雪はどこへ?表銀座 燕〜上高地縦走
- GPS
- 52:27
- 距離
- 37.6km
- 登り
- 3,033m
- 下り
- 2,990m
コースタイム
- 山行
- 5:19
- 休憩
- 1:46
- 合計
- 7:05
- 山行
- 7:38
- 休憩
- 0:32
- 合計
- 8:10
- 山行
- 9:57
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 10:57
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス 自家用車
今回の山行は表銀座を上高地まで通しで歩く目的が有ったため、松本電鉄を利用して穂高駅まで戻ったが、蝶ヶ岳から三股登山口に下りた方が、穂高駅まで戻るのに時間がかからない。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
5月目前のこの時期に雪はほぼ消えてしまっていた。 燕岳の登山道の合戦尾根の樹林帯、常念岳と蝶槍の間の鞍部樹林帯、蝶ヶ岳から上高地への長塀尾根の樹林帯に雪が残るのみで、縦走路の尾根上は夏道に成っている。 朝方は氷点下まで冷え込むため、樹林帯の残雪歩きは午前中にこなしてしまうと良いだろう。 気温が上がって雪が腐り始めると、踏み抜きが多く成りかなり厳しい状況に成ると思われる。 燕岳西の蛙岩近くで雪渓を歩く短い区間が有ったが、一歩一歩股まで潜る踏み抜きに体力を奪われた。 テント泊装備の重荷なら余計に疲労が増すと思われる。 喜作新道の大天井岳への直登の冬道にも雪は無し、何のためにピッケルを持って来たのか自分を疑いたくなった。 縦走路上の小屋は、大天井ヒュッテを除いてすべて営業中です。 |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
昨年の同時期に計画していた残雪期の表銀座縦走、それもGW直前の踏み跡の少ない時を狙っての物だったが、大人の都合により中止。
一年の時を経てついに計画の遂行される時が来た。
テント設営のための、それも雪の上でのテント設営を想定して、スコップまでザックに括りつけての山行だった。
ただ、他の方のレコで「雪が少ない」とは見たような気がしないでもなかった。
燕岳への合戦尾根もかなり上の「ベンチ」まで雪は無かった。
合戦小屋あたりは雪は有るものの多くは無いし、4月の下旬にしては気温が高すぎる。
アンダーレイヤー、ミドルレイヤーと重ね着をしてきた事が悔やまれるような暑さだ。
今回3度目に成る燕岳は、サンドメノショウジキでやっとの快晴、しかも平日で人は少なく、心行くまで楽しむ事が出来た。
燕山荘でキャンプを張る予定で居たが、時間に余裕があるので大天井のヒュッテまで行くことにした、しかしこれがいけなかった。
大天井ヒュッテは開業前なので、燕山荘で給水を行った。
3リットルで十分だったが、あいにく2リットルのペットボトルでしか売っていない。
2リットルでは足りないので、2リットルを2本も購入し自前の容器に移し替えザックに収めた。
この後に残雪の踏み抜き地獄が待ってる事なんて知らないから、少ないよりは多めの方が良いでしょうと言う貧乏人根性だった。
蛙岩を超えて順調に、すこぶる機嫌よく稜線歩きを楽しんでいたら、緑のロープが登山道をふさぎ、左手に見える残雪の上に行きなさいと案内している。
直後に股まで潜る腐った雪との戦いが始まった。
戦いじゃないな、これは最初から完全に負け試合だった。
一歩一歩股まで潜り、20kgに4リットルの水をプラスした重さの荷物は、容赦なく私の足から力を奪った、それはいとも簡単な事だった。
踏み抜き地獄が終わって座り込んでしまった、何時まで経っても息が荒いままでおさまらない。
午前中にあれだけ汗をかいて、もう出る汗は無くなったと思っていたが、同じくらいに汗が噴き出た。
この先に「大下り」の急登の下り坂が見えている、かなり下った先の鞍部は隠れて見えない。
このきつい状態でこの坂を降りたら、あの向こうに見えるギザギザの稜線までは辿り着けないだろう。
疲労による行動不能だけは避けないければならない。
今夜の泊地はここにしよう、稜線上で風の影響が気に成るが、幸い今夜は風が強まる事はなさそうだ。
疲れ切った私は、頭痛と吐き気を覚えながらも晩飯を掻きこみ、知らぬ間に眠ってしまった。
月明かりがまぶしい夜だった。
「ザッザッザ」という足音で目が覚めあたりを伺うと、テントの生地越しにヘッデンの明かりが揺れている。
こんな夜中に誰が歩いていると言うんだ?、気に成って時計を見ると午後9時11分だった。
その足音は「すいません・・・燕山荘はどちらに有りますか?」と言う。
しかもその足音は燕山荘の方から来たにも関わらずだ。
アカン・・・ついに逝っちまったよ・・・おれ。
絶対あの世に居るに違いない、だって目の前にいる足音の主は70代の老人で何時の物だか分からないウッドのシャフトのピッケル持ってるし、年期に入った革の重登山靴履いてる。
コートのような上着を羽織っては居るが、背負ってザックはやけに小さく頼りない。
んんんん・・・??革の登山靴?足が有るじゃないか!
