【北アこれ以上ない白い稜線】黒部五郎岳・薬師岳・北ノ俣岳東面滑走


- GPS
- 23:01
- 距離
- 42.2km
- 登り
- 3,359m
- 下り
- 3,344m
コースタイム
- 山行
- 7:40
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 8:40
天候 | 4/30 曇りのち晴れ 5/1 晴れのち曇り、夕方から猛吹雪 5/2 曇りのち晴れ、風強し 5/3 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
スキー靴での歩行がとても厳しく靴擦れもあったので入ればよかった。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
残雪少なく、1800m以下ではスキーを担ぐ必要があった。 1800m以上でも、寺地山の前後、北ノ俣山頂直下では夏道を歩く必要があり、スキーを担いだ。 |
その他周辺情報 | 割石温泉400円。登山口からは28キロもあったが、同じ飛騨市内。 市民向けの簡素な施設だが、お湯は良かった。鉱山の採掘中に偶然掘り当てた温泉らしい。源泉は38度なので、少し沸かしている。 |
写真
この後、まさかの雪になり写真なし。テントに戻った時にはホワイトアウト。1時間もしたら猛吹雪になりました。この時期の登山は全く油断ならない。
感想
◆4/30(日) 和佐府〜飛越トンネル〜寺地山〜北ノ俣避難小屋△
曇りのち晴れ
朝の4:30に小田原の自宅を出発し、10:30に和佐府の車止めに到着。幸い、昨夜から激しく降り続いていた雨は10時過ぎに完全に上がった。飛越トンネルまで車で行けるかと思ったが、車止めの看板があるのでここから歩くことにする(看板を動かせば問題なく入れた。自己責任だが)。スキー靴での歩行は厳しく、林道6キロを2時間弱かかってようやくトンネルに到着。腹ごしらえしてから登山にかかる。
今年は融雪がとても速くしばらくスキーを担がねばならなかった。あまりの荷物の重さに遅々として進まない。1800mほどでようやく雪がつながってきたのでシール走行に切り替え。しかし急峻な寺地山では夏道が完全に出ており、またもや担がねばならなかった。
息も絶え絶えで避難小屋に到着したのは日没とほぼ同じ18:30だった。幸い、2人パーティが小屋に泊まっているだけ。大急ぎで飯の支度をした。2人パーティは静岡から来た方だった。このあと2日間も同じ行程を歩くことになり、色々お話をして楽しかった。
ーーー
◆5/1(月) 北ノ俣避難小屋〜神岡分岐〜黒部五郎岳〜神岡分岐△
晴れのち雪、夕方から猛吹雪
昨日の体のダメージが酷いので少し遅めに出発。稜線まで2時間耐えれば荷物をデポ出来るのだが、その2時間がつらく、当然ながら荷が重すぎて2時間半以上かかって稜線に出た。おまけに途中でパッキングを変えたらアイゼンをしまい忘れたらしく、あとで調べたら無くなっていた(もう15年も使った壊れかけで、すでに新調したので惜しくはない。古いのを持って行って本当に幸運だった)。稜線ではスキーだし、クトーもあるので登山靴のアイゼンは無くとも行けるだろう。
稜線の神岡分岐のすぐそばにテントを張ってから黒部五郎に向かう。稜線は真っ白だ。北アルプスで白馬岳以北を除けば、これほどスキーがフィットする稜線はほかにないだろう。初めてこの時期に訪れたが、こんな天国のような場所だったとは全く驚いた。赤木岳や2578ピークはサクッと巻いてあっという間に黒部五郎本峰の登り。ここだけは夏道が露出しているので仕方なく担ぐが、頂上はすぐであった。
お楽しみの滑走は山頂からスキーを履いて滑った。夏道の右側の北北西壁。真っ白だが部分的にアイスバーンなので、万が一転んだら止まらないだろう。大きく斜滑降を繰り返し安全第一で下った。最低鞍部まで来たら雲行きが怪しくなってきて雪がちらついてきた。
朝はあんなにいい天気だったのに、大きく崩れそうな気配になってきた。休憩もそこそこでもくもくとシールで登る。急がなきゃと思うが、残念ながら北ノ俣岳本峰の登りでガスに覆われ、ホワイトアウトになった。風も強まり不安の中テントまで20分。トレースをたどれたからよかったものの、危ないところだった。テントをあらかじめ張っておいて本当に良かった。
テントに戻って1時間ほどすると猛吹雪になった。その後朝まで荒れに荒れた。これほど悪化する予報ではなかったので本当に驚いた。山の天気は全く油断ならない。夕方以降だったからよかったものの、日中にこうなっていたら遭難者多数になっていたかもしれない。
ーーー
◆5/2(火) 神岡分岐〜薬師岳〜神岡分岐△
曇りのち晴れ、烈風
