白馬三山縦走
- GPS
- 56:00
- 距離
- 21.9km
- 登り
- 2,444m
- 下り
- 2,434m
天候 | 晴れ/晴れ/雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2011年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
今回は数ある北アルプスの名峰の中から白馬岳に登ることにしました。
白馬岳には国内の高山植物500種のおよそ半分の250種が生息しているということで最近「お花」にはまっているツートンにも喜んでもらえるんじゃないかなということでチョイスしました。
登山口である猿倉荘前に着いたのが午前5時。
あたりはすっかり明るくなっていました。
駐車場の件や装備品の確認に手間取った事もあり到着から1時間半が経過。
大丈夫なのか?こんなんで(^^;
出発早々ツートンがさっそく何かを見つけました。
どうやらウメガサソウという花のようです。
さっそく初めて見る花を見つけてツートンのテンションが上がります。
始めは林道歩きの単調な道です。
正直面白いとは言い難いのですが、重装備に体を慣らすウォーミングアップの時間だと思えば、このダラダラした登りがありがたいような気すらします。
道は徐々に登山道らしくなっていき、背景の山々も「アルプスらしく」なってきました。こういう風景は東北ではなかなか見られませんからね〜。
遠路はるばるやってきたという実感が湧きます。
1時間ほどかけて白馬尻までやってきました。
有名すぎるほど有名な「ようこそ大雪渓へ!」の碑が出迎えてくれました。
映像や本の写真などで見慣れた石碑ですが、やはり実物を前にすると感慨深いものがあります。
白馬尻では多くの登山者が大雪渓に備えて装備を調えていました。
ジャケットを羽織る人、スパッツを付ける人、行動食や水分を補給する人と様々です。我々もそれに習って装備を調え…る前に記念写真を(笑
ここまではまだ普通の観光客も気軽に入ってくるのでのんびりしたものです。
白馬尻から大雪渓へ取り付くまでは5分程度かかります。
その間にもツートンはキヌガサソウを発見して大喜び。
とにかく花があるとテンションが上がります。
しかしここから先、お花はしばらくおあずけとなります。
いよいよ大雪渓に足を踏み入れます。
軽アイゼンをしっかり装備して大雪渓に第一歩を踏み出しました。
アイゼン装備したのっていつ以来かな〜?
大雪渓はとにかく「落石が多い」「ガスがかかると迷う」などと色々なメディアに脅し文句がならんでいるので、少々緊張します。
ただ、本日はご覧の通り視界もだいたいクリア。ずら〜っと続く登山者の列。
少なくとも道迷いの心配は無さそうです。
あとは落石ですが、やはり人の目が多いと言うことは早期発見が期待できます。
荷物が重いのでゆっくり行こう、後ろから来る人には追い越してもらおうと言って出発しましたが案外隊列のスピードは遅く、後続を引き離し前の人の尻にくっつくような格好になってきます。
どうやら北国育ちのヘロヘロ隊、大雪渓上の涼しい風に吹かれて調子が上がってしまった様子(笑
あと、やっぱり雪の上を歩き慣れているというのがありますかね。
枝沢の三合雪渓あたりまでは隊列にくっついて歩いていたツートンですがスイッチが入ってしまったようです(笑
追い抜きにかかりました。
ツートンは雪の上の登りにめっぽう強いのです。
さすがに私は追い抜きできるほどペースを上げることはできませんでしたが、ときおり写真を撮る以外は立ち止まることなく歩き続けることができました。
雪渓上では立ち止まらないようにとの注意書きがあったような気がしますが長い登りに疲れて立ち止まる人も多く、結果20人〜30人くらい追い抜いた気がします。
雪渓から立ち上る靄に包まれながら続く登山者の列。
なんか幻想的であります。
雪渓も上部になってくると幅が狭まり、左右の崖が近くなってきます。
杓子岳側の雪渓の端には大きなクレバスができていて恐ろしげです。
しかし、実はこのクレバスが斜面からの落石を飲み込んでくれるのでクレバスが無い場所に比べると雪渓上の落石も少ないようです。
一気に登り切り、雪渓上部へ到着。
この付近では多くの登山者が休憩していました…が、実はこの地点はまだ落石多発地帯。本当はもっと上の葱平よりも上が安全地帯となります。
まぁ、でもここで休みたくなる気持ちもわかりますよね。
我々もアイゼンを外した途端気が抜けて、しばらく動きたくなかったですから。
大雪渓最上部のすぐ横を見ると雪渓の表面を覆い隠すほどの量の瓦礫が堆積しています。極短期間の間に、これだけの落石があるわけですから安全なわけがありません。
実際この日も絶えず落石の音が聞こえ、そのたびに緊張が走りました。
でも、実はここで落石の音がどんなモノなのか覚えたおかげで後々助かる事になるのですが…それはまた別のお話。
で、先ほどの大雪渓最上部から少し登った場所にある葱平。
白馬尻からここまで120分で来ました。
手元のガイドブックによると標準コースタイムは150分となっているようなので、これはなかなか良いペースではないでしょうか。
調子がいいなぁと思っていたのは錯覚ではなかったようです。
ガイドブックなどにもよく登場する地名ですので、なにか特徴的なものがあるのかと思いきや簡単な標識が一枚あるのみ…(^^;
たぶん、ここに何か立派なモノ作っても雪崩でやられてしまうんでしょうけど、これはちょっと予想外でした。
ここに来て、ようやく自分たちが歩いてきた道をゆっくりと眺めることができました。…うーん、まだまだ続々と登ってきますな〜。すごい人数だ。
雪渓からの靄も届かなくなり、青空がぐっと近くなりました。
左側に見えているのは杓子岳の北斜面で、いかにも絶賛大崩壊中な感じ。
石が落ちてくるうちはまだ良い方で、いつあのとんがったところがぼきっと逝っても不思議がない気がします…。
葱平から先は通常の登山道になりますが傾斜がきつく、登山道の路肩も崩壊しやすい場所があるちょっとした難所です。
見た目はお花畑もあり穏やかそうな場所なんですが、ね。
私は背中の重い荷物と雪渓が終わり急に上がった気温にやられ死にそうな思いをしていたのですがツートンは次々に現れるお花達に心奪われ、あっちでパシャリ、こっちでパシャリ元気に飛び回ります。すげーな…ツートン
雪渓をバックに咲き乱れるミヤマキンポウゲ、ハクサンフウロ、ミヤマカラマツ、ミヤマクワガタ、テガタチドリ、クルマユリ、ハクサンイチゲ、ヒメクワガタ、シナノキンバイ、イワカガミ、アオノツガザクラ…とにかく次から次へ、色々な種類の花が現れます。
もちろんツートンのテンションもヒートアップ!(笑
たくさんの花があって嬉しいけど撮るのが大変! でも撮らないと後悔する!
