく「お隣よろしいですか?」と入れてもらう。通路確保に気を付けながらテントの位置を決め、さっさと設営して、やっと一息。
さぁ〜お待ちかねの荒川小屋特製カレーとビール!!!小屋受付へ取って返し、カレーとビールを注文しようと息巻いて駆けつけると、受付脇にスイカが・・・・¥300。これはもう食べるしかないでしょう。ビールはカレーが出てくるまで我慢し、まずはスイカにガブリ。・・・・・感動。3年くらい前の夏休み縦走で聖平小屋でスイカを食べさせてもらって以来だ。美味しい♪赤い色が無くなるまでキッチリといただき、いよいよカレー&ビール。んまーーい!!!
きれいに整地されたテン場に水場、美味しい食べ物とビール。営業小屋ってホントにありがたい。驚くことにテン場で携帯バリ3@au。誕生日祝いのメッセージがいくつか入っていた。今日は、ど真ん中の小河内岳を出発し、荒川岳北側カールを必死に登り、ジェントル親子とお別れし、荒川小屋で嬉しい再会を果たし、いい誕生日でした。
【2013/8/14:4日目】荒川小屋→百間洞
4時起床。テント撤収し、昨日頼んでおいた弁当を受付へ取りにいく。荒川小屋ブログで今年のおにぎりに新ラインナップが加わったとあったので、確認すると「入ってますよ〜」と。楽しみだ。Hさんも10月の小屋閉めまでここにおられるとのこと。今年こそダケカンバの黄色に染まる荒川小屋を訪れてみたい・・・・また来ます。お世話になりました。
冬季小屋の脇を通って赤石岳方面へ。登山道沿いの昔のテン場にもテントがいっぱいで、本当に昨日は大盛況だったようだ。樹林帯の登山道の標高を上げると、木立の隙間から荒川岳斜面に張り付くように朝靄に輝く荒川小屋が見え隠れする。ひとのぼりすると一気に視界が開け、大聖寺平への緩やかなトラバース道となる。今年はここの残雪が遅くまで残っていたらしく、風車になる前のチングルマの花が残っていた。コイワカガミやアオノツガザクラも瑞々しい朝露をまとって花を咲かせている。
大聖寺平の標識に到着。小渋川のほうへチョット移動。この方面に関心があって、ここから来た人の記録に想いを馳せる下界生活、そして実際に目の前にして、自分もいつか・・・・・と思う。
さあ、そして赤石への登り。ザレた登山道はけっこう斜度があって、ザレ斜面に足を取られそうになったりする、そこそこガッツの要るところ。朝方の森林限界上の高山は空気もクッキリとしていて、心地よい緊張感と別世界感に包まれる。時々後ろを振り返ると、鞍部の大聖寺平から荒川三山に至る地形が視界に迫り、その美しさに脳天から「時間よ止まれ」の指令が出て、どっぷりと美しい世界に包まれる。そういえばジェントル親子は今朝方に悪沢岳(荒川東岳)に登頂といっていた。遠目に霞む悪沢山頂は徐々にガスが取れている。「景色を眺めるのが好き」といっていたジェントル親子は悪沢岳から望む南アの展望を楽しめただろうか?感動して、南アを好きになってくれるといいなァ・・・
小赤石の肩へ出ると日向なので、そのまえに小休止、朝飯代わりの荒川小屋おにぎり弁当をいただく。可愛らしい5つのおにぎり。1つは新作の小豆おにぎりで、小屋スタッフの出身地北海道ではメジャーなのだそうだ。赤飯風な味を予想していたら、モッチリほの甘い!ホッとする甘さ。美味しい♪大展望を目の前に心づくしの美味しいおにぎりに舌鼓、これ以上の贅沢はこの世に存在しない。
