南八ヶ岳/赤岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 11.9km
- 登り
- 1,232m
- 下り
- 1,231m
過去天気図(気象庁) | 2012年04月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
八ヶ岳/赤岳 小屋泊まり 美濃戸発 往路/北沢経由 復路/:南沢経由
with K氏
<プロローグ>
4月17日
八ヶ岳・赤岳
3月初旬の南木曽岳以来、本業が年度末の繁忙期真っ最中でしたので、休日に山に行く機会がほとんどありませんでした。仕事と家族あっての山道楽ですからそれはそれで良いのですが、問題は自分の中にあった山への情熱が少し覚めたのではと思えていたことでした。南木曽岳で面倒くさい雪道を歩いた事が原因ではなく、もっと単純なことです。
この1ヵ月半近く、全く山に行けなかった訳ではありません。日帰りなら2回くらいは行ける機会があったのですが、前日は行く気満々だったのに、翌朝6時に目覚ましが鳴っても布団の中で少し躊躇してしまい、「今日は止めようかな・・・」という気になり・・・二度寝してしまい・・・結局何もしない無駄な休日を過ごしてしまっていたのです。
無論、誰かと約束した山行ならバッチリ目覚めるのですが、単独の予定の日はついついサボってしまっていたのです。
何だったのでしょうか・・・。
そんな気持ちを吹き飛ばすには犹海膿欧覘瓩里一番だと思い、シーズンオフしてメンテナンスしたばかりの雪山道具を倉庫から引っ張り出して、K氏と約束をし、まさかの本格的雪山山行に出掛けたのでした。
目的地は南八ヶ岳の赤岳。ここなら通年営業の狎岾拗枩瓩箸い山小屋があるので、氷点下の高地での夜も暖かく過ごせるからです。本来なら、テント泊が好きで始めた山歩きですからテントを張りたいところですが、まだまだこの時期の高度2000m以上の高地は雪まみれの氷点下なので寝袋は厳冬期用が必要です。この厳冬期用の寝袋はとても高価ですので、使用頻度を考えると購入に踏み切れません。そうなるとどうしても山で寝たいのなら営業小屋にお世話になるという選択になります。
今回の山行から帰ってきて、こうしてこのブログの記事を書けているという事は無事に帰ってきたということですから、それが何より幸せな事だと思っています。
山への情熱は決して覚めていた訳ではなく、原因は私自身が少し山に対してナメ始めていたとによるものだったと思いました。
生涯初の森林限界以上の雪山からいろんなことを学べて、本当に有意義な山行でした。同時に知ったような気になっていた自分を恥じることができた良い機会となり、どんどんエスカレートしていく山の趣味を続ける中で大怪我をして人に迷惑をかけたり、あっけなく死んでしまい家族を悲しませたり、山仲間を失う前に、良いブレーキを掛けられたと思います。今年の夏山テント泊や岩稜縦走山行に入る前に気持ちや考え方を良い方向に改められたと思います。
<自宅〜赤岳鉱泉>
4:00
この日はK氏と約束していたので、目覚ましの音で飛び起きました。
雪山山行のルーティンに従い、先ずはミルクティー作りからです。
携帯する分をテルモスに入れて、朝の目覚まし用を飲みながら朝のお勤めがモヨおすのを待ちます。パッキングの90%は前日までに終わっているので、水と紅茶を詰め込んで出発しました。
6:00
K氏を迎えに行き、そのまま昼食とおやつとおつまみを調達し、東海環状自動車道の豊田東ICから中央道にスイッチし、恵那峡SAで朝食の豚汁定食を食べ、諏訪湖SAで最後のトイレ休憩をし、諏訪ICで降り、国道沿いのガソリンスタンドで給油をし、美濃戸口に向かいました。
夏なら選択の余地も無く美濃戸口の駐車場に車を止めるのですが、登山者の少ない今なら赤岳山荘まで車で乗り込んでも良いかな・・・と思い、八ヶ岳山荘の駐車場をパスし、気だるい1時間の林道歩きを省きました。