初めて見る花がたくさんあって嬉しい! でも名前がわからなくて悔しい!
なんか色々大変そうです(^^;
ここに来てあきらかに歩くペースがダウンしてきました。
大雪渓上ではあんなに快調だったのに…。
やはり暑さと荷物の重さが体に堪えているのか…と思いましたが、それよりもなによりも、よく考えたら夕べ1時間くらいしか寝てないんですよね(^^;
これでペースが上がるはずがありません。
悲しいことに大雪渓上で追い抜いた登山者に抜き返されはじめました(^^;
それでも一歩一歩進めば少しずつ空が近くなってきます。
崩壊が進む杓子岳北斜面は複雑な地形になっており、見る場所によってまったく姿が変わります。
ここから見る杓子岳はまるで小さな槍ヶ岳のようです。
ようやく小雪渓までやってきました。
トラバースしていく登山者が見えます。
下から見ると雪渓の斜度がだいぶきついように見えます。
滑落に気を付けないと…。
道標と滑落に対する注意を促す看板があります。
この大岩の下でアイゼンを再度装着。
小雪渓横断に備えます。
この日は大勢の登山者が歩いた後ということもあり(もちろんパトロールの人たちの日頃の整備のおかげでもあります)しっかりしたステップが切られており、結果としてアイゼン無しでも行けたかな〜というくらい。
わりとあっさりと横断することができました。
小雪渓を横断し終えると緊急時避難小屋があります。
ここの避難小屋はかつて雪崩れで崩壊したのですが、再建されたようですね。
ここでグリーンパトロールの人とすれ違いました。
なんだか石川遼を思わせる爽やかな好青年でした。
きっと山のお姉さま達に大人気に違いない(笑
それはいいとして、その彼から花の開花情報を教えてもらい、さらに昨日の山頂付近の混雑具合を教えてもらいました。
それによると昨日は山頂宿舎だけで1000人の宿泊がありテン場には260張りのテントが張られたんだそうな。
うーん、なんか修羅場というか殺伐とした雰囲気が想像できるなぁ…(^^;
まさかこれから上に行ってもテント張る場所無いわけじゃないよね?と恐る恐る聞いてみましたが昨日泊まった人達はほとんど捌けたので、今ならまだ大丈夫ですよとの事。でも後から登ってくる人数を見ると最終的にどれくらい混むかはわかりませんねぇ…とも。
初テント泊でいきなり大混雑の殺伐キャンプとか嫌だぞ…。
避難小屋を過ぎると少し傾斜が緩くなり、岩と緑と花に彩られた空中庭園が姿を現します。ここは氷河公園とも呼ばれている場所で、大規模なお花畑があり登山者を楽しませています。
…が、私は完全にばてて、花どころではありませんでした(^^;
たまに休む口実づくりのための写真撮影するのが精一杯(笑
ウルップソウ発見!