引き続き赤石へ向けて登る。稜線に出るとどっしりとした赤石岳が姿を現す。ヤセ気味な登山道沿いにはたくさんのお花が咲いている。稜線散歩を楽しむと小赤石岳。ここから大井川へ向かう尾根の最初のところはラクダの背と呼ばれる冬季ルート。GWに兎で出会った大学生はここを通ってきたと言っていたので、あらためてまじまじと眺めてみる。あのギザギザに雪が着いた状態はかなり厳しそうだ。積雪期単独はやはり聖東尾根かな・・・一旦標高を下げて赤石小屋方面への分岐。赤石岳ピストンの人たちのデポザックを横目に、赤石岳への最後の登り。赤石岳山頂へ到達するころには北側にガスが湧き上がり、荒川岳方面はすっかり隠れてしまった。
人も多くそそくさと通過、いよいよ百間平方面へ降りる。赤石岳山頂南側は多重山稜の船窪地形でたくさんのお花が咲き乱れている。お花畑を越えると岩ゴロ地帯が百間平まで続く。百間平を見下ろす斜面で休憩。今風な服装の数名パーティが軽く挨拶してくれながら下っていく。赤石〜聖の間はわりと人気のないルートだが、最近は若い人も結構入っているのだろうか。深田百名山に縛られない、南アを純粋に楽しみたい若者が増えているなら嬉しい。百間平は何故ここにこんな地形が?という処で、小渋川に浸食されてます!な雰囲気の登山道を進むとだだっ広い平らな地形が続く。ここを幕営禁止にしているのは大正解だ。明日行く、大沢岳へのジグザグ道が眼前に立ちはだかり、しかも標高はどんどん落ちていき、やがて百間洞へと至る。樹林帯に入るとまず棚田状のテン場が出てくる。まだ昼前だがテントも人も多い。どうせ登り返すから、ザックをデポし受付しに百間洞山の家へ向かう。テン場から小屋までは沢沿いを行くが、結構標高差も距離もあり、沢を渡る小さな橋もある。水場とトイレは小屋なので、行き来することは多い。テン場で酔っ払って小屋移動途中沢に落ちる事故もあったそうで、羽目を外さないように注意。
さて小屋へ向かい、受付へ。単独でテント泊を告げる。テン場の番地を指定される。ビールとつまみをお願いする。小屋前のテーブルでビールしながらつまみを待つ。受付の男性がつまみを持ってくる。呑み終わる頃に受付男性がテン場の番地が変更になると告げにくる。再指定の番地は「13-2」。ああそうですかと了解し、テン場へ移動。13-2は何処?テン場の棚田に単独用テントの棚があり、13-2ってどこですかね?と声をかける。えっ?と意外そうな顔つき。指し示す先には、極小面積の土地が。えーーーーあそこ???・・・・・・・エスパース1〜2人用テントをギリギリ張って、出入り口前は石積み境界30cm。出入り口30cmの先には段差2m下に棚田敷地。前室ぎりぎりで靴を置くとおしまい。狭いテントから身を捩りながら出ると目の前30cm先が足場の悪い2mの崖。正午に到着して、他は十分空地はあるタイミングで、ここを指定されるのか・・・・・まあ繁忙期だし、肩身の狭い単独者がワガママを言って他の幕営者に迷惑をかけるのも悪いし,遠い小屋までわざわざ足を運んで文句を言うのも躊躇われる。複雑な気持ちで、夕食を予約した小屋へ向かう。名物の揚げたてトンカツは相変わらず美味しい。悶々としながら狭小テントへ戻る。翌朝。結局テン場は5割方も埋まっておらず、広大な土地がガラ空き。繁忙期で限られたキャパのテン場を切り詰めて使う意図には賛同するが、早着登山者を転落事故に繋がるほどの狭小土地に押し込めるのは行き過ぎではないか。そもそも受付時に「一人」と告げたが、テントが1〜2人用とは一言も告げていない。もし自分が単独者用でない大きなテントで、狭小13-2を指定され、物理的に張れません!の事態が発生したら、わざわざ小屋へ足を運んで事情説明しろ、ということなのか?
・・・・・・・正直、百間洞山の家には心底失望した。早着したのだから必要以上の面積をよこせ!というつもりはないが、安全に出入りできるテン場を引き当てる手段はいくらでもあるはず。トンカツに胡坐をかいてる暇があるなら、登山者が安全に幕営できる環境の実現が最低限ではないですか?
