日光白根山
- GPS
- 32:00
- 距離
- 10.6km
- 登り
- 1,405m
- 下り
- 1,389m
コースタイム
日光湯元スキー場9:20〜10:30リフト終点 10:45〜外山分岐12:40〜前白根山14:40〜五色沼避難小屋15:50
【4月9日(日)】
避難小屋6:25〜7:50奥白根山7:53〜8:25避難小屋9:10〜前白根山10:10〜外山分岐11:25〜リフト終点12:03〜湯元スキー場12:35
天候 | 【4月8日(土)天候:雪/強風) 【4月9日(日)天候:ガス/強風】 |
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過去天気図(気象庁) | 2006年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
大宮6:10〜8:40日光湯元スキー場 【4月9日(日)】 湯元スキー場12:35(温泉)大宮17:10 |
コース状況/ 危険箇所等 |
この時期は避難小屋が埋っているのでスコップがあると非常にベター。 |
写真
感想
大宮駅で横山と合流し、大成の車で途中、松下さんを乗せ、今回のメンバー4人が揃った。岩槻インターから高速で宇都宮に出て日光宇都宮道路に入り、終点清滝で降りた。荘厳な佇まいの歴史のまちを経て、静寂な奥日光、湯元スキー場に到着。
早速、準備に取り掛かる。大成から、装備品のスノーシュー、ハーネス、ストック、それに全員に「ビーコン」が渡された。初めての装着のため、操作方法のレクチャーを受ける。これがあれば憂いなし!雪崩にあっても大丈夫??? 横山、大成はスキー板も持ち、完全冬山装備はかなり重荷になった。出発の頃は小雪がちらちら。午後に低気圧通過の予報が出ているため、早目の行動が望まれる。クローズのスキー場を登り始める。リフト終点で一本とり、アイゼンを装着。多少のトレースがある樹林帯の急登を松下さんがトップで進む。徐々にペースが上がると温まるのも早い。積雪も次第に多くなり、足元が沈む。外山の分岐で、スキー組を待つがなかなか来ない。じっとしていると手足が凍りそうだ。冷えるのも早い。指先の屈伸、足踏みをする。二人はスキー板が木々に阻まれ難儀したそうだ。天狗平に出るともろに強風を受け、寒いというより痛い。時折、よろめきそうになる。こうなると、大成から借りたスキーストックが転倒防止、バランスの確保に威力を発揮した。トレースは瞬く間にかき消された。松下さんは要所々に赤布ならぬショッキングピンクのテープを根気よく付けながら、地図とコンパスで何度もルートの確認を続けた。その行動は強風と極寒の中、仙人のようにさえ見えた。
前白根のピークでは、物凄い強風に吹き飛ばされそうになる。耐風姿勢を何度もとりながら、安全のため後ろ向きに下りて何とか脱出した。さすがに五色沼避難小屋が見えた時は安堵した。
雪に埋もれた小屋の窓からやっと中に入ると、先着の青年二人がすでに寛いでいた。横山らは到着するとスコップで雪かきをして出入り口を整えた。横山はフリースの手袋1枚のみだったため、指先が凍傷になりそうで心配した。早速、ガスを出して暖めた。凍てついた身体も酒で暖めるしかない。定番の熱々のすき焼きが出来上がると、青年二人にも振舞った。つまみと会話のやりとりで盛り上がり、やっとひと心地ついた。明朝の山頂アタックは合同で行動することに決定し就寝。小屋に毛布(湿気っぽい)がたくさんあったので、使えるだけ使い、完全武装で寝袋に潜り込んだ。眠れないほどの寒さはなかったが、ビーコンも抱いたまま温めてしまった。外は相変わらず風が吹き荒れていた。
翌朝もまだ曇り空で昨夜の新雪が膝くらいのラッセルに拍車をかけ、楽しませてくれる。6人アタック隊は縦列を組み、松下さんの号令のもとにトップを交代しながら、赤布を目指し進む。先頭はやはり気持ちがいい・・・などと思った瞬間落とし穴に、胸くらいまで沈む。「くわばら、くわばら」予測がつかない岩の空洞だった。かなり急登になり、次第にごつごつした岩肌が露出してきた。この付近は地形が複雑怪奇でわかりにくい。強風は衰えないし、吹きさらしの山頂は長居を許さない。期待した眺望もなく、シャッター押すだけになり早々に下山と思いきや、松下さんは前方の山に登る意欲を見せた。(やはり仙人か?)が皆に却下された。下ると決まると早い。かけ足状態で急降下する。雪崩の危険を避けるため跳んで樹林帯の分岐に戻ってきた。
このころになると、徐々に晴れてきたようだ。分岐で4人を待ち小屋に戻る。
青年二人は先に出発した。我々も下山の準備をして小屋をあとにする。風は依然として激しい。前白根の登りは突風に押し戻されそうになるが、一歩一歩慎重に凌いで対抗した。そんな風など何処吹く風?とばかりに松下さんは足早に突っ走る。姿が消えた。やっぱり仙人だ!!突風吹き荒れる稜線はスリルと恐怖に充分すぎるくらい満ちていた。思わずケルンの陰に座り込んだ。すると、山の神はちょっとだけ微笑んだ。太陽が顔を出し、白根山、男体山、女峰、太郎、日光連山が現われた。しかし、楽しむ余裕はまだない。風を遮る地点までとにかく進んだ。
大成は久々の冬山の重荷に苦戦しているようであった。外山の分岐まで来るとやっと楽になった。樹林帯に入るとスキー場を目指して駆け下りた。リフト終点からはいよいよゲレンデだ。山麓は風もなく青空がひろがり、穏やかな春の陽光に暑くさえ感じた。正しく「天と地」の違いである。横山、大成は担ぎ上げたスキーをこれまで使うチャンスがなく、此処からやっとつかの間の滑降を楽しんだ。私たちはシリセードを試みるが上手く滑らなかった。スノーシューも大成がせっかく準備したので、履き替えて試してみた。「ルンルン!!」と最後だけ春山気分を楽しんで登山口に無事戻ってきた。
因みにスノーシューは3次元の世界に飛び出すための道具。冬山専用に作られたのではなく、どちらかというと森といった面を散策するために使いやすく出来ている。雪原歩きには最高のアイテムで、いろいろな可能性が無限に広がるようだ。
下山後は日光開山の祖、勝道上人が1200年以上前に発見したといわれる温泉に浸り、冷えた一杯。これだけは止められないようだ。
今回は残雪の春山とは程遠く、まさに冬山であり、風との闘いであった。大自然は予測不可能な世界何が起こるかわからない。
当に「晴れれば天国、降れば地獄」一番怖いのは風、決断を誤ると体力を消耗し生死にかかわる。山を熟知したベテランの松下さんと行動を共にできたことは、とても貴重な体験であった。現在地の把握。続図。ルートハンティング、など多くの課題をつきつけられた。冬山は頭脳戦であり、場合によっては戦闘になるかもしれない。出来れば探検力、冒険力も持って行きたい。整備された登山道を上り下りするだけの点と線のアプローチを繰り返しているだけではなく、松下さんのように、3次元の世界(面、縦、横、斜、)を自由に歩ければより深く山を理解できるだろう。
帰宅すると、ニュースで雪山遭難が相次いで発生したと報じていた。この時期、気象の変化が激しく雪崩が頻発したようだ。美しい雪山は常に危険と隣り合わせであることを常に認識しなければならない。
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