爺ヶ岳・鹿島槍 稜線漫歩(扇沢⇒大谷原)
- GPS
- 13:00
- 距離
- 21.0km
- 登り
- 2,038m
- 下り
- 2,373m
コースタイム
- 山行
- 5:06
- 休憩
- 1:16
- 合計
- 6:22
- 山行
- 6:22
- 休憩
- 1:38
- 合計
- 8:00
天候 | 11日:晴れ時々曇り 12日:晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
□復路:大谷原へタクシー呼び出し |
コース状況/ 危険箇所等 |
扇沢から鹿島槍(南峰)の道は整備良好。結構な登りではありますが、技術がいるところはなく、体力さえあれば大丈夫。 冷乗越から大谷原への道は一方的な急坂の連続。乗越からしばらく不安定なガレ場を鎖の助けで下る区間は緊張します。高千穂平の下はひたすら樹林帯の急降下です。 |
写真
感想
秋雨だ、台風の影響だ、とすっきりしない空が続く中、奇跡的に晴れ予報の週末に3年ぶりの北アルプスを歩くことができた。現実は「天気晴朗なれど雲多し」で遠い山々の見通しは今一つだったが、ぜいたくを言ってはいけない。
【11日】
共同風呂の排水管が詰まるという、想像外のばっちいトラブルに見舞われた大町駅前の宿を6時に出てバスで扇沢へ。7時前からアルペンルートの電気バスに乗る人たちが作る列をしり目に、柏原新道登山口へ車道を下る。同行者が三々五々狭い歩道を歩いている。
地図から谷合いを登るイメージを抱いていたが、実際はすぐジグザグに標高を稼いで尾根近くを辿る道だった。整備良好で歩きやすいが、思ったより暑い。扇沢で1400mの標高があるのに、朝のひんやり感を覚えなかった。
しばらく行くと扇沢ターミナルが見下ろせた。その上にそびえるのは針ノ木岳だろう。ケルン手前で見えた向こうの斜面に雪渓が残る。このまま越年するのだろうか。今回、鹿島槍北峰から見下ろすカクネ里雪渓改めカクネ里氷河が目的の一つだが、外見上はこうした越年雪渓と変わらないようだ。
水平岬の石畳と呼ばれる区間を過ぎ、だいぶ傾斜の緩くなった道を歩いて富士見坂でちょっとしたガレ場を通る。ほどなく森林限界を出て空が広くなると、種池山荘が見えた。登山口から3時間余、石畳からちょうど1時間だった。
「ピザ祭り開催中」の惹き句につられてピザを注文。1枚1300円。暖かい日向のベンチで昼食とした。焼き上がりを待つ間、西の雲が晴れて遠くカール地形の山稜がのぞいた。立山と思うが自信がなく、良いカメラを構えていた若い男性に尋ねたが不明。さればと、ピザを渡してくれた山荘の兄ちゃんに聞いたが、こちらも「分からなくて」と頭をかくばかり。それはダメでしょう。
腹いっぱいになって、端正な三角錐の爺ヶ岳南峰を目指す。うわさに聞いた通り高原漫歩のような快適なトレイルが続く。ただ、風もなくて若干暑い。雷雨でも来なければいいがと心配になるくらいだ。空は晴れているのだが、ガスが湧いては消えて今一つすっきりせず、黒部峡谷越しに荒々しい山容を見せる剱岳も、頭が一部隠れている。
一汗かいて南峰を越え、意外とこじんまりした中峰へ。北峰は山頂西をトラバースするように道が付いていた。今日は日曜日なので、登る人より帰りを急ぐ人とすれ違うケースが多い。13時過ぎには明日の下山路分岐である冷乗越に着いた。Alps165ことDr.エモンが「今から下れば我々も帰れるな」とのたまう。「脚がもてばね」と当方。脚が丈夫だとしても、やはり山中で一泊して山の朝を迎えたいのが本音だ。
最後の登り返しで顎を出しそうになりながら、その山中一泊の冷池山荘に到着。山小屋は2020年夏の八ヶ岳以来で、コロナ対応のアコモデーションに興味がわく。通された8号室のロフトは、梯子の両側に2人分ずつゆったり布団が敷いてあり、足側にはリュックを載せる広々とした台もあった。部屋の1階は同じく山小屋基準ではゆったりした幅を取り、左右をカーテンで1人ずつ仕切れるようになっている。
下駄箱とスリッパには番号が振ってあり、他人のものとはき違える恐れはない。居室内は飲食禁止。食堂も「黙食」で、山荘で購入したものを含めて酒類の持ち込み禁止というのは驚いた。お酒は1階ロビーか2階談話室で飲むしかない。枕カバーと掛布団の襟カバーは使い捨ての不織布製。壁の張り紙では「インナーシュラフ持参」を呼び掛けていたが、予約時にそうした求めはなかった。