美濃戸口から一般車輌の通れる終点である赤岳山荘の駐車場までは一部の解けかけの氷を除いて雪はありませんでした。今回はバモスの4WDに賞味期限切れのスタッドレスを履いた状態で走りましたが、雪や氷が云々・・・というよりも、泥と轍が難敵でした。4WDじゃないと最低1回はスタックしていたと思います。また、轍が深い箇所がありますので大きなタイヤを履けるような車でないと引き返す事になるかも知れません。
ですから、近々向かわれる方は車高の方を心配された方が良いと思います。
私はこの道を数回で歩いていますが、車で通過したのは初めてだったので、轍や段差のクリアにこれほど神経を使うとは思ってもいませんでした。
9:30
赤岳山荘の駐車場にピットインし、山荘で受付と駐車料金を払って、出発の準備を整えていると、私たちの頭上の崖の上を左前足を怪我した幼いカモシカが歩いていました。その距離2m〜3m。足を引きずって歩くのに精一杯なのか、こちらをチラッと見ただけで、そのままトラバースするように消えていきました。
10:10
気温12℃ 気圧826hpa 高度計を1700mにセットし、駐車場から山行を開始しました。
赤岳山荘から出発すると、いつも立ち寄る美濃戸山荘はあっという間です。私はここのおばちゃん?が大好きです。登山客が勝手に店先のテーブルを使っても、ベンチで休憩しても、お金を使うかどうかも分からないのに問答無用でお茶と漬物を出してくれます。しかも、「口に合うかどうかわからないけど・・・」ととてつもなく謙虚な言葉を添えて・・・。去年の初夏に来た時は、復路で立ち寄りアブに数箇所噛まれた苦い思いでもありますが…。開店していたら挨拶の一つでもしていこうかと思いましたが、店の中が真っ暗でしたのでそのまま通過しました。
北沢と南沢の分岐で北沢(左)を選択し、何頭かの鹿に出会いつつ、堰堤広場までは所々スケート場のように凍ってツルツルピカピカになった林道を歩きます。雪もありますが、アイゼンは不要でした。
11:06
堰堤広場の堰堤に腰掛けて10分休憩しました。
堰堤より先が、やっと登山道になります。少し歩いた先の木道を超えたところの坂から圧雪が凍ったみたいな状態だったので、ここからアイゼンを装着しました。結果的には半分以上はアイゼン不要の雪道でしたが、所々凍結している坂があったので木の根を踏まないように注意して歩きました。
木道が連続するエリアに入ると、突然大同心と横岳〜硫黄岳の稜線が目に飛び込んできます。ここからテンションは上がりまくります。夏の荒々しい岩肌も良いですが、岩の間に積もった雪が霜降りの様になっている風景は、この季節にここまで登ってこないと見る事はできません。
木道エリアを抜け、雪の樹林帯を抜けると赤岳鉱泉名物のアイスキャンディー(人口アイスクライミング壁)の青い氷が見えてきます。
12:17
今夜のお宿、赤岳鉱泉に到着しました。
<赤岳鉱泉/前編>
夏の赤岳鉱泉には2度ほど休憩でお世話になっていますが、冬期に来ること自体が初めてなので、アイスキャンディーを見るのも初めてです。規模は大体想像していた通りでした。
流石に早く着きすぎたので、ウッドデッキ(冬期は雪に覆われて露出していません)の屋根付き休憩場所(テント泊客用の炊事場?)で昼食を摂りました。
インスタント味噌汁とおにぎりを食べました。
13:20
赤岳鉱泉にチェックインしました。
前日の平地の天気予報ではこの日は正午から50%の降水確率でしたので早く到着できるように出発した訳ですが、予想以上に歩きやすい行程だったので早く到着し過ぎて、結果的にこの日の宿泊客としては一番乗りになったようです。
受付を済ませて宿泊費を納め、靴を脱いでいると、
「○○さん、○○さん(昔から使っている私の別の趣味のハンドルネーム)」
「?」
「今日の献立、ステーキじゃないみたいです」
「!!!」
受付カウンターの横に掲示されている今日の献立は・・・
!!!