【2013/8/15:5日目】百間洞→兎岳
起床。小屋へ弁当を取りに行く。朝食準備に忙しい小屋番夫妻男性が受付にいたので、弁当を受け取り、13-2は最悪だ。長辺出入り口の自分のテントは目の前30cmしかなかった。非常に不愉快なので昨日購入した百間洞山の家ネーム入りバンダナを返品させてもらいたいと告げ、小屋を後にした。テン場から、大沢岳取付き分岐は目の前だ。大沢岳方面の標識に従ってはじめて足を踏み入れる。登山道から大沢岳方面分岐の先にもテン場は多数あり、ガラガラ。昨夜のアレは何だったのか。
昨日、赤石岳から百間平にかけて標高を落とすあいだ、ずっと目の前に立ちはだかっていた、大沢岳から続く稜線。特に大沢岳に刻まれた登山道は遠目にもはっきり認識できる。期待と小さな不安で登り始める。遠目には下部の樹林帯はすぐに抜け、高山帯に刻まれたジグ道を登る。東面なので早い時間から日差しを浴びるだろう。涼しいうちにできるだけ標高を稼ぎたい。登山者や小屋から仕入れた天気予報では、今日の午後は雷雨に見舞われる可能性大。今朝百間洞を出発した南下登山者の大半は聖平を目指すと思われる。自分の今回の縦走の大きな目的のひとつは、大沢岳を楽しむこと。幸い縦走前半は予定消化できたので、今日必死に聖平へ辿りつく必要はなく、今日は大沢岳をノンビリ楽しみ、大沢岳〜兎をチンタラ進みつつ、兎の避難小屋を初体験、の予定で大沢岳へのジグ道を登る。見た目通り、樹林帯はすぐに抜け、展望のよい岩とハイマツの道になる。程々にあるマーキングを辿る。時々百間平を振り返ると陽がのぼってくる。聖岳方面は朝靄に包まれている。最初見上げていた百間平は徐々に目線の高さとなり、やがて見下ろすようになる。右手には奥茶臼〜丸山から続くピョコピョコした稜線が百間洞に落ち込む。小渋川から福川を詰めた人はあのあたりに到達するのだろう。赤石岳から西に大きく湾曲する主脈が再び南下する頂点。
大沢岳北峰山頂がやっと見えてきた。赤石沢から緑の頂が伸び、青空に突き抜けている。稜線に沿うように左寄りに登山道は続いており、稜線に出ると右手の飯田側がはじめて望める。飯田側は東から照らす朝陽の日蔭で、暗く深い崖がどこまでも落ち込んでいる。細い稜線上の登山道は鞍部は本当に幅が狭く、突風が吹けばたちまち滑落しそうだ。大沢岳北峰に至る。南峰より標高は高いが、登山道から微妙に外れた狭い山頂に標識は一切ない。背後から朝陽に照らされ、大沢尾根方向に影富士ならぬ影大沢岳がうつっている。朝のキンとした空気に包まれた此処は何か少し寂寥感があった。満足したので南峰に移動する。平らな土地の南峰山頂には三角点と角柱標識もありちょっぴり俗感がある。太陽を背に飯田側に向いて大休止。
静かで奥深い緑の大沢岳を堪能し、ザックを背負って降りはじめる。船窪地形の下に大沢渡分岐の標識。白地に赤文字が浮き上がる「しらびそ峠」は年季を感じるわけでもなく、普通に、今ここからしらびそ峠へ行けます、な雰囲気を醸している。林道が崩れて容易に入山できなくなったのはいつ頃だろう?昔は中学校登山で大沢岳へ来ていたと伊那谷の人が言っていたのを思い出す。祠か何かあったのか、約1.5m四方のブロック枠だけが残っている。このあたりから大沢岳西尾根が伸びている。nucchi氏はきっとここへ到達して、兎へ行ったんだな。アクセスを絶たれ、縦走路からも外れた大沢岳。好きな人はいろいろな行程でここへ来る。いつか、自分も。