その不思議な響きの名前に惹かれ、見てみたいと思っていた花に出会えました。
見たいと思っていたモノに絶妙のタイミングで出会えると嬉しいですね。
ようやく白馬頂上宿舎が見えてきました。
でもまだ遠いんだな、これが。
ここらあたりのお花畑は冬の厳しい季節風から守られ、大量の残雪が水を供給するので標高の割に背の高い高山植物が分布しているのが特徴なのだそうな。
葱平から120分。
ようやく…ようやくテン場のある頂上宿舎にたどり着きました。
きつかった…。こんなにキツイと思ったのは去年の和賀岳以来の事です。
やっぱ寝不足なのに大雪渓上で張り切りすぎたのが敗因だなぁ…。
ちゃんと全体の体力配分考えて登らないとなぁ。反省。
頂上宿舎の真下にある水場で冷たい水を飲み、顔を洗ってようやく人心地。
景色を眺める余裕ができました。
明日歩く縦走路、杓子岳、白馬鑓ヶ岳を眺めます。
とりあえず、早く重い荷物を降ろしたいのでテン場の申し込みをしてテントの設営にとりかかります。
昨日の大混雑の話を聞いていたので恐れおののきながらテン場へ行ったのですが…
今のところほとんどテントは設営されておらず「ご自由にどうぞ」状態。
トイレから近すぎず遠すぎず、水はけの良さそうな平らな場所にテントを張ることができました。
テント設営中からツートンまでもが「ちょっとクラクラする」などと言い始めました。これはいよいよ二人ともエネルギー切れのようです。
テントの中に重いモノは全て放り込み、空身に近い状態で山頂を目指します。
まずはテン場から稜線にあがり、縦走路と大雪渓方面、祖母谷温泉方面との十字路に立ちます。
ふと足元を見るとウルップソウがにょきにょき生えてました。
人間勝手なもので、こんなににょきにょき生えていると珍しくなくなってきます。
最初の一つを見つけたときはあんなに感動したのに…(^^;
白馬山荘の脇を通過すると山頂はもうすぐそこ。
目と鼻の先です。
さっきまでガスに隠れていた山頂が姿を現しました!
山頂付近にもたくさんの花が咲いています。
イワギキョウ、タカネウスユキソウ、タカネウスユキソウ(ピンク)、ホソバツメクサ…。
いや〜、すごいですね。
花の量といい種類といい、まさに「花の名山」
私なんかお腹がいっぱいになってきましたよ(笑
そしてようやく山頂に到着! 猿倉から7時間かかりました…。
テント設営の時間も入っているとはいえかかりすぎです。
後半にバテたのが響きましたな〜。
せっかくの山頂ですがガスガスでなんにも見えません。
とりあえず記念写真を撮りますが、さすがにこのまま帰るのは無念すぎます。
しばらく山頂付近に留まり、ガスが晴れるのを待ちます。
突然、一人の登山者に話しかけられました。
「蝉が付いてますよ」
一瞬、何の事だかわからず「はぁ?」と間抜けな返答をしてしまいましたが本当に付いてました。
ヒグラシだということだったんですが、標高3000mで蝉と出会うとは思いませんでした。
「たくさんいる登山者の中から選ばれたんだね」
と言われましたが、それって喜ぶべきことなんだろうか?(^^;
なんか良いことあるかなぁ。
ガスが晴れるのを待つ間に昼食を摂ります。
本日の昼食はベーグルとチーズ、本当はこれにスープを付ける予定だったのですが
暑くてスープという感じでもなかったのでキャンセル。
30分ほど待つとすこーしガスが切れ、限定的ではありますが眺望が得られました。
山頂東側はずっぱりと切れ落ちており、足がすくむような高度感があります。
なんか乳頭山の山頂をスケールアップしたような感じです。
北東北の山屋さんには分かって頂けるかと(笑
今回は行きませんでしたが栂池方面への縦走路も一瞬だけ見ることができました。
あちらはあちらで良さそうなコースなので行ってみたいモノです。
ガスの切れ間からではありますが、山頂からの眺望も楽しむことができたところでテン場に帰ることにします。
下りですらペースが上がりません。二人とも相当やられています…。
フラフラになりながらもなんとかテン場まで戻ってきました。
おっと、テントが増えてきましたね〜。
いったいどこまで増えるのか、楽しみでもあり少々怖くもあり…。
テントに入ると疲れのためか寝入ってしまったのですが、テントを叩く雨の音と、遠くの雷鳴で目が覚めました。
2時間くらいは寝ていたようですが、寝ている間に急激に天候が崩れたようです。
最初はポツポツくらいだった雨は、どんどん強くなりやがて土砂降りに…。
テントの前室の前を水が流れていくのをなすすべ無く見守ります。
雷の音も近くなってきたように感じます。
テント泊初心者はどうすればいいのか分かりません。緊張が走ります。
周りのテントの動向をうかがおうと耳を澄ましますが、たたきつける雨の音でよくわかりません。
遅れて到着した人が慌ててテントを張るべくペグを打ち付る音や浸水してしまったテントもあるらしく、怨嗟の怒声が聞こえてきます。
幸いな事に雨は次第に止み、雷も遠ざかって行きました。
落雷、突風、浸水…とりあえず最悪の事態は回避できたようです。
雨が止んだのでテントを這い出てみると、あらら、またしてもテントが増えていました。ざっと数えたところ100張はあるようです。
ただ、すでに時刻は6時を回っていましたので、ここからどんどん増えるというのは考えにくいので今晩のテントの数はこんなものなのでしょう。
よかったよかった。まだスペースに余裕があります。
夕日が出てるぞ〜と誰かが言っているのを耳にしたので、我々もテン場を出て稜線まで上がってみました。