爛┘咼侫薀ぁζ攴繊Ε侫襦璽牒
どーん!!!
(心の叫び)
「え・・・エ・・・エビフリャー・・・」
実は、この赤岳鉱泉は夕食にステーキ(焼肉?)を出す事で有名だったのです。確かにはホームページには犖ノは日替わりです瓩判颪れていますが、掲載されている画像にも旨そうな肉が・・・・。
確かに街ならお金を払えばいくらでも食べられるものですが、山小屋で食べるところに価値があり、いつかは私も
「俺なんかステーキ付きの山小屋に泊まったことあるんだぜぇ〜!」
と自慢の種にしようと思っていたのに・・・。
しかし、そんなちっちゃい事を悟られまいと、教えてくれたK氏には、
「ほんとっすねぇ〜ははは!」
とだけ答えました・・・(笑)
続いて、部屋に案内されました。
今夜の寝床は食堂脇の階段から2階に上がってすぐ左手の狢臚運喚瓩箸いβ臧屋です。アイスキャンディーがある方面の角部屋で確か1畳サイズの布団が9組敷いてありました。部屋の真ん中に大きな木製テーブルがあり、ガスヒーター付きの快適な相部屋です。とりあえずザックの荷物をこれから使うものと使わないものに分別し、オーバーズボンを脱いでハンガーに掛け、指定された布団に寝転びながらダウンジャケットとパンツに着替えました。
ちょっと布団で横になっていると、1階に偵察に行っていたK氏が帰ってきて、
「残念なお知らせです・・・」と、
「・・・何すか・・・?」
「今日お風呂はないそうです・・・」
!!!
(心の叫び)
「ブルータス、お前もか・・・」
実はこの赤岳鉱泉は名前から連想されるようにお風呂があります。それも大好きな檜風呂・・・。
温泉なのかどうかはわかりませんが、これもちょっと楽しみにしていました。それが・・・
「…マジっすか・・・それは残念ですね・・・」
確かに、今日の運動量では大して汗もかいていないですし、実際寒くて湯冷めしそうなので入られたところで入らなかったかも知れません・・・しかし、敢えて
「お風呂はゴールデンウィークからです」
と言われるとちょっと悔しい・・・料金は一緒なのに・・・。
そんな誤算続きの山小屋泊まりでした。
<赤岳鉱泉/後編>
14:30頃
窓の外を見ると雪が降ってきていました。
到着が早すぎたので、天気が持てば少し小屋の周りでも散策しようかと思っていましたが、写真を撮りづらい天候なので飲み物とつまみを持って1階に下り、談話室?で登山雑誌を数冊選んで食堂のストーブの前で読み耽りました。赤岳鉱泉の書庫には岳人・山と渓谷・ピークス・漫画・様々な山域の資料や文献が本棚にぎっしり詰まっており、私的にはまさにパラダイスでした。一番興味を惹かれたのは、10年前くらいの岳人や山渓です。それらを読むことに没頭していると、2名1組の年配の男性がチェックインしてこられ、2階に上がっていきました。足音から察すると今夜は同室になるようです。
私は持ってきていた爛献腑法璽Εーカー黒ラベル瓠淵淵襯殴125ccボトルに詰め替えたもの)で水割り(氷なし)を作って、スパイシーなスナックと共に味わいました。
ストーブに当たりながら窓から外に目をやると、小屋の屋根に積もった雪がボタボタと水を垂らしながらドンドン解けている…
雪が降っているのに…
春を感じました。
そうこうしているうちに、2階から同室の年配2人組みの方も下りてこられ、ストーブに一番近い同じテーブルでワインやおつまみをガンガン嗜み始められました。
状況的に考えれば、お互いどう考えても同室という理解からかすぐに打解け、雑談しながら夕食の時間を待ちました。その時にお裾分け頂いた赤ワインは非常に美味しかったです。有難うございました。