見慣れた百間洞分岐を通りすぎ、目の前に立ちはだかる中盛丸山へ。こちら北側から眺める中盛丸山はお椀を伏せたようなこんもりした形だが、三角錐の一面を真正面から眺めているからであって、兎から見るこの山は端正なピラミッドだ。山頂へ到着すると男性が休憩していたので声をかけると、今日は兎の避難小屋まで、とのことで、おぉ自分もです、とこたえる。ここから抜きつ抜かれつが続く。広々した中盛丸山山頂の南側は急な岩場で、地図上の登山道は稜線を辿るように描いてあるが実際は稜線を逸れ船窪の中を行く。小兎から兎へぴょこぴょこ続く稜線。このあたりからすれ違う人が増えてくる。聖平を早朝出発した人たちだろう。皆苦しそうだ。朝一で聖を登ったあと、急激に標高を落としてまた兎に登り返し、そこから続く意外に手強いアップダウンを越えてきたのだ。みんなお疲れさまです。
陽が高くなり気温も上がってだんだん苦しくなってくる。可愛らしい名称の小兎も登りがいのある立派な山だ。中盛丸山と小兎の鞍部は樹林帯で貴重な木陰があるので小休止。通りがかった単独女性と少し話す。蝙蝠から登ってきたと言うといいですねー!私も行ってみようか迷っている、と。ぜひ行ってみて!とお互いの健闘をたたえ、逆向きに別れる。小兎頂上へたどりつき、まだ先もあるので引き続き進む。小兎南側鞍部に水場標識があるという情報があったような記憶があり、左右きょろきょろしながら進んだが結局わからなかった。兎の手前で最後の小休止を取り、いよいよ兎に取付く。標高差約150m。たかだか30分の筈だが、足元のザレた登山道と脳天を直撃する日差しがなかなか辛い。どっしり重厚な兎ちゃん、なんだか可笑しい。あー今日はここを登りきれば終わり、と思えばこの辛さもちょっと物足りないが、雲も湧きはじめており、おそらく天気予報は当たるだろう。ようやく兎岳山頂に到着。
思い出のGW笠松尾根〜兎から3ヵ月。雪に覆われていたここは、もう初秋だ。あのとき雪の下にいたタカネビランジは、いつもと変わらず群れて花を咲かせている。懐かしく、またここに来れたことが本当に嬉しい。ザックをおろして三角点のほうへ行ってみるが、ガスっていてまったく展望がないので引き返す。そこそこ登山者の多い山頂の周囲はどんどん雲がわいている。もう正午で、今から聖平はタイムアウトだろうし百間洞を目指すなら急がなければ雨に遭うだろう。のんびりテントを干して世間話に興じる登山者はどうするつもりなのかと内心はらはらしたが、敢えて口に出して注意喚起するのも躊躇われる。話相手をしているうちに、いよいよポツポツきはじめる。まだ時間も早いが急いで避難小屋へ降りる。
3ヵ月前は屋根をほんの少し雪面から出していた兎岳避難小屋は、当たり前だが緑に覆われていた。避難小屋の周囲にはたくさんの種類と数のお花が咲き乱れている。南に面していて積雪も豊富なここは素晴らしいお花畑。愛でる暇もなく避難小屋の中へ。外見はオドロオドロしい小屋だが、Webで見たとおり、内部には白い樹脂のパネルで床と壁が覆われ、天井は透明の樹脂トタン(?)が張ってあって明るい。しかしジメジメしていて積極的に長居をしたい雰囲気ではない。年季の入った鋼鉄の骨組みに、ブロック塀がセメントで塗り込められている。これだけの重量の資材をここまで上げて、きっと大勢の人手で造り上げられたであろう、頑丈無骨なこの小屋は長年多くの登山者を守ってきたのだろうな・・・・備え付けの箒で床を掃いていると本日宿泊の男性が入ってきた。兎の山頂でゆっくりしていたが、さすがに雨が本格的に落ちてきたので降りてきた、と。今日は我々だけですかね〜どうですかね?と話しながら、とりあえずお互いの陣地を決めてザックを下ろし、ぼちぼち荷解きしているうちにどんどん雨脚は強くなり、ピカッ!バリバリ!ズズーーン・・・と激しい雷雨に。3000mちかくで雷を体験するのは初めてで、話にはきいていたがこれほど激しいとは!爆撃を受けているよう、とはまさにそのとおり。
