北鎌尾根
- GPS
- 30:02
- 距離
- 45.4km
- 登り
- 2,704m
- 下り
- 2,691m
コースタイム
- 山行
- 8:08
- 休憩
- 1:08
- 合計
- 9:16
- 山行
- 10:29
- 休憩
- 1:40
- 合計
- 12:09
- 山行
- 6:39
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 7:40
天候 | 初日-晴れ、2日目-雨、霧、3日目-曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
写真
感想
今回の山行については、沢山あってまとまらず、何から書こうかと手が付けられていなかったが、まずはパートナーへのお礼から言わなければならないと思う。この機会がなかったら、まだ行けてはいなかっただろうことは確かだから、本当に感謝しかない。この山行で、具体的には言えないけれど、何か、心構えとか、姿勢とか、意欲とか、考え方とか、そういうものが、私の中で変わったように思う。
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1週前の阿弥陀南陵の経験から、徹底的な軽量化に取り組み、長距離歩くことへの不安をだいぶ無くすことができた。
上高地から水俣乗越への分岐である大曲までは、平坦な長い道をずっと歩く。天気がよく、空青く、景色眩しく、沢水透き通り、空気も美味しい。ここはほんとにいいところだ。
大曲からは、1時間以上の長くてつらい急登。今までとのギャップが凄い。しかし水俣乗越からの激下りは、もっと酷かった。これは慣れてない人は危ない。石と一緒にずり落ちる感じ。せっかく苦労して稼いだ標高は、みるみるなくなっていく。天上沢の長いゴーロ帯下りに辟易しながら、やっと北鎌沢出会についた。北鎌のコルに這い上がる体力は残っておらず、やはりここでビバーク。平らな快適スペースを確保して、明日に備えた。
翌朝、まずは北鎌のコルを目指して、約700mの沢を登らなければならない。1番天気が崩れてほしくない日なのに、途中から雨が降り始めた。北鎌のコルから先も雨足は強くなり、正直不安がよぎった。
雨で体が濡れて震えた。この天気でなにより1番重圧に感じるのが、エスケープルートがないということだ。例えエスケープできたとしても、楽なルートなどひとつもない。ビバークも覚悟した。
しかし終始ガスがちではあったが、午後には雨もやみ、短い時間ではあったが、時折り陽も差した。独標で初めて青空を見て、濡れたウェアが乾いていく。それだけでも大きな違いでとてもありがたく、天が味方してくれたものと思う。
浮石、落石には常に注意しなければならない。神経を最後まで張り続ける必要がある。特に大きな浮石は、重大な被害になりかねないので、細心の注意を払った。
ルーファイは、岩の巻道のトラバースの方が危ないこともあり、直登の方が安全なこともある。しかし登った先がどうなっているかは、登ってみないとわからない。当然テープや目印はひとつもない。常に無理はせず、より安全で確実なルートを判断選択していく。時には戻ることも必要となる。
ガスで槍の姿が直前まで見えないまま、ひたすら慎重と忍耐で進んでゆく。出発してから10時間は経とうとする頃、うっすら見えてきたのが、どうやら槍のようだった。山頂直下はますますどこをどう登るのかわからない。登れそうなところをとにかく上へ上へ。こんな天気では誰もいないだろうと思っていたが、人の話し声が聞こえる。人の姿が見えた。あと少し。。
過去レポでは、涙が出たと書いてあったが、はたして私はどうだろうかと思っていた。拍手で迎えていただいたことがわかった時、不意に涙が出てきた。緊張から解き放たれた安堵感と、達成感の喜びからきたものと思う。
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槍ヶ岳山荘のテン場はやはり満員だったため、仕方なく殺生ヒュッテまで降りた。でも、殺生ヒュッテの受付のお兄さんは、ナイスガイだった。
翌朝は、疲労もあり、風もあって寒く、指先も北鎌尾根でもうヒリヒリ、ヒュッテから登り返すのも萎えて、小槍登攀はあきらめ、無理しないでこのまま下山する事にした。槍ヶ岳は2回目だが(1回目は東鎌尾根から来て大キレットへ)、槍沢を降りるのは初めてで、美しく壮大なカールの中を降りて行くのは、なんだかとても感慨深かった。
「キタカマ」を知ったのは3年前の夏。
まだ一般登山道での山登りの概念しか知らなかった頃。中房から入山し表銀座-東鎌尾根-槍ヶ岳-大キレット‐北穂-涸沢-上高地へ至る縦走中で、水俣乗越でのごく個人的な出来事だったが「キタカマ」は強く印象に残った。
その後「キタカマ」にまつわる情報は自然に興味の対象となり多く目にするようになった。ジャンダルムが一般縦走路の最難関の象徴で、上昇志向の登山者がそこに行くことがある意味一つの目標となるように、バリルートやクライミング、ホンチャンなどを目指し始めるといつしかトライしてみたいと思う1stステップが「キタカマ」なのだと思う。
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下調べをして気づいたのは「キタカマ」の核心は「体力」と「ルーファイ」かということ。ルートをしっかり読める力と基本的な登攀力があればロープはなくとも槍まで行けると思う。
ルーファイについては過去レポ読み漁ると知らず知らず「迷い踏み跡」につられて巻き道などに入り込むとヤバそうなので、直登を基本方針に臨んだ。