少し暗くなりかけた頃、完全装備の2名1組も到着されました。結局私とK氏を含めても6名3組が宿泊するようです。想定していたよりずっと少ないと感じました。と、言うのもあと2週間でゴールデンウィークに突入し、すぐ近くの行者小屋もオープンしますし、北アルプスの早いところでも営業山小屋がオープンするので、敢えてこの時期に赤岳鉱泉を目指す人は少ないと思ったので今回の山行を計画したのですが、それでも小屋が窮屈にならないくらいのお客さんは来ると思っていたからです。しかし、実際はたった6名…
「そりゃ、ステーキもお風呂もないわ…」
18:00
夕食が配膳されました。メインは宣言通りのエビフリャーです。しかし、
「デカっ!」
一般的にエビフライが好きと言われる牋γ慮民瓠併笋脇段鵡イ澆泙擦鵑…)の我々から見ても、驚愕せずには居られないサイズのエビちゃんが2尾(種類はわかりません)。私はパブリックスペース内の写真撮影は遠慮するタイプなので撮影しませんでした。
しかも、
「旨っ!」
決してステーキが出なかった負け惜しみではなく、本当に生涯イチ美味しいエビフリャーでした。
豚汁とご飯もお代わりして、普段は腹八分で食事を済ましている私が、120%程度まで胃を拡張させてしまいました。
19:00頃
2階の部屋で布団に横になって胃を落ち着けていたつもりが、結局そのまま寝入ってしまいました。
おそらくアルコールを普段以上に飲んでしまったからと思うのですが、軽い高山病症状(頭痛)が出て朝まで何度も目が覚めました。
4月18日
5:00
目覚ましは5時半にセットしたのに、結局5時には目覚めてしまいました。
朝食までに狡のお勤め甅爛潺襯ティー作り甅爛僖奪ング瓩鮑僂泙擦董
6:30
1階の食堂に朝食が配膳されました。献立は狆討鮭・生卵・味噌汁瓩伐燭だった気がします…(記憶が曖昧)。
同室だったお2人も今日は同じ行程だとおっしゃったので、
7:15
4名2組で赤岳鉱泉から行者小屋に向けて歩き始めました。
ずっと気付きませんでしたが、赤岳鉱泉の山側のテント場に1張りのテントがあったので、どなたかテント泊されたようです。
<赤岳鉱泉〜赤岳展望荘>4月18日
7:15
前夜からご一緒させて頂いていた同室のお二人と4名2組で赤岳鉱泉を出発しました。
気温0℃ 気圧777Hpa 高度計を2220mにセット。
赤岳鉱泉の玄関から南に向かえばコースタイム40分で行者小屋です。
登山道は樹林帯の日陰ですし、多くの人に踏み固められているのでアイゼンの詰めがサクサクと雪に刺さり、デコボコした夏道よりむしろ歩きやすかったです。しかも、まるで観光地の様に綺麗な雪の溝が彫られているので迷う心配は一切ありません。やはり人気の山です。
一箇所だけY時(わいじ)の分岐がありましたが、2年前の夏道の記憶を頼りに右を選択し、つづら折の登坂道を進みます。途中で硫黄岳・大同心・横岳がダイナミックに聳えている構図を見ることが出来たので数枚写真を撮りつつ、
7:48
行者小屋の裏手に到着しました。
私たちは地蔵の頭経由、同室だったお2人は文三郎道経由で赤岳を目指すのでここで暫しお別れしました。
地蔵の頭への分岐は行者小屋の裏手手前にあるので、私たちは小屋を見学に行かずに、開けたところから絶景の赤岳と阿弥陀岳を写真に収め、私はここから犒ね囘修襯イロ瓩肇團奪吋襪鯀備して、
8:16
いよいよ本格的雪山登山を開始しました。
正直、この時点では南八ヶ岳をナメていました。冬期も1600〜2000m程度の雪山を月2回程度歩いていた事で、変な自信を持っていたのかも知れません。
行者小屋裏手から地蔵の頭への登山道は、距離こそ短いもののその分斜度はキツく、日の当たるところと日陰になっているところでは通過に必要となる心構えも技術も変化し、体力的には問題なくとも精神的な負担が大きかったのには面を喰らいました。登りなのでまだ良いほうですが、高度が増せば増すほど下りのことが心配になります。