雷雨も少しずつ収まるとともに徐々に暗くなってくる。3人目は来ない。ラジオをつけ、意味もなく野球中継をBGMに流す。自分の安物ウィスキーを差し出すとミックスナッツのおつまみを提供していただき、同宿者と静かに話す。戸台から入山され、ずっと南下を続け、聖〜茶臼〜下山、の予定とか。よくよく話をきいてみると、「自分の脚で日本海→太平洋」を目指しておられ、下山後引き続き静岡へ下り、本山行にて見事達成の予定、と。うおぉー凄い!どんなところが大変なのか、そもそも何故そのような目標を持ち実行しているのか、達成後は次の大きな目標があるのか、などなどをじっくりきかせていただく。主体的な目標を定めゴールに向かって文字通り一歩一歩進んでいる人の話は面白い(しかもこの方は自己顕示欲が薄いらしく淡々と話されるので余計に印象深い)。酒も時間もあるので、どんなきっかけで山をはじめたのか、普段はどんな山行をしているのか、縦走の知恵(粉末緑茶に感激していただいた。お〜いお茶の粉末緑茶は水にもよく溶けるし風味が物凄く良い。)、などなど、山に関する話をとりとめもなく続ける。単独同士で距離感を保つ意識も大体一致しているようで、お互い必要以上に詮索することもなく他愛のない会話が続き、じゃあそろそろ寝ますか、とヘッデンを消しシュラフにもぐった。
【2013/8/16:6日目】兎岳→聖平
今日は茶臼小屋まで行くという同宿者の早立ちに合わせ起床。兎〜聖間の危険箇所を心配しておられたので、鞍部で左右が切れたところがあるけれど平常心で歩けばまったく問題ないレベル、と伝える。これから登る聖岳が、日本海→太平洋の最後の3000m峰ですね、キツいだろうけど楽しんでくださいね、と握手で送り出す。自分は聖平小屋までなので、ゆっくり準備して出発。雷雨から守り一夜の宿となってくれた兎岳避難小屋、ありがとう。お世話になりました。
避難小屋から登山道へ出ると真正面に朝陽と聖岳。3か月前のGWに撮影した同じアングルの聖岳の画像を職場PCのデスクトップにこっそり(?)貼っており、毎日毎日毎日「ここをこう辿ってここはこんな苦労があってそれでやっと山頂へ至ったよなぁ」と思い出に浸っていて、その画像の夏バージョン!な眺めが眼前にひろがる。さあ、またここを聖岳へ向かって行こう。どんどん標高を落とす。鞍部で右に視線をやると崖にタカネビランジやタカネマツムシソウが風に揺れている。最低鞍部まではあっという間だ。さてここから登り。GWにアイゼンの前爪で必死に登った場所にきた。今は完全に緑が茂り、ここから最大傾斜線で登れるようにはとても見えない。あのとき自分を助けてくれたダケカンバはどれだろう。。。。引き続き登山道を辿る。ラジオラリア盤岩が目につくようになり、周囲にウスユキソウが咲いている。岩稜地帯を抜けると土の登山道になり、やけに掘れている。夏の通過は4年ぶりくらいだが、ここはこんなだっただろうか?多くの人とすれ違うようになる。聖平小屋を出発した人たちだろう。やはり若い人が多い。
今日はちょっぴりしか移動しないので気楽なこともあり、わりとあっけなく聖岳山頂に到着。やはりここも人が多く4〜5名の高年グループの大声世間話がうるさい。クダラナイ俗世間話は下界でやってくれ。山頂標識から少し離れたところで南側の展望を楽しみながら休憩。聖岳山頂はもう6回目だ。何となく自分の山の原点は聖岳という思いがあり、また、6回の登頂の中で強く記憶に残る出来事もいくつかあり、それらを思い出しながら、ああまたここに戻ってきた、戻ってこれた、の気持ちで胸がいっぱいになる。
さあ聖平へ向けて降りよう。聖沢へ落ち込む大斜面のジグ道を降る。ここもザレていて降りは滑りやすいので注意。斜面の半分くらいまで降りたところで、右手からヘリの音が近付いてくる。立ち止まり目を凝らしてみると、便ケ島から薊畑へ至る尾根へヘリが近付き、一旦上空で旋回、再び薊畑直前あたりへピンポイントに近付いていく。捜索ではなさそうだ。ホバリングに入る。けが人でも出たのだろうか?ひとつのかたまりをピックアップし、ヘリは遠山川沿いに飛び去っていった。後で聖平小屋できいた話では、便ケ島から登っていた単独者が昨日の午後にあのあたりで亡くなられ、聖平小屋の方が対応されたそうだ。心筋梗塞だったらしい。