雲は多めですが、確かに夕日の色が感じられます。
誰かがシルエットになった山を指して「あれが剱だ」と言っていました。
土地勘がないのでウソかホントかよくわからないのですが、
とりあえず「あの剱岳」を目にすることができたのか!という感動が沸いてきます。
反対側に目を転じると、夕日に照らされた大きな積乱雲が。
この雲がさっきの豪雨を降らせたのでしょうか。
明日、縦走する杓子岳、白馬鑓ヶ岳も見えていました。
もうすぐ日が沈みます。
写真ではなかなか伝わらないと思うのですが、この日、この時の情景そして空気感を忘れることができません。
18日は午前3時に起床。テント泊の朝は早いのです。
初めてのテント泊、ちゃんと寝られるか心配だったのですが思いの外ぐっすり眠れて、昨日までの寝不足と疲れが一気に解消されました♪
私よりもデリケート…? …? …? なツートンもぐっすり眠れたと聞き一安心。
まずは朝食ということで、アルファ米の五目御飯、みそ汁をスタンバイ。
アルファ米の御飯も初めてでしたが、思いの外美味しかったです。
なんかアルファ米って、独特の臭いがするとか聞いていたんですが全然気になりませんでした。むしろよくこれだけふっくらするなと感心しました。
しかし慣れない調理、慣れないテント撤収に手間取り、思いの外時間をとられてしまいました。本当は出発してから朝日を拝もうと思っていたのですが、日の出が間近に迫ってしまい仕方がないので撤収しかけの荷物を置いて、先に日の出を拝みに行きました。
前の日夕日を眺めた同じ場所に達、朝日が昇ってくるのを待ちます。
群青色の空、群青色の雲海にオレンジ色の光が射してきたかと思うと、それは少しずつ空一面に広がっていきます。
厳粛な朝と夜との交代式。そんなものを間近に眺めているような気分になります。
白馬が朝日を背負い、シルエットになって浮かび上がります。
一度登り始めた太陽は一気にその輝きを増し、夜を駆逐していきます。
その美しさはとても言葉にできません。
写真を撮るのも、もしかしたら息をするのも忘れて見入ってしまいました。
やがて本日の縦走路にある杓子岳・白馬鑓が朝日に浮かび上がります。
曇りっぽいからなのか、なんなのか、この日の朝日の色は淡く槍ヶ岳で見たようなモルゲンロートはお目にかかれませんでした。
剱・毛勝山鹿島槍などの山々も眠りから目覚め、その秀麗な姿を現しました。
あちらにある小屋や頂からも、こちらを眺めている人達がいるのかな。
日の出の光景に夢中になってテントの撤収がすっかり遅れてしまいました(汗
5時半にようやく出発することができました。
昨晩、あれだけ有ったテントがあらかた撤収されています。
なんか焦るなぁ。
白馬と杓子岳の間の最低鞍部からは、昨日登ってきた大雪渓を見ることができます。
こうして見ると落石の供給源がよくわかりますね(^^;
まだ早朝なので下山者の姿がポツポツと見えるくらいで蟻の行列はできていません。
杓子岳が間近に迫ってきました。
写真真ん中あたりで道が二つに分かれていますが、右を行くと山腹をトラバースしていく道。
左…というか、上に登っていくのが杓子岳山頂に立ち寄るコースです。
見ていると、トラバース道に行く人が結構多いですね。
今回の山行を「白馬三山縦走」と銘打っている我々は、もちろんトラバースできません。ガレッガレの急斜面を山頂目指して登っていきます。
ハッキリ言って、序盤のこの斜面がこの日一番つらい登りとなりました…。
前日、白馬の山頂に立った時は穏やかな山容の山に思えたのですが、このアングルから見た白馬はずいぶんと険しい表情を見せています。杓子岳ほどではないですが、白馬も見る角度によってずいぶんと印象が変わる山です。
テン場を出発して1時間半弱、杓子岳の山頂に立ちました。
剱や鹿島槍などをバックに記念写真☆
急なガレ場の登りで疲れましたが、まだ朝一番ということもあり余裕があります。
前日の白馬山頂からはガスのせいであまり眺望は得られませんでしたが、本日は高曇りで、かなり遠くの山々まで見渡すことができます。
写真を撮るとなるともう少し青空が欲しいところですが、肉眼で眺めるにはこれくらいの天気の方がまぶしくなくてよく見ることができるかもしれません。
杓子岳の山頂を満喫したら、次は白馬鑓へと向かいます。
杓子岳からの下りは台形上の斜面を横切るようにしながら下っていきます。
稜線を歩きたいという誘惑に駆られますが、それをしてしまうと最後は道なのかガレの斜面なのか分からないような場所を下降する事になるようなのでご注意。
実際、我々より先に歩いていた登山者が進退窮まって戻ってきていました。
さっき苦労して登った杓子岳も下るとなるとあっと言う間。
すぐに次の登りが見えてきます。
ん〜、遠目に見たときよりもずいぶんと登るように見えるなぁ…。
最低鞍部まで降りてきました。
雪渓が見えていますが、これが杓子沢の上流にあたるのかな?
雪渓を挟んで左が杓子、右が鑓になるわけですが、沢を一本挟んだだけで地質がまったく違うように見えます。不思議なもんですね。
ガレガレの杓子岳にはほとんど植物は生えていなかったのですが鑓の領域に入ってからは再びお花が増えてきました。
ミヤマアズマギク、ホソバツメクサ、シコタンソウ、チシマゼキショウ、ミヤマムラサキ、ホソバイワベンケイ、ミヤマシオガマなどなど。
登りに転じて再び体の重さを感じてきました。
やっぱり今日は不調な気がする…。
それでも少しずつ前に進み、次なるピークを目指します。
あと少しで山頂だ! がんばろう!
