鋸岳ー甲斐駒ケ岳縦走(釜無川〜北沢峠)
- GPS
- 28:15
- 距離
- 28.5km
- 登り
- 2,941m
- 下り
- 1,846m
コースタイム
2日目:横岳峠(4:10)-三角点ピーク(5:45-5:55)-鋸岳第一高点(6:30-6:40)-鹿ノ窓(7:00)-第二高点(7:50-7:55)-中ノ川乗越(8:10)-六合目小屋(9:20-9:40)-甲斐駒ケ岳(10:40-10:55)-駒津峰(11:25)-双児山(11:55-12:00)-北沢峠(12:55)
天候 | 1日目:晴れ後曇り一時雨 2日目:快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2011年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:北沢峠〜広河原(南アルプス市営バス) 広河原〜甲府(山梨交通バス) |
コース状況/ 危険箇所等 |
鋸岳第一高点〜第二高点の間は、小ギャップ、鹿ノ窓、大ギャップなどがあり、危険です。 この区間を通過する場合は、事前にルートを把握しておいた方が良いです。 私は、下記のサイトなどを参考にしました。(核心部のイラストなどあります) http://www.geocities.jp/fdbph414/CCP045.html |
予約できる山小屋 |
北沢峠 こもれび山荘
|
感想
台風の影響で不通となっていた甲府〜広河原、広河原〜北沢峠のバスが復旧している。復旧まで、もうしばらくかかると思っていただけに嬉しい。
1週間程の休みの間に鳳凰三山に登る計画だったので、早速、それを実行しようと思ったが、もう一つ、登ってみたい山がある。危険な山で知られる鋸岳だ。
鋸岳は7月末に行く予定だったのだが、天候が悪くて延期していた。
少し迷った結果、鋸岳に行くことにした。
■ 計画
鋸岳を登るルートとしては、いくつかある。
・戸台から入って、角兵衛沢のガレ場を登り詰めるルート
・釜無川の林道から横岳峠経由で登るルート
・北沢峠や黒戸尾根から入って甲斐駒ヶ岳から縦走するルート
一番危険の無いのは、釜無川の林道から取り付いて、第一高点まで行き、そこから同じルートを引き返す方法だろう。これであれば、危険箇所を通らないので、普通の山を登るのと、あまり変わらない危険度で歩ける。
しかし、私は、縦走するのが好きなので、なんとか甲斐駒ケ岳と一緒に登りたいと思い、今回のルートを歩くことにした。
この2座を縦走する場合、六合目小屋に一泊して、甲斐駒ケ岳からの鋸岳に向かうことが多いようだが、私は逆のルートで行くことにした。
北沢峠から登る場合、その日の朝に家を出ると、北沢峠着が12:40になり、そこから六合目小屋まで、時間にゆとりを持って移動するのが大変そうだったのと、横岳峠で独りで泊まってみたかったためだ。
釜無川の林道を通るのは、少し厄介だ。この林道は、ゲートから先が立入禁止になっている。
道路やダムなどの工事のため、工事関係者以外は入れなくなっていて、歩行者すら立入は禁止されている。ただ、ヤマレコの記録を見ると、このルートから入っている記録がいくつも見つかる。どうやって通ったのかと思って確認すると、皆さん、日曜日に通過しているようだ。
平日は通行が止められるが、日曜は誰もいないので、ゲートから先に歩いて入れるらしい(もちろん日曜でも、車は入れない)。
ゲートまで車で来るのが普通だと思うが、私は車を持っていないし、電車、バスだけ使うようにしているので、ゲートまで行く方法を考えなければいけない。手頃なバスも見つからないので、最寄駅の富士見駅から歩くことにした。ゲートまでは8kmほど。そこから林道が9kmほど続いている。
鋸岳〜甲斐駒ケ岳を縦走するのに、心配なのは、やはり第一高点〜第二高点までの危険箇所の通過だ。私は、上記のサイトやヤマレコの記録を見て、第一高点〜第二高点の通過方法を確認した。
あと、落石が心配だったので、ホームセンターで防災用のヘルメット(980円)を買って、それを持って行くことにした。
■ 1日目
中央線の電車は、相変わらず登山者で溢れていた。大月を過ぎた辺りから、次々と下りて行き、小淵沢では、ほとんど登山者は残っていない。小淵沢の2つ先の駅、富士見駅で下車する。
駅前には誰もおらず、田舎の駅前の雰囲気だ。地形図を確認して、歩き出す。
民家を縫うように裏道を進んで行く。田舎を歩くと、家はあるのに人が見当たらないことが多いが、今日も同じだ。車も通らず、とてものどかでいい。
すぐ近くに見える八ヶ岳を眺めながら歩いて行くと、釜無川沿いの道に出た。釜無川は、思ったより水量が多く、先の徒渉が少し心配になる。
川沿いを歩いていくと、ようやくゲートに到着した。確かに、歩行者も通行できないと書かれているが、ゲートには誰もいないので、横から入らせてもらう。
