“深い飯豊”を満喫・飯豊山テント2泊〜大日岳(東北の百名山チャレンジ15/15・一応の完)
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- GPS
- 21:16
- 距離
- 35.3km
- 登り
- 2,716m
- 下り
- 2,847m
コースタイム
- 山行
- 4:52
- 休憩
- 0:39
- 合計
- 5:31
- 山行
- 8:33
- 休憩
- 2:03
- 合計
- 10:36
- 山行
- 4:37
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 5:07
過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
「深い飯豊、遠い朝日…」
去年夏に仙台に来て東北の山々を知るにつれ、朝日連峰、そして飯豊連峰が厳しそうなのがわかってきた。登山ガイドでも飯豊山はアルプスと同様、上級にランクされているものも多い。
1年かけて東北にある日本百名山(十五座)を一座一座登ってきて、この二座を残して夏を迎え、「夏休みの宿題」とした。大朝日岳は暑さにやられたがドンちゃんにフォローされてなんとか7月下旬にクリア。ついにラスボス飯豊連峰の出番、この1年余りの自分の山歩きの効果測定でもある。
当初の予定では、
前泊:川入の民宿村杉荘
1日目:小白布沢口〜三国岳(三国小屋)〜剣ヶ峰〜切合小屋(テン泊)CTは5h30m
2日目:切合小屋〜飯豊山〜御西岳〜飯豊山〜切合小屋(テン泊)CTは7h50m
3日目:切合小屋〜三国岳〜剣ヶ峰〜御沢野営場 CTは5h05m
大朝日岳ではかなり混みあった避難小屋泊でストレスだったこともあり、せっかくの飯豊連峰は初めてのテント泊とし、事前にテント設営練習や重装備山行で準備。前泊の川入地区は今では2軒(村杉荘と高見台)しか営業しておらず、さらに新型コロナ禍である程度の予約人数がいないと宿泊を受け付けない様子。18日夜なら村杉荘が予約でき一安心していたが、当日は台風が襲来、翌朝からの山行に不安がよぎる。
村杉荘は田舎のおばあちゃん家に泊まりにきたようなほのぼのとした民宿。食事も美味しく、とてもこぎれいにされている。この地区の民宿に泊まる大きなメリットは、翌朝、一般的な御沢登山口より50分ほどショートカットできる小白布沢(こしらぶさわ)口までご主人が送迎してくれること(マイカーは前泊日に御沢野営場に停めにいきご主人に連れて帰ってもらえる)。ただ、小白布沢ルートは地元の方の作業道のため登山道としては認められておらず、登り口に駐車場が全くないので要注意。
さて、運命の当日、台風は過ぎ雨は上がって好天見込み。5時前に朝食、送迎してもらい、6時前に登り始められた。台風一過の小白布沢ルートは懸念していた大小数回の渡渉も問題なく、結構な急坂を登って御沢ルートに合流。そこから少し登ると地蔵水場で飯豊山6回目のおじさんと会う。この方は本山小屋泊だがこの後も何度も出会うことになるとても紳士な方。
稜線に出てしばらくすると岩稜で有名な剣ヶ峰。この日は手前に指導員さんが「ここでストックをしまって登ってください」と声掛けしていた。岩場・鎖場が大好物のドンちゃん、大展望と高度感があり嬉々として登っていくが、ここは一歩間違えると滑落になるところ。この岩場が終わるとすぐに三国岳の三国小屋。
〜〜閑話休題〜〜
福島、新潟、山形三県の県境の三国岳から飯豊山神社までの登山道幅90僂郎拂垢福島県、その先も飯豊山山頂で少し膨らみ、御西岳まで細長く福島県。その東側が山形県、西側が新潟県となる変わった県境(まるで盲腸のよう)。
その理由をざっくりと。明治維新で新政府軍に反抗した会津を含む福島県は県庁を当時は辺鄙だった福島市に設定された。この地は福島県域から見るとかなーり北部で県全体へのアクセスが悪い。県では郡山市への県庁移転を考えたが、県内部での綱引きもあり頓挫、それに加えて政府から福島市から最も遠い「東蒲原郡」が新潟県に編入されることになってしまう。
