槍ヶ岳 初雪


- GPS
- 55:56
- 距離
- 28.6km
- 登り
- 2,659m
- 下り
- 2,816m
コースタイム
2日目 5:50双六小屋―7:15樅沢岳―10:34千丈乗越―11:57槍ヶ岳山荘
3日目 6:21槍ヶ岳山荘―7:27奥丸山分岐―9:00槍平小屋―9:57滝谷出合―11:08奥穂高岳登山口―12:56新穂高無料駐車場
天候 | 1日目 雨のち晴れ、2日目 曇りのち雪 3日目 曇りのち晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
コース上にとくに危険な場所はありません。槍ヶ岳は今期初雪でしたが、アイゼンは不要でした。 |
予約できる山小屋 |
槍平小屋
|
写真
感想
2012年、10月の3連休に槍ヶ岳に登る事にした。以前、東鎌尾根から槍の肩まで行ったが、大雨の為、退散を余儀なくされた。今回はそのリベンジ。5日の金曜日も休暇をとり、その日は新穂高から双六小屋まで。6日に西鎌尾根から槍ヶ岳に登って、槍ヶ岳山荘に泊まり、7日に大喰岳、中岳、南岳から氷河公園に下り、槍沢ヒュッテに泊まり、8日に上高地から帰宅すると云う、3泊4日の計画を立てた。10月5日、深夜に自宅を出発。4時20分、新穂高、深山荘前の無料駐車場に着いた。予想に反し、駐車場はほぼ満杯で、あと30分遅ければ別の駐車スパースを探さねばならない所だった。まずは、オムスビ1個とお味噌汁の朝食。4時45分、ヘッドランプをたよりに駐車場を出発。新穂高バスターミナルに着くと、なんと登山指導センターや公衆アルペン浴場の建物が無い。蒲田川にかかる橋もなく、仮設の橋を渡って左俣谷に向かう。5時20分、ホテルニューホタカの奥の遮断ゲートから林道に入る。6時前になるとヘッドランプも不要となり、6時11分、笠新道の入り口に到着。コースタイムより随分早く、気を良くする。ワサビ平小屋の軒を借り、オムスビ一個を食べながらゆっくり過ごす。30代と思われる男がやってきて、「黒部五郎まで行くが、黒部五郎小舎はすでに冬季閉鎖しているので、三俣蓮華小屋まで行くつもりだ」と云う。わたしは頑張って双六小屋まで行くのだが、三俣蓮華までは大変だな、でもこの男は若いから行けるんだ。この男より先にワサビ平小屋を出発。奥丸山への分岐から、いよいよ小池新道が始まる。きれいに石が並べられた登山道は歩きやすい。小雨が降り出すがそのまま進む。ワサビ平小屋で会った男に道を譲る。秩父沢でザックを下ろし、腰を掛けてひと休み。秩父沢の上流の山、おそらく弓折岳だろう、雲がかかっているが、黄色く染まった山肌は雨に濡れて彩を増している。イタドリヶ原までの登り、途中で大きなザックを背負った若い単独行の女性に追い越される。シシウドヶ原までの登り、また別の若い単独行の女性に追い越される。若い女性がテントを担ぎ、一人で山に登っている事、そしてわたしを追い抜いて行くスピードに感心。わたしも年を取ったのかな。シシウドヶ原で腰を下ろしてひと休み。オムスビ1個食べる。「熊のおどり場」、鏡平まではあと少し、雨も止み、頑張って登る。10時10分、鏡池に登り着く。目の前に槍・穂高が飛び込んで来る。池は静かでさざめきも無く、周りの色づいた木々を水面に写している。こんなに良い天気の鏡池は始めてのような気がする。鏡平山荘でコーヒーを淹れて貰う。ヘリが飛来し、山荘前のテラスで荷揚げをしている。飛ばされるといけないので、山荘の中に入れられる。ヘリが飛び去ったあと、テラスでコーヒを飲みながらのんびり過ごす。10時5分、鏡平山荘を出発。弓折乗越への急な登山道をゆっくり登る。見上げれば、青空を抱いた稜線に続く長い登山道が見える。1時間少々で弓折乗越に登り着き、ベンチに腰を下ろしてひと休み。眼下、鏡池と周囲の池塘が青々と輝き、鏡平山荘の赤屋根が紅葉の中に馴染んでいる。