引き続き聖平へ向けて降る。夏道はラクだ。あっという間に標高を落とし、懐かしの聖平小屋へ。ザックを下ろし受付へ向かうと、見覚えのある女性スタッフ。あれっ?でも茶臼小屋じゃなかったけ・・・?お会いしたのは一昨年だったにもかかわらず先方も自分を覚えてくださっていたようで、「あーっ!お久しぶりです」といわれる。一昨年は横窪沢小屋の管理人さんに誕生日祝いをやっていただき、翌日茶臼小屋までご一緒させていただいたので印象に残っていたのかもしれない。「横窪沢にはあれから行かれました?」と訊かれたので、いやここんとこ蝙蝠方面なんで、とこたえると、K村さんきっと寂しがってますよ、行ってあげてくださいよ、と言われる。そうだな〜またあの水音爽やかな「一期一会」の小屋にもまた行きたい。
サービスの美味しいフルーツポンチをいただき、テン場へ。時間もはやく小屋前の一等地を確保。テントを張り終え、小屋でカレーライスをお願いし、ビール&カレーで小屋前の折り畳み椅子に陣取り、フゥーとひといき。落ち着く。そのうち登山客も増えてきたのでテントに戻り、静かに過ごした。
【2013/8/17:7日目】聖平→聖沢登山口→畑薙ダム
朝からすごぶる良い天気。今日は下山するだけなのでノンビリ起床。日程に余裕があるって素晴らしい。あまりゆっくりしすぎて、小屋のシュラフを干す邪魔になってしまった。大変ご迷惑をおかけしました。登山客もほとんどいなくなり、小屋番さん(H田さん)をお見かけしたので声をかけてみる。「去年の11月に大根沢山でお会いした者です」うっすら覚えてくださっていたようで、ああ、あのときの!といわれる。HPの山行記録を参考にさせていただいていること(便ケ島から笠松尾根もHPに載っていたので確信を得た)、聖会のことなどなどお話してみる。計画は順次アップするので興味があればどうぞ!と言っていただき連絡先を教えていただく。今日下山なんです、と言うと、そう・・・実は今日、聖山頂に直接上がる尾根に日帰りで行くからよかったらご一緒にといいたいとこだけど・・・などと話され、後ろ髪をひかれる。「地形図を見ると、あっ、この尾根いけるかも、なんて思うでねー(静岡弁で)」と笑いながらお話されていて、とても楽しいひとときでした。お忙しいのに、どうもありがとうございました。
テントもばっちり乾き、パッキングして出発。最初は気持ちのよい沢沿いをほとんど水平に歩く。左上には聖岳に延びる尾根が迫り、どのへんから取付くんだろう?と観察しながら歩いたが結局木立の向こう側でわからなかった。引き続き、ほとんど標高を変えないまま、時々ガレを巻くアップダウンを交えて進む。やがて聖沢がずっと下を流れ左手の展望がひらけてくると、左手対岸の聖岳東尾根の上のほうに吊り尾根とカール地形のようなものが見える。おお、もしやあれは、東聖?白蓬の頭?うわ〜いいなぁあそこに行きたい。2011で休憩。地形図を眺めていると、ここから南岳へ尾根がのびているように見える。積雪期はもしかしたら行けるんじゃないだろうか?行きたいところが次々あらわれて嬉しい悲鳴だ。2011を過ぎるとここから一気に標高を落としていく。聖沢吊橋を渡りトラバース道を行き、出会所小屋跡。このへんから東尾根に取付くはずだ。フムフムなるほど・・・ここを過ぎる登山口までジグ道を降る。吊橋〜登山口間は、まともに離合もできない登山者が多く本当にまいった。一人分の幅しかない片斜面の登山道ですれ違うことの危険性を想像できないようで、明らかに先方のほうが待機箇所に近いのにズンズン突入してきたり、仕方がないので登山道から一歩外して待っていたら「すみませ〜〜〜〜ん」と急いで離合しながらザックをぶつけてきたり、登山道のど真ん中で立ち止まって「どうぞ」と道を譲った気になっていたり、、、、滑落死させる気か!!!