これに伴い、なんと飯豊山(や山頂付近の飯豊山神社)も新潟県に移ってしまうことに。このため福島県は、飯豊山神社の麓宮は福島県側にあり古来から管理していたことなどの物証を提示、20年の時を経て三国岳から飯豊山山頂(飯豊山神社)〜御西岳までの登山道部分が福島県と裁定された経緯がある。
登山的にいうと、三国小屋、切合小屋、本山小屋は福島県喜多方市所在であり、御西小屋は新潟県新発田市(管理:阿賀町)となっている。
さて、三国小屋にはマスコット犬の柴犬ポチがいた!ワンちゃん超大好きドンちゃんは、事前にワンちゃん用ジャーキーを懐に餌でつる作戦を実行、普段枯渇しているワンちゃん成分をここでポチをなでまわして補給、残りのジャーキーは優しい管理人さんに預け、テンションMAX・大満足。ちなみに三国小屋、切合小屋、本山小屋ともにトイレは洋式簡易水洗(@100円)でどこもきれいに管理されている。
三国岳から先は小ピークの種蒔山(1,791m)がありテン泊装備ザック(今回は14圓曚鼻砲存在感を増す。11時過ぎには切合小屋についたが、テン場は混雑してきており小屋で受け付け(一泊一人1,000円)後、慌てて幕営準備。少し風があったがなんとかマイホームが設営できた。
テン泊の場合、ここからのまったりした午後が長ーい。テントの中だと暑い好天、所在なくブラブラ(おそらくここが三国小屋ならドンちゃんはずっとポチと戯れていたはず)。ビールは売っていたがジュース類はなくてガックリ…。景色を眺め、明日の準備をして早めに夕飯を食べて19時過ぎにはシュラフに。
~~初テン泊の感想~~
・混雑した小屋泊よりプライベート空間が確保されていて精神的に楽(特にドンちゃん)
・隣のテントの声、いびき、バーナーの音、動きがまるですぐ隣にいるように聞こえるのはちょっと驚き
・少し離れていてもトイレなどで歩かれるとテントのすぐ脇にいるように感じた
・9月下旬の切合小屋(1,740m)で夜は10℃くらい。
→上下ワークマンのメリノウール100%インナー・タイツ、メリノウール靴下2枚履き、上はユニクロダウン、ヤッケでも初日は少し寒く、2日目はレインウエアの下を穿いて快適に。シュラフはモンベルダウンハガー800の#3(濃緑)ドンちゃんはダウンハガー女性用#2(黄色)
・2泊目夜は風が強くフライシートが煽られた。ペグを一度打ち直してだいぶ改善。テント泊上級者への道は遠い。
2日目は3時過ぎから回りのテントが動き出し目が覚める。暗いうちから本山方向に登っていくヘッデンの灯りが点々と見えてちょっと焦り、慌ててテントで朝食し出発。今日は日帰り装備、ドンちゃんはアタックザック。ドンちゃんいわく、「飯豊にきて最高峰の大日岳に登らないのはどうかと思う…。戦わなければいけない時があるんです!…」と川平慈英のようなことを言う。切合小屋から大日岳ピストンすると11時間半コースになるが、御西岳まで行って余裕があれば足を伸ばすことにする。
切合小屋から本山へは、草履塚や御秘所の急坂や岩場を登る。これをテン泊の重装備で登るのはキツい=1泊2日で川入からテン泊装備で往復する人はエラい!本山小屋のテン場は小屋よりかなり手前で斜め、水場もトイレも離れていて環境はイマイチな感じだが、連休中でテントの色とりどりの花が咲いていた。
神社で山行の無事安全をお祈りし本山まで20分ほど稜線を歩くと、とうとう東北の百名山十五座のラスト、飯豊連峰の主峰、飯豊山山頂(2,105m)。好天・大展望で、飯豊山が見られるすべての山を飯豊山から見られたほどで、この景色をドンちゃんに見せたかったんだと実感。佐渡、朝日連峰、月山、蔵王連峰、吾妻山、磐梯山、燧ヶ岳と、オールスターラインアップ!この1年余りの目標にドンちゃんと一緒に立つことができた。
御西岳方向はかなり下り、帰りの登り返しが不安になる。万年雪渓の上は肌寒いほどの涼しさ、御西岳を巻き御西小屋に9時に着いてしまったので!さらに往復3時間40分ときつくなるのはわかっていたが飯豊連峰最高峰(2,128m)の大日岳を目指して歩きだす。急坂の手前で昨日、地蔵水場であったおじさんとバッタリ「切合小屋からは大変だったろう…」と労われる。ラスボス中のラスボス、大日岳の最後の急坂はやっぱり手強かった…。御西岳から1時間10分の10時20分過ぎ、やっとこさ大日岳。こちらも360度の大展望。きれいな景色に慣れ過ぎて感覚が麻痺するほど。