感染対策に一生懸命な姿は好感が持てるし、言う通り良い子にしていたが、8号室の隣にある談話室の会話は大いに盛り上がっていた。複数グループが混在するから、感染者がいたらおそらく一同アウトだろう。といって、山に来て談笑するななどと言えるわけもなく、難しいところだ。
”山岳眠り病”のDr.は、そんなことはお構いなしに山荘到着の午後2時前から5時の食事まで眠り、6時過ぎには再び寝入ってしまった。朝5時の食事5分前に起こすまで、トイレ以外ひたすら寝続ける姿はもはや特技と言うレベルだと感じる。
【12日】
朝食を終え、遅れてきたDr.を食堂に置いて外の様子を見てみる。冷え込みは弱く、手袋なしでいられる程度だが、上空は雲一つない。一段上の広場に出ると、昨日は雲間に隠れていた鹿島槍がくっきりと明けの空を背にそそり立っていた。足下に目を転じれば見事な雲海。とりあえずスマホに収めて、カメラを取りに戻った。Dr.に教えようとしたが、どこに行ったのか姿が見えない。
仕方なく一人で広場に戻ってカメラを構える。ほどなく東の雲から太陽が顔を出した。素晴らしい日の出だ。雲海の白い輝きが一段と増したのを見届けて居室へ。Dr.にどこにいたのかと問うと、西側のサンテラスで立山連峰の夜明けを見ていたとのこと。山体はモルゲンロートに照り映えたが、頂上部は雲に隠れていたそうだ。
天気はもちそうなので、リュックをデポして水筒とカメラだけ提げて鹿島槍へ向かう。同じ考えの人が前後して上がっていく。右に切れ落ちるガレ場に注意して樹林帯を抜け出ると、左に立山連峰のパノラマが広がった。ただし、頭は雲に隠れている。代わりに後ろの針ノ木、蓮華に至る山稜は全身がよく見えていた。
ちらちら見ながらジグザグの歩きやすい登山道を通って布引山。あいにく行く手の鹿島槍は雲の中だった。残念だが北峰からのカクネ里氷河俯瞰も絶望的だ。南峰山頂が視界不良だったらそこで折り返すことにして出発。40分後、どっぷりガスに包まれた鹿島槍ヶ岳南峰に到着した。
がっかりして石に腰を下ろしていると、微風がガスを揺らして一瞬この先の岩稜を見せてくれた。北峰に向かう登山者が険しい岩場を下りていくのが見え、鞍部の先は再び荒々しく持ち上がる稜線が右上へ伸びている。あの向こうにカクネ里氷河があると思うと口惜しいが、できれば早めに下山したい気持ちもあり、あきらめて踵を返した。
下り始めた途端、ガスが飛ばされて南峰山頂が姿を見せた。背後の白い空もみるみる青くなるが、気付いたのは既に50m以上下った後。見なかったことにして下山を続けた。氷河なら劔岳の小窓、三ノ窓の両氷河が終始右によく見えている。ただ、全般に雲は増加傾向で、針ノ木岳を始めとする南側の山稜はもう雲の中。北西の富山県側に雲が少なく、長野側からガスが湧いている印象だ。
出発から3時間で山荘に帰着。大谷原へタクシーを呼んでもらい、リュックを背負って再出発した。爺ヶ岳は見えるが、後ろの鹿島槍は完全に雲の中に隠れている。冷乗越まで登り返して赤岩尾根へ。急坂は高千穂平の先だと高を括っていたら、すぐに鎖のあるガレ場に突入してしまった。ガスで視界は利かず、行き合う登山者もいない。足を滑らせないよう気を付けて進み、安定した岩の鎖場が現れると妙に安心した。
普通の尾根道らしくなって、ほどなく高千穂平。ここで弁当にした。絶景ポイントらしいが、雲の下に出たので下界は見えるものの山はガスの向こう。ただ、北側に雄大な雪渓が見えた。この季節に下は標高1500m辺りまで伸びている。確かに氷河が残れるほどの条件がこの一帯の山々にはあるのだろう。
高千穂平からの山道は、傾斜は強いが樹林帯のため崖から転落する恐怖とは無縁で、特段の技術はいらない。その代わり脚力だけは必要だ。この尾根で唯一行き会った男性2人の登山者を抜いて間もなく、標高1600m付近でDr.の足に異変が起きた。膝に力が入らず、ちょくちょく現れる急な階段を踏む足元がおぼつかない。速度を落としてだましだまし下り、やっと急坂が終わった所で大休止とした。
抜いた2人を先に通し、15分座って栄養食品を食べたDr.に出発を促すと、突然「治った」と言って普通に歩き出した。様子を見ていると、短い急坂などでは躊躇するものの、膝が抜けるような兆しはない。シャリバテだったのだろうか。
ほどなく堰堤をトンネルで潜り、林道の西俣出合に到着。林道歩きではこちらがDr.に置いて行かれそうになった。標高1000mを超すのに蒸し暑く、ちっとも汗がひかない。クーラーの効いたタクシー車内が極楽に思えた。車の行先は大町温泉郷薬師の湯。早く汗を流したい。
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