西鎌尾根の先には槍の穂先が天を刺し、中崎尾根の向こうには、大キレットと雲を抱いた穂高の峰々が連なっている。槍・穂高の揃い踏み。丁度12時、オムスビを食べながらゆっくりと休む。30分程大展望を満喫し、登りにかかる。お花畑でひと休み。双六谷側に出ると、鷲羽岳をバックにした双六小屋が見え始める。そこからまだ1時間以上かかって、14時32分、今夜の宿、双六小屋に到着。およそ9時間50分の行程であった。小屋の前の広場に、ワサビ平小屋で会った男がいて、「調子が悪いので、三俣蓮華小屋へ行くのは止めて、今日はここに泊まる事にしました」と云う。「明日が大変ですね」と云うと、「黒部五郎は止めて、あしたもう帰ります」。受付をして、案内された部屋はその男と同室。他にはまだ誰もおらず、今日は一人分のスペースで眠れそう。外で缶ビールを飲んでいると、少々寒い。談話室でもう一本缶ビールを飲みながら、槍ヶ岳の写真集を見ながら夕食までの時間を過ごす。缶ビール2本で足りるわけがなく、持参のブランデーをちびりちびり。夕食前部屋に戻ると、満室となっている。連休前だから空いているだろうと思っていたが、大間違い。圧倒的に単独行の人が多く、ちょっと意外。5時からの夕食、山小屋にしては豪華な内容、もう一本缶ビール。夕食後、外で暮れ行く鷲羽岳を眺め、何もする事が無いので6時には布団にもぐりこむ。いつもの如く、眠ったのか眠って無いのか、ウツラウツラと夜が過ぎて行った。夜中にふくらはぎが攣る。ふくらはぎをストレッチさせると、今度は前脛骨筋が攣る。どちらも攣らないように、どちらもストッチさせるのは至難の業。眠りながらの悪戦苦闘。今日は少々頑張りすぎたかな。
5時半から朝食。今日は西鎌尾根を槍ヶ岳まで登るだけなので、ゆっくりと6時半に小屋を発つ。紅葉に染まる樅沢岳の稜線に、逆光に照らされて登る人の姿が見える。ゆっくりゆっくりを意識しながら樅沢岳に登り着く。小屋から45分、コースタイムも45分。もっとゆっくり登ろう。樅沢岳の頂上に立つと、槍・穂高の大展望が飛び込んでくる。大抵の人は空身で、樅沢岳まで登るのが目的のようだ。紅葉の向こうに槍ヶ岳を写真に納め、引き返して行く。樅沢岳から続く西鎌尾根を眺めると、中崎尾根を派生する千丈沢乗越が同定出来る。そこまではハイマツの緑の稜線が続き、そこから先、槍の穂先までは岩塊となっている。緑の稜線には幾つものピークが連なり、左俣谷を挟んで中崎尾根が伸び、奥丸山と思われる丸いピークに続いている。槍から続く北鎌尾根の向こうには、大天井岳、燕岳、餓鬼岳の白い稜線も覗いている。湯俣川を挟んで鷲羽岳、それに続く白い山は野口五郎岳。今朝は、穂高連峰もくっきりと姿を現している。煙を吐く焼岳の向こうには乗鞍岳が浮かび、さらに奥には御嶽が霞んでいる。右手には笠ヶ岳の秀麗な姿。地図を眺めながら、地球の皺を頭に刻み込む。千丈沢乗越までのコースタイムは3時間、それから槍ヶ岳までは1時間50分。コースタイムで登れば、お昼に小屋に着いてしまう事になる。樅沢岳を下り、ゆっくりゆっくり足を運ぶ。左下に赤い岩山、裾の方は雪がついたように白く、殺伐とした雰囲気を漂わせている。その名も赤岳、そして硫黄尾根から続く硫黄岳。硫黄尾根を左に見ながらの登りが続く。2重山稜と舟窪、その先の山は左俣岳だろう。左俣岳に寄ってひと休み。左俣岳からは、鎖場の岩下り。左下に千丈沢が落ち込み、カール全体が錦糸銀糸を纏っている。紅葉真っ盛り。アップダウンを繰り返し、鎖場を慎重に登る。赤ちゃんを背負ったお母さん、こんな所をよくまあ登って行ったものだ。10時34分、千丈沢乗越の稜線に登り着く。写真を撮り捲って、何度も休みながらゆっくり登って来たのだが、コースタイムより10分も遅れていない。標柱が一本、右は「飛騨沢・中崎尾根」、左は「天井沢(通行不可)」とある。地図には千丈沢とか天狗沢とか載っているが、天井沢と云う名はない。ま、そんな事どうでも良いか。稜線に立ち、向こう側を覗き込む。