…まだ先があった…。
いや、あとから写真で確認したら、杓子から前衛のピークがあるのは見えているんですよね。
でも現地では早く山頂に立ちたいという気持ちで、そういう細かい所まで見てないんでしょうね。
鞍部から偽ピークまでの間には花がたくさんあったのでツートンのペースも遅かったのですが偽ピークから鑓山頂までの間には岩ばかりであまり花が咲いていなかったのでツートンのペースもグンと上がります。
ぐっだぐだになりながら、ようやく白馬鑓ヶ岳の山頂を踏むことができました。
白馬岳をバックに記念写真☆
昨日はあそこの頂に立ったんだなぁ。もうあんなに小さく見える…。
そして白馬岳と杓子岳。これで白馬三山完登!
たぶんここで白馬岳をはっきり見ることができるのは最後になるので見納め。
白馬鑓ヶ岳の山頂を踏んだことで、今回の「白馬三山縦走」は折り返しに入ります。
単純に疲れていたこと、山頂からの景色があまりに素晴らしかったことに加えて「もうこの先は下山に向けた山行になるんだな」という気持ちもあり、なかなか山頂を去りがたく、長々と休憩してしまいました。
後ろ髪を引かれる思いで出発を決断。
本日の宿泊予定地である鑓温泉へ向けて出発します。
まずはガレた斜面を天狗の頭方面へ下ります。
コマクサが咲いているのを発見。
同じコマクサでも岩手山のコマクサは肉厚で「ばやばや」と生えていてたくましい感じがしますが、ここのコマクサは小さくて儚げですね。
鑓の山頂から20分、あっさりと分岐点に着いてしまいました。
ここからまっすぐに鑓温泉に下ったとすると到着予定時刻は…9:30?
いくら山の行動指針が「早出・早着」だとしてもこれでは早過ぎます。
そんなわけで、ちょっと寄り道して天狗の頭まで行ってみることにしました。
ブログなどでわりと評判の良い天狗山荘を見てみたいというのと不帰キレットを覗いてみたいというのが寄り道の理由です。
鑓温泉への分岐から20分ほど稜線歩きを続け、最後にやや大きな雪渓を下ると、まず初めの目的の「天狗山荘」に着きます。
小さいながらも居心地が良さそうな山小屋のように見受けられます。
時間のせいもあるでしょうが、小屋の中はもちろん周辺にもほとんど人影が見あたらず 大混雑の白馬山荘、頂上宿舎とはまったく違った雰囲気を醸し出しています。
ちょうど到着したところに小屋の中から「なでしこジャパンが優勝した!」との声が聞こえてきました。
正直、女子サッカー…というよりサッカーそのものにあまり興味のない私でも「史上初の優勝」がかかった試合ということで多少気にはなっていました。
結果は下山後だなと思っていたところが、こんな場所で優勝を知ることになろうとは。 なんだか不思議な気持ちです。
小屋の前には1組のパーティが休憩しており、一緒に優勝を喜び合いました。
最近、暗い話題が多い中で、こういうニュースが飛び込んでくると単純に嬉しいですね。 誰かがやり始めた「日本ばんざーい」の掛け声に、思わず乗ってしまいました(笑
一休みしたあと山荘前に荷物をデポして、天狗の頭まで往復します。
休憩していたパーティは不帰キレットに向かうというので、その後をついていくことにしました。
天狗の頭まであと一息というところまで来た時、前のパーティから「雷鳥だ!」という声が聞こえてきました。
急いでその場に駆けつけると…居ました! 雷鳥です!
親鳥の側には数羽の雛がくっついて歩いています。
やった! ついに雷鳥に会えました!
槍ヶ岳に登った時は結局会えず、今回もここまでの行程の中では気配すら感じられず
やっぱり雷鳥には会えないのかな〜と思っていましたが、やっと会うことができました。 これで心残り無く下山できそうな気がします。
天狗の頭に到着。
先行パーティはここで不帰キレットアタックに備えて休憩していました。
先頭に立っているベテランのガイドっぽい人以外はみなさん緊張した顔をしていました。
天狗の頭から不帰キレット、そして唐松・五竜方面。
ガッツリ切れオチた深い谷が不帰キレットという事になるのでしょうか。
遠目に見た感じでは「どこを歩くんだ?」という感じですなぁ…。
正直、まったく行ける気がしません(笑
キレットに向かうパーティに「お気をつけて」と声をかけ、ヘロヘロ隊はUターン。
今度こそ鑓温泉に向かいます。
戻る道すがら、さっきの草っぱらを覗くと、雷鳥親子はまだそこにいました。
本当に人間を恐れないんですね。のんびりと何かを啄んでいました。
名残惜しかったですが、先の行程の事もあるので雷鳥に別れを告げ進みます。
突然登山道の脇で何かが動いたのでびっくりしたのですが、また雷鳥がいました!
どうやら砂浴びの真っ最中だったようです。
さすがに向こうも突然の人間の出現にびっくりした様子。
砂浴びを中断してすたこらさっさと逃げていきました。
これ以上驚かさないようにそーっと歩いていくとかなり接近することができました!
ちなみに、登山道からは一歩も外れていません。
こんなに間近に見ることができるなんて! 感動!