怒りとともに聖沢登山口到着。バス待ちの列に加わる。自分の前におられた男性に、水場があると教えてもらって行ってみる。あんなところに水場があるなんて!知らかなかった!!ちゃんと樋がかけてある立派な水場。手足と顔を洗ってさっぱりした。やがて冷房のきいたバス到着。いつもそうだが、下山後のバスに乗って動き出す瞬間の、自分は座っているだけなのに景色が流れるこの不思議さ。楽しい8日間だった。今年も楽しい夏休みでした。
おしまい。
ebi0813さん
三伏から荒川前岳まで同じルートを歩いた親子の親です。色々とお話できて楽しかったです。
ebi0813さんの山行記録を拝見しました。三伏の水場への分岐で最初にお会いした時は、山歩きのブームに乗った方なのかなと思いましたが、お話を聞くと二軒小屋から蝙蝠経由と聞きビックリ。更に今回レコを見ると冬山をやられる等経験豊富なアルピニストだったんですね!!(再度ビックリ)
中一の息子は次男で、彼が小二の時に何となく八ヶ岳に登ってから二人で登り始めました。私自身は父が学生時代に登っていたので、小学生時代に『白馬〜不帰〜唐松』等を登りましたが、その後は中学の学校登山以外は、次男と登るまで約30年間は山に足を踏み入れたことはありませんでした。
次男の登山の目的は、頂上から景色を眺めることです。それは初めての八ヶ岳で、ニョキッとそびえる赤岳と背後の南アルプスを見たことから始まっています。今回の山行はどうでもいい荒川前岳までのキツイ登りの時は快晴でしたが、メインイベントの悪沢赤石は霧の中でした。でも次男は悪沢手前で雷鳥に会えたので喜んでいましたよ。
なお、我々親子は決してジェントルではありません。父親はビールを飲む為に登っているような人間で、今回の山行3泊4日で13缶、前後の移動で8缶、合計21缶飲み干しました。次男は行き交う登山者と話すのが好きらしく、椹島からのバスの中でも釣り人と意気投合していました。
今回のルートは父親が広河原〜三伏と聖には登っていたので(次男は一部同行)、南部までつなげたくて父親の勝手で企画しました。もう南アはいいかなと思い、帰路の電車内で『来年は槍ヶ岳とか北アに行く?』と尋ねると『南アが良い』との返事が返ってきました。
ですから、もしebi0813さんが来年もお盆周辺に南ア南部に登られるようでしたら、またお会いできるかもしれませんね。その時はよろしくお願いいします!!