朝起きたときはまだ吹雪で視界も無かった。でも時折上空に青空が広がるので、天気は回復するだろうと踏んで予定通り起きて食事をした。6時前になると晴れてきたので出発することにした。北ノ俣から太郎平まではまるで巨大なスキー場でしかも木もほとんどないのでどこでも滑り放題。こんな場所は北アルプスでもほかにないのではなかろうか。おまけに今日はパウダーたっぷり。ウハウハ状態で薬師峠に到着した。
薬師峠からはシール走行だが、烈風が吹いており斜度も急なのでクトーを付けて最新の注意で登った。薬師平で静岡パーティに追いつかれた。太郎平小屋に泊まっていたので、てっきりお先を行っているのかと思ったが、あまりの強風で出発を後らせたそうだ。彼らは足が速く、そのままぐんぐん登って行ってしまう。薬師岳山荘を過ぎると風がワンランク強まった。正直スキーだと限界に近いが、アイゼンもないのでスキーとクトーで頑張るしかない。2850mのケルンのすぐ下で、ここが限界とスキーを置いて先に進んだ。登山道は部分的に凍ってつるつるだが、幸い地形は安全になるので、ゆっくり進んで山頂に到着した。
薬師岳に登ったのは2000年の夏に1回だけ。23年ぶりに同じ場所に立った。当時は祠があり中に薬師如来像が飾られていたが、跡形もなくなっていた。山頂標識だけの実にシンプルな山頂。23年前には腹ばいになってカールを覗き込んだが、今は雪庇がいつ崩れるかわからないのでそんなこともできない。あまりに寒いので5分もたたずに山頂を辞した。
2850mからの滑走。何度か「えいっ」と出発しようとしたが、すぐ左は本谷である。風に飛ばされて本谷に入ったら命がどうなるかわからない。迷いに迷って、20mほど担いで下って、少し広くなった稜線から滑走開始した。恐ろしくガリガリのアイスバーンだったが、滑りだしてしまうと恐怖感も薄れ、完全にスキーをコントロール下に置けた。途中からは余裕も出てきたので、あえて本谷に入って滑ってみる。本谷内の雪は飛ばされておらず、最高の雪質だった。稜線に戻れなくなったら嫌なのでわずか5ターンぐらいで打ち切ったが満喫した。
薬師峠手前で静岡パーティに追いつき、少し話をした。追いつかれるかもとは思っていたが、本当に追いついたので驚いたと話していた。健脚な彼らはこのあと下山してしまうのだ。私より一日短いのに同じ行程をこなすのは全く恐れ入る。
その後、無事にテントに戻ったが、この日はぴったり6時間の行動だった。半日仕事である。荷物が無ければやはりスキーは速いと我ながら感心であった。この日はとにかく風が強く、気温も一日中氷点下だったので、午後もテントでウダウダすごした。緊張から解放されたリラックスした時間がこの山行ようやく初めて訪れた。
ーーー
◆5/3(水) 神岡分岐〜飛越トンネル〜(途中車に拾われる)〜和佐府[下山]
晴れ
最終日、夜明け前にあれほど強かった風がピタリと収まった。今日は下山するだけだが、これほどの好条件を放置して下山するのはどう考えてもありえない。昨夕に明日条件が良かったら北ノ俣岳の東面を滑ってみようと決めていた。眼下に見える薬師沢の左沢は完全に雪に埋もれており、そのまま滑って渡れる。渡ったらそのまま北東尾根をダラダラ登れば1時間くらいで帰れるだろう。
北ノ俣岳山頂まで登り、そのまま東面に滑り込む。上部がガリガリだったが下の方はまだパウダーだった。ひよって真東に進んだが、北東の一番斜度の大きいラインに進めばもっと良かっただろう、下部では気持ちよくて思わず吠えてターンした。最後は左沢を滑って横断し、そのまま惰性で登って滑走終了。自分のシュプールを振り返るも至福だった。
悪条件2泊に耐えたテントを畳み、満足して稜線を去った。少しだけスキーを担いで夏道を下り、アイゼンを紛失したと思われる一帯を探したが見つけられなかった。あきらめてそのままスキーを履き、避難小屋まで滑走。水を補給してからまたスキーを担ぐ。寺地山までは樹木が多く、斜面も荒れているので滑走しても時間がかかるだけだと判断した。寺地山の下りから1800mくらいまではなんとか滑走できたが、2か所ほどヤブを越えるために担いだ。
無事にトンネルまで下り、荷物をデポ(車で入れることが分かったので、あとで取りに来ることにした)。あと1キロで和佐府の車止めというところで岐阜ナンバーの車がとまり「車に乗ってください。いまそこにこ〜んなおおきな熊がいました」という。ありがたく乗せていただいた。実は自分が気づかずに熊に遭遇したかもしれないのはこれで2回目である。1回目は山梨の奈良田で、このときも車が急に止まり「あんた、今そこに熊いたんだけど大丈夫だったかい?」と聞かれて驚いたのだった。
私は熊を見ていないが、熊は私を見ている。品定めをしているのだろうか。私は美味しくなさそうなのだろうか…それならそれでラッキーだ。
何はともあれ、この難しい計画を無事終えた。高山に宿を取れず、頑張って下呂温泉まで運転したが、下呂の民宿の湯は最高だった。日本三名泉のうたい文句に大いに頷いた。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する