飛騨沢が落ち込み、カールの底から登山道を登って来る人の姿が見える。今までここで休んでいたのだろう、赤ちゃん連れの夫婦が出発して行く。千丈沢乗越からは岩山をトラバース気味に登山道が続いているのが見える。しばらく休んで出発。つづら折れに登る道は危険なところは無いが、シンドイ。途中でもう一服。赤ちゃん連れの夫婦の背中を上に見ながら登り、どんどん槍が近付き、11時57分、槍ヶ岳山荘に到着。あんなにゆっくり登ったのに、こんなに早く着いちゃった。東鎌尾根に比べれば、西鎌尾根は左程のものでは無かった。わたしが本日一番の泊まり客なのだろうか、案内された部屋にはまだ誰も入っていない。部屋は「駒鳥」、真ん中に通路を挟んで両側に寝床が6つずつ2段。混雑時は6つの寝床に12人を入れるつもりなのだろう、1つの寝床に番号が2つついている。わたしの寝床は、「B1,2」、と云う事で、今日は一人分の寝床が確保されるようだ。「キッチン槍」で、淹れ立てのコーヒーを飲みひと息入れる。槍の穂先に立つべく、山荘を出ると、何年か前、東鎌尾根からやって来た時、雨で見えなかった槍の穂先がすぐ目の前にある。何だ、こんなに近かったのだ。槍の穂先の下で岩に取り着こうとしていると、夫婦連れの御主人が、赤ちゃんを背負ってスイスイと先に登って行く。奥さんにも道をゆずって、わたしは後からついて行く。確実な三点支持を心掛け、掴む岩、足の置き場を注意深く慎重に選んで登る。ボルトを掴み、ボルトに足を載せ、鉄梯子に取り着く。一段一段確実に、二つの梯子を登り槍ヶ岳山頂に登り着く。狭い頂上ではあるが、先の赤ちゃん連れの夫婦を含めて5人がいるだけ。曇り空ではあるが、北アルプス、360度の大展望。槍の穂先に立ち、リベンジ出来た事、一人で登った事、見渡す限り山しかない事、何だか嬉しくなって来る。あの山も登った、この山も登った、まだ行った事の無い山にも穂先から夢を馳せる。下り用の階段に取り着き、鎖とお尻に頼って岩壁を下る。下り終わって部屋に戻り、身体を拭き、着替えをしてテラスで缶ビール。寒いので小屋に戻り、談話室でブランデー。今日は連休の初日なので、多くの人はここまで上がって来れないだろうと考えていたが、大間違い今朝早く、上高地から槍沢を通って、あるいは新穂高から槍平を通ってここまで来たという人が一杯いる。中には、日帰りで槍ヶ岳に登ったという人もいる。槍ヶ岳山荘は今夜からすでに大賑わい、入口には、「本日、テン場は満席となりました」と案内が出ている。まだ2時、寝床に戻って昼寝。目が覚めると、屋根にうっすらと雪が積もっている。槍ヶ岳、今季初雪。5時から夕食。食堂には幡隆さんを祀った神棚があるのが嬉しい。ウイリアム・ガウランドやウォルター・ウェストンが登るはるか以前に、槍ヶ岳を開山した坊主で、槍ヶ岳山荘の心意気が感じられる。外人さんが故郷の山を思い起こし、「日本アルプス」と名付け、この辺りは北アルプスと呼ばれているが、正式には飛騨山脈と云う。ちなみに中央アルプスは木曾山脈、南アルプスは赤石山脈である。ま、そんな事はどうでも良いか。ご飯にフリカケをかけ、お代わり。缶ビールを一本空け、酔いが醒めない内に寝床に入る。ウツラウツラしながら考えている。「雪も降ったことだし、氷河公園の紅葉と云ったって、もう紅葉は充分堪能したし、この分だと明日泊まろうとしている槍沢ヒュッテも混み合う事だろうし、槍・穂高も見飽きる程見たし、明日は予定を変更して飛騨沢を下って帰ろう」。「通った事は無いけれど、千丈沢乗越から見た飛騨沢の登山道は、左程の事も無さそうだし、よ〜し、そうしよっと」。
