甲斐駒ヶ岳〜鋸岳(↑黒戸尾根 ↓八丁尾根)◆鋸岳核心部情報あり◆
- GPS
- 16:57
- 距離
- 25.5km
- 登り
- 3,729m
- 下り
- 3,716m
コースタイム
- 山行
- 14:18
- 休憩
- 2:38
- 合計
- 16:56
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
通常は尾白川渓谷駐車場を使いますが、八丁尾根を下ってきて最後の40分がきついので今回は矢立石に停めました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【残雪状況】 ・七丈小屋〜甲斐駒ヶ岳 上のテント場の先に2ヶ所。雪は残っているが、夏道(ハシゴ)へ逸れるので踏んで歩く距離は短い。スパイク等履かなくても問題なし。 ・甲斐駒ヶ岳〜鋸岳 三ッ頭から中ノ川乗越の間に1ヶ所(坂の登り口)。横の草付きでトラバースできます(踏み跡も付いています)。 【危険箇所】 写真および本文で詳記します。 |
予約できる山小屋 |
七丈小屋
|
写真
感想
甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根)は多くのレコが上げられており、七丈小屋さんのHPでも最新情報が随時発信されているので、そちらにお任せします。また日向八丁尾根についても特筆すべきことはなかったため割愛、今回は鋸岳(第二高点から第一高点)について記します。
甲斐駒ヶ岳〜鋸岳(↑黒戸尾根 ↓八丁尾根)は過去2度敗退しています。最初は3年前、GPSも持たずに(今から思うとあまりに無謀)甲斐駒から鋸への稜線をうろうろ。たまたま山中で行き会ったruhasamanさんとharubo33さんの後を追わせていただく形で何とか第二高点までたどり着いたものの、その先へ進む余力と自信はなく撤退しました。翌年再挑戦するも第二高点から大ギャップに降りられず(横へ逸れる踏み跡を辿ってしまうルートミス)、再び撤退。今回が3度目の挑戦となりました。
中ノ川乗越からまずは第二高点へ。ガレガレの急登ですが、過去2度の記憶を辿ってなるべく歩きやすいルートを選びます。そして第二高点から大ギャップへと下ります。林の中を下っていくと途中横へ逸れる踏み跡が現れますが、とにかく「草付きを一番下まで」と参考レコで叩き込んであります。その通り、大ギャップに出ることができました。
「大ギャップをトラバースして10mほど下り、右手のバンド(岩棚)へ取り付く」その通りにトラバース、下降してバンドへ。よく踏まれたバンドを抜けると「鹿ノ窓のルンゼへ」のはずでした。ところが、バンドの終点(ルンゼへの接点)が崩れてザレています。最初は「さすが鋸岳、簡単じゃないんだな」などと思いながら数歩進んだのですが、そこから動けなくなってしまいました。足元はザレた砂礫、傾斜の20mほど下は大ギャップへの崩落。指先が確実に掴める岩のホールドもなく、足元が「ズルっ」といった瞬間アウトです。固まった姿勢のまま自分を落ち着かせ、「このまま進むのは無理だ。3回目の敗退にしよう」と決めました。
ところが数歩進んでしまっていたため、バンドに戻れません。下降はおろか横へのスライドもできない、危険な状況に陥ってしまいました。しばらく固まった姿勢のまま、どうしたらこの状況を切り抜けられるか考えます。足元でスリップを起こさないため、下方向と横方向への移動はできない=足元を慎重に選びながら斜め上へ移動をしました。
結果的にルンゼ左の草付きに着きました。ただ頭の中は「どうやって戻ろう」でいっぱいです。少し落ち着くためにも時間を取って、とりあえず頂上(第一高点)までは往復することにしました。
再び鹿窓を潜ってルンゼを下ります。それらしい踏み跡はあり、おそらく間違っていないだろう気はしてきます。なるべく右手の草付きを下っていくも、結局は登ってきたバンドの端に出てしまいました。(帰宅後に過去レコの写真と見比べ、明らかにルンゼの様相が違っていることを確認しました。冬の雪でザレたのか、最近の大雨で崩れたのかはわかりません)。
草付きの奥に大ギャップへ降りられる場所はないかと覗き込むものの、そんな場所は見当たりません。「ここを渡るしかないのか・・・」しかし上から下ることも、横から這っていくこともできません。とにかく足元がズルっといった瞬間アウトです。
「山頂へ戻って釜無川へ下山、家族に迎えにきてもらおうか」などと考え始めたとき、見上げた先にピンクっぽいものが見えました。「テープ?」登っていくとそれは(新しい)ピンクテープでした。そこからトラバース道へ入り、進んだ先で大ギャップに降りることができました。※注)私の記憶ではトラバース道は鹿窓ルンゼでは取り付きにピンクがあったものの、大ギャップ側にはなかった気がします。大ギャップの接点は非常に分かりにくいです。
再び第二高点へ、そしてガレガレの沢を下って中ノ川乗越まで戻ったとき、やっと大きな息をつくことができました。
【2021.6.10訂正追記】
大ギャップから鹿窓ルンゼへのアプローチについて「水色とオレンジ、どちらが正解か・・・」のような曖昧な表記をしてしまいましたが訂正します。
◆水色(バンドを通過して鹿窓ルンゼへ取り付くルート) → バンドから先に進むことができません。
◆オレンジ(バンドより上部のトラバースルート) → 「迂回ルート」みたいに書いてしまいましたが、こちらも一般ルートではありません。私の2日後に現地でトラバースを検討、撤退された例もあります。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3254750.html
山行を計画される方は最新かつ詳細な情報を入手されることをお薦めします。
コメント
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数年前に大ギャップの通過に難儀をした事を思い出しました。
3回目の挑戦での鋸岳登頂おめでとうございます。お疲れ様でした。
そして今シーズン此処を通過する方々に対しての、詳細で貴重な報告をありがとうございました。
安全を第一に素晴らしい経験が出来ますように!
flhtcさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私より2歳ほど先輩でいらっしゃいますが、意欲的な山行を重ねていらっしゃいますね!日帰りロング(大キレット〜槍とか聖とか)もすごいけれど、「赤牛〜水晶〜野口五郎〜烏帽子岳」とか「爺ヶ岳〜白馬岳の後立山縦走」とか、いつか歩いてみたいと思うコースのレコ満載、今後の参考にさせていただきます。
鋸岳は2年前に「↑角兵衛沢 ↓熊穴沢」で登られたのですね。ガレガレの長い山行、お疲れさまでした。
おっしゃられます通り安全が第一ですね。
yoisaさん、またまたニヤミス過ぎます😅
ただ今、七丈小屋の中でコメントしてます。非常にタイムリーな情報に本当に本当に感謝です!ありがとうございました😊まさかそのような状況だとは思っていませんでしたので、明日は当然バンドを直進するつもりでした。yoisaさんのレコを参考にさせて頂きます♪♪ 敗退も視野に入れてそろそろ寝ます〜(・・;)
harubo33さん、こんばんは
まさか七丈小屋からとは! 3年前に甲斐駒から鋸を歩かれているharubo33さんが再びそこへ向かうというのは・・・あっ!「烏帽子岳ハンター」の血ですか?(笑)
たまたま1日前の情報がお役に立てれば幸いです。
どうぞお気を付けて!
yoisaさん
多分お忘れだと思いますが、確か以前yoisaさんとは、空木岳ピークでお話ししたことがあると思います。JiroDaiと申します。
同じ日に自分は歌宿から鋸を見上げていたのですが、あの痺れる稜線でこのような死闘が繰り広げられていたとは驚きです。迫力のあるレコでした。本当にご無事で何よりです。そして日帰りでこの行程をこなすyoisaさんのタフさに脱帽です。お疲れさまでした。
JiroDaiさん、こんにちは。
空木岳でお会いしたこと、もちろん覚えていますよ!JR茅野駅から美濃戸まで歩いて、そのまま阿弥陀〜赤岳〜横岳に登ってしまう鉄人にはその後も会ったことありません
同日にJiroDaiさんは栗沢山〜アサヨ峰を歩かれていたのですね!バスが北沢峠までは入れない現状、歌宿からのロングお疲れさまでした。昨年私は甲斐駒経由で登ったのですが、JiroDaiさんの写真を拝見して、甲斐駒や仙丈の絶景が蘇ってきました。
「死闘」や「迫力」のレコになってはいけないのだと、下山した今あらためて反省が多いです。
温かなコメント、ありがとうございました。
こんばんは、yoisaさん。
タイトルどおりです。
読ませていただいているこちらが心臓バクバクでした。
三度目の挑戦で鋸岳コンプリートお疲れさまでした。
自分には当分縁のない挑戦ですが貴重な記録読ませていただきありがとうございました。
Q_Bさん、こんにちは。
鹿窓ルンゼに出た瞬間「イヤな」感じがしたんです。ただそのまま数歩進んでしまったため、進むのも戻るのもできない状況に陥ってしまいました。
危険時には「撤退できる」状況に備えること、「イヤな感覚」を研ぎ澄ませて軽視しないこと、今後の自分に十分言い聞かせるようにします。
いつも温かなコメント、ありがとうございます。
美しい周回ルートでの鋸岳、お疲れ様でした。私には日帰りは無理です。
今のところは、バンドからルンゼ(大雨時は激流となるであろう将来のV字谷)を渡り、草付きに取り付くのが正解だと思います。昨年秋、トレランシューズでスメアリング頼り、怖かった。ですが、上部に安全そうな草付きの小尾根が見えてましたし、距離が短いので。
受け売りですが、「鋸岳は、日々崩壊している山」危険な山ですね。
isodajpさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
さすが大先輩は鋸岳も歩かれていたのですね(しかも日向八丁のピストン、第二高点ビバークで)。
>今のところは、バンドからルンゼ(大雨時は激流となるであろう将来のV字谷)を渡り、草付きに取り付くのが正解だと思います。
おしゃられる通り、こちらが「本筋」だとは思いました。ただし昨日目の前にあった崩壊はそれを越えてしまっていたかもしれません。
「鋸岳は、日々崩壊している山」本当にそれを実感しました。
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