私「どこへ行きたいんですって?」
老人「燕山荘へ行きたいんです」
私「いまあなたは燕山荘から歩いて来たんじゃないですか?」
老人「明かりが消えていてどこに有るのか分からないんです」
私「いまあなたが来た方に・・・40分ほど歩いた先が燕山荘です」
老人「はぁ・・・」
私「どちらから来たんですか?」
老人「一の沢から上がって、常念小屋に§¶ΠΨ・・大天井を・・」
途中がうまく聞き取れなかったが、登山口の名前や小屋の名前は合っている。
この地点でこの老人は完全に遭難している状態と思われるが、のらりくらりとしながらも、遭難の通報はしたくないらしい。
燕山荘まで行くと言う。
この後ずいぶん長い時間あの老人が気に成って眠れなかった、いや「あの世」の不安が付きまとい、スマホの電源入れてみたり、安曇野の明かりがこの世の物だろうと再確認したりと大変だった。
目が覚めると陽が昇る直前だった。
テントから顔を出して外を眺めると、槍が岳が朝日に染まってほんのりと紅く成り始めた、私にとってこの時間は至福の時だ。
今山行のメインイベント的な存在だった「大天井岳」への雪渓の直登、しかも急な。
が、それが無い。
昨日から見えているその斜面に雪が全くないのは分かっていたが、改めて現場まで来てみると、全くの岩稜の夏道と同じ登山道にがっかりした。
でも、燕から大天井までの初めての稜線歩きは、少し山に慣れた私にも新鮮で楽しいものに成った。
残りは、常念岳を超えて蝶ヶ岳に挨拶をし、観光客で込み合う上高地へ予定通り下りよう。
まったく雪が無かった事から、三泊四日の予定が二泊三日に成ってしまったが、2日目の夜の初めに少しだけ雨降った以外は、この上ないほどの好日に恵まれた。
おまけにGW前の静寂の中、一人の時間を多く過ごせて本当に幸せで楽しい時間を過ごせた。
ああ・・楽しかった。
いやいや、本当は何度「もう山登りなんか辞めよう」と思った事か。
あの雪渓の踏み抜き地獄と、何度も吐き戻すと思いながらも登り切った常念岳の北稜。
こうしてレコを書いていると、「次はどこへ行こうか?」と自問しているから笑ってしまう。
こんにちは。
一足早い北アからの帰還報告ご苦労さまです。
やっぱり雪少ないみたいですね。踏み抜きはハイマツですか?
2年前のGWで常念なんかは半ばラッセルしながらだった記憶があるのですが……。
遭難していた老人の話、怖いですね〜。その後どうなったんでしょう。
ヘッデン付けてるし動けているのだから大丈夫でしょうけれど、燕山荘見落とすってやばいですね。午後9時に灯りが無いっていうのもおかしな話のようで……。
若者が相手なら非常識だって喝入れる所ですが老人じゃ不気味ですね。
何処か別の時代から迷い込んできた登山者でしょうか。
ご無沙汰してます。
いやぁ〜、本当にちがう次元か世界にトリップ=私逝っちゃった?って思いました。
怒ろうにも、稜線で勝手にビバークしている弱みの有る私、何も言えません。
踏み抜き現場は稜線脇の這い松の上の残雪で、気温の高い午後で雪が腐ってたので当たり前のように踏み抜きました。
日当たりの悪いしらびそなんかの樹林帯はまだまだ大丈夫な歩きが出来ました。
kaakaka さんのGW山行が楽しいもので有りますように!!