雷鳥達に気を取られ、またしても長々と立ち止まってしまいましたが今度こそ目的地に向かって出発します。
さすがに時間が気になり始めました。
荷物をデポした天狗山荘まで戻ってくると小屋の窓にはさっそく「祝 なでしこジャパン優勝」と書かれた紙が貼ってありました。
ちょっとした事ですが、こういう気を回せるスタッフがいる天狗山荘は噂通りいい小屋なんじゃないかなと思いました。
機会があったら是非宿泊してみたい小屋リストに追加しました。
分岐まで戻り、鑓温泉へと下ります。
この下りの道は最初はガレた急斜面で、丁寧に歩かないとスリップや落石を誘発しそうなので注意が必要です。
今回の山行では初の長い下り坂となりますが、やはり荷物が重いと下りも楽ではないです。
後ろからグングンと荷物に押され、ブレーキをかける足の筋肉に負担がかかります。
うーん、下まで足が持つかな…?(^^;
急傾斜地をすぎると、いくつかの雪渓を通過します。
幸いにも傾斜が緩く気温の上昇により雪もぐずぐずで、おまけに多くの人が通過してしっかり溝が刻まれていたので
ここの通過にはまったく困難を感じませんでした。
スキーで滑る要領で通過します。
わりと楽しい♪
雪渓と雪渓の間にはお花畑が広がり、登山者の目を楽しませてくれています。
雪渓→お花畑→雪渓→お花畑…というように続くので、景色に変化があっていいですね。淡々と下ると飽きてしまいますので…。
最後の雪渓の手前でグリーンパトロールの人とすれ違いました。
昨日のさわやかな青年に続いて、今度はかわいらしい若い女性のパトロールでした。
白馬のパトロールは美男美女が多いのでしょうか?
昨晩、白馬のテン場で「鑓温泉のテン場は狭く混み合うと大変」という情報を聞いていたので少々心配になりパトロールの人に「今日は大丈夫でしょうか?」と聞いてみると、わざわざ無線で問い合わせて「今日はまだ空いています」と教えてくれました。
なんと親切な…。
登山者の安全を見守ってくれているだけでもありがたい事なのに、こうも爽やかで親切な対応をしてもらえると本当にうれしいですね。
地域で一帯になったイメージアップ戦略なんですかね?
だとしたらその目論見は大成功ですよ。
少なくとも我々ヘロヘロ隊の白馬に対するイメージは200%UPしました(笑
さて、いよいよ本日最大の難所、鎖場上部へやってきました。
わりと色々なガイドブックなどを見ましたが、ここについてはさらっと触れられているケースが多いようです。
しかし、ネットなどで実際に歩いた人の話を見ると「ここは危険!」という意見も多く油断できません。
しっかりと気を引き締めて通過しようと思います。
まずは序の口。
路肩が谷側に傾斜しているのでスリップに注意。
ここはまだ片手で軽く鎖を確保して通過できます。
だんだん険しくなってきました。
三点支持を守りながら下ります。
片手の支持を完全に鎖に頼る部分もあり、腕力・握力に自信の無い私は冷や汗がダラダラ…。
最後にはほとんど垂直に岩場を降ります。
鎖の下が少し広くなっているのだけが救いです。
これでほとんど足場のないような狭い場所だったら精神的にかなりキツイです。
鎖はなおも続きますが、なんとそのまま沢を横断していきます。
足場も鎖も沢の水に洗われびしょびしょ…。
ここ、ちょっとでも増水したらどうやって越えていくんだろう…。
滑りやすい沢越えをこなし、ほっとしたいところですが実はまだ鎖場は続きます。
人一人が通れるはばの岩の廊下をへつっていきます。
たくさんの登山者が同じ場所を踏むせいか、岩がピカピカに磨かれていて
いまにも「ツルッ」と行きそうで怖い…。
ようやく鎖場を終え、自分が歩いてきた道を振り返ります。
鎖場、なげ〜。こんな長い鎖場は初めてでした。
ここの鎖場は私のような初心者がそろそろ歩く分にはそんなに大事故に繋がるようなことはないと思うのですが、少し岩に馴れてきたような人があまり鎖に頼らずにタタタッと駆け下ったりしたときに、なにかの弾みで足が滑ったら、あとは下まで真っ逆さま…みたいな、そういう場所なのではないかと思いました。
鎖場周辺にはニッコウキスゲが群落を作っていました。
下り終えてやっと花を見る余裕が生まれてきました。
ふう…なんか肩が凝ったな…。
雪渓の下に目指す鑓温泉が見えてきました!
しかし、長い鎖場を通過してホッとして気を抜いてはいけません!
実はこの先も少々危険地帯です。
鎖場下部から鑓温泉までは雪渓上ではなく左手の斜面下部を進んでいくのですが
ここが地面と雪渓の境目になっています。
ルートフラッグに従って進んでいきますが、穴、空いてるんですけど…。
ツートンがびびりまくっていますが、それもそのはず。
雪渓の下がわでは大きな穴がぱっくりと口を開けて、皆様のお越しをお待ちしております。
下の方からはザーザーと水が流れる音が聞こえてきます。
万が一こんな所に落ちたら、そのまま雪渓の下の流水に飲み込まれて二度と出てこられないかも…。
なんてことのない小沢の渡渉のはずなのですが、「危険、立ち止まるな!」の注意看板があります。
沢に入るまで見えないのですが、ふと上を見上げるとでっかい雪の塊が「そのうち落ちまっせ〜」と絶賛準備中。
上下にトラップがしかけてあり、わりと生きた心地がしません。
素早く、そして慎重に通過するしかありませんね。
言うは易し…ですが。
最後に難所・悪場が続きましたが、なんとか無事に鑓温泉までたどりつくことができました。
いや〜、ちょっと想像以上に大変な道でした。
体力的にも精神的にもかなり削られましたね。
混んでいたら嫌だなぁと思っていたテン場ですが、ご覧の通り今日は空いています。
明日は平日ですからね〜。まじめな勤め人はもう帰ったのでしょう。
不真面目な勤め人は、一日づらしてまだ山にいます(笑
しかしテン場の端の方には昨晩苦心してテントを立てたであろう跡が残っていました。
連泊している人曰く「昨日は殺気立っていた」とのこと。
うーん、本当に昨日来なくてよかった。
最後の難所で思いっきり(嫌な)汗をかいたので、まずはビール!