ゲート前には、登山者か釣りの人のものと思われる車が4台ほど停まっていた。
ここからは、川沿いに延々と林道を歩いて行く。途中、いろんなところで工事が行われている。山の壁面が、どんどん崩れてきているので、それをコンクリートで固める工事や、ダムや堰堤を作る工事だ。看板に工事期間が書かれているが、確認できたので一番長い工事は、平成24年の年末までの工事だったので、最低でもそれまでは、この林道が立入可能になることは無さそうだ。
工事予定を見ると、工事は月〜土曜で行われているようで、やはり、この道を通るなら日曜が良さそうだ。
道路歩きが、あまり苦にならない私でも、いい加減、林道歩きに飽きてきた。16kg程の荷物も重く感じられる。やっと悪沢出合に到着するが、まだ1.5kmほど林道が続く。ダムが次々と現れる中を進むと、ようやく岩小屋に到着。小屋の所にテントが2張ほど張られているのが見えた。
ここで、下山してきた単独の登山者と出会う。昨日、岩小屋の所にテントを張って、今日は、第一高点までを往復してきたという。道の状態は悪くなく、第二高点から来る登山者にも会ったと聞いて、少し安心する。
ここから沢道に入る。心配していた徒渉部分は、水量も多くなく、靴を濡らさずに渡れた。沢沿いの道は、赤ペンキのマークが、3〜5m間隔くらいで付けられていて、道迷いの心配は全くない。
しばらく登って行くと、富士川水源への分岐に到着。富士川水源への案内があるので、それに従って進むと、すぐに水場に着いた。冷たい水をおいしく頂く。
ここで、3.5ℓほどの水を補給して、再び、横岳峠に向かって登って行くと、4人程の登山者のグループが下りてきた。この方達も、先ほどの方と同じ行程とのこと。ということは、皆さん、土曜日にあのゲートを通ったということか。案外、チェックは厳しくないのかもしれない。
ここから雨が降り出した。雨具を着けて進む。富士川水源から横岳峠の道は、踏み跡が薄く、尾根ではない斜面を登って行くので、道が分かり辛い。木がびっしりと生えているため、道を間違えると大変だろう。赤テープを確認しながら進む。
横岳峠に着いたときは、かなりの大降りになっていた。予想通り、誰もテントを張っている人はいない。テント適地と聞いていたが、思ったより狭い。無理なく張れるのは、3、4張りくらいだろうか。
一番平らな場所を確保した。雨が激しく降る中、テントを張るのは辛い。誰にも見られることも無いだろうから、適当にテントを張って中に逃げ込んだ。
雨は、2、3時間ほど降ってから止んだ。明日、岩場が濡れていたら嫌だなと思いながら、夕食を取って、早々に就寝。
夜中に目覚めて、空を見上げると、満月と満天の星が見えた。辺りは何の音もしない。やはり独りでテントを張って泊まるのは楽しい。
■ 2日目
3時に起床。4時過ぎにテントを撤収して、真っ暗な中、歩き出した。
樹林帯の中の道は、よく踏まれていて、ヘッドライトの灯りだけでも道が分からなくなることはない。広い尾根をどんどん登って行くと、途中、展望が開けるところがあり、仙丈ヶ岳の美しいシルエットが見えた。仙丈小屋の灯りと、頂上に向かって進む登山者のヘッドライトの灯りが見える。
三角点ピークの手前の岩の上からの眺めもよい。三角点は、少し北に進んだ樹林帯に埋もれていた。
ここから、シャクナゲやハイマツ帯を通って、アップダウンを繰り返すと、角兵衛沢ノ頭に到着する。何の道標もない。角兵衛沢のガレ場は、非常に急斜面に見える。このルートを降りて行くのは、少し怖い気がする。
ここから100mほど登ると、第一高点に着いた。ここまで、特に危険な所はなかった。
天気はとてもよく、中央アルプス、北アルプスまでも眺められる。八ヶ岳、甲斐駒、北岳、間ノ岳もよく見える。
しかし、念願の鋸岳山頂に着くも、この先の行程が心配で、景色を楽しむゆとりがない。すぐ先に、第三高点と第二高点が見えるが、まさに鋸岳と言われるだけあって、険しい山容だ。
ここで、ザックからヘルメットを出してかぶる。
尾根に沿って、70mほど高度を下げて行くと、小ギャップが見えた。確かに、尾根が断ち切れている。先に小ギャップの登り返しの長い鎖が見える。まずは、5mほどの垂直に近い壁をクサリを頼りに降りる。ここは、クサリ無しでは降りられないだろう。
その先は、15mほどの長いクサリ場を登り返す。この箇所が、心配だったのだが、実際に目の前にしてみると、傾斜がキツくない。15mの間、クサリから手を離すことができないくらいの斜面を想像していたのだが、全然そんなことはなく、途中、足だけで立てる箇所も何カ所かあり、鎖無しで登れそうなホールドもある。結局、5mほどの区間だけ鎖に頼って登った。