※※※
私のレコですが、昨夏長男と登った鳳凰三山の記録中に、保存しないまま泥酔した結果記録が消えてしまったという、自業自得ではありますが悲しい事故があり、心が折れてしまいそれ以降の山行は登録していませんでしたが、今回のような素晴らしい出会いもありましたので、記憶をたどって記録してきたいと思います。
fgfgさん、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます
まさかあのときの方にWeb上とはいえ再会するとは・・・
無駄に長文な個人日記を見られてしまい、顔から火が出まくってます
お別れした翌朝、赤石に登りながら悪沢のほうを振り返り、徐々にガスが取れていたので、ジェントル親子は無事眺望を楽しめたかな?と思っておりましたが、ガスってましたか・・・・でも雷鳥に会えたのはよかったですね。次男さんも喜んでおられたのは何よりです
以前の山行記録を拝見しました。八ヶ岳登山からはじまるおふたりの山記念日が2009/8/12、それからちょうど4年後に三伏峠でお会いし、小河内岳避難小屋でご一緒させていただいたのですね。おふたりには特別な日だったのかなぁ〜と思うと、なんだか嬉しくなりました。
たしかにビール 登場回数がやたら多いですね
小河内岳避難小屋ではモドキしか残ってなく、荷揚げの手間は同じなんだから本物にすればいいのに!と思いましたが、よくよく考えればあれば管理人ご夫婦の個人用を供出してくださったのかもしれませんよね。自分は結局1本しか飲みませんでしたが、たしか2〜3本飲まれていたような・・・
ぜひ今回の山行も記録に残してください。楽しみにお待ちしております。
自分は南ア南部が大好きで、毎年夏休みの縦走は南ア南部です。来年も絶対に南ア南部です。
次男さんが一年後もまた南アに行きたいと思ってくれて、山で再会できれば、どれほど嬉しいことか。一年後を心待ちにしているとお伝えください
早くぅ~。
今月は二回も南南アへ行ったのに、ちょっとズレてましたね。
昨年の荒川大崩壊地の方がニアミスでしたな
たまには小渋川からどうですか?案内しますよ。
条件:渡渉はズボンを脱いでパンツ一丁
nucchiさんこんにちは。
コメントありがとうございます
ここにきて急激に減速傾向で・・・スミマセン急ぎます
小渋川ルートをはじめとする沢アプローチは近年の最重要課題で、
第一歩を踏み出すべく、本日、沢登講習会に参加してきました
多分、渡渉に対する未経験感は多少払拭されたと思うので、
小渋川のご機嫌を伺いつつ条件が整えばぜひともチャレンジしたいです
条件が整う・・・・条件?パンツ一丁??あれっ
こんにちは、エビさん。
あと半年くらいかかるかと思っていましたけど、意外に早く完結しましたね
これだけの日数歩きまわって連日の好天とは素晴らしい。南ア深南部を愛して止まないエビさんなので、山もその気持ちに応えてくれたのでしょう。
離合の下手糞な人にイラつく気持ちはわかりますね。あれはなんなんでしょうか。アタマが悪いって言うよりも何にも考えてないのかな〜。使うべき時にアタマを使わないってのは結局アタマが悪いってことになるのか…。狭い道で離合のポイントが1箇所しかない時に登り優先もヘッタクレもないってことがどうしてわかんないのか?「すみませ〜〜〜〜ん」の気持ちがあるなら、もうちょっとアタマ使って欲しいですよね
ともかく、雷バリバリから待つこと1年。ようやく大作を読み終えることが出来てすっきりしました。執筆お疲れ様でした
muscatさんコメントありがとうございます。
1年越しの完結を発見してくださって、重ね重ねありがとうございます
今にして思えば1週間カッパ歩荷だなんて、なんという贅沢!って感じですね。
先日の南アでは雨で萎え萎えになってしまったので、余計に晴天の有難みが身に沁みます。
登山にアタマを使って欲しい、いやほんとそうなんですよね
「登山歴○十年」「○百名山完登」「ロングコース日帰りドM」あたりは見た目判りやすいので登山能力の物差しとされがちですが、「アタマ使ってます」てのは見た目判りにくいので見過ごされがちですよね。
でも、普通の人が普通に登山して生きて帰ってくるために、いちばん必要なことなんじゃないかと思うのです。
「このまま突き進んだら離合が難しくなるのでは?」
「急いで通過してザックを人にぶつけたらどうなる?」
「自分がど真ん中に立ちはだかったら相手はどのように通過することになるだろうか?」
といった想像力を働かせること、および、経験や調査を想像力の確度向上に活かすこと、が、山岳遭難の防止になくてはならないことじゃないかと。
中高年登山者の苦言付の駄文にお付き合いいただき、どうもありがとうございました
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する