…というわけで、テントを張るなりさっそく1本開けました。
昼食も兼ねていますが、あまり食欲がなかったので軽めに。
魚肉ソーセージの銘柄が、今の我々の気持ちを代弁しています(笑
さて、鑓温泉のテン場は、他のテン場に無い大きな特徴があります。
それは勿論温泉です。
テントの設営費の他に300円払えば24時間入浴できます。
標高2100mという岩手山の山頂よりも高い場所で、テントを張って温泉に入る…。
なんだか想像の範疇を越えていて、今ひとつピンときません。
混浴大浴場は想像していたより立派な湯船でした。
もっと野湯っぽい感じなのかと思っていました。
しかし立派なのは湯船の話。
目隠しという意味ではまったく論外(笑
テン場から丸見えです。
いや、眺めの良さと考えれば「最高」なのかな(笑
これでは女性は入れませんよねぇ…。
水着で入るにしても、着替えとかで大変そう。
変わりに内湯が女性専用となっており、狭いながらもそちらは安心して入浴できます。
夜7:30〜8:30の間は露天風呂が女性専用になりますが…
ツートンは無理!と言って内風呂に入ることに決めたようです(^^;
私は男なので堂々と入浴します。
はぁ〜、極楽極楽♪
ネットなどで「熱い」という評判だったので恐る恐る入ったのですが、いや、今日はちょうどいい湯温ですよ。これならいくらでも入れます。
お見苦しいモノをお見せして申し訳ありませんm(_ _)m
この開放感抜群の露天風呂のすぐ下には、足湯が設けられています。
こちらであれば、女性でも開放感のある場所で温泉を堪能できますかね。
うーん、これは夜中に星空を見上げながら足湯っていうのもアリですかね。
もちろん片手にはビールを(笑
テン場の隅をどうどうと音を立ててお湯の川が流れ落ちています。
これだけの量のお湯を掛け流しにしているんですから超贅沢な話です。
昔、麓に引き湯する計画もあったようですが、自然条件が厳しく断念したとか。
なのでこれだけの泉質と湯量がありながらもほとんど利用されていないのが現状です。うーむ、もったいない!
夕方までは温泉を堪能したりしながら楽しく過ごしたのですが、やがて遠雷が聞こえ始め、ぽつぽつと雨が降り始めました。
最初は降るんだか降らないんだか分からない雨でしたが、すぐに雷雨へと変わりました。二日連続で夕立に遭遇です。
こうなるとテントの中に入るしかなく、レトルトのカレーや牛丼を夕食にし、あとはもってきたつまみでお酒をチビチビと…。
当然夕暮れの風景もなにもあったものではなく、テントに閉じこめられたまま一日が終わりました。
一日の終わりが、ちょっと残念な感じになった7月18日。
白馬三山縦走2日目でありました。
午前三時、起床。
雨はあがっていましたが、フライはびっしょり。テントは跳ね上がった泥水でドロドロ…。 なんだかテンションが下がります…。
まずは朝食…ということで、お湯を入れて煮込んだら完成というパスタとリゾットをいただきます。
二つとも登山用の乾燥食品というワケではないのですが、わりと安いし重量も軽いので持ってきてみました。
これが大正解! イタリアからの輸入品というだけあって味も本物っぽいですし。
次回からのテント山行でも、一食分はかならずこのシリーズを持って来よう!
朝食が済んだら身支度を調え、テントを撤収します。
テントを撤収し終えたところで大粒の雨が降ってきました。
間一髪のタイミング!