一度、ナイフエッジを乗り越して、山梨側に出ると、そこに細いトラバース道があるので、そこを進むと鹿ノ窓と呼ばれる、岩に穴が空いた所に着いた。このトラバースは、木々も生えているので滑落の心配はなさそうだ。
鹿ノ窓では、長野側から、とても涼しい風が吹き上げて来た。ここから、長いクサリでガレ場を下る。下に人がいると危ないと思い、下に向かって声をかけた。何の応答もないことを確認してから下って行く。
ここはガレているため、落石を起こさずに下るのは難しい。慎重に降りて行くが、傾斜は、それほど急ではないので、それほど腕の力に頼らずに降りて行ける。鎖で20mほど下ると、傾斜がなだらかになるところがあり、そこから第一高点側に一度戻る向きに進み、灌木帯の踏み跡に入る。ここにはピンクテープがある。
少し灌木帯を巻くようにして、再び鹿ノ窓下のガレ場に戻ってくるようにテープが付けられている。ここで、私は、すぐにガレ場を横切ってしまったのだが、それがまずかった。
踏み跡に従って細いバンドを進むが、谷側は絶壁になっていて、とても怖い。先ほどまで、特に怖い所は無かったが、大ギャップの急なガレ場を目にして、急に恐ろしくなってきた。
踏み跡はあるのだが、なんだか心もとない。非常に狭い道で、谷側に落ちたら、確実に助からない絶壁なだけに気が抜けない。道が怪しいので、ザックを置いて、空身で進んでみる。岩壁に張り付くように進むが、斜面に生える灌木に押し出されそうだ。大ギャップのガレの手前まで行ったが、非常に急斜面で恐ろしい。ガレを横切った先にピンクテープが見える。
空身でなら行けそうに見えたが、大きなザックを背負って渡る自信がない。あの急なガレを渡るときに、足の下の石が崩れたら、そのまま崖下まで落っこちそうだ。
本当にこれが正しい道なのかと疑心暗鬼に陥る。大ギャップのガレを覗き込むが、他に渡れそうなところが見えない。
ザックの所まで戻って、どうするか考える。しかし、こんな危険な道が正規のルートとは思えず、もっと下に別の道があるのだろうと、空身のまま、鹿ノ窓の下のガレまで戻って下を確認すると、かなり下にピンクテープを発見した。岩にも赤ペンキで下への矢印がある。
ザックを回収して、鹿ノ窓の下のガレに戻り、しばらくガレに沿って下り、ピンクテープの所まで降りた。そこからガレを横切り、トラバースバンドを進んだ。ここも怖いが、さっきよりはずっとましだ。
問題の大ギャップのガレを横切る所に来ると、赤ペンキで印があり、確かに渡れそうだ。慎重に横切ると、安全な灌木帯に入った。ここからは、踏み跡がしっかりしていて、テープに従って登っていけばよい。
ようやく危険地帯を抜け出して、ほっとしていると、第二高点から降りてくる2人の男性に出会った。昨日、六合目小屋に泊まって、縦走しているらしい。これからの道程の情報をお互いに伝え合う。ここから先、甲斐駒ケ岳までは、「(危険な所は)何もないですよ」とのことで、安心する。
第二高点に辿り着き、ようやく落ち着いた。道間違いが無ければ、案外楽だったのかもしれないが、かなり肝を冷やした。今日は天気が良く、見通しが利いたから良かったものの、もし、ガスが濃くて、ピンクテープが見えなかったら、あの危険な道を進んでいたかもしれない。
第二高点→第一高点に向かう場合は、おそらく紛らわしい所はないと思われるが、第一→第二に向かう場合は、道迷いに気をつけた方がよいと思う。鹿ノ窓の鎖の終端から、更に30mほど下ってからガレ場を横切らないといけない。
第二高点から中ノ川乗越までは、急なガレ場を下って行く。複数の場合は、落石にかなり気を使って下る必要がありそうだ。
中ノ川乗越から、三ツ頭までは、稜線に沿って、アップダウンを繰り返して行く。昭文社の登山地図では、この区間、巻き道を進むようになっているが、そのような道は見つけられなかった。六合目小屋までは、樹林帯を進んで行く。
六合目小屋は、岩場に埋もれるように建てられている。中に入ると、ヒンヤリと涼しく、しばらく休憩させてもらった。中は、とてもきれいで、ここで泊まれば快適な夜が過ごせそうだ。
ここから甲斐駒山頂までは、六方石から甲斐駒ヶ岳の直登コースのような岩場が続く。途中、雷鳥の親子に遭遇。甲斐駒で雷鳥を見たのは初めてだ。
甲斐駒ヶ岳に着くと、登山者で賑わっていた。
ここでようやくゆっくりと眺めを楽しむことができた。仙丈ヶ岳は、本当に美しい姿をしている。北岳の逞しい山容も何度見ても飽きない。まだ未踏の鳳凰三山も立派で、登高欲が湧いてくる。
甲斐駒ケ岳は、今回で3回目だ。1回目は北沢峠から、2回目は黒戸尾根から、3回目は鋸岳から登ったことになる。お気に入りの山だが、他に登りたい山も沢山あるので、しばらく登ることは無いだろう。
すばらしい景色を忘れないよう、しっかりと目に焼き付けてから、北沢峠に向かった。
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