しかし、切合小屋から思えば遠くにきたもんだ♪、山頂でお腹を満たし、マイホームへがんばって帰るぞと決意を固める。大日岳の急坂は下りでも大変。その急坂を下りきって一安心したところで、朝日飯豊を愛する会のTシャツで高い音の熊鈴をリズムよく鳴らし颯爽としたにーさんに遭遇。Tシャツのことを聞くと「会に入るともらえます」とのこと。この姿はまさかあの時の…、と思ったがここでまさかね?、という思いが強く言い出せずにすれ違う。
御西小屋で小休止しかなり下ったところの水場で補給、稜線を歩きだすとすぐにまたあの鈴の音が!。ゲッ、もう大日岳のあの急坂を登って戻ってきた?!、やはりあの人か?ということで、「出羽守さん?」と聞いたところ、「えっ、そうですけど(怪訝)…」と。「船形山頂のkopalchanです…」というと、ビックリした顔、でもすぐに笑顔に。ドンちゃんが半ば強引に記念写真撮影。出羽守さんは大グラ尾根から大日岳ピストン途中で、我々の2泊3日の距離、累積標高を1日で上回る行程。自分の山行では忘れることができないホワイトアウト状態の船形山頂と、記念碑的な飯豊山で遭遇なんてドラマのようで男女なら恋が生まれそう(笑)。別れたあと、出羽守さんの速いこと速いこと…。風のように駆け抜ける後ろ姿をただ茫然と見送る。
自分たちは山行時間が7時間を超え、さらに飯豊山だと思ってやっと登り返した山が前衛の駒形山(2,038m)だったという失望感、まだ飯豊山の急坂がそこにあるという絶望感から足取り重くヒーヒーのフーフーでさらに登り返すと、やっと飯豊山に戻ってきた。午後になっても大展望は変わらず東北の名峰を一望。ただ山行時間が8時間を超え、難所の御秘所、草履塚の下りは太腿、ふくらはぎ、そして足裏のダメージとの戦い。
さらに、飯豊連峰は水場がしっかりあり冷たくて美味しいが飲み過ぎると身体が消化しない、受け付けない感じになりだるくもなった。普段はアミノバリューの粉末を溶かすが数を持ってこなかったので不足。水だけを摂取することで体液が薄くなり水分自体を身体が吸収しなくなる理屈はよくわかっていたが、ここまでの経験がなかったので如実に体感することになった。CT11時間半のところを10時間半ほどでなんとか切合小屋のマイホームに戻ってきたときにはバンビのように…。
夕食は即席麺、カレーなどバーナーでお湯を使う食材が多かったのにOD缶が小さいサイズだったため足りなくなり、小屋番さんに分けてもらえて本当に助かった(感謝です)。いままで一泊しか経験がないのでこんなに足りなくなるのがわからなかったのが反省点。2日目夜は風が強くフライシートが煽られたにもかかわらず、レインウエアの下も穿いて保温したこともあり、ぐったり疲れ切っていて死んだように就寝。
最終日も好天。小屋番さん曰く、こんなにいい天気が続くのも珍しいということで(ないけど)後ろ髪を引かれる思いでテントを撤収、ドンちゃん用にピンクの切合小屋Tシャツを買って(青はSしかなかった…残念)小屋を後にしようとしたところ、初日に地蔵水場、2日目に大日岳手前で出会ったおじさんにまた遭遇!一緒に写真撮影。
今日は下りだけだが、そこが飯豊の深いところ。山深い景色のなかで大小の登り返しが続き、3日目の重装備ザックが堪え、種蒔山は悪魔の巣窟に見えた。三国小屋でポチにまた会えると思っていたドンちゃん、ポチは小屋番さんと一足先に下山したと聞き超ガックリでテンションだだ下がり。でも剣ヶ峰の下りの岩場で↑。帰りは小白布沢口に下りられないので御沢コースで下ると、ここも急坂かつザレ場、ガレ場が多く、重い荷物、疲れた身体に堪えるコース。
しかーし、ここでビックリ、三国小屋の小屋番さんがポチとビールを背負って登り返してきた!ドンちゃん、感涙で嫌がるポチを撫でまわしワンちゃん養分大補給。それから上十五里、中十五里、下十五里を下ってやっとこさ、御沢野営場に到着。無事に飯豊連峰での2泊3日のテント泊を終えられました。帰り道にはまん延防止期間明けで喜多方市民以外にも開放された「いいでの湯」で食事と温泉で締めました。