最終日はついに雨中山行となってしまいました。
予報天気では今日の昼くらいまでは晴れになっていたのですが南からせまってくる台風の影響が思ったより早く出てきたようです。
鑓温泉からくだっていくと「お花畑」があるはずだったんですが、7月中旬ではまだ早いのか、それとも今年が特別雪が多いのかわかりませんが大きな雪渓が横たわっており、花など一輪も咲いていませんでした。
夕べからだいぶ雨が降り、それが雪渓の表面を磨いたのか足を載せた途端ズルっといくようなきわどい雪面になっておりここではアイゼンを装備しました。
念のため…ではなく、真剣に「アイゼンが必要」と思わせられる厳しい路面状況です。
幸いにもアイゼンの爪は良く利き、うっかり転んだりしない限り安全に下れそうです。 あとは道迷いが怖いのでルートフラッグをよく確認しながら進みます。
雨とガスで視界が悪く、2本か3本先のフラッグまでくらいが目視できる限界なので
一本進むたびに慎重に確認しながら進むことにしました。
ある程度下降すると、フラッグは示す方向を左手へ変えました。
横に長い雪渓をトラバースしていくようです。
恐ろしい事に先に進めば進むほど、雪渓上の落石の数が増えていきます。
ガスで雪渓上部の様子はよくわかりませんが、いつ落石があっても不思議がない気がします。
雨は間断なく降り続き、雨具のフードを叩いています。
この雨音のせいで周囲の音が聞き取れませんし、視界が狭まります。
背に腹は代えられないので、フードをあげ落石の警戒をすることにしました。
みるみるうちに頭からずぶぬれになってしまいました。
この時は「ここまでしなくてもいいかな」とか「ちょっと臆病かな」とか思わないでもなかったのですが…。
大きな雪渓のトラバースを終えると、現在進行形で崩落が進むガレた沢が横たわっています。
ここが落石沢と呼ばれている場所なのか、杓子沢なのかよくわかりませんが、いずれ安全な場所とは言い難く、速やかに通過したいところです。
とりあえず、なにか有った時に二人同時にやられるのを避けるため一人ずつ沢を通過することにし、まずは私から先に沢に降り立ち、横断を開始。足場は悪くなく、難なく対岸に到着することができました。
しかし、振り向いてツートンが横断を始めているのを確認したまさにその瞬間、白馬大雪渓上部で散々聞いた、落石が発生した時のガラガラっというあの音が聞こえました。
はっとして上を見上げると、遠目にはこぶし大くらいに見える石が雪渓上を跳ねながら転がっているのが見えました。
「ラーク!」
初めて本気でこの言葉を発しました。
この時は石は左手の茂みの方へ転がって行くように見えたので一瞬大丈夫かな?と思いました。
しかし次の瞬間、石は大きくバウンドしまっすぐツートンの方へ向かい始めました。
ツートンはというと、なんと立ち止まってしゃがみ込んでいるではありませんか!
(後から聞いたら、頭だけは守るつもりでそうしたとの事。それは最終手段だ…)
血の気が引きました。
その間にもみるみるうちに石が…いや、岩が迫ってきます。
遠目にはこぶし大に見えた岩ですが、とんでもない!
少なく見積もっても直径30〜40僂呂△蠅泙后
「ラーーク!! なにしてんだ!」
「ええ!? どうすればいいの!?」
「いいから早くこっち来い! 沢からあがれ!!!」
そんなやりとりをしている間にも岩はものすごい勢いで転がってきます。
「来たっ!! 早く!! 早く!!!」
たぶん声がうわずって叫び声になっていなかったかもしれません。
ツートンの動きが、まるでスローモーションのように見えました。
ようやくツートンが沢の岸に足をかけるかかけないかというその瞬間、轟音と共に岩がすぐ後ろを通過していきました。
あと5秒…いや、3秒動くのが遅ければ、おそらく直撃を受けていました。
転げ落ちた岩は、下の方で他の落石にぶつかりガッコーン!!というすさまじい音を立てて粉々に。
後は何事も無かったかのように静寂が戻ってきました。
助かった…と思ったら膝が笑い始めました。
当の本人はあまり落石を見ていないようで、それほどの恐怖を感じていないようでしたが、ツートンに向かって岩が転がり落ちていく一部始終を見ていた私はとても平然としてはいられませんでした。
しかし、いつまでもここに留まっていては危険です。
気持ちを奮い立たせ、まずは落石地帯から一刻も早く脱出するべく歩き始めました。
ところが、私はすっかり動転していたらしく、明らかなペンキ印やルートフラッグを次々と見落として歩きます。
後ろから来ているツートンにルートを指摘され、それでようやく正しい道を歩けるという体たらく。
動揺するっていうのはこういう事をいうんだな…と改めて実感しました。
危険地帯をなんとか通り抜け、振り返って撮影した落石に遭った沢ですが、いかに落石が多いかよくわかります。
拡大したものですが、落石痕がはっきりと確認できます。
まるでツートンに狙いを定めているように、右へ左へとバウンドしながら転がったあとがクッキリ。
上部の雪渓にあった岩がなにかの弾みで動き始めて、左側の斜面でバウンドし沢の中央部を転がってきた…というような動き方だったようです。
いや〜、危機一髪でした。
初めて山で真剣に命の危険を感じた瞬間でした。
改めて何事もなくて良かった…。
最初のショックから回復すると、怖い場所から離れたいという心理的なものと、台風の影響がこれ以上強くならないウチに下山したいという二つの気持ちが入り交じって、自然と歩く足が速くなり、ぐっとペースが上がりました。
ところが、前述したようにあまり恐怖を感じなかったツートンは
「ちょっとまって〜、花の写真〜」
と、花が咲いているたびにことごとく立ち止まります。
肝が据わっているというか、いい度胸してるよなぁ…。
ようやく小日向のコルに着きました。
これで行程の半分来たことになりました。
…まだ半分か…。
小休憩をとって、また急ぎます。
だんだんと樹林帯へ入っていき、花も少なくなってきたのでツートンのペースも上がってきました。
出発から3時間、猿倉へ続く林道へ出ることができました。
ここまで来たら、もう下山したも同然。なんとか無事に降りてきました。
最終日は一番楽な行程のはずだったのですが、精神的にキツイ山行となりました。
連休明けの平日の猿倉荘前は、出発したときとうって変わって静かでほとんど人影も見あたりません。
山荘の従業員から「お疲れさまでした〜」と声をかけられたのみであとは静かに雨の降る音だけがあたりを包み込んでいました。
白馬三山縦走、これにて無事終了です。
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