そして、生涯初の有雪期森林限界以上の高みに足を踏み入れたのです。
幸いこの日はほぼ無風だったので、それでも歩行は容易な方だったと思います。
夏場は安心して通行できる鉄の階段や手摺、フィックスされた鎖も8割は雪に埋没しているので、アイゼンの前爪を使ってキックステップを刻みながら、右手のピッケルをフルに使って登りました。斜度が緩ければ問題ないのですが、ピッケルと両足の先端の3点しか雪に突き刺すことが出来無い事がこんなに怖いとは思いもしませんでした。左手は雪に押し付けることしかできず、安心して体重を預けることは出来ないので、動く時は結局2点支持状態になってしまいます。また、低山の雪と違い森林限界以上の雪山ではピッケルの石突きが簡単には刺さら無い事が多かったです。最低でも20cmくらいは刺さらないと体を預けられないので、しっかり刺すことが出来る場所が見つかるまで微妙にずらしながら何度も振り下ろしました。石突き部分が刺さらない時はそのまま前に倒してピックを根元まで刺すという作業の繰り返しです。この一連の動作は低山でも訓練したつもりですが、所詮は訓練でしかありまんでした。ここでは本気で取り組まないと目指す方向に進めない…しかもその距離は長く険しい。
地蔵の頭の直下には短いですがナイフリッジもありました。キ○タマはキュンキュンしませんでしたが、無雪期の岩稜縦走より怖かったです。
爛坤衢遒舛燭蘰猴遒猟譴泙把捷圻
そんなプレッシャーを初めて味わいながらの犹嚇个雖瓩任后もはや犹格發瓩任呂△蠅泙擦鵑任靴拭
辿るべきコースは、稜線へ直登するだけなので目星が付け易いですし、先行者のアイゼンの歯の跡を追っていけば心配ありませんでした。
ただただ下る時が心配になります。
そして、
9時過ぎ頃
地蔵の頭のお地蔵さんと対面しました。
この日のお地蔵さんは登山雑誌で見た厳冬期の写真の様にえびの尻尾は付いていませんでした。
遂に私は有雪期の森林限界以上の稜線に立ったのです。
風はほぼ無し。これが噂通りの強風だったら、決して赤岳は初心者向けの雪山とは言えないと思いました。ガイドさんやエキスパートの岳人とロープに繋がれて登るなら大丈夫でしょうが、
初心者同士や単独は危険だと思います。運が良ければ事故は起こらないかも知れませんが、ミスが続けば事故死の危険性はいくらでも存在していると感じました。
そして休憩しようと思っていた赤岳展望荘がハッキリ見えます。東側からガスが昇ってきていて、赤岳の頂上付近は薄っすら見えたり見えなかったり。
これまでの恐怖に打ち勝った満足感に浸りながら、雪と氷の稜線を歩き、
9:25
赤岳展望荘に到着しました。
まだ建物の半分近くは雪に埋もれた状態でした。
<赤岳展望荘〜赤岳山頂>
ここへは去年の6月末にも来ています。でも、まさかあの時は1年も経たずに…しかも有雪期に再来するとは思ってもみませんでした。考えてみれば冬のボーナスで
「まぁスキーに行くこともあるかも知れないし…」
と、雪山初心者用のオーバーズボンを購入したことからエスカレートした事だと思います。
一番南側にある建物の前で少し休憩しました。するとK氏曰く、
「一眼のレンズキャップを落としました…」
「マジっすか…」
「後から来てた人が拾ってくれていると良いのですが…」
確かに途中からずっと数十メートル後を単独の男性が追跡する形で登ってくるのは確認していたので、淡い期待を抱きましたが、特に道の無いデコボコした広範囲の雪斜面ですから気付いてくれる確率は低いので期待はできません…。
「もし、拾ってくれてたら今夜抱かれてもいいくらいですよね?」
私は冗談で言いました。
「はい」←確かにそう返事されました。
暫くして、
「あの〜!レンズキャップ落としませんでしたか?」