アカン・・今夜もうなされそう・・・
graveltrekさん、お疲れ様でした
踏み抜き地獄でしたか...レコを読ませて頂いているだけで、自分までも辛くなってきましたよ
>本当は何度「もう山登りなんか辞めよう」と思った事か。
大いに共感です、でも下山したら「次どこに行こうかなぁ」ってなりますよね
気になるご老人ですが、ビバーク地点で過去に○○した方だったりして...。
SHIBAWANさん、有難う御座います。
今回は3泊4日の予定で、10食程の食糧を担ぎました。
その食料の重さは尋常では有りませんね、米は5合有りましたし、おかずはフリーズドライとは言え、大きめのスタッフバックを一個米とおかずで独占され、重量も結構な物に成りました。
私がこれを書き込んでいる頃、SHIBAWANさんは涸沢に向かってる事でしょう。
山行報告楽しみにしてます。
graveltrek
連れてかれなくて良かったです。
ザックの片隅に老人の白髪とかなかったですか?(笑)
たまにブレてる写真は彼の仕業でしょうか?
cyo-sukeさん書き込み有難う御座います。
>たまにブレてる写真は彼の仕業でしょうか?
きっと妖怪の仕業です。
>連れてかれなくて良かったです。
本当に気味が悪かったんですよ、日頃の行いが悪いので「お迎え」が来ても不思議では無いとは自覚して居ます。
雪が消えて来て、縦走の山行が楽しみな季節に成ってきました、今年こそはcyo-sukeさんとご一緒したいですね。
あれ?雪が消えると同時に・・・・裸族復活ですか・・・まさか・・???
ワハハ
ネタに事欠かない山行をなさって居られますなぁ、アニキ。
しかし表銀座とはウラヤマシイ( ´∀`)お天気にも恵まれたようで、さすが持ってるオトコはちがいますねー。
次は例のアレですかな?(^o^)
いやぁ〜〜、マイナーな山歩きを心がけてる私ですよ!!
おっと、コメント有難う御座います、osamu310さん。
>次は例のアレですかな?(^o^)
あれ?なんやったっけ?あれって?・・・痴ほう症に認知症が合併されて、忘れちゃった
北鎌尾根には行く気まんまんのgraveltrekでした。
北アもそうだったのですね。中央アルプスも去年の夏より暑いんじゃね?というくらい連日暑かったです。おかげで今顔が日焼けでヒリヒリします。
踏み抜き地獄、まさにそうですね。異常に体力を消耗しますよね、踏み抜き。
来年もまたこの時期に山行いくなら、もうちょっと気温低めがいいかな?極寒は嫌だけど。
takechin49 さん書き込み有難うございます。
あの4月の菜種梅雨に降った長雨が雪を溶かしちゃったのでしょうか?
残雪を期待した者には、少しだけ残念な稜線歩きを強いたこの春の山でした。
takechin49 さんのレコを読ませた頂きましたら、心から楽しんで居られるのが手に取る様に分かりました、私もtakechin49 さんを見習って、楽しむ山行を心がけて行きたいと思います、有難う御座いました。
graveltrek
今年はほんとに雪が減ってしまったGWですよね。
4/26に爺ヶ岳へ行ったときに鹿島槍までの稜線も夏道でした。
私はもう少し雪の北アを見たかったため涸沢へ行ったんですよ。
しかしこういうお爺さん遭難するかもという意味でも怖いです。会いたくないw
踏み抜き地獄は例年の東大天井岳下部もすごいですが体力奪われてしまい泣きたくなりますよね。ロングコースお疲れさまでした。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する