岩稜帯の登攀とクライムダウンの繰り返しは疲れるがそれが大きく道迷いしなかった要因だった思う。
体力については毎週のように山に入っていても加齢による不安があるのでとにかく軽量化を徹底した。それでも水、食糧、寝具、防寒衣類入れると全部で12キロは超えてしまったようだ。(小槍登攀のために準備した50mロープ、ハーネス、ガチャ類は仕方ないがなるべく最低限に。テントはツェルトも検討したが、かつて裏銀座で大雨に降られ悲惨な経験をしたのでステラ2は外せない。テントロープガチャ類で5.5キロくらいかな。)
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前夜、沢渡第2駐車場にて車中泊。
初日
平日はバスの始発が6時。できるまで早めに出て、出来たら北鎌のコル迄行けたら、という計画で、釜トンゲートの開く5時を目指し4:40にタクシーを予約していた。4600円也。
5時過ぎにバスターミナルスタート。いい天気のもと北アルプス特有の景色を楽しみながら大曲りまでハイキング。
その後が本日の核心で、水俣乗越迄の急登と天上沢の荒れた激下りとゴーロ帯を沢下降。沢歩きや岩稜帯歩きに慣れてないとかなり疲れる作業となるだろう。400m登って600m下った。天上沢の下降に予想以上に時間がかかってしまったが、北鎌沢出合に着いたのは14時過ぎ。
時間的にはコル迄目指せる余裕はあったが9時間行動と天上沢の下降でEuropaがかなり疲れてる様子なので元々の計画通り今日はここまでとする。ビバーグ地は過去レポでも読んでいたが水も豊富だし平日なので着いたときは誰もおらず平らな場所も選び放題で快適そのもの。その晩はたっぷり休んだ。
二日目
5時スタート。
天気はドンヨリ芳しくない。しばらくすると雨が本格的に降り始めた。
北鎌沢は600mの急登かつその日水量多く沢水に濡れるようなことはなかったが(雨には濡れたが)まさに沢登りのような様相。ところどころ水が枯れるがコルの直前でもジャバジャバ水が出ていた。先週のレポにもそれが書いてあったのでギリギリまで補給をせず無駄に重量増にならずに済んだ。
コルからはなるべく稜線をひたすら歩く登る下るを繰り返す。天気は一向に回復せず酷く濡れ体の芯から寒い。休むと体が冷え低体温症になるのを恐れ体力を長く維持できる程度に休まずゆっくり動き続けることにした。景色も真っ白で何も楽しみは無い中、寒さと長時間の行動でどんどん体力が奪われる。
このあたりが身体が最も辛かったかな。
ようやく独標の取付きの目印であるハイマツを超えた左側の灌木を発見。何度も記録で見た景色。ようやく目当ての場所の一つに着いてホッとしたのか?これを登れば独標だ!と思い少し元気になった。安全のためEuropaを確保するロープを出し数メートルほどリード。
独標頂上でお湯を沸かして飲むことにした。その時お天道様が20分ほどだったが照って一気に気温が上がり衣服がどんどん乾いていく。あらためて太陽は生命にとって偉大だと軽く感動〜。
そのあとも雨こそ降らないがずっとガスガスの白い景色の中長い長い修行の旅。
岩稜帯を登ったり下りたりガレた斜面を少し巻いてみたりルートをはずさないように慎重に。
目的地の槍が見えない行軍は辛い。うっすらと穂先のようなものが見えるがそれが槍なのか?距離感もよくわからない。
やっとカニのはさみが見える槍の取付きについた。そこからもルートがよくわからないが方向と壁の弱点の目星をつけ右に行ったり左に行ったり登る。
こんな天気だから誰も山頂にはいないだろねと思っていたが人の声が聞こえたきた。
山頂の祠の真裏から登攀し顔をのぞかせると10名ほどの登山者に拍手で出迎えて貰った。。。気持ちのテンションが緩み。。溢れた。。。
槍ヶ岳山荘のテンバは予想通り満席。
ダラダラと殺生ヒュッテまで降りテンバ予約。一人2000円。
小屋番のお兄さんに明日の天気を聞くと翌朝1度まで下がるかも?とか。。
その時点でも十分寒く、靴の中は靴下が絞れるほどにグジュグジュに濡れたまま。
日和って小屋の素泊まりに変更してもらった。一人9000円。空いててよかった。
ストーブあるし乾燥室あるし、小屋って快適笑笑。
3日目は小槍登攀の予定だったが、殺生ヒュッテから40分登って小槍取付きまで30分
往復2時間以上かかること、気温が低く風も強い、これじゃあ岩が冷たくて登れないかもということ、何より前日の「やり切った感」と疲れとでモチベーションが上がらなかったいうのが正直な理由。次いつやれるか分からないので少し心残りではあったが。
上高地までゆっくり景色を楽しみ、横尾でカレーライス、徳沢でコーヒーソフト、道草しながら下山した。惜しむらく嘉門次小屋の岩魚定食は50分待ちとのことで諦めた。
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会に入って沢登りの世界に触れハマり、安全のスキル手段として読図、フリー、ロープワーク、マルチピッチなど多くのことを習い自分のできる範囲で練習と経験を重ねてきたことの多くが今回「キタカマ」で活きたと感じる。
今年の目標としては「赤木沢」「北鎌尾根」「ホンチャンデビュー」を「自分の力」で行くということを置いたが、「赤木沢」は計画したが天候で断念、「ホンチャン」は準備とスキルがまだまだという中、
「キタカマ」はどうしても達成したいという願いが叶い嬉しい。
天候悪く苦しい山行に同行のEurepaには、三つ峠のトレからも何回も付き合ってくれて感謝しかない。
おわり------------------------------
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