朝、朝食のため廊下に並ぶ人のざわめきで目が覚め、わたしもその列に加わる。食堂の窓から外を見ると、夜のうちに降った雪で、どうやら道は凍っていそう。「やっぱり帰ろ〜っと」。6時15分、山荘から出ると、うっすらと雪が積もり、目の前の槍ヶ岳はガスの中に隠れてしまっている。下から眺める人はいるが、登る人はいない。眺めている人を横目に、西鎌尾根に入る。下り始めから、登山道には吹きだまりの積雪。すでに足跡がついていて、それを辿って慎重に下る。ブラックダイアモンドのZポール、カーボンファイバーのウルトラディスタンス、始めて使うが、軽くて、結構丈夫そう。ま、これなら使えそう。雪を冠った西鎌尾根、そこから落ち込む飛騨沢カールの底は紅葉。正面、笠ヶ岳に朝陽が当たり、頂上部分が輝いている、今日はいい天気になりそうだ。西鎌尾根をまたいで流れる滝雲が、ずっと樅沢岳まで続いている。何という風景、神々しさに思わず立ち止まる。50分程で千丈沢乗越に降り立つと、もう積雪は無い。飛騨沢の下りは岩ゴロゴロ、手入れがされていない場所もあり、慎重に下る。振り返り、仰ぎ見れば雪を冠った大喰岳がくっきりと見え、その横に大槍、小槍が雲の中にボ〜っと浮かんでいる。槍ヶ岳ともお別れだ。奥丸山への道を分け、7時37分、カールの底、飛騨乗越との分岐に降り立つ。ザックを下ろしてしばし休憩。カールは草紅葉の秋、その上、雲の間から、白く輝く大喰岳、冬の訪れ。大喰岳の西尾根を越え、ハイマツはダケカンバに変わる。大喰沢の水場をも過ぎ、飛騨沢の流れを聞きながら灌木帯を下る。槍平のテン場はカラフルなテントが立ち並び、結構な賑わいである。ここをベースキャンプに、槍ヶ岳や南岳、あるいは奥丸山に登っているのだろう。9時、槍平小屋に到着。淹れ立てのコーヒーを頂き、小屋の前のベンチでひと休み。小屋からしばらくは樹林の中の良く整備された道を歩くが、それもすぐに終わり、岩ゴロゴロの道を下る。初冠雪の北穂を仰ぎ見ながら下ると、岩に嵌めこまれた銅板のレリーフがある。近寄って見ると、ネクタイ姿の顔レリーフの下に、「この人を忘れまい」と云う題の文章が刻まれている。滝谷を初めて登攀した、藤木九三と云う人のレリーフである。ここからすぐに、大岩ゴロゴロの川原に出る。滝谷である。上流は狭まり、その奥に雲を冠った北穂が垣間見える。赤旗が上流に向かって並んでいるので、大石を伝って上がって行くと、沢に丸木橋が掛っている。そろりと渡って左岸を下流に向かう。避難小屋を左に見て、再び石ゴロゴロの山道を下る。石を伝って調子良く下って、チビ谷を渡り、ブドウ谷を渡る。滝谷から1時間以上下ったところで樹林が開け、白出沢に出る。橋を渡り終えると、石に紙が張り付けられていて、見ると、「槍平から白出出合いの間で熊の目撃が多発しています。通行には注意して下さい」。クマ除け鈴を鳴らしながら下山してきたので、クマさんに会わずに済んだのか、いずれにしてももう終わった事。槍平にも、こんな注意書きあったかしら。大石に腰を下ろし、槍ヶ岳山荘の作ってくれたお弁当を広げる。おこわご飯をぺロリと平らげる。曇天ではあるが、白い大石が敷き詰められた白出沢、眩しささえ感じる。しばらく休んで出発。登山道は終わり、右俣林道が始まる。左手に穂高への道を分け、延々と林道歩きが続く。ダブルストックで調子を取り、足早に歩き、二組の若者ペアーを追い抜く。緩い下りなのでスピードは落ちない。牧場のような場所に、「穂高平避難小屋」と云う営業小屋があり、そこから大きなつづら折れとなる。登山者用にショートカットの道を作れば良いのにとブツブツ云いながら下る。帰ってから飛騨沢ルートの案内本を見ると、穂高平へのショートカット道があるようだが、それらしき道を見つける事は出来なかった。嫌々の林道を歩き、車止めのゲートを抜け、新穂高ロープウェイ山麓駅に帰り着いた時、足はふらふら。でもまだ駐車場まで歩かなければならない。ヨレヨレになって車に辿りついたのは12時56分、槍ヶ岳山荘から6時間40分の行程であった。無料駐車場は、完全に満杯。3連休の中日、北アルプスは大賑わいに違いない。中崎山荘の気持ちの良い温泉でゆっくり汗を流し、夕方5時に自宅に帰り着いた。
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