(心の叫び)
「キター!!!!!!」
そう言って、ハニカミながらその方はとてもさわやかに立ち去っていきました。
「今夜抱かれないといけなくなりましたね?」
「・・・・・・・」←K氏
そして、そこから赤岳の山頂へと続く稜線を観察しました。
1年前に赤岳頂上小屋から下ってきた時、先行の同行者に落石を与えないようにヒヤヒヤしながら歩いた記憶が蘇ります。そのガレたつづら折の道は雪の下に埋もれ、今は少しも見えていません。そこにあるのはただストレートに山頂まで延びた稜線沿いのトレースだけ…正直怖かったです。
今のところまだ無風ですから何とかなりそうですが、東側から突風が襲ってきたら逃げ場も無いし、バランスを崩して転びでもしたら岩に激突するか森林限界以下の樹林帯まで数百メートル真っ逆さまです。
人生最後になるかも知れない煙草を吸い終わったら、
9:40
赤岳展望荘を出発しました。
先ほどキャップを拾ってくださったイケメンさんは既に山頂までの距離の3分の1ほど登っているのが見えました。
私たちも歩き始めると少しも恐怖感は沸いて来ず、意外にスイスイ登ることができました。
山歩きをされている方は経験があるかと思いますが、手前から見るとまるで人間を拒絶するかのような急斜面も、実際その場に立ってみると「あれ…?」と拍子抜けすることが。
まあ、私が歩く道は一般登山道ですから基本的には安全に歩けるように道が出来ているのです。
今になって思い返すと、雪道は一般登山道(夏道)よりはリスクが高く、充分危険な急登だったのに、見た目と実際のギャップからナメていたと思います。
そして、
10:05
遂に赤岳頂上小屋に到着しました。
小屋はまだ3分の2以上雪に埋まっていました。去年の6月以来10ヶ月振りの再来です。
この頃、山頂付近は白いガスに包まれており全く眺望はありませんでしたが、「ここまで来た」
という充実感で感無量でした。
小屋前の広場に単独の男性が2名。ガスでハッキリ見えませんでしたが山頂当りに2.3名いらっしゃっと思います。
赤岳の山頂は目前ですが、向こうはスペースが狭いので小屋前の広場で休憩しました。
10ヶ月前の記憶ですと、小屋から山頂に続く10mほどの道は細い岩場になっており、サンダルで歩くには怖かったので、今のような有雪期はより一層恐ろしいナイフリッジになっていると想像していたので、ここでも一度心の準備をしたかったのです。
10:31
山頂スペースに向けて歩き始め、細い道は拍子抜けするほど怖くも無く、
10:34
赤岳山頂に到着しました。
<赤岳山頂〜赤岳山荘駐車場>
山頂手前の細い道は夏より雪で大きく膨らんでいるような状態でしたし、ガスで高度感が掴めなかったので全く怖くありませんでした。
相変わらずのほぼ無風状態。少しも寒さを感じませんでした。
K氏と写真を撮り合いっこしていると、昨夜赤岳鉱泉で同室だったお2人が登ってこられました。お互いの無事を喜びあいました。
そして、
10:50
赤岳頂上小屋の前で充分休憩しましたし、暫く待機したところでガスが晴れて眺望が回復すると思えなかったので下山開始しました。
その直後に個人的なミスにより、個人的な事故が起きましたが、幸い怪我もなく今もこうして山行記録を更新できていますので山頂の祠で下山の無事をお願いしていて良かったです。自分に強運があったことを実感し、少し山をナメいた事を心の底から反省しております。
また、同室だったお2人にもご心配をお掛けして大変申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫び申し上げます。
その後は先頭をK氏に代わって頂き、慎重に下りました。
今回の山行で体感しましたが、森林限界以上の狎禹海硫爾雖瓩賄个蠅2倍以上危険です。