1年余りの東北の山巡り、奥多摩や丹沢の山々より東北の山は同じコース定数でも明らかに登るのが大変に感じていた。山深く奥深い、コースもこなれていない、そもそも人が圧倒的に少ない(そしてくまモンが怖い…)。百名山より二百名山にその傾向を強く感じていた(神室山や和賀岳、白神岳、船形山など)。でも、飯豊連峰はこれまでのどの山より緑濃く、山深く、アップダウンが繰り返され、滑落のおそれのある岩場やザレ・ガレた急坂があるなど、やはり“深い飯豊”を心から実感できた。この山行をドンちゃんと二人で歩き続けられたことが本当に嬉しく、感謝しかないです。
コース定数は初日は24、2日目は41!、最終日は15でトータル80になる。これも我々の新記録。
女性(ドンちゃん)目線の山行記録はこちら
https://yamap.com/activities/13210658
<東北の百名山十五座の振り返り>
・一番印象に残った山:飯豊山 … 上記の通り。いままで登った山で最も美しく、そして厳しく深かった…
・一番キツカッタ山:岩手山 … 旧道急坂、八合目からの積雪、山頂部の強風で疲弊。下りで膝痛
・一番身の危険を感じた山:岩木山 … 今年のGW、八合目から上は吹雪いており身体が浮くほど…
・一番東北を感じた山: 蔵王(熊野岳) … 樹氷は抜群、御釜から山頂は烈風。コントラストに絶句
・一番岩場を感じた山:鳥海山 … 新山直下の岩場はロッククライミング。二度目は冷静に登れた
・一番の感謝:ドンちゃん … 十五座中、十二座一緒に。大朝日岳では大サポート。いつもありがと…。
コメント
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9月〜10月にかけてはちょうど秋雨の時期なので、山も曇りがちな日が多いと思っていましたが、3日連続で天気に恵まれたのはラッキーでしたね。
尾根道の大展望、岩場、雲海、紅葉など見所も沢山あったと思いますが、やはり初のテント泊でより思い出深い山行になったのではないでしょうか?
あとテント泊/小屋泊は、自身の装備や周囲の環境で快適さがかなり変わりますね。
私は疲れてすぐに寝てしまうので周囲の音はさほど気になりませんが、シュラフマットが快適さ(=翌朝までに回復する体力)をかなり左右することが分かってきました。
マットはモンベルの「アルパインパッド」と「エアパッド」を持っていますが、小型軽量のエアパッドは寝心地が良くない上に寒さが伝わりやすいので、荷物の量や重さを勘案しながら使い分けようかと考えています。
小屋番さんも珍しいという大展望が続きました。
普段、レインウエアとお友達の我が夫婦にとって「まじまじ、こんな天気よくていいの?」と疑心暗鬼になるくらいでした(苦笑)。
テントは昨夏買ってあったのに東北にはテン泊できるのが飯豊しかなく、ずっと眠っていました。でも、やっぱりテン泊って重い装備もテント設営も敷居が高いんですよね。でも今回予習をしっかりしたので、思っていた以上にスムーズにできました。
小屋泊でもテン泊でもマット重要ですね。うちはニーモのオーラというセルフインフレータブルパッドのマットでなかなかよくできたモノだと思うんですが、テン泊装備の多くの方がクローズドセルのマットをザックに外付けしていました。あと、ダウンパンツが欲しいなぁ、と思いました。
とても丁寧で読みごたえのある記録と綺麗なお写真をじっくり拝見しました。
目を三角にして登る山だけじゃなく、天気が抜群に良くてテントを背負ってゆっくりと変化する風景を愛でつつ、テント場でまったりや日の出を山頂で迎える山行を私も今年はしたかったな〜。テントはトレックライズですかね〜私も持っていますよ〜いつかは飯豊山ですね!素敵な記録ありがとうございました。
おっしゃる通りテントはライペンのトレックライズ2で、初テン泊でしたがなかなか快適でした。
そうそう浄水器ですがサロモンのが間に合い沢水ではつかいました。そのまま飲んでも、容器に移してもとても使いやすくて買って大正解でした。ありがとうございます。水袋に空気を入れてしまうと吸えなくなるので注意ですね・笑(上を向くと出てきます)。
広い飯豊の北側、今度は歩いてみたいです。
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