斜面に対して上から見下ろした時の危険度と下から見上げた時の危険度には大きな隔たりがありますので、少しでも危険を予測したら下りは後ろ向きになり、登りと全く逆の手順を踏み、ビデオの巻き戻しのように行動しなければならないと思いました。時間は倍くらい掛かってしまいますが、絶対に省いてはいけないことだと自分向けにここに書置きします。
下りで歩いた文三郎道は、地蔵尾根に比べると緩斜面ですがその分距離が長いので緊張感で疲れました。
中岳のコルを過ぎた頃には赤岳山頂付近のガスも晴れ、雪面が広範囲で白く輝き、サングラスをしていないと目がヤラれそうでした。樹林帯まで降下するまでは真っ白な雪面しかないので、道の凹凸が分かり辛いので気を使いました。
時間も昼近くでしたので、雪の表面がシャーベット状に軟らかくなっている箇所もあり、1歩1歩足を踏み出しながらピッケルを差し込んでみないと安心できる状態かどうかも分からないので、見た目は簡単な緩斜面でも通過に時間がかかりました。
そしてようやく森林限界に別れを告げて、樹林帯に入った時には本当にホッとしました。
12:20
行者小屋の玄関前に到着しました。
同室だったお2人がデポしたザックが置いてありました、私の無事を知らせる為にも昼食を摂りながら休憩して待つことにしました。
私は精神的なダメージを引きずっていたので食欲が沸かず、チョコレート系のお菓子とテルモスのミルクティーだけ胃に入れました。
30分弱でお2人が下りてこられたので、再会とお互いの無事を喜び合い、私たちはお別れしました。
13:05
復路は南沢経由で下りました。
下り始めて直ぐに広い雪原に出て、振り返ると阿弥陀岳と赤岳が真っ青な空に聳え立っていたので最後に記念撮影をしました。
午前中は、雪と氷にアイゼンの歯とピッケルを突き立てまくる緊張感の連続でしたが、午後の南沢では暑いくらいの日差しを浴びて、快適なスノートレッキングを楽しむことができました。
半分は完全な雪道、半分は氷の道でした。
途中で完璧に土の露出した日当たりの良い直線があったので、アイゼンを外してザックに装着しましたが、樹林帯の日陰に入るとスケート場のような氷に覆われた道になりましたので、面倒がらずに再びアイゼンを装着しました。解けたり凍ったりを繰り返しているので、ラードのように真っ白な氷の道でした。
駐車場手前の沢でアイゼンとストックとピッケルの泥を洗い流し、
14:05
赤岳山荘の駐車場に到着しました。
今まであえて犹格發瓩班集修靴討い浸笋亮駝は次第にエスカレートしていき、遂に森林限界を超えた有雪期の犹嚇个雖瓩噺世錣兇襪鯑世覆い箸海蹐紡を踏み入れてしまいました。
今回は単独ではなかったですし、2人共無事に帰ってこられたものの、単に牘伸瓩あっただけで、取り返しの付かない事態と常に隣り合わせでした。
・初めての有雪期の森林限界越えは、経験者の同行が必要。(状況判断・雪上歩行技術)
・初めての有雪期の森林限界以上に踏み入る前に、充分雪上停止訓練を行うべき。(無意識に停止姿勢が取れるくらい)
・天候の分析と状況判断に細心の注意を払い、撤退に躊躇しない。(危険を予感した時点で引き返す)
これら全てが充分でない状態で出掛けた今回の山行は、山に対する心構えを改める良い機会となりました。
犹海漏擇靴い韻鼻危険行為であることを認識した上で山行を計画し、行動中は常にそのことを心に留めておく事
これが大前提であると、大事に至る前に肝に銘じました。次回からの山行は1度死んでから生まれ変わった気持ちで真剣に臨みたいと思います。
おわり
全て読んで頂